前回のおまけについてなのですが、アレはこの先にあり得るかもしれない未来の断片です。
まだ書いていない以上確定はしてませんが、予定通りの設定やストーリーの流れで行けばあの未来へとつながることになりますね。
ま、先はすんごく長いですけど。
というわけで、本編をどうぞ
「……アコ、答えて。貴女何をやってるの?」
静かに、しかし圧倒的な威圧感を持った声で携帯の向こうから通話しているアコへとヒナの問いかけが突き刺さる。
『い、委員長……!?こ、これはその……』
「先方への確認もなしに他校の自治区に攻撃……
しかも目標がこっちの指名手配犯とはいえ、無関係の民間人や協定で理由のない攻撃が禁止されているサンドクローを巻き込んで砲撃。
……砲撃自体はイオリの判断でしょうけど、その他はアコ……貴女の独断ね?」
『そ、それは……』
「……あれ?これ私まで悪いのか…?」
ヒナに静かに詰められるアコの顔は携帯越しではあるものの青ざめており、二の句をうまくつなぐこともできずにヒナの問いをおとなしく聞いていた。
……オマケでイオリにも飛び火して不服そうな声を上げていたが、ヒナから向けられた冷たい視線によって黙ることとなった。
「アコ……私達はあくまで風紀委員会。
そういう政治的な事は万魔殿の管轄よ。
それにイオリ……私は前に忠告したはずよ?
「むやみに飲食店を破壊したらいけない」って」
「うぐッ……い、いやでも委員長……」
「……今回の件については私の監督不行き届きが原因。
だから私が責任を取るわ。
……でも、次は私も庇いきれないから」
『……申しわけ、ございません……委員長……』
「……ごめん、委員長」
ヒナの言葉に二人は項垂れ、罪悪感を強く感じながら彼女へと謝罪の言葉を口にした。
「サンドクロー、うちの部下がごめんなさい。
お店の賠償とかはまた今度折を見てするから」
「……まぁそれなら良いさ。お得意様のアンタの頼みだ、大将への賠償も立て替えて数日ぐらいは保留してやる」
「助かるわ。……さて」
軽く謝罪を済ませたサンドクローから目を離し、ヒナはシロコたちアビドス廃校対策委員へと向き直った。
「あなた達、アビドスね?
……うちの委員がそっちに攻撃した件について、風紀委員長として公式に謝罪するわ。
本当に、ごめんなさい」
ヒナはそれだけを告げ、対策委員たちに対して頭を下げた。
「ん、それだけで許すわけにはいかない。
ちゃんと私たちにも……」
「シ ロ コ 先 輩 ?」
「……ん、やっぱ無し。謝罪は受け入れる」
頭を下げたヒナに何かを言いかけたシロコだったが、直後に放たれたアヤネからの圧力に屈して取り消した。
彼女としてはここで自分達もサンドクローに便乗する形で賠償を取り立てようという魂胆だったが、それでアヤネをキレさせて絞られるのは避けたかった。
「……それに、謝罪を受け取るかどうかは私たちでは決められませんよ〜?
そういうのはホシノ先輩のお仕事ですし……」
ノノミがそう言った瞬間、ヒナが一瞬目を細めるように反応した。
「……ホシノ?もしかして小鳥遊ホシノの事?」
「あれ?もしかして先輩のお知り合いでしたか?」
「まぁね〜。ここ最近は中々会うこともなかったけど」
突如、アヤネの疑問に答えるように響いた声。
その場にいる全員が声の聴こえた方向を見ると、いつぞやの防弾チョッキこそ無いものの臨戦状態で向かってくるホシノの姿があった。
「ホシノ先輩!こんな大変な時にいったいどこに行っていたんですか!」
「うへぇ、ごめんねぇ〜アヤネちゃん。
おじさんちょっと野暮用があってさ〜?」
いつも通り間の抜けた声ではあるが、薄く開かれた彼女の目はヒナとサンドクローを見据えている。
そして、サンドクローの頭に赤く染まった布が巻かれていることにも気が付いたのか面倒くさそうにしつつショットガンの銃口を彼へと向けた。
「ま、多分賠償やらなんやらの話はもうしてるんでしょ?
サンドクロー、アンタがこれ以上怪我を酷くさせないうちにさっさと撤退するのをお勧めしたいんだけど?」
「……まぁ良いさ。
確かにそっちの話は済んでるからな」
サンドクローはホシノにそう答えると、中指と親指を口元に近づけて大きく指笛を吹いた。
直後……
――ブルォンッ!ブオオォォォォッ!
――ガラガラガラガラッ
突然柴関だった瓦礫の山の中からトリガーがエンジン全開の状態で勢いよく飛び出し、彼の前でピッタリと急停止した。
「"ちょ、ちょっと!?サンドクロー、君怪我したまま……!"」
「……だから何度も言ってるだろうが、シャーレの。
俺はそこらの病院にはかかれんってな」
サンドクローはトリガーに素早く跨がり、ブルォンッブルォンッとエンジンを吹かす。
しかしそれを止めるものは先生を除いて一人もおらず、間もなくしていつもの掛け声と共に砂漠の中へと消えていった。
「"……行っちゃった"」
「先生、アレはケガとかしても気にしたら負け。
いつの間にか治してくるし、変に治そうとしても全部突っぱねてくるから」
「先生、優しいのは良いんだけどサンドクローにまでいちいち優しくしてやる必要はないよ~?
アレはそんなの望んでないし、するだけ無駄だから」
去っていったサンドクローの背中を見ながらつぶやく先生に、シロコとホシノはそう切って捨てるように進言する。
彼女たちは目の前の大人が底知れずのお人よしであることはよく知っている。
だが、だからこそそれをサンドクローに向けるべきではないとも考えている。
二人の言葉にでもと先生は答えようとするが、それを遮るようにホシノが一つ咳払いをした。
「……ま、それはともかくとして。
ヒナちゃんもちゃんと後輩の手綱は握っとかなきゃだよ?
アイツがほとんどやっちゃったから、おじさんたちからのお仕置きまではしないけどね?」
「えぇ……本当にごめんなさい。
アコとイオリにはあとでしっかりと言い聞かせておくわ」
「うんうん、そういうことで後は頼んだよ~」
そうホシノとヒナは軽く謝罪を交えた会話を交わし、それが終わると各々撤収の準備に取り掛かり始めた。
……この時、先生はサンドクローの事についてしか頭になかった。
彼が大多数の生徒たちから嫌われているのは知っていたが、まさかここまでひどいとは思ってもみなかったのだ。
願わくば、皆が手を取り合って楽しい青春を送ってほしい。
先生はただ、それだけを想っていた。
書類上も事実上も生徒ではないはずの彼すらも、自分にとっては生徒であると思いながら。
いかがでしたか?
まぁ、サンドクローの立ち位置としてはこれぐらいが妥当でしょう。
……ちなみにですがトリニティで怪我しているところを某団長に見つかると、彼が強制救護から逃げるために甚大な被害(ほとんど団長によるもの)が出るんだとか。
なお、現状救護は免れてます。
というわけで、また次の話をお楽しみに