祝日だからと勢いで書いたら意外といけました。
勢い任せですが、一応ちゃんとシリアスとギャグは混ぜて入れてるので出来栄えは全く変わらないとは思います。
まぁ……とりあえず言えるのは、この話できちんと彼は刺されます。
本作ヤンデレものだとかドロドロとした昼ドラ世界というわけでもないのに主人公が刺されます。
割とこれは珍しいパターンじゃないかしら……?
まあ理不尽とも言い難いので何とも……
というわけで、本編をどうぞ
「……まさか、な。
俺がやったことをそのままそっくり返してくるとは思わなかったぞ、陸八魔」
「ふふ、私も成長してるのよサンドクロー。
なんだか顔色も悪いみたいだし、今日のところはおとなしく休んだらどうかしら?
もちろん、休憩場所は牢屋の中になるでしょうけど」
「ふっ……どうやら冗談のセンスも成長したみたいだな。
だが生憎、俺はこれからかかりつけの医者の世話になりに行くんでな……
悪いがさっきのような手抜きは無しだ」
「ん、上等。今度こそアンタを仕留める」
「お前もか、シロコ……
全く……やっぱりカイザーの依頼はクソだなァ……
手負いの獣を全力で狩りに来るたァ、かなり野蛮だとは思わんか?」
「ん……アンタは手負いの方が強い。
それを狩れるなら、野蛮でも何でもいいよ」
屋上から飛び降りてきた二人に対し、サンドクローは若干焦りながらも平静を装って軽口を返した。
実際、今のサンドクローはこれまでないほどに追い詰められている。
前はシロコとアルを筆頭に、なんだかんだ彼が鍛えたことがあるキヴォトスでもずば抜けた精鋭たちばかり。
後ろは圧倒的実力でねじ伏せてくる理不尽のような特記戦力であるヒナと、この世界における絶対者でもある後方指揮者のシャーレの先生。
これまで追い詰められたことは多々あれど、ここまで詰みに近い状況になったのは初めてだ。
いままでは技量と幸運でどうにかできたが……
今回はそうも言ってられないかもしれない。
そう間もなくして後ろからヒナと先生も追いついてきてしまった。
「……サンドクロー、今降参するなら少なくとも命の保証はしてあげるわ。
これ以上戦えば、貴方の体も持たないわよ」
「はァ……だからそれは無理だと言っているだろう。
捕まった時点で……俺は死んだも同然なんだからなァ?
あんたも、それは分かってるだろう?」
サンドクローは充血して血走っているかのような目をヒナに向けつつ、そう答えた。
彼の言う死……
それはサンドクローという名のならず者、それがキヴォトスにおける公的な秩序によって拘束され、管理されるということ。
今まではあくまで制御されていたのではなく、その存在を表す名義とキヴォトスというボードの中での立ち位置が与えられただけだった。
しかし、彼が捕まり囚人としての「役割」が与えられれば……
キヴォトスでもルールの外に存在するならず者であり、最強であった傭兵のサンドクローというラベルを張られた男は死を迎える。
残るのはかつてサンドクローと呼ばれただけの囚人……
生きながらに、彼は死を迎えるということだった。
「……そう、貴方は最後までその選択を取るのね」
それならばと、ヒナはデストロイヤーの銃口を向けた。
ヒナの冷たくも目の前の得物を狩らんとする地獄の業火のような闘志を宿した目と、サンドクローの薬物で血に染まっているかのように真っ赤な目が交差する。
ただ一言、ヒナの言葉と共に戦いは幕を開ける。
「なら、サンドクロー……私は殺すわ、貴方を」
凶悪な駆動音のごとき銃声が鳴り、この戦いの最後の号砲がかき鳴らされた。
その戦闘は苛烈を極めた。
先生率いるアビドス廃校対策委員四名と便利屋68の四名、そしてシャーレの部員として活動している空埼ヒナにはそこまでの損耗はない。
あってもそれ以前の戦闘でついた負傷や武器の損耗だけだ。
しかし……この圧倒的不利な戦況でも粘って抵抗し続けるサンドクローは命すら削っているかのような限界の戦いをしていた。
――ズダダァァァァァァァァァンッ!!
