さて、ついに始まるアビドス編終盤。
今回はサンドクローではなく、その前に取り残された組の方の視点となります。
ちなみに物語の都合上、心苦しいですが酷い目に遭うキャラもいます。
詳細をここで言うのもあれなので、早速本編をどうぞ。
追記:またサブタイつけ忘れてました……
『フハハハハハハッ!無駄無駄無駄無駄ぁッ!』
「あーもう!何なのよあのデカブツ!」
「うわぁ、こりゃ近づいて爆弾仕掛けないと弾が効かなさそうだねぇ。
……近づければ、の話だけど」
「あ、アル様ぁ……!」
「だ、大丈夫ですよ便利屋さん!
きっと社長さんはシロコ先輩や先生と一緒にサンドクローさんをボコボコにしてますから!」
「……流石にそれは苦しくないかな?
まぁ、社長たちがそうそうやられるとは思いたくないけど」
銃弾や榴弾の嵐にさらされ、シロコとアルを除いたアビドス廃校対策委員と便利屋68の五人は必死に遮蔽物へと隠れながらもカイザーPMCへと応戦していた。
しかし、司令塔である先生に加えてそれぞれのリーダー格が居ないことで彼女達の士気は下がってしまっていた。
しかも、相手にしているカイザーPMC……特に先頭で巨大な新型重装兵器「ゴリアテ」に搭乗するカイザー理事が厄介だった。
戦闘経験や操縦の練度こそ無いだろうが、ゴリアテのあまりにも面に強すぎる武装やオマケでついてるカイザーPMCの兵士たちによる攻撃も合わさり、あまりにも濃すぎる弾幕が彼女達を襲っていたのだった。
「こんな時、ホシノ先輩がいてくれたら……」
「まぁ、私たちその先輩ちゃんを助けに来てるんだけどね!
……それに、アイツらはメガネちゃんを泣かせた張本人だし?
そりゃもう……潰すしかないよねぇ!」
「ムツキ!?待って、今一人で動いたら……!」
突然ムツキは弾幕の切れ目を狙って動き出し、少しだけ薄くなった弾幕の中をかいくぐるようにしてカイザーPMC達のいる場所へと少し近づいた。
「この距離なら……!
ほら、アンタらへのプレゼント……受け取ってよねッ!」
近づいたことでなんとか届くと見計らったムツキは手に持った爆弾入りのバッグをぐるぐると回し、勢いをつけてカイザーPMCのパワーローダーがあるあたりへと思いっきりぶん投げた。
バッグを投げつけられたパワーローダーは思いっきりコックピットへと投げつけられてしまったことで大きくひるんでしまい、その隙にバッグの中に入っていた爆弾が起爆したゆえに悲鳴をあげる間もなく機体ごと爆炎の中へと消えていった。
しかもこの爆発で爆発したのは一個の爆弾のみであり、今にも爆発しようとしている中にあった他の爆弾たちは爆散したパワーローダーの周りへと散らばった。
起爆したそれらの爆弾は他の機体やいくつかの戦車、数名の歩兵たちを巻き込んでスクラップへと変えた。
『えぇい小癪な!
これでも食らうといい!』
――ボシュゥッ!
「あっ、ヤバッ……!?がぁぁぁぁぁッ!?!?!?」
「「ムツキ/室長!」」
しかし、流石に彼女の行動にはかなり無茶があった。
部下をいくらか吹き飛ばされてキレた理事の乗るゴリアテの矛先がムツキへと向かい、かなり近い距離でミサイルを放たれてしまった故に避けることもできずに彼女は直撃を受けて大きく吹き飛ばされてしまった。
べチャリと音を立てるように便利屋達のすぐ近くへとムツキは叩きつけられ、残る便利屋の二人は思わず飛び出して彼女を助けんと飛び出しかけた。
……しかし、それを止めたのはアビドスの二人だった。
「は、離してください!ムツキ室長が……ムツキ室長がぁぁっ!!」
「ま、待ちなさい!
今飛び出したら私たちまでアイツらに蜂の巣にされるわよ!」
「そうです!とにかく今は……」
「ムツキ……!
