ウェスタン•オブ•キヴォトス   作:SCOPEWOLF

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どうもおはようございます
さて、今回は二本立て。
まぁ特に戦闘描写がない日常回みたいなものです。
ちょっとした後の話への導入と思っていただければ……
というわけで、本編をどうぞ


1.5章:キヴォトスの日常
1.5-幕間①


カイザーが撤退宣言をして数日が経った頃。

 

アビドス砂漠の一角を一台のバイクが駆けていた。

 

その後ろを追うかのように何台ものトラックが砂煙を巻き上げながら追走しており、その荷台にはシートを被せられた重機らしき物が積まれていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん!奴がこっちに来てる……!」

 

「シロコ先輩、会議の途ちゅ……はい?」

 

アビドス廃校対策委員会の会議中、突然シロコが銃を手に取って立ち上がった。

 

アヤネはシロコを嗜めるように声をかけようとしたが、しかし彼女の放った言葉の意味を理解してそれを止めた。

 

彼女のその反応は今までに何度も見た物……

 

サンドクローがここにやってきたことを、いち早く嗅ぎつけた時の行動だった。

 

「ま、待ってくださいシロコ先輩!」

 

アヤネは急いで止めようとするも時すでに遅し。

 

シロコは教室の扉を勢いよく開け放って外へと飛び出していった。

 

「え……えぇっと……」

 

「……うへぇ。シロコちゃん、後でお説教だね」

 

それを見ていたユメとホシノ。

 

二人はなんとなくサンドクローがここに来た理由に感づいてはいた為、話を聞かずに飛び出していったシロコに困惑や呆れを隠せなかった。

 

ホシノが最後に説教をすることを決めて一分と経たず……

 

 

 

――ズダァァァァァァァンッ!ゴバァッ!?

 

 

 

外から特徴的な一発の銃声とシロコの悲鳴が響いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で?まさか俺に今度こそトドメをさせるとでも思ったか?

言っとくがなシロコ……病み上がりとはいえ対して怪我も無い俺に単騎で挑んで勝てるとでも思ったか?

冗談は休み休みに言え」

 

「……………。」プルプル

 

額に真っ赤な円状のアザを作りつつ、シロコは先程の醜態を思い出して羞恥により小さく震えていた。

 

校舎から勢いよく飛び出してサンドクローへと奇襲をかけたのは良かったのだが、撃った弾をすべて避けられた挙句に額へとBIG Ironによる綺麗なヘッドショットを食らった上で怯んだところを突いて胸ぐらを掴まれた。

 

気づいた時には既に手遅れであり、そのままぐるぐると振り回された挙句に近くの砂丘へと頭から勢いよく叩きつけるようにぶっ刺された。

 

その際乙女としてあるまじき醜態を色々と晒してしまったがために、シロコは更にキレてサンドクローへと襲いかかろうとした。

 

しかし怒り任せの単調な攻撃にやられるサンドクローでもなく、最終的に全く同じ醜態を晒す羽目となってしまった。

 

さすがに二回目は色んな意味で効いたらしく、顔を怒りと羞恥で真っ赤にしながらただサンドクローを睨みつけることしかできなかった。

 

「ついでに言うが、今回は俺は別にお前らと殺り合いに来たわけじゃないんだぞ?

そう睨んだところで全面的に悪いのはお前だろうが」

 

「……私の……私の下着を見て、胸まで触った。

殺す……今度こそ、お前を殺す……!」

 

「知るか、見られたくないんならスパッツとかいうのを履いてりゃ良かっただろうが。

あと胸についても知らん。

テメェが先に仕掛けてこなきゃそうはならんかっただろう?」

 

「……ぶっ殺す!」

 

再び立ち上がり、サンドクローへとつかみかかろうとするシロコ。

 

しかし、そんな彼女の肩をつかむ人物がいた。

 

「シ ロ コ ち ゃ ん ?」

 

「………ッ!?」ガクガク

 

突然のことにシロコはビクリと肩を震わせつつ、声の主の方へと顔を向けた。

 

