ウェスタン•オブ•キヴォトス   作:SCOPEWOLF

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どうもおはようございます。
さて、今回の話なんですが……
割とサンドクローのクソ野郎っぷりが見えてくる内容になっています。
まぁ前々から言ってはいますが……
本作は華々しい英雄譚や甘酸っぱい青春物語ではなく、泥まみれの薄汚いドブネズミが醜く生き足掻く物語ですので。
というわけで、本編をどうぞ


1-6.ホルスと砂爪

「……中々いい線は行ってたが、あれは駄目だな」

 

古臭い真鍮製の望遠鏡から目を離し、ため息交じりに手に持つインスタントコーヒーの入ったマグカップへと口をつける。

 

便利屋と傭兵たちのアビドス襲撃なのだが……

 

惜しいところまで詰めたは良かったが、そこから一気に捲くられて大逆転の末に敗走という末路を辿っていた。

 

あいつらの作戦では主力部隊で前線メンバーを抑え込んでいる間に、後方でサポートや指揮をしている奥空とシャーレの先生を捕縛し無力化することになっていた。

 

その策自体も半ばまではうまく行っており、後方組の元まで傭兵を引き連れた伊草が接近し後は捕縛するだけのはずだった。

 

……のだが、咄嗟でそれに気づいたらしいシロコがドローンを使ってインターセプト。

 

ドローンに積まれていたミサイルの雨を受けて傭兵たちは半数以上が気絶、伊草は何とか防御はできたものの隙を突かれて奥空に取り押さえられた。

 

流石にミサイルを数発受ければ、頑丈な伊草とはいえど無事ではすまん。

 

今もアイツは敗走する傭兵の一人に担がれており、見た感じは意識も戻っていないらしい。

 

そして、後方への襲撃組がやられたことで作戦が瓦解。

 

ギリギリで保たせていた前線組も消耗が激しくなっことによって撤退を余儀なくされてしまっていた。

 

辛うじてアビドスが追撃を加えようとしてないために何とか逃げれているが、もしそのまま追いかけられればものの見事に全員お縄だっただろう。

 

「追い詰め方は悪くなかったが……急なトラブルへの対処に難あり、といったところか?」

 

実際、傭兵たちもシロコのミサイルに気づいて迎撃か防御ができていればああはならんかっただろう。

 

伊草は気づけこそしたが、防御するにしても直撃コースのミサイルの数が多過ぎた。

 

アイツの課題は瞬間的な判断能力だろうか?

 

まぁどちらにせよ、今回はシロコのやつが一枚上手。

 

奴の野生の勘じみた直感性はあいつらにとってもいい教訓になっただろう。

 

さて、俺もそろそろ帰ると……

 

 

 

「……どこに行く気かな?」

 

 

 

……訂正。

 

どうやらちょっとばかり残らないといかんらしい。

 

ザッザッと後ろから砂を踏む音が鳴り、聞き覚えのある声が聞こえてきた

 

「流石はホルス。

後ろにはいくらか地雷を仕掛けてたってのに全部回避してきやがったか」

 

「中々面倒なのを置いてくれちゃってさ〜。

……で、あの子達はなんなの?」

 

おっと、どうやら相当頭にきているらしいな。

 

だが今日は最低限分しか弾薬や武器がない。

 

今のこの状況でやり合ったところでサンドバッグになるのがオチだ。

 

「強いて言うなら面倒をみてやってる同業者と、そいつらが雇ったフリーランスの傭兵だな。

生憎俺は情報の提供と観戦以外は何も関与していない。

契約には一切違反はしていないぞ?」

 

「…………ふ〜ん。

ま、そういうことなら別に良いけどさ」

 

そう言いつつ、ホルスの奴は俺の目の前へと回り込んで何かを差し出せと催促するようにこちらへと手を差し出してきた。

 

……不本意だが、これ以上の面倒事を避けるには致し方ない。

 

「……ほらよ、最近見つけた値打ちもんの宝石だ。

そこらの金塊よか価値がある」

 

「お〜、すごくきれいな青だねぇ」

 

懐から取り出してくれてやったのは透明なケースの中に入った大粒のサファイア。

 

前に偶然仕事で貰い受けたのだが、天然物な上にサイズ的にもアクセサリーに加工するのもためらうものがあったため、そのままの状態で換金用に保存していた品だ。

 

「これが鑑別書だ。

売るときは信頼できる宝石商にしとけよ?」

 

「え〜、さすがにこんな綺麗なのを売るのは勿体ないかなぁ……」

 

「……前のお前だったらすぐに売りに行っただろうに。

二年でずいぶんと変わったもんだな」

 

「……むしろ、私はアンタが全く変わってないのに驚きだけど。

あの時からもう随分経ったし、いい加減諦めたら?」

 

突然、ホルスから先ほどまでの浮ついた雰囲気が消えた。

 

そこにあったのは馴染みのある雰囲気を漂わせる女……

 

先ほどまでの演技混じりではない、素のホルスであった。

 

「生憎、俺にもプライドってのがある。

この傷の借り……これを晴らすまでは諦めるつもりはない」

 

「はぁ……。

まぁこっちもその分の対価はもらってるけどさぁ?

別にそんな傷の一つや二つ気にするほどでも無いぐらい怪我しまくってるじゃん」

 

「……よくそれを知ってるな?

