さて、今回の話なんですが……
まぁちょっと長めに書いております。
というのも今回の話は割と生々しいこの世界線のキヴォトスの裏事情を描写しようかなと書いておりまして……
結果としてめちゃくちゃ長くなりました。
だいぶダラダラ書いちゃった気はしますけど、二次創作のキヴォトスなんて作者の数だけ世界観上の裏事情とかが変わりますし……
たまにはその辺をある程度明確に書きたいなと思いまして。
というわけで、本編をどうぞ
「……なるほどねぇ?
「生徒を傷つけず身を守れる護身用の武器」ときたか……
アンタ、随分と欲張りだな?」
「"うーん……流石に教師が暴力に訴えるのは良くないですし。
でも無防備だと当番の子達からよく怒られちゃって……
なのでどうにかみんなを傷つけずに身を守れるようなのは無いかなぁって"」
「坊主、なんでこれでこの先生は今まで生きれてんだ?
少なくともキヴォトスじゃ真っ先に死ぬような甘ちゃんじゃねぇのこれ?」
「俺に聞くな。
コイツの甘ったれな所を挙げたらきりがねぇんだからな」
実際、なんでコレが今もここで生きれてんのかは不思議でしかない。
普通だったら武器も持たずに出歩くなんてのは「どうぞ襲ってください」と言ってるも同然。
下手すりゃ攫われて売られる可能性も否定できないため、少なくとも見える位置に威嚇用の武器の一つは下げるのがキヴォトスでの常識だ。
しかしこのバカ、まさかの丸腰なのだ。
「生徒に暴力はいけない」とかなんとか言ってるが、それで死んだらその生徒を殺人犯にしかねないということをコイツはわかっているのだろうか?
そういう面倒事から身を守るには実際撃つかはさておいても拳銃の一つは携帯するべきだろう。
「なるほどなるほど……こりゃなかなか困った客だぜ。
ま、アンタの要望に応えられる銃が丁度あるんだなぁコレが」
そう言ってケイブがカウンター裏でなんかの操作をすると、ヤツの横側の床がせり上がってアタッシュケースが置かれた台が姿を現した。
「まぁさかお遊びで作ったコイツの貰い手がいるなんてなぁ……
お父ちゃん、感動で泣けてくるぜ!」
本当においおいと涙を流しながら咽び泣くケイブがアタッシュケースを開くと、そのなかにはかなり見覚えのある銃が納められていた。
「……M1911か?」
「おうよ!
ガバメントモデルベースで色々と外装もカスタムしたんだ」
中から出てきたのは割とキヴォトスでも人気のある拳銃……M1911コルトガバメント。
ちょっとばっかしかさばりはするが、そこそこゴツ目の見た目に加えてその威力や扱いやすさから護身用として人気のハンドガンだ。
だが……どうにもコレからは何かが違うことを感じる。
「ま、カスタムとは言っても中身はほぼ別物なんだがな?
ちょっとした息抜きに作ってたオリジナルの非殺傷弾を撃つためだけにジャンク品から組んだのよ!」
「"オリジナルの非殺傷弾……ですか?"」
「あぁ、心配すんな!
コレを子供に当てたところで怪我とか変な作用とかは無いぞ?
なんなら多分アンタの言う暴力ってのにも当てはまらねぇ!」
試しにと言わんばかりにケイブは先生へと銃口を向け、ためらうことなく引き金を引いた。
ぽすん、と気の抜けた音とともに何かがガバメントから放たれてシャーレの先生に命中した。
「"うわッ!?……あ、あれ?痛く……って、動けない!?"」
命中した弾が弾けたかと思えばシャーレの先生の身体に大量の緑色の液体が引っかかり、そのままの体勢でまるで金縛りにあったかのように動けなくなっていた。
「コイツは……確か前に裏の技術屋が開発したとか噂になってた拘束剤か?」
「正確にはナノテクノロジーで作られた硬化剤だな。
コイツは通常ただの緑の液体なんだが、活性状態で空気に触れるとバクテリアみたく増殖して対象の体を覆う。
対象に満遍なく引っ付いたところで硬化するからこんなふうに拘束用にも使えるっていう優れもんだよ」
「"え、えぇっと……効果は分かったけど、これどうやって解くの……?"」
「軽い電磁パルスを当ててやりゃあ一気に剥がれるぞ。
こんな感じのちっさいパルス発生機でも簡単に剥がれるな」
そう言ってケイブがどこからともなく取り出したレーザー照射器みたいなものをシャーレの先生に向けると、途端に奴の拘束が解けて「"あいたぁッ!?"」と声を上げながら床にすっ転んだ。