そこにいたのは……明らかに怒っていると分かるオーラを放つホシノだった。

 

「正座」

 

「せ、先輩!でも、この変態が……」

 

「正座」

 

「……ん、はい……」

 

シロコは食い下がろうと声を上げたが、ホシノの圧に耐えきれずに屈してその場に正座した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈数分後……〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん〜〜ッ!!!ん〜〜ッ!!!!」

 

「ふふ、怖かったですね〜シロコちゃん♪」

 

ノノミに抱きしめられながら、まるで泣きわめく子供のように号泣するシロコ。

 

どうやらホシノに相当絞られたらしく、いつものクールな態度からは想像できないほどに落ち込んでいた。

 

それはもう、まるで子供をあやすかのようなノノミの抱擁を何の恥じらいも感じず受け入れられる程に。

 

「……アンタもアンタだよ、このクソ野郎。

シロコちゃんの責任はちゃんと取れ」

 

「知ったことじゃないな。襲ってきたソイツが悪い」

 

ホシノにギロリと睨まれるサンドクロー。

 

しかしそんなことはどこ吹く風か、ホシノの言葉に即座にNOを突き返した。

 

その代わりなのかサンドクローは懐から小さな袋を取り出し、未だにノノミに抱きしめられているシロコの足元へとそれを放った。

 

チャリンと音を鳴らして砂の上へと落ちた袋に気が付き、シロコは目を真っ赤に腫らしたままその袋を開けた。

 

そのなかに入っていたのは……

 

「………ッ!?これは……!」

 

シロコは袋を手の上で逆さにし、その中身を取り出した。

 

袋から出てきたのは数枚の金貨と一つの指輪。

 

金貨もそれなりに高そうな品だったが、それよりもシロコは指輪の方に目が行っていた。

 

銀で出来ているらしい指輪には大粒のルビーがはめ込まれており、それを咥えているかのように口を開けた狼のレリーフが縁取られていた。

 

そして、その狼の額には大きく引き裂かれたような傷……

 

まるでサンドクローの目の傷のような物が付いていた。

 

「まぁ曲がりなりにも、お前は俺に一発だが致命傷を食らわせた。

約束通り、お前にソレをくれてやる」

 

シロコはその指輪を唖然とした様子で手にしていた。

 

彼女の手に握られているそれは、サンドクローが特注で作ったシンボルのようなもの。

 

シロコはその昔、自分が勝てたら何かその証明となる物が欲しいとサンドクローに言ったことがあった。

 

サンドクローは最初こそなぜそんなものをと疑問に思ったが、所謂勲章やトロフィーのようなものが欲しいのかと理解して面白半分にそれを作った。

 

その内の一つがシロコの手にある指輪……ルビーを嵌めた「銀狼の指輪」であった。

 

実はすでにこの指輪の存在は噂として裏社会どころか一部の生徒の中にも流れており、それを持っているということはサンドクローに勝ったという証明になるという話になっていた。

 

そして、現在これを持っているのはシロコと他二人……

 

ホシノとヒナ、それぞれインペリアルトパーズとアメジストが嵌め込まれた指輪を所持している彼女達だけなのである。

 

ホシノは製作されてすぐに渡されていたため、シロコもその指輪の存在についてはよく知っていた。

 

なんならさっさと売って換金しようとしていた彼女をノノミと二人がかりで止めたことを、まるで昨日のことのようにシロコは覚えている。

 

「ん……夢じゃ、無い……?」

 

だからこそ、彼女にとってその指輪は特別だった。

 

それはあの憎きサンドクローに一度でも勝てたという証明であり、キヴォトスでも傭兵として最強と名高い彼に実力を認められたことを表している。

 

「まぁ、あの時俺を確実に仕留められたのはお前だけだったからな。

こんな安物のナイフで俺を刺しやがったおかげで死にはしなかったんだが」

 

そう言いつつサンドクローは布で巻かれた一本のナイフをシロコの前にかざす。

 

それはシロコがあの日サンドクローへと刺したナイフであり、同時にホシノから譲り渡された思い出のナイフであり、彼の右目を引き裂くことになった凶器でもあった。

 

