元凡人による悪への道のり~裏ボス枠になるために~   作:悪なれず

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 今回は原作キャラが登場します。誰でも知っているあの方です。


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「班長と俺ゎ……ズッ友だょ……!!」

「なんだお前」

 

 突然現れた相棒枠(仮)に危機感があるんじゃないかなって。

 大丈夫、あんな小娘ただの出世の道具だから。班長が一番だから。どうか安心してほしい。だから下請け業務の報酬を増やしてくれないかな。

 

 ヒスイゾロア。お前もそう思うよな? 取りあえずお前もヨイショしとけ。

 

 後ろ足で耳を搔いているヒスイゾロアを見ながら目で訴えかけると、首を傾げて不思議そうにしていた後、またぽりぽりと掻く仕草に戻った。

 なんで頑なに隠していた激レアポケモン見せびらかしてんのかって?

 いや、実は見えてないのよ、俺とマンキー以外には。

 

 この前、ママさんとハシバミと出会って今後の予定を決め終えて拠点に帰る途中。

 タマムシの街中でヒスイゾロアが勝手にボールをこじ開けて飛び出して来た。

 

 時が止まったよね。人間って突拍子のない出来事には反応できないんだなって。

 

 慌てて転んだ振りして隠そうとしたら、誰も気付いてないでやんの。見向きすらしない。で、察したね。これ見えてないんだなって。

 多分俺がマンキーばっか連れ歩いてるから、拗ねた結果、自力でほぼ完ぺきに近い幻覚を習得したんだと思う。天才じゃったか。

 

 虎の子と言いつつ、出歩くときはボールに入れっぱだったから、これで前よりも保険が効くようになった。マンキーだけだと限度があるしね。逃走手段は多いに越したことはない。

 ちなみに、消えてすぐ、こっそりと家電販売店でビデオカメラをお試ししてみた。映像越しだと、ヒスイゾロアのいる場所はぼんやりと何かが歪んでいるように見えた。陽炎みたいな感じかな。

 機械の監視がある場所では、やはりモンボに入って貰う事になりそうだ。流石にそこまで万能じゃなかった。

 

 

「仕事は受けるのか?」

「しない。今日はヤマブキで先約があるから」

「あぁ……伝手が出来たのか」

「うん。ところで班長ってポケモントレーナーとして登録してる?」

「してるぞ。何をするにもあって損はないからな」

「ロケット団だってばれないの?」

「こっちから何人か潜り込ませてんだよ。いざとなったらすぐに消せるようにな」

 

 抜け目ないね。この世界のロケット団って無駄に優秀じゃない?

 

「そうなると、お前もその手の話をされた訳か。データベースはすぐ消せるように交渉しておけ。顔写真の偽造とかも考慮しろ。最悪、他人の空似で誤魔化せるからな」

 

 いまの俺って凄く裏社会やってる気分。どっぷり浸かってるよね。これはもう大悪党まで一直線だわ。

 

「プロみたいだね」

「堂々とロケット団やるなら、これくらいは必要なんだよ。馬鹿はどんどん捕まるからな。捕まっても、よっぽどやらかさない限り今のボスなら金ですぐに出してくれる。俺はまだ捕まってないけどな」

 

 今のボスって誰よ。サカキ様か? いつか会ってみたいね。出来るだけ対等な関係で。

 

「ところで、こんな所でくっちゃべってていいのか。先約はどうした」

「ああ、うん。そろそろ行くよ。じゃあね班長。今度班長のお子さんと奥さんに挨拶しておくからね」

「やめろ」

 

 気だるげな声で返された。まあどこにいるか知らないから挨拶も何もないんだけどね。

 

……さぁて、お仕事お仕事、っと。

 

 

 

「足痛い」

「え、大丈夫?」

 

 痛い。ひりひりする。

 運び屋としての経歴が長いハッシーは多少疲れる程度だが、年齢的にも体力的にも、俺からするとこの長距離移動はかなりキツイ。ゲームみたいに数秒で着く距離じゃないからね、ここ。普通に数時間かかるわ。

 だからここの賭博場もそう頻繁に来れない訳だし。もうちょい俺の歩幅に合わせてくれない? その厚底ブーツで俺より早いの反則だろ。

 

 ともあれクチバには辿り着いた。次は荷物を運ぶのに必要な手段がいる。要するに船。

 

「海どうする?」

「……ごめん、実はわたし、海を越えて他の場所に行ったことないんだよね。だから当てもない」

 

 は?

 じゃあ何か。ママさんはそれを知っていてこの荷物をグレンタウンに運べと言ったのか。……しょうがねーなー。

 

「港行こ。知り合いに聞いてみる」

「知り合いがいたんだね」

 

 なんだぁ、この小娘……?

