ウェスタン•オブ•キヴォトス   作:SCOPEWOLF

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どうもこんばんわ。
なんだかんだ完成させて投稿です。
因みに私の作業のお供はコーヒーですけど、皆さんは何がお供でしょうか?
というわけで、本編をどうぞ


8.サンドクローとコーヒー

ある日のトリニティ自治区。

 

静かで落ち着いた雰囲気のおしゃれなカフェで、場違いともいえる格好と雰囲気の男が一人でコーヒーを飲んでいた。

 

店は立地ゆえにか他に人はおらず、居てもこの店のマスターぐらいである。

 

「……相変わらずいい豆を使ってるな」

 

「そりゃ、こんなお嬢様だらけの土地にやっすい豆で挑むほうが難しいぞ?

この前も安い豆でも気づかれないとか抜かしていたバカの店がペシャンコにされてたしな」

 

「連中の舌は相当肥えているからな。

まぁさもありなんといったところか?」

 

ズズズとコーヒーを啜りつつ、オーナーと気軽に話す男ことサンドクロー。

 

トリニティでの依頼をこなし、行きつけの店であるこのカフェにて休息をとっていた。

 

「アンタのコーヒーを淹れる腕も相当だが……

何より、ここのスイーツも中々美味い。

これで売り上げがそこそこなのはもったいないな」

 

「……まぁ、こんな路地裏の奥じゃなぁ。

かと言って表通りは土地が洒落にならんぐらい高いし」

 

彼の手元にはコーヒーだけではなく、真っ赤な苺が乗ったショートケーキも置かれている。

 

ケーキは既にその半分ほどを消滅させており、喋りながら差し込まれたフォークによってさらに一部分が欠けていった。

 

「ままならんもんだなぁ……。

まぁ、おかげで俺もゆったりとこの味を楽しめるんだがな」

 

「アンタが常連でホント良かったよ。

"ソイツ"のおかげで、たまに来る妙な連中も大人しくコーヒーを飲んでいってくれるしな」

 

「俺の"ソレ"は魔除けかなんかなのか?

たまに依頼先からねだられるんだが……」

 

そんな会話をする彼らの目線の先……店の見えやすい場所に一枚の色紙が額縁に入れられて飾られている。

 

 

――三本の爪痕のような線の上に、達筆な字で書かれた「SandCrow」のサイン。

 

 

言わずもがな、サンドクロー本人の書いたサイン入り色紙である。

 

「アンタの影響力を考えたら正に魔除けだろうよ。

"ソレ"さえ置いときゃ、裏の連中やらなんやらが持ち込む厄介な災難とかが自分から逃げていくんだぞ?」

 

「……まぁ、こんないい雰囲気の店で騒がれるよかよっぽど良いか」

 

そう言いつつ、サンドクローはケーキの頂点にあったイチゴを口に運ぶ。

 

彼の色紙はキヴォトスにおいて、彼が懇意にしてる店に置かれる目印のようなもの。

 

詰まるところはマーキングみたいなものであり、これが置かれているような店を襲おう物なら彼からの制裁は免れない。

 

彼自身は気に入ってる店を破壊された鬱憤を晴らしているだけなのだが、それだけでも充分にキヴォトスの不良や悪党たちにとって脅威なのである。

 

 

――チリーン、チリーン

 

 

「ん?……あぁ、アンタ以外の常連さんが来たな」

 

「ほう?俺以外にもこんな寂れた店に通うやつがいるのか」

 

「寂れてて悪かったな」

 

そう言いつつ、カウンターから離れてボックス席に座ったらしいその常連の元へとオーナーは注文を取りに行った。

 

どんなやつがここの常連なのか気になりはしたが、わざわざ探る必要もないと彼はコーヒーとケーキの方へと集中することにした。

 

……が、そう経たずにその集中は打ち切られることとなる。

 

「マキシマムデラックスストロベリージャンボパフェを二つお願いします」

 

「……ん?」

 

どこかで……つい最近聞いた覚えがあるような声が聞こえ、サンドクローのコーヒーを飲む手が止まる。

 

チラリと後ろを見てみると……

 

「あ、飲み物はダージリンでお願いします」

 

「承りましたっと……相変わらずよく食べるねぇ」

 

「えぇっと……お恥ずかしながら、ここのパフェが美味しくてつい食べちゃうものでして……」

 

「そりゃうれしいねぇ」

 

……そこにいたのは、つい数日前に依頼で会ったばかりのトリニティの治安維持組織の副官。

 

正義実現委員会副委員長「羽川ハスミ」その人であった。

 

「あぁ、俺以外の常連ってのは副委員長殿だったか……

つうか、マキシマムデラックスストロベリージャンボパフェ……?」

 

