ちょっと長く空けてましたが、書けたので投稿です。
いやぁ………色々とやること多くて中々進まなかったですねぇ………。
流石にメインの東方死霊録とアパラチア帰りの外道の先生生活日記を落とすわけにもいかず、その反動でこうなっちゃいました。
まぁこちらはぼちぼち書いていきます。
というわけで本編をどうぞ
日が沈み始め、空がまるで燃えているかのように赤いアビドス砂漠の一角。
ガヤガヤとざわめきの音が響くそこには、何人もの傭兵の少女たちと便利屋68の四人……
そして、今先ほどバイクで乗り付けてきたらしいサンドクローの姿があった。
「皆落ち着きなさい。
今回、彼は敵じゃないわ」
突然現れたサンドクローの姿に動揺する傭兵達に対し、アルは彼が敵ではないと伝えて彼女達を落ち着かせていた。
「くふふ、おひさ〜サンドクロー君?
今日はよろしくね〜」
「浅黄か。
……まぁ、今回俺は特に何かするわけじゃないんだがな」
早速と言わんばかりに彼へと声をかけたのは便利屋の室長「浅黄ムツキ」。
気安そうに会話する二人の様子に、他の傭兵たちは唖然としながら呆けていた。
まぁそれも仕方ないだろう。
彼女達傭兵の中でのサンドクローと言えば、圧倒的な実力を持つキヴォトス最高峰の傭兵。
実力と信用が第一な彼女達視点では天上人のようなものであり、傭兵としては憧れの大スターも同然ともいえる特大の大物。
そんな彼に気安く声をかけるなど、彼女たちからすれば命がいくつあっても足りないほどには勇気のいる行動。
だが、便利屋たちはどうだ?
彼女たち一般傭兵がざわつく一方、便利屋達はまるで近所の知り合いに会ったかのような距離感で接している。
「久しぶり。ここ最近も派手にやってたって聞いたけど…
相変わらず、そんな装備でやってるんだね」
「これが俺の正装だからな。
アサルトライフルやらサブマシンガンやらの最新のはどうにも肌に合わん」
「……ほんとに、変わらないね。まぁアンタらしいけど」
「俺の変わることなんぞ貯蓄してる金と食らった傷の量ぐらいだろうな。
変わるといえば……伊草、あれから随分経つが暴走癖は収まったか?」
「は、はい……!
最近は……ちゃんとアル様の指示を聞いてから爆破してます」
「それで良い。今後長くこんな稼業を続ける以上、その暴走癖は相当お前たちの評価に響くことになる。
直情的にならず、指示や上の意図を理解したうえで行動することを心がけろ」
「わ、分かりました」
やり取りを見るに、どうやら便利屋とサンドクローの付き合いはそれなりに深いらしい。
それ故に、傭兵たちは多少なりとも警戒していた。
今回の仕事は廃校寸前の学校の襲撃……
在校生たった5人の借金漬けな零細学校と聞かされていた。
だが、そんなそこら辺の不良でも容易く制圧できるだろう規模のターゲットを狙うのであれば、なぜここにサンドクローがいるのか?
傭兵たちの疑問が尽きない中、咳払い一つしながらアルが声を張り上げた。
「それじゃあ彼も来たことだし、作戦の説明を始めるわ。
……ムツキ、例の資料を」
「おっけー社長〜。……よっと」
アルの合図に答え、ムツキは近くに用意していた資料……
複数枚のダンボールを繋げた即席のフリップボードに書かれたターゲットについての情報を、傭兵たちへと見えるように掲示した。
「まずはターゲットについてだけど……
私たちが狙っているアビドス高等学校は人数こそ少ないけど、実力についてはそのへんの不良とは比べ物にならないほど高い水準の生徒たちで構成されてるわ」
「その証拠として、あの学園は何度もカタカタヘルメット団っていうヘルメット団仕掛けてきた襲撃を全て凌いだとのことよ。
そのヘルメット団も戦車とか裏で流れてる最新の武装を装備していたにも関わらず、単純な実力だけで叩き返されてるわ」
「ヘルメット団が戦車……?あいつらにそんな金があるの?」
「いやでも、最近安い値段で売られてた戦車を買って暴れてたスケバンもいたし……」
傭兵たちはヘルメット団の戦車について怪訝そうにしていたが、ここ最近の兵器の流通事情を鑑みて辛うじて納得していた。
「……とにかく、アビドスは油断できない奴らということよ。
それをよく知っているのがここにいるゲスト……サンドクローよ」