 

 まあ俺の伝手と言うと、当然ながら件の売人な訳だが。基本的に夜にしか会わないから、昼はどこで何してんのかわからないんだよな。

 賭博場での伝手はちょっと難しい。一夜の関係が多いから。

 

 港はそれなりに活気づいていた。流石に海に出たことがないだけで、港そのものが珍しい訳ではないようだ。ムキムキの船乗り共が忙しなく動き回っているのを横目に、知り合いの姿を探し――

 

――あ、いた。

 

 木箱の上でぼんやりと座り込んで煙草を吹かしている例の売人だ。

 なんか、こう……あれだな、草臥れたおっさんみたいな。いやおっさんて年でもないんだけど、哀愁漂う姿をしている。

 

「はろぉー」

「ん……? ああ、お前か。珍しいな、この時間にいるの。どうしたんだ?」

 

 ねっとりボイスで先制の挨拶をしたら、草臥れた様子から一転、気さくな表情で手を上げながら挨拶をしてくれた。しかも俺と近づく前に煙草を消している。気遣いの出来る大人。俺の目の前で堂々と煙草を吹かしている班長とは大違いだ。どうしてその気遣いを商品のポケモン達に出来なかったんですか?

 

「船ない? グレンタウン行きたい」

「あー……今日は定期便も出てないなぁ。……俺の伝手で用意はしてやれるぞ」

「幾ら?」

「金は良い。実はお前のマンキーの名が少しだけ知れてきたから、もう一つ上のランクの奴らから声が掛かってな。俺の顔も売れるし、ちょっと出てみてくれないか」

「いいよ」

「即答だな」

 

 いつかは行くつもりだったし。

 毎回行く場所も人情味があって楽しいんだけど、まあそろそろ一つ上を体験してみるのもいいだろう。あとで最低限の保険だけはかけておこう。

 

「いつ行く?」

「行こうと思えばいつでも行けるぞ。あそこはロケット団がいるからな。輸入ポケモンの好で中に入れて貰える」

 

 ほーん。和解できてよかったな。

 

「ハッシー、もう行く?」

「え、いやまあ行くけど。……ロケット団と伝手があるの?」

「あるよ。この人は違うけど」

 

 近づきながらひそひそと耳元で話してくるハシバミに雑に返す。なんなら下請け業務で組織に貢献してるまである。

 ハッシーの反応的に、やっぱりロケット団ってあんまり良い印象ないんだろうな。

 

「そこの嬢ちゃんも行くんだな?」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 緊張してて草。あ、違う。仕事モードなのか。

 

「よし、じゃあ俺は船の準備してくるからちょっと待ってろ。鍵とって来なきゃいけないし」

 

 そう言って、クチバの町へと戻る売人の後姿を見送る。

 

「荷物濡れない?」

「大丈夫。防水加工してる。留め具もちゃんとしたやつ」

 

 何となしに聞いて見ると、ハシバミは見せつけるようにフラップショルダーを持ち上げた。

 なんか得意げな顔してる。自慢したかったの? 友達も仲間もいないって言ってたから見せる相手がいなかったんだな。かわいそう。

 

「海の上ってはじめてだからちょっと楽しみ」

 

 あんまいいもんでもないけどね。

 まあ、子供の憧れを真っ向から否定するのもあれだから、敢えて何も言わないけど。

 

 

 

 

――悲報、クチバからグレンタウン。四時間もかかった。

 

 移動手段は中古の漁船。安値で買ったらしいそれは、見た目とは裏腹に頑丈で乗り心地は良かった。

 ただ長時間も慣れない船の上で揺れたら、そりゃ疲労も貯まる。

 マンキーなんて普段の無表情が嘘みたいにえぅえぅえづきながら甲板で倒れてた。陸に上がる頃にはもう無表情とかじゃなくて虚無。ただ虚空ばかりを見つめていた。

 

 野生ポケモンはどうしたのかって?

 

 俺とマンキー以外に自身の存在を見えないように小細工したヒスイゾロアが、野生のポケモンが船に近づく度に、何かしらの方法で素通りさせてた。

 

 船そのものか、もしくはポケモンに直接干渉したのか。どちらにしろ、とんでもない能力だ。四時間近くぶっ通しでポケモンを寄せ付けなかったから、安全な旅路を確保したこいつは間違いなくMVPだろ。成功する度にどや顔で振り向いて来るのは少しばかり辟易するが。こいつも疲れてボールで眠ってる。

 

 ちなみに、ハシバミは四時間ずっと楽しそうに海を眺めていた。何がそんなに面白かったんだコイツは。あまり疲れた様子は見受けられない。運び屋だけあって体力があるのだろうか?

 

 おかしいな、護衛組がほぼやられてる。これ大丈夫か?