何やら聞き慣れない名前を聞き、サンドクローは困惑した。

 

彼はそれなりにこの店には通っているが、そんなアホみたいな名前のパフェは聞いたことがない。

 

恐らく名前からして相当デカいらしいパフェみたいだが……

 

そんな推測を彼が立てていたところ、ふとハスミの視線がマスターから離れてサンドクローの方へと向いた。

 

ハスミの視線がサンドクローに向いた直後、驚きで目を開きながら彼女の動きが硬直した。

 

そして数秒経ったところで彼女の思考が再起動したのか、すかさず専用のガンラックに立てかけられていたライフルを手に取っていた。

 

「サンドクロー……!?何故貴方がここにッ……!!」

 

ライフルの銃口をサンドクローの頭へと向け、ボルト引いていつでも彼を撃てるように構えるハスミ。

 

慌てた様子の彼女に対し、サンドクロは落ち着き払った態度でコーヒーの入ったカップを手に取った。

 

「なぜと言われてもなぁ……

普通にコーヒーブレイクをしに来たとしか答えられんぞ?」

 

「貴方がコーヒーブレイクですか?

貴方がブレイクするのは治安と牢屋の鉄格子でしょう!」

 

「俺をなんだと思っているんだ?

確かにその二つとも壊せはするが、それはそれとして俺も休息ぐらいは取るぞ」

 

厄介なのと鉢合わせしたとサンドクローは顔を顰める。

 

ハスミとしては彼がここで良からぬことを企んでいないかと気が気でならなかったが……

 

「嬢ちゃん、ソイツはアンタと同じで一応ここの常連だよ。

妙な真似とかはせんから、そのライフルを降ろしてやくれんか?」

 

「マスター……!?」

 

注文された品を持ってきたらしいマスターが彼女にそうなだめかけた。

 

ハスミはマスターの説得に驚きながらも渋々と引き下がり、元の場所にライフルを置いて座り直した。

 

一方、サンドクローはというと……

 

「…………嘘だろ?」

 

マスターが持ってきた、その怪物に驚愕していた。

 

ビールの大ジョッキ……もしかしたらそれよりも大きいかもしれないサイズのガラスの器に盛られていたのは甘味の暴力。

 

何層にも重ねられたクリームやイチゴ、アイス、フレークなどで構成された下層側面の分厚い壁。

 

上層にはこれでもかと言わんばかりの大きさのイチゴアイスのドームが複数並び、その上へ更にイチゴ•チョコ付きの棒クッキー•ウエハース•特大サイズのソフトクリームが要塞の兵器の如く飾り立てられていた。

 

あえてソレを言葉で表現するのであれば……スイーツの要塞だろうか。

 

しかも、そんな化け物が二体も連なっている。

 

実はそれなりに甘味を好いているサンドクローだが、流石にこのような化け物を目にするのは初めてであり……

 

これを食べ切れるのかと、同時に戦慄していた。

 

「……アレ、本当はグループ客向けに用意してたメニューだったんだがなぁ。

あの嬢ちゃん、アレを一人でペロリと平らげちまうんだぜ」

 

「……マジか」

 

カウンターに戻ってきたマスターの語ったその事実に、サンドクローは思わず震え上がった。

 

彼自身、量的に胃袋にはいらないかどうかでいうなら恐らく食べ切れるだろうが……

 

あのサイズの化け物を一つ完食するまでに、一体どれだけのコーヒーが消え去るだろうか?

 

少なくともアレをコーヒーの口直しなしで完食するのは不可能。

 

恐らく完食する頃には舌が甘さで麻痺してしまい、しばらく何を食べても味が甘く感じられるだろう。

 

ふと、マスターがメニュー表を彼に手渡してきた。

 

「実はな、アレの派生型のパフェを今度商品として出すつもりなんだが……試食、するか?」

 

「……普通のサイズで頼む」

 

「あいよ」

 

流石にグループサイズの化け物は気が引けたのか、サンドクローは通常サイズのパフェに逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、サンドクローは出てきたパフェ……

 

ビターチョコパフェ(通常サイズのパフェ)を無事に食べきった。

 

勿論ハスミも自身のパフェを食べきっており、サンドクローがビターチョコパフェを食べきる頃には完食して優雅に紅茶を飲んでいた。

 

因みにだが、その後ハスミは連絡が来て大慌てで店を出ていった。

 

なんでも近くで裏組織の密輸現場を発見したらしい。

 

――面倒事に巻き込まれる前に退散しよう。

 

サンドクローもまた急いで支払いを済ませ、トリニティ自治区から早急に撤退していった。




いかがでしたか?
因みに、その密輸現場には裏組織の連中が縛られた状態で放置されていたそうな。
一体何があったんでしょうかねぇ()
というわけで、また次の話をお楽しみに
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