一応俺の怪我だとかなんだとかは新聞どころかネットニュースにすら書かれてないんだが」

 

実際俺が負傷したりして活動が一時的に停止すると、連邦生徒会やヴァルキューレはその事実を隠蔽しだす。

 

理由は単純、こんな事が公になればただでさえ悪い治安がさらに悪化するからだ。

 

俺自身自分の実力や影響力には自覚があり、俺が動けないともなれば連邦生徒会にとっての抑止力の一つが一時的とはいえ消えるも同然。

 

今のところ連邦生徒会が俺の大手のクライアントという事実は公表されており、SRTも含め犯罪者やらテロリストやらへの抑止力として辛うじて機能している。

 

SRTも現状は俺が裏切ったりした時の保険として稼働し続けており、命令権を持つ生徒会長がいない為に連邦生徒会本部近くの学舎で待機状態になっているらしい。

 

噂だと宙ぶらりんになってるあいつらを解体するっていう話があったらしいが……

 

まぁ、少なくとも俺がいる限りはそれも出来んだろうな。

 

話は逸れたが、とりあえず俺の怪我云々はまず普通は知るすべがないはずだ。

 

どうやってコイツは知ったんだが……

 

「……左上腕と右足、後は多分左の肋骨かな?

なんかこの前戦った時にそのへんの動きが妙に悪かったから」

 

「なるほどな。さすがにバレたか」

 

どうやらコイツにはお見通しだったらしい。

 

一応、骨は治ってそこまで問題もなく動かせてはいるのだが……

 

いかんせん、鈍った部分は隠しきれん。

 

コイツとは長い付き合いでそれなりに銃口を向け合った仲だ。

 

癖から微妙な調子の良し悪しまで見抜かれている。

 

「……いい加減、そんな生き方辞めてどこかの学園に転がりこんだら?

少なくとも実力を買われて悪いようには扱われないと思うけど」 

 

「随分とつまらんジョークを言う。

……俺は誰かの下につくなんぞまっぴらゴメンだ。

それに、俺が下手にどこかの学園に属するようなことになったら学園間のパワーバランスにも変な影響が出かねん。

そうなったときに真っ先に面倒を被るのは俺だぞ?」

 

さっきも言ったが、俺の世間様での立ち位置は犯罪者への抑止力。

 

その抑止力がどこぞの学園に転がり込んでそこの戦力になる……

 

その先に待ち構えているのは変に深読みしたバカや単純思考で俺がやって来ないと勘違いしたアホ達による阿鼻叫喚の地獄。

 

さすがに今以上にそんな奴らが増えれば俺でも対処はしきれん上に、学園の所属となれば今までのような活動もできんくなる。

 

俺自身も何処かの学園に所属だとかは性に合わない故に御免だが、これで一番困ることになるのは各所の治安維持組織だ。

 

奴らも隙あれば俺をとっ捕まえようとはしているが、捕まえたその後どうなるかはあっちも理解はしているだろう。

 

だからこそ奴らはメンツの為に正義を振りかざしはするが、本気で俺を捕まえようとはしてこない。

 

……もちろん、それは公的な組織だけでどこぞの自警団だとかは別なんだが。

 

「ま、そういうわけだ。

……俺は俺のやりたいように生き、その果てに死ぬ。

金を貰っての仕事以外じゃ誰からの指図も受けてやるつもりは無いな」

 

「……そっか。

でも……死ぬのについてはやめて」

 

ふと、ホルスの空気が変わる。

 

何処か悲しみの混じった声に俺は呆れるしかなかった。

 

「まだ吹っ切れていなかったのか?

あれからもう2年にもなる、いい加減受け入れろ」

 

「……できるわけないでしょ。

もう私は……大切な人や顔や名前をよく知ってる人たちが死ぬのはもう嫌なんだよ……!」

 

…………これだからコイツはまだ弱い。

 

「いいか?人なんてのは簡単に死ぬ。

一々死んだ奴に未練たらたらになってたらキリがない。

特に、俺やお前みたいな奴は……」

 

「アンタと一緒にするなッ!」

 

 

――ドパンッ!

 

 

俺の頬を12ゲージの鉛玉の一つが薄く切り裂く。

 

その鉛玉をぶっ放したホルスの目は……俺への憎しみで溢れていた。

 

「……昔のお前なら俺の顔を直接狙っただろうに。

そこまで人の死が怖いのか?」

 

「……怖いに決まってるでしょ。

誰だって怖いし、進んで人殺しになんてなりたくない。

どうして……どうしてアンタはそれを……!」

 

「俺は自分のためなら他人の命だって奪える。

肝心な時にビビって引き金も引けない弱さなんぞ、傭兵である俺には不要だ」

 

「……このクソ野郎。

さっさと帰れ」

 

どうやらもう要件は済んだらしい。

 

俺は俯き背を向けるホルスを尻目にトリガーへと乗り込み、アクセル全開で陸八魔たちとの合流地点へと向かった。

 

……クソ野郎、ねぇ?

 

「それで死ぬことがないってんなら、俺はクソ野郎でも一向に構わんと思うがな」

 

人の命はたった一つ。

 

あいつもいつかは気づくはずだ。

 

生きるっていうことは、他の命から何もかもを奪い取るということであると。




いかがでしたか?
まぁこの世界線では傭兵たちは定時上がりはしませんでしたが……
それはそれとして普通に負けてもらうことにしました。
多分この世界のシロコは原作世界線のシロコより強化されてますねこれ。
まだまだ追いつくには遠いとはいえ、キヴォトスでも最高峰の実力者と定期的にやりあえてますから。
経験値の蓄積は凄まじいでしょうなぁ。
ホシノについてはまぁ……うん。
サンドクローは別に正義の味方とかではありませんし、そもそもの生業がアレですから……
というわけで、また次の話をお楽しみに
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