そのナイフはあの日刺した時に刃毀れやひび割れが入ったのか、刀身がボロボロな上に所々赤黒い血の固まった跡がこびりついている。

 

サンドクローはそのナイフをシロコに差し出すと同時に、ダストコートの裏ポケットにダイナマイトの代わりにしまっていたらしい箱を引き抜いて手渡した。

 

「そんなナイフでまた刺されちゃたまったもんじゃない。

今度からはこれを使え」

 

「これ……もしかして……」

 

シロコはサンドクローから受け取った箱を早速開封した。

 

開けた箱に納められていたのは……サンドクローがよく使っているものと同じ、肉厚の頑丈そうなボウイナイフだった。

 

「ソイツはオーダーメイド品でな。

やろうと思えば銃弾を弾いたり斬ったりしても刃毀れしないぐらいには丈夫な一品だ。

まぁあんまり変な使い方してると壊れるから丁寧に使えよ?」

 

「……ん、分かった。」

 

シロコは箱の中からボウイナイフを取り出し身につけつつ、ズタボロのナイフをその箱にしまった。

 

「……それで?

シロコちゃんにそれを渡すためだけに来たんじゃないでしょ?」

 

ホシノはギロリと、またサンドクローへと睨みつけるような視線を向ける。

 

彼女の殺気立った雰囲気に後ろから見ていたユメが「ひぃんっ!?」と鳴いていたが、サンドクロー意に返さずホシノの方へと堂々と向き合っていた。

 

「まぁそうだな。

強いていうなら今後のアビドスについての重要な話なんだが……

ここで話すのもアレだ、会議室にでも案内してもらおうか」

 

「……チッ、仕方ない。

アヤネちゃん、コイツを案内してあげて?

おじさんはちょっとここの片付けとかをシロコちゃんとしてから行くね〜」

 

「え、えぇ……?は、はい……わかりました」

 

舌打ちをした直後にいつも通りの昼行灯な雰囲気へと戻り、ホシノはアヤネへと校舎内に案内するように指示を出した。

 

アヤネは戸惑いつつもそれを了承し、ホシノとシロコを残して他の面々と共にサンドクローを案内するよう校舎内へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……シロコちゃん、そのナイフはどうするの?」

 

「ん……これは取っておく。

ホシノ先輩に貰った物だし……アイツに一泡吹かせた証拠だから」

 

皆が先に校舎へと入って行ったあと、主にシロコの薬莢で散らかった校舎前を掃除しながらホシノはシロコへと問いかけた。

 

もうズタボロで使い物にならないが、どうやらシロコはこれを取っておくつもりらしい。

 

「……うへ、そんなにそのナイフを持っておきたいの?

おじさんもあのクソ野郎も言ったけど、そのナイフ自体は安物のなまくらだよ?

確かにアイツに一泡吹かせた物だけど……持ってても邪魔になると思うなぁ」

 

「……ん、でもやっぱり取っておく。

いつか修理して、このナイフと一緒に使う」

 

そう言いつつシロコはボウイナイフを引き抜いて彼女へと見せる。

 

今まで使っていたナイフホルダーには入らないが、ボウイナイフの箱の中に専用の鞘とバックルがセットで入っていた。

 

元々身につけていたナイフホルダーとベルトは交換で箱の中へとしまったようだが、どうやらいつの日にか修理してでもまた使いたいらしい。

 

そんな彼女に苦笑を浮かべつつ、ホシノはなんとなしに考え込んでいた。

 

あの日、シロコはサンドクローへと躊躇うことなくナイフを突き立てた。

 

しかし、サンドクローは自分に向けるような異様なほどの執着をシロコに見せていない。

 

一体、自分とシロコで何が違うのだろうか?

 

ホシノはどこか後ろ寒い感覚を感じつつ、カラカラと回収した薬莢が鳴る袋を専用のゴミ箱へと廃棄した。




いかがでしたか?
ちなみにこのナイフはまたいつの日にか出番があります。
というわけで、二本目をお楽しみに
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