さぁて、今回は少しだけ戦闘シーンを挟みます。
そこで注意点なのですけど……彼の戦い方は外法というか、主人公らしくないやり口となっています。
ヒーロー系主人公であれば正面戦闘をして勝てるのは当たり前ですが……彼はヒーローではないので。
むしろ書き始めからして外道のヴィランに近い印象なので、真っ当な戦い方で勝つ主人公は他の方に任せます()
ということで、本編をどうぞ
『……はい、わかりました。急な対応で申し訳ありません』ピツ
『先生、現在そちらに用心棒の方を緊急で向かわせています。どうか、彼の到着まで持ちこたえてください』
「“OK、リンちゃん!……ん?彼……?”」
D.U市街地の激戦区。
不良たちと相対する生徒たちの後ろで、彼女たちを指揮する大人がいた。
彼は「シャーレの先生」。
つい先ほどここキヴォトスへと連れてこられた大人であり、生徒たちを導くこの学園都市の未来の救世主であった。
「"……リンちゃん、もしかして今こっちに来てる人って男の人なの?"」
『え?あ、あぁ……そうでしたね。はい、用心棒の方は間違いなく男性ですが……』
「"……ってことは私以外にも男性がいるのか!"」
彼は喜んだ。
まだ会ってもいないが、このキヴォトスには女子生徒しかいないと聞いていた。
実際、今指揮をしている子たちもみんな女の子だ。
この緊迫した状況において、味方に同性が加わってくれるのは心強い。
『……先生、あまり油断なさらないようにしてください』
「"……へ?その人って何か問題があるの……?"」
『問題といえば問題ですが……彼は所属校どころか身分証もなく、ヴァルキューレどころか私たち連邦生徒会にも拘束力が存在しないならず者なのです』
「"えぇぇッ⁉ならず者って……だ、大丈夫なのその人⁉"」
『えぇ、まぁ……彼は拝金主義といいますか……とにかく、お金を積めばある程度のことは解決するか手を引いてくれるのです』
「"Oh……絵にかいたようなアウトローだね"」
『ですがその分、実力については申し分ありません。敵に回したらまずいですが、味方のうちはよほどのことがない限り頼りになります』
「"そのよほどのことっていうのが気になるけど……まぁ今回は安心していいんだよね?"」
『えぇ……それなりに経費から落としましたから』
胃の痛そうな顔でそう答えるリンに対し、先生は憐れみと労わりの混じった顔で押し黙ることしかできなかった。
『おそらく、彼は単独で不良たちの大半を抑えていてくれるはずです。先生はその間に何とかして突破してください』
「"えっ、合流して一緒に戦ってくれるんじゃないの!?"」
『……先生、彼に集団戦闘は期待するだけ無駄です。
どうせ囮として暴れてくれるでしょうし、その隙を活用してください』
「"う、うん……分かった、やってみるよ"」
この際先生は助っ人の男性については深く考えないこととした。
現在、戦況としてはゲリラのごとく現れるスケバンたちとの撃ち合いになっている。
散発的ではあるものの、それなりの数で足止めをするかのように展開されていた。
「"……みんな!追加の護衛の人がこっちに向かってきてるみたいだから、もう少し耐えて!"」
「きゅ、救援ですか!?」
「くっ、この数が相手だと少々辛いですが……なんとかその方が到着するまでは持ちこたえます!」
「このタイミングで……ですか。何か嫌な予感がするのですが……」
「しかし、数が多いに越したことはないはずです。」
先生が指揮する4人の生徒……
ミレニアムサイエンススクールセミナー所属の「早瀬ユウカ」
トリニティ総合学園正義実現委員会所属の「羽川ハスミ」
同じくトリニティ総合学園の自警団所属の「守月スズミ」
ゲヘナ学園風紀委員会所属「火宮チナツ」
全員所属は違えど、先生という旗のもとで共に戦う奇妙な縁の仲間達であった。
彼女達はチームワークこそ最初の内は無いに等しかったのだが、先生の指揮によってなのか今ではある程度スムーズに不良たちを狩ることができていた。
とはいえ元々戦闘を想定した準備をしていたわけでもなかった為、弾薬やその他諸々で準備不足が目立ってきていた。
渡りに船とはこのことなのか、突然の救援の知らせに生徒達は喜んだ……
しかし、ただ一人……スズミだけは何か嫌な予感を感じていた。
こんな短時間の内に派遣された救援……それも、現在人手不足気味らしい連邦生徒会からの。
何かモヤモヤとした気持ちを抱えつつ、また湧いてきた不良たちへと銃口を向けた……
その直後だった
――………ォォォッ!!
「"……うん?この音は……?"」
――ブォォォォォォンッ!!
「な、何……!?もしかして救援が来たの?」
「この音は………まさかッ!?」
「………連邦生徒会は正気ですか!?よりにもよってヤツを……!?」
――ブォォォォォォッ!!