「ま、あんまり普及してねぇから作ったやつも在庫を持て余しててな。
知り合いのよしみで買い取ったこれでなんとか武器にならんかと試してたらできたってわけだな!」
再びアハハハハッ!と特徴的な笑い声をあげるケイブ。
まぁ確かにこんなのを使うぐらいなら銃を使ったほうがまだマシだろうし、そりゃ売れるわけがない。
しかし、どこに需要があるか分からないものである。
「"……うん、これなら私でも使えるかも。
店主さん、これください"」
「あいよ!値段は……まぁ元が元だしこんぐらいってとこか?」
そう言ってケイブが差し出した請求書に若干シャーレの先生は顔を引きつらせたが、即決カード一括払いで購入した。
……そういえば、数日前にシャーレにデリバリーしてやった時に早瀬の奴から護身用の武器で良いものはないかと聞かれたな。
そんときはとりあえずスタングレネードとかコンパクトタイプのハンドガン辺りを勧めたが……
まぁあいつが何の目的で聞いたかはしらんが、この様子だと取り越し苦労になるかもしれんな。
俺の知ったことじゃないが。
シャーレの先生が退店し、便利屋68も用事があるからと先に帰った後。
俺はBIG Ironのメンテナンスが終わるのを待ちつつ、ケイブから受け取った情報が書かれた資料を確認していた。
「……やっぱりか。
奴ら、相当やってくれやがったな」
「まったくだぜ。
連邦生徒会長サマが居なくなってから、連中もかなり調子に乗ってやんの」
手元にある資料ってのはここ最近裏市場経由で出回ってる違法な重火器や兵器類……
その出処についての調査資料だ。
このところ戦車やら武装ヘリやらのやたらと厄介なものを持ち出すスケバンやヘルメット団が増えたため、稼ぎがそれなりに増えた変わりに一つ一つの仕事の面倒臭さが跳ね上がってしまった。
稼ぎが増えるのは良いんだが、そのたびに手製のダイナマイトの消費も激しくなる上に後処理の手間も増えちまう。
正直かなり鬱陶しいのだ。
……もっとも、やってくれやがった下手人は予想通りの連中だったが。
「カイザーのクソどもが……
余計なことをしやがって」
「ま、あのカスだまりの奴らだしな?
これもどうせ連中のつまらねぇ事業拡大計画とやらの一環じゃねえの?」
けらけらと笑いつつも、作業している傍らで横から観ている限りケイブの目は笑ってねぇ。
コイツはいつもふざけた態度をとっているが、ことカイザーが関わるとその仮面が剥がれる
……詳しいことは知らんが、どうせカイザーのことだ。
何かしらコイツみたいな裏の連中から恨みを買っていてもおかしくはない。
「……っと、コレでいいかねっと」
カチッとトリガーが引かれてハンマーが空を叩く音が響いた。
振り返ると先程までバラバラの状態だったはずのBIG Ironが元の状態に組み上げられており、相応に使い込んで若干くすみだしていた銃身が鈍く光を反射していた。
「よぉし、仕上がった!
バレルの煤とかの清掃と軽くいつものオイルを塗っといたぜ!」
「助かる」
早速仕上がったBIG Ironを受け取り、試し撃ち用のゴム弾を装弾してみる。
いつもよりも滑らかに入った308.ウィンチェスター用のゴム弾三発を装弾位置まで回転させ、ローディングゲートを閉じてハンマーを完全に起こした。
「……ターゲットは?」
「んん〜……
あっ、そこの空き缶とかどうよ?」
ケイブが指さす方向。
どうやら作業中に飲んでいたらしいエナドリの空き缶が大量に転がっていた。
俺は適当に立った状態で放置されている空き缶の一つへと瞬時に狙いを定め、すかさずトリガーを引く。
――ズダァァァァァンッ!!バゴンッ!!
放った一発のゴム弾は直立していた空き缶のど真ん中をぶち抜き、デカい音を立てながら空き缶の山へと突っ込ませた。
「ひゅ〜、ワンショットキル!
んじゃ、これはどうよ?」
ケイブは手元のエナドリを一気に飲み干し、空き缶を空中へと放った。
俺は今にも落下しようとする空き缶の軌道を読み……
――ズダダァァァァァンッ!!バギャガギャッ!!
速射で二発、缶を潰したうえでゴミ箱に入るように命中させた。
撃たれた缶はベッコリと中央が大きく凹んで潰れ、二発目の当たった衝撃でそのままゴミ箱にホールインワンした。
「ナイッショッ!
銃も腕も調子いいなぁ!」
「……悪くはないんだが、俺は曲芸師じゃねぇぞ?」
「アハハハッ!