「ぐッ!?いったん下がるわ!」
「ん、了解!ちょっと使いづらいけど、これで……!」
――タタァンタタァン!
「ちぃ……そういえばまだサブアームがあったか……!」
サンドクローは舌打ちをしつつもシロコの撃った拳銃の弾を左手で逆手抜きしたボウイナイフで弾き、返しの一発をシロコに向けて撃った。
シロコは野生の勘のようなものでその弾を回避し、回避したその隙を補うようにハルカが突撃してショットガンを連射した。
「死んでください死んでください死んでください!死ねぇぇぇぇッ!!!!」
「グゥッ……!?舐めるなァ!」
――ズダァァァァァァンッ!
「ガァッ!?」
何発かはなんとか回避できたものの、ハルカの最後に放った弾がサンドクローの脇腹に直撃。
弾は貫通こそしていないものの至近距離での一撃だったこともあり衝撃がすさまじく、肋骨の一部にヒビが入ったか折れたらしい激痛が走った。
しかし薬物で多少なりとも痛覚が抑えられているため、少し呻きながらもサンドクローは彼女の眉間をBIG Ironの一発で銃撃。
ハルカの小さな体躯は大きく後ろに飛ばされるも、その合間を縫うようにばら撒かれたヒナの銃撃によって追撃されること無くすぐに体勢を立て直していた。
このままでは埒が明かないとサンドクローは障害物に隠れて今までにない速度でBIG Ironのリロードをするが、空薬莢を排出したタイミングでノノミのミニガンの掃射が障害物だった廃墟の瓦礫を粉砕し始めたために逃げながら弾を込め始めることになった。
なんとかリロードは済んだものの、現状逃げ道がない。
一か八かトリガーを呼び出して、何とかこの場を駆け抜けて逃げることも考えたが……
それはかなり難しい。
シロコたちが猛攻撃を駆ける傍らでカヨコとアヤネがドローンまで使ってあちこちに地雷を仕掛けており、下手に呼び出そうものならそのまま引っかかってドカン。
なんとか乗れたとしても、カヨコにルートを先読みされればそこに地雷を仕掛けられてドカン。
正直逃げ場がない現状、
まさかのこの土壇場で神頼みじみたことをすることになるとは思わなかったが……
しかし、そうでもしなければ彼は生き残る道筋が見えなかった。
だが、そんなマイナスに傾いた思考だったからなのか……
「……そこよ!」
「ぐあッ……!?」
足元にアルの放った弾が着弾し、使い慣れないカイザーから奪ったスナイパー故にかいつもより弱いながらも爆発した砂に足を取られて体勢が大きく崩れた。
そして、そんな隙を先生は見逃さなかった。
「"みんな、一斉射撃!"」
そのたった一言。
しかし彼が体勢を立て直そうとするには間に合わないタイミングで放たれたその指示に、生徒たちは寸分たがわずしたがって彼へとありったけの鉛玉を叩きこむ。
マシンガン、サブマシンガン、拳銃、ショットガン、アサルトライフル、スナイパーライフル。
あらゆる銃声が大合唱を引き起こし、彼の身へと無数の銃弾が叩きこまれた。
「ガァァァァァァァッ!?!?!?!?」
すんでのところでサンドクローはむき出しの顔を守るように腕を前にクロスするように出せたが、それ故に顔以外の全身を鉛玉たちが撃ち抜いていた。
その衝撃で彼の体が宙に浮いてしまい、同時に衝撃で折れてしまったらしい腕が宙に放り出された。
「……今ッ!」
「"……!?シロコまっ……!"」
待ってと先生が止めるのも聞かず、シロコはその場から飛び出した。
若干先ほどの銃撃と薬物の副作用によって飛びかけたサンドクローの意識が戻ったその時、その目に映ったのは見覚えのあるナイフを構えて突撃してくるシロコの姿だった。
その瞬間、彼の脳裏に走馬灯のようなものがよぎった。
アレはそう……シロコがホシノに拾われ、初めて対面した時だった……
―――――――――――――――――――
「……ん!鬼!悪魔!クソ野郎!」
「はっ、なんとでもいいなガキンチョ」
「ん!ん!ガキはお前も!」
「んだとこのクソガキ!」
初対面で早々に後にサンドクローと呼ばれることになる男は当時のシロコに勝負を挑まれ、手加減一切なしにボコボコにしていた。
まだ小さかった当時のシロコは目に大量の涙を浮かべ、わんわんと泣きわめきながらサンドクローへと罵声を浴びせていた。
そして当時のサンドクローは泣きわめくシロコに一切の容赦がなく、泣きっ面に蜂どころか顔面パンチでも入れるかのように煽り散らしていたために思いっきり噛みつかれていた。
そんな二人の様子にあきれ果てたのか、ショットガン片手にホシノがサンドクローへと詰め寄りその顔に銃口を向けた。
「いつまでそんなやり取りを続ける気?