「………ッ!三時の方向から来ます!皆さん、伏せて!」
どこからともなく鳴り響く、重苦しいエンジンの咆哮。
その音の正体に気づいた者たちは連邦生徒会の正気を疑い、すぐ近くへと来たことを察知したチナツは全員に伏せるよう促した。
その声に先生も含めた全員が身を屈めて車両の陰に隠れたところで………
嵐がやってきた。
「Yeeeeeeee-haaaaaaaaw!」
聞こえてきたのは若い男性………いや、少年の叫び声。
ビルの影を縫うようにして戦場へと飛び出したソレは細長い輪のような形状の何かを不良たちの方へと放ち………
「………えっ?」
そのうちの一人を縛るかのように巻き付いた。
「オラオラ退けどけぇぇッ!!!!」
「ちょっ、まっ………うわぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!?!?!?」
縛り上げられた不良の少女の身体が浮き、あちらこちらにグルグルと振り回され始める。
少女の悲鳴を他所に、その下手人………バイクに跨るカウボーイ風のガンファイターのような格好の少年は、アクセル全開で不良集団めがけて突撃し始めた。
「お、おい………あれってまさか!?」
「なんでヤツがこんなところに!?」
「ま、マズイ!?早く逃げ………」
しかし、逃げるには遅かった。
「おぉらぁぁッ!!」
「「「「「「「ぎゃあぁぁぁぁぁッ!?!?!?」」」」」」」
少年は振り回していたソレ………縄で縛り上げた不良を分銅鎖の要領で勢いよくぶん投げた。
投げ飛ばされた不良生徒はそのまま集団へと突っ込み、まるでボウリングのごとく他の不良たちをまとめて吹き飛ばした。
「く、クソぉぉッ!!これじゃ逃げ切れねぇ!!」
「撃てぇぇ!!とにかく撃つんだ!!」
――ババラバラバラララララッッ!!!
「おぉっと危ない……ちょいと仕置きが足りないみたいだなぁ?」
少年は弾丸を回避するようにバイクを走らせながらそう呟きつつ、荷台の方へと手を伸ばして何かを掴んだ。
「これでも喰らいな金蔓共!トミーのご挨拶だ!」
そう言って彼が片手で引き抜き持ち上げたのは、少しだけ改造した痕跡のあるトンプソン•サブマシンガン……通称トミーガンであった。
――カタタタタタタタタタッ!
「ごべッ!?」「おごぉッ!?」「アベシッ!?」
動き回っているにも関わらず少年の放った弾丸は的確に不良達を撃ち抜いており、彼が銃弾を爆速で回避しながら通り過ぎる頃にはその場にいた不良たちは皆気絶して倒されていた。
「クソが!なんでこんなところに砂爪が……!」
「んなことぼやいてる場合か!こんの……銃がダメならこれでも食らえ!」
破れかぶれなのだろうが、不良の一人が懐から一個の手榴弾を取り出して少年の方へと思いっきり投げつけた。
投げられた手榴弾は真っすぐに少年の方へと飛んでいき……
――ズダァァァァァンッ!
一発の銃声とともに撃ち抜かれ、衝撃で大きく反対方向へと飛んでいき爆発した
「ずいぶんと安い花火を使いやがったな?俺を仕留めたきゃこんぐらいの派手な花火でも使いな、loser共!」
そう言って彼がどこからともなく取り出したのは、何かの紐のようなものが付いた赤い筒。
懐から取り出したジッポライターで口に咥えた筒の紐に火を点け、ライターをしまいこんで手に持つと残る不良たちが隠れるバリケードの向こうへと投げ込んだ。
「……なんだこれ?」
「おいこれまさかダイナマ……ッ!?!?」
――ズドォォォォォォォンッ!!!!!!
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?!?!?!?!?」
不良達がバリケードと共に四方八方へと吹き飛び、そのまま地面に叩きつけられるかして全員気絶していった。
先生達が顔を上げた時、そこに立っていたのはただ一人。
バイクに跨り、指で帽子のブリムを叩きながら彼らの方を見遣る少年だけであった。
「……そこにいる連中、お前たちこんなとこで何をしている?ここはかくれんぼの会場じゃないんだが?」
ただ一言、少年は地面に伏せて隠れる先生たちへと声をかけた。
これが先生とカウボーイ風のガンファイター……
巷では「サンドクロ―」という通り名で呼ばれている、一匹狼なならず者との出会いであった。
いかがでしたか?
こんなの主人公の戦い方じゃないわ……!
ただの無法者よ!
因みに言っておきますが、彼の戦術は相手が頑丈なキヴォトス人相手だからこそのものです。
普通に危険なのでよい子は真似しないでね()
それはそれとして、また明日をお楽しみに