まぁまぁそこはゴム弾の代金ってことで、な?」
笑いながらこっちにゴム弾の入った弾薬ケースを一つ投げ渡された。
まぁ、たまに射撃練習をする時にゴム弾を使うこともある。
確かにケース一個分タダは儲けもんなんだが……
なんとも釈然としない。
「……メンテナンス代金はこれでいいか?
便利屋たちの分も含めてだ」
逆に俺も懐からいくらか金を入れた袋を取り出し、ケイブの方へと放ってやった。
「よっとな。
……お、こりゃ結構入ってら」
そう言いつつ袋の中を漁るケイブ。
しばらく中身を漁っていくらか金塊を取り出すと、残ったやつをこちらに投げ返してきた。
「……そこそこ残ったな」
「ちっとばっかしオマケもあるがな!
そこそこいい感じの新規さんの紹介料ってところだわな!」
アハハハハハッ!と笑いつつ、ケイブは受け取った金塊を懐にしまった。
どうやら便利屋達はコイツに気に入られたようだ。
「随分とあっさり気に入ったな?
奴らの顔に釣られて……なんてチンケな理由じゃないだろ?」
「ま、そりゃな?
金はなさそうだが、その分対価込みで仕事を振りやすいっていうのが本音だよ」
珍しく真剣な顔もちになり、ケイブのやつはどこからか取り出した煙管に火をつけながらそう答えた。
「ここ最近、運送系の連中の質が悪くなっちまってなぁ……
この前なんか、取り寄せてたニトログリセリンの瓶を運送中に割ってとんでもねぇ大事故を起こしたりしてたしな」
「あの事件のグリセリンを頼んでたのはお前か。
まぁ、確かにありゃ運び屋の管理体制が杜撰だったな」
思い出すのは三週間ぐらい前に起きた事故。
高速道路を走っていたトラックが突然爆発して周辺数メートル程度が丸ごと吹き飛ぶ大惨事が発生した。
原因はトラックの積み荷だったニトログリセリンが割れて爆発し、ほかの積み荷を巻き込んで誘爆からの大爆発を引き起こしたことだった。
俺も緊急で雇われて交通整理の護衛に入ったが、ありゃ酷かった。
高速道路は下が抜けたりとかの被害はなかったものの、巻き込まれた車両が壁に突き刺さったりひっくり返った車から要救助者の声がずっと響いていたりと惨憺たる有様だった。
で、仕事の合間にヴァルキューレの連中の会話を盗み聞きしてみりゃ運送する爆発物の取り扱いについての管理体制がうんたらかんたらと、とにかく運び屋の大元の会社があんまりにも杜撰だったと言うことを愚痴ってやがった。
この件を含め、連邦生徒会長が失踪してからキヴォトスのインフラだけじゃなくこういったサービス業やら建設業やら製造業やらやらやら……
とにかく色んなところの仕事が麻痺したり何だりで使い物にならなくなってきている。
元から問題あるところが多かった接客業とかはまだマシだが、それ以外はもう目も当てられん。
その煽りを受けて仕事が増えて稼げるのは良いんだが、このままだとこっちの仕事まで変な影響が出かねん。
「とりあえず、しばらくはあの子たちに調達品の運搬を任せようかとね?
ま、あの子たちもこっちの世界に興味があるみたいだし?
ちょっとディープなところは避けとくけど、かる〜く触れるぐらいなら良いでしょ?」
「……確かにな。
丁度いい経験かもしれん」
……とにかく、こんな混乱が続いてる間は俺たちがやることも多い。
さっさと会長サマが見つかりゃいいが、それまでは俺たちみたいな下請けの雇われは需要が高くなる。
需要が高いのは良いんだが、変な雇い主に捕まって潰されでもしたら俺の方も困ることになる。
その点コイツなら大して問題はないだろう。
「ま、坊主も気をつけろよ?
なぁんか裏でコソコソとやってるみたいだけどな?」
「……噛むなら少し待っとけ。
こっちも色々とやることがあるしな」
「アハハハハハッ!……そりゃ楽しみだねぇ」
獰猛に笑うケイブは口から大きく煙を吐き、吸い終わったらしい煙管の燃えカスを近くの灰皿へと叩いて落とす。
灰皿から漂って鼻に入ってくる煙の香り。
どことなく臭く感じるそれに顔を顰めつつ、俺は軽い挨拶だけをしてさっさと店から出ていくのであった。
いかがでしたか?
ちなみにケイブ氏はネタ半分シリアス半分ぐらいで設定作ってまして。
そりゃこんな濃いオリキャラがただ武器を売ったり整備したりで終わるはずもなく……
まぁ、割と彼も彼でメインストーリーに関わることもあるかもです。
まぁしばらくはでてきませんがね!アハハハハハッ!
というわけで、また次の話をお楽しみに