街の至る所にボールを蹴る子供たちの姿があり、学校の勢力図は「サッカー部の強さ」がそのまま校風に影響を与えるほどになっていた。
表参道と原宿、そして青山という三つの街の狭間に新設されて一年の「結ヶ丘女子高等学校」も、その例外ではなかった…。
~米女メイの自室~
大型テレビの青白い光が、食い入るように画面を見つめる二人の少女を照らしていた。
画面越しに流れているのは、結ヶ丘女子サッカー部の練習試合のダイジェスト映像だ。
メイ「おい四季…。これ、本当に入学して一年の、それも新設校の動きかよ…。」
メイが震える声で呟く。その視線の先では、オレンジ色の髪をなびかせた少女がピッチの中央でタクトを振っていた。
MF:澁谷かのん
かのんがボールを持った瞬間、試合のテンポが劇的に変わる。
かのん「みんな、音を合わせて……ここだよ! 最高のパス、送るから!」
彼女の放ったパスは、まるで見えない糸で繋がっているかのように、味方の足元へ正確に吸い込まれていく。
広い視野とリズム感。
彼女はまさにピッチ上の司令塔だった。
DF:唐 可可
相手のカウンターを食い止めたのは、あまり体力が無さそうな少女だ。
可可「ハァ、ハァ……可可はもう限界デス…。
…ですが…!!
…ここだけは通しませんヨ! サッカーは情熱デス!」
華奢な見た目に反し、粘り強いディフェンス。相手の動きを読み切ったスライディングが、決定的なピンチを救う。
GK:嵐 千砂都(キャプテン)
弾かれたボールを狙う敵フォワード。だが、ゴールマウスには「壁」がそびえ立っていた。
千砂都「ステップ、呼吸、タイミング……。うん、見えた! 丸く収めてあげる!」
抜群の体幹とダンスで培ったステップワーク、千砂都は至近距離のシュートを、まるで踊るような軽やかさでキャッチするという、キャプテンに恥じぬ能力を見せつけた。
千砂都「マル!!」
FW:平安名 すみれ
カウンターに転じる結ヶ丘。前線で待っていたのは、自信に満ちた笑みを浮かべる少女。
「さあ、ショウタイムよ! 銀河級のシュート、目に焼き付けなさい!
ギャラクシー!!!」
圧倒的な走力で裏へ抜け出し、強烈な一撃を放つ。
その存在感は、まさに主役(センター)の輝きを放っていた。
だが、それら一連の流れの中で、若菜四季の目を最も釘付けにしたのは、もう一人のフォワードだった。
FW:葉月 恋
長く美しい黒髪をポニーテールにまとめ、無駄のない動きでフィールドを駆ける。
恋「私たちの結ヶ丘に、隙はありません。
……ここで、終わりにしましょう」
恋の元へボールが渡った瞬間、四季の瞳が微かに揺れた。
四季「……あの、1番(恋)。身体の軸が、一ミリもブレてない。筋肉の収縮から次の動作への遷移が、論理的すぎる…。」
四季は無機質な口調で、だが熱を帯びた分析を漏らす。
恋の放つシュートは、力任せではないく物理法則を最適化したかのような、鋭く、そして気高い軌道。
それは相手キーパーが一歩も動けないほど、残酷なまでに完璧なゴールだった。
メイ「四季……、お前完全にあの葉月って先輩に興味津々だよな。」
メイが呆れたように、しかしどこか嬉しそうに隣を見る。四季は膝を抱えたまま、テレビ画面に映る恋の凛々しい姿を凝視し続けていた。
四季「……興味深い。あの人のサッカー、もっと近くで、計算したい…。」
試合終了のホイッスルが鳴り響き、画面には勝利を喜ぶ五人の姿が映し出される。
メイ「なぁ、四季」
メイが立ち上がり、拳を握りしめた。
その瞳には、かつてイナズマイレブンが世界に見せたものと同じ、熱い「稲妻」が宿っている。
メイ「私、決めたぜ。
……結ヶ丘に行く。
あの熱いサッカーチームの中に、私も混ざりてぇ!」
四季はゆっくりと視線を上げ、親友の顔を見つめた。そして、小さく、だが確かな意志を込めて頷く。
四季「……メイが行くなら、私も行く。あの『1番』のセンス……私の計算をどこまで超えてくるか、確かめないと」
新設されたばかりの結ヶ丘女子高等学校。
そこには、音楽とサッカーが共鳴する、まだ誰も知らないステージが待っている。
四季「……行こうメイ。私たちの、新しいフィールドへ。」
メイ「おう!目指すはフットボールフロンティア優勝がだ!!」
窓の外では、かつての伝説たちが駆け抜けた空と同じ、高く澄み渡った夜空が広がっていた。