遂に触れたその名前に、傭兵の少女たちはピクリと反応していた。
そしてアルが一旦下がるようにその場を譲ると、サンドクローは交代で解説をするかのように前へと出てきた。
「ここから先、アビドスの生徒についての詳細は俺から話そう。
まず最初にお前たちが相手にすることになる五人をそれぞれ説明していく」
その言葉にその場の全員が姿勢を正すかのように緊張していた。
今の彼の雰囲気を例えるとしたらそれは……まるで雰囲気が怖い教師が授業をし始めたかのようだった。
「最初に一年の二人、奥空アヤネと黒見セリカ。
この二人は一年ということもあって実戦経験も少なく、比較的総合的な実力ではまだまだのところがある。
……ただ、この二人は前線で暴れるタイプじゃない。
特に奥空はドローンを使った支援が主のため、集中して狙うなら中距離でアシストを入れてくる黒見の方だろう」
「その次だが二年の二人、砂狼シロコと十六夜ノノミ。
この二人は実戦経験もそうだが、戦術的にかなり厄介な奴らだ。
シロコの方はゲリラ戦術に長けている上に、奴が愛用してるミサイルポッド付きのドローンによる強襲が持ち味となっている。
それなりに近接格闘もできる事も踏まえ、可能な限り弾幕を張って近づけないようにして戦うのを勧める。
一方でノノミだが、こいつはとんでもない馬鹿力でミニガンを持ち上げてぶっ放してくる。
正直こいつは半分固定砲台みたいなもんだが、状況に合わせてポジションの変更が可能な点とそれなりの胆力があることに気をつけることを勧めよう」
「そして、最後の一人なんだが………」
そして最後の一人を語ろうとしたとき、サンドクローの雰囲気が大きく変わった。
張り詰めた……というより、どこか圧を感じるその雰囲気に少女たちは思わず竦む。
「………三年、小鳥遊ホシノ。
アビドスの最高戦力で、主に前線で盾を構えてタンク役も務めるインファイター。
アビドスの奴らのなかでも抜きん出て素の戦闘能力や実戦経験の面で優れ、学園最強格レベルの実力を持つ猛者。
そして……こいつは俺にとって因縁のある宿敵でもある」
右目……正確にはそこにつけられた傷跡をなぞりながらサンドクローはそう語る。
彼のその仕草が何を意味するのか……
傭兵たちだけではなく、便利屋68の四人もそれを悟ると同時に気が張り詰める。
サンドクローの右目の傷。
それはかつて、彼が宿敵との戦いのなかで負ったとされている物。
その刃物で切り裂かれたかのような傷跡は恐らく彼の持つボウイナイフのものとは思われるのだが……
それはつまり、彼からナイフを奪い取って傷を負わせられるほどの猛者が存在するということでもある。
「……俺は奴らとの契約でアビドスへの襲撃ができない。
だが……多少なりともアドバイスぐらいはしてやれる。
もしだが……この作戦でアビドスを落とせたのなら、お前たちは名実共に俺を超えた傭兵となる」
「「「「「「ッ!!!!」」」」」」
サンドクローを超えた傭兵。
それは今のキヴォトスの中では最高の名誉とも言えるが、まだ誰も達成できていない偉業。
それに挑戦することができるチャンスを彼女たちは手にしているのだ。
「もしお前たちがこの仕事を蹴るのだというのなら……ここが引き返す絶好のタイミングだ。
どうするべきか、今ここで決断するといい」
……彼のある種の激励ともいえる発破をかけられたからなのか。
ここにいる便利屋以外の少女たちに、迷いも引く気配も微塵も感じ取れなかった。
「……覚悟はできてるみたいだな。
じゃあ、まずはコイツについてだが……」
そこからはサンドクローによる詳細なアビドスの情報が語られた。
彼女たちは先人である彼の言葉を一字一句聞き漏らさず、ある者はメモや録音。
あるいは、自身の脳みそへと直に叩き込んでいた。
彼女達が目指す先はただ一つ……
サンドクローを超えた傭兵。
その名誉を勝ち取る、ただそれだけであった。
いかがでしたか?
さて、どうやらこのキヴォトスでの便利屋襲撃はハードモードとなってしまったようですね。
それもこれも、全てはサンドクローとかいうならず者が余計な火種を撒き散らしたせいです。
どのような着地点に漂着し、ここからどのような結末にたどり着くのか。
色々とありますが、気長にお待ちください。
というわけで、また次の話をお楽しみに