くッ……今はアイツらをどうにかしないと……!」
ムツキの捨て身の攻撃は確かにカイザーへと少なくない損害を与えた。
……しかしその一方、ただでさえ士気が下がってしまっていた彼女たちへの追い討ちにもなってしまった。
カヨコは必死に考えるが、いつもの彼女らしくもなく動揺によって思考が纏まらない。
前線を引っ張るリーダーの不在、それは集団で戦うことが主な彼女たちにとってあまりにも厳しい状況だった。
いくら個々に優秀な能力があろうとも、それをまとめ上げ決断を下すことで皆を導けるリーダーがいなければそれは烏合の衆とさして変わらない。
結果、本来であれば勝てるはずの戦いでありながらも彼女達は窮地に立たされていた。
「フハハハハハハッ!ガキ共がまるでゴミクズのようだ!」
ゴリアテのコックピット内、カイザー理事は高笑いをしながらアビドスと便利屋達を攻撃していた。
サンドクローから作戦を聞かされた時には眉をひそめたものの、実際やってみればどうしたことか。
あれだけ苦労させられたアビドスや便利屋たちは今や防戦一方。
現状追い風が吹き荒れていたのはカイザー側であった。
「愚鈍で間抜けなガキどもめ……!大人に逆らうということがどういうことか……
今こそ、それを貴様らの身体に叩き込んでやろうか!
フハハハハハハッ!!!!」
故に、カイザー理事はかなり調子に乗っていた。
これを先生が聞いていれば本気で理事へとキレていたことだろう。
しかし、先生は今サンドクローを相手にシロコとアルだけを指揮して必死に戦っている。
とてもではないが、今の彼女達を救えるほどに余裕がなかった。
「さぁ……貴様らを始末してさっさとあの先生と名乗る小生意気な若造を……」
『り、理事!!大変です!!』
今にも瓦解しようとしていたアビドスと便利屋達を仕留めんと理事がゴリアテを前進させようとしていたその瞬間だった。
突然通信機に部下の慌てた声が入り、理事は軽く舌打ちをしながら外部スピーカーに接続しているマイクの接続を切って通信機へとつないだ。
「何があった!」
『デカグラマトン大隊が……』
「デカグラマトン大隊が?何か召集中にトラブルでも起きたのか?」
デカグラマトン大隊。
それは、大隊の名前にもなっているデカグラマトン……
より具体的に言うなれば、このアビドスに生息する「ビナー」と呼ばれる怪物を退けるためにカイザーが設立した部隊。
最新鋭かつ高品質なカイザー製の武装や兵器を装備した精鋭揃いの大部隊であり、確実にアビドスを……
そして、連邦捜査部シャーレの顧問である先生を仕留めるために念には念を入れて増援として招集していた。
もうあと少しもすれば到着する予定であり、今ここでアビドスを潰した後にアビドス全域を支配する為に市街地とアビドス高校校舎へと派兵しようと理事は画策していた。
……しかし部下から伝えられた情報を聞いた瞬間、理事は先ほどまでの調子の良かった態度から一転あり得ないと言わんばかりの顔で無線機を手に取った。
「馬鹿な!?デカグラマトン大隊が全滅だと!?」
『は、はい!一時あちらとの通信が何らかの理由で途切れ、回復したのと同時に彼らからSOS信号と隊員から部隊が壊滅したというメッセージが送られてきました!
恐らくそのメッセージを送った隊員も……』
「…………だ」
『……え?』
「どこのどいつだ!我々カイザーに楯突き、あまつさえ大隊を潰した愚か者は!」
理事はキレた。
よりにもよってこんな時に横槍を刺し、あまつさえ自社の貴重な戦力を失わされたことに。
しかし、理事の頭の中にはなかった。
その精鋭揃いであるデカグラマトン大隊をあっという間に殲滅するということは、すなわちそれが可能なほどの強大な実力者や集団であるという考えが。
「おのれぇ……!我々の邪魔をしてただで済むと……」
『り、理事!その……襲撃者なのですが………』
かなり言い淀みつつも、部下は口からなんとかひねり出すような声で残酷でありながら無常でもある事実を言い放つ。
『襲撃してきたのは………ゲヘナ風紀委員会です!』
「……………………………はぁ??????」
理事は部下から告げられたあり得ない報告に対し、ただそのひと言を返して固まってしまった。
いかがでしたか?
ムツキ……正直すまんかった……。
しかしあの状況で良い感じに動かせそうなのが君しかいなかったんだ……
本当に申し訳ない。
ちなみに最後の理事のセリフを書いてる時、私の脳内には某猫ミームの声が流れてました。
まぁそりゃよくよく考えたらなんでゲヘナの風紀委員会が自分たちを攻撃してるのか、カイザーからすればさっぱり分からんでしょうからねぇ。
多分次の出番の時には顔が真っ青(まぁ機械なので顔色変わりませんが)なことでしょう。
というわけで、また次の話をお楽しみに