いい加減帰れ、このクソ野郎!」
「は、上等だ!
今度こそテメェを………」
〈約五分後〉
「ガッ……!?く……くそ……が……」
ばたりとその場に倒れるサンドクロー。
倒れた彼の頭をゲシゲシと踏みつけるように蹴ったくるシロコを尻目に、ホシノはなんとなしに思いついたことを口にした。
「あぁ、そうだ。アンタそんな私に挑んでくるぐらい暇ならシロコちゃんの訓練相手にでもなったら?」
「……あ?んだと……だぁッ、こら頭を蹴るなクソガキ!」
「ん!うるさい負け犬!」
「誰が負け犬だ!その負け犬に負けたってんなら、お前はなんだ?
負けネズミ?いや、負け蟻ってか?」
「ん、黙れクソ野郎!」
低レベルな言い争いをする傍ら、ホシノはシロコの方を引き留めて彼女に腰に身に着けていたナイフを渡した。
「……シロコちゃん?コイツは見ての通りクズの負け犬だけど、一応それなりに実力はある。
私を倒すよりも先にコイツを倒せるようにならないとね。
これ自体はコイツから奪ったそこらへんで買ったっぽい安物ではあるけど……うまく扱えば、コイツの目の傷みたいに一泡吹かせられるようになるよ」
「ホシノ……ん、分かった!」
彼女の言葉に一応の納得がいったのかシロコは渡されたナイフを手に持ち、早速サンドクローへととびかかった。
「でりゃぁぁぁぁぁぁッ!」
「……んな大ぶりの攻撃に……当たってやるかぁぁぁッ!」
「ぐえッ!?わぁぁぁぁぁぁッ!?」
しかし、先ほどまでダウンしてたとはいえそこは後のサンドクロー。
起き上がってすぐにシロコを掴み上げ、その場で回転するように振り回してから近くの砂地へと投げ飛ばした。
悲鳴をあげながら飛んで行ったシロコは着弾地点の砂地に頭から突っ込んでしまったが、その手にはホシノから渡されたナイフが握りしめられていた。
―――――――――――――――――――
(よりにもよって、こんな時に走馬灯……縁起が悪い!)
内心でそう叫ぶも、何もかもがもう手遅れだった。
「うぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」
叫び突撃してくるシロコの姿。
それはあの日、ものの見事にサンドクローが返り討ちした時の姿と重なって見えた
「しまっ………!?」
反応が追いつかない。
ゆっくりと流れているかのように感じられるその刹那の瞬間。
彼女の目に映った自分の顔は、驚きのあまりに大きく表情が崩れていた。
そして……
――ドスッッ!
「ぐぁぁッッ!?」
腹にナイフが突き刺され、壁にたたきつけられたところで彼の意識は一瞬でブラックアウトした。
最後の瞬間、彼は小さくとも声が聞こえた
「……え?」
遅ばせながらも、ここに来ることを待っていた少女の戸惑うような声を。
いかがでしたか?
はい、まさかのここで少しだけ過去の回想です。
正直ホシノがどの辺からおじさん一人称が基本になったかよくわからないので、とりあえずシロコを拾った頃はまだおじさん一人称が定着する前だったということにします。
実際一人称ってそう変わるもんでもないですし、こういう感じでもいいんじゃないかとは個人的に思いますね、はい。
というわけで、また次の話をお楽しみに。