 

「……なんか変なにおいしない?」

 

 ぐいーっと伸びをして深く息を吸ったハシバミが、何かに気付いたように鼻を鳴らして、眉を顰めた。

 

「硫黄だと思うよ。すぐ近く火山地帯だし。それより売人さん、日帰り行ける?」

「おすすめはしない。どうしてもって言うなら、クチバじゃなくてマサラタウンにするといい。クチバと比べて半分もかからない。ま、大人しく泊まるのが良いと思うけどな」

「ハッシー、今日はくっ付いて寝よう。外は寒いから」

「なんで野宿前提なの?」

 

 身分証がねぇんだよ。ポケセン使えねぇんだよ。外で暖をとれないと死ぬぞ、マジで。

 

「荷物どこ宛て?」

「えーっと……あそこ」

 

 そう言って、ハシバミが指し示したのは、丸みを帯びた白い外壁の建物だった。

 彼女を先頭に、後ろから俺と、何故か売人も一緒について来る。

 看板には、えーと、なになに……ポケモンけんきゅうじょ?……あったねぇ、そんな施設。化石復元できるところだっけ? プテラが好きだった。

 

「うん? こんな時間に何か御用ですか?」

 

 ガラス製の自動ドアを通って中に入ると、早速とばかりに「研究員です」とでも言わんばかりに眼鏡と白衣を装備した男性に問いかけられた。

 

「あの、すいません。お荷物をお届けしにまいりました。……こちらです」

 

 仕事モードのハシバミは、肩掛け鞄から大きな茶封筒を取り出して研究員の男に見せる。

 

「ふむ、これは……ああ、フジ博士の物ですね。申し訳ない、本人は今ここにいないんです。直接届けに行って貰ってもよろしいでしょうか?」

「えーと……どちらへ向かえば?」

「この研究所の後ろに大きな屋敷があるんです。呼び鈴を鳴らして用件を伝えれば出てくると思います。すいません、本来は私共が直接渡せればよいのですが、あの人は自分の研究をあまり他の研究員に見せたがらないんです」

 

 くそめんどい。

 しかし、頼まれたからには仕方がない。言われた通りの場所へと向かうため、頭を下げてから研究所を後にする。

 

 ひときわ大きな屋敷はそれだけで目立つ存在だった。誰かに場所を聞く必要はなく、ましてや迷う要素もない。

 

「――どちらさまですかな?」

 

 インターホンを押すと、機械から優し気な応答が返ってきた。荷物を届けに来たことを伝えれば、少し待つように言われ、屋敷のドアがぎぃっと開いた。

 ひょっこりと顔をのぞかせたのは、まあ想像通りの優し気なご老人だ。それ相応に年を取っているのか毛髪は殆ど消え失せていた。

 

「どうも、フジです。お荷物を届けに来てくれたようで。見せて頂いても?」

「どうぞ」

 

 フジと名乗った白衣の老人は、ハシバミから手渡された茶封筒を緩慢な動きで受け取り、中を開けて紙の束を取り出して軽く目を通している

 

「ふぅむ……ああ、いや。どうもありがとう。早速研究に……と。そう言えば、荷物を届けに来てくれたと言うことは、普段はグレンタウンにおられないので?」

「えっと……はい。クチバの方から着ました」

「それはなんともご苦労な事で……泊る場所はありますかな? もしなんでしたら、お三方、一晩ここで泊って行かれては?」

 

 殺人事件の導入みたいなパターン入ったなこれ。善意なのか下心なのかわからない。

 

「――そりゃありがたい。実は立ち往生してましてね? このままだと、暗い中マサラかグレンのどっちかに行く羽目になりそうだったんですわ。是非泊まらせてください」

 

 さて、どうしたものかと悩む俺とハシバミの代わりに返事をしたのは売人だった。軽口にも思えるはきはきとした口調は、しかし、どこか清々しい青少年のような印象もあった。

 

「食事はどうされますか?」

「流石にそこまで世話になるのは忍びないんで大丈夫です。……ああ、でも、可能なら 私とこの子らの分で二部屋。用意して貰えませんか?」

「わかりました。あとで手の空いてる者に準備して貰いましょう」

「ありがとうございます。……ああ、それともうひとつ。他の方らに挨拶させていただいても? 顔見知りがおると思いますんで」

 

 ほんの一瞬、笑顔を浮かべているフジ博士の空気がぴり付いた気がした。が、何事もなかったかのように話を続ける。

 

「おや……。ご存じで?」

「ええ、世話になってます」

「そうですか……では、後ほど手が空いているかどうか聞いておきます」

「それじゃあ、しばらくしたらまた来させてください」

「わかりました。玄関のカギは開けて置きます。では、私はこれで……」

 

 にこりと微笑みかけてきたフジ博士は、そのまま後ろ手に玄関の扉を閉めて屋敷内に戻って行った。

 

「……じゃあ、どっか飯食いに行くか」

「これ大丈夫?」

 

 何事もなく食事をしに行こうといる売人に問いかける。

 

「提案自体は善意だろうさ。子供二人が夜の海に出るなんて正気の沙汰じゃないからな。普通は放って置かない。あとはまぁ、こっちが関係者だって伝えておけば、保険くらいにはなるだろう」

「何よ関係者って」

「ロケット団」

 

……ああ、思い出してきた。

 

 ここあれか、ミュウツーの実験がされてた場所か。

 この建物がまだ無事って事は、じゃあやっぱりここは過去のカントー地方なんだな。

 原作だとロケット団にいたんだっけ? それともスポンサーがロケット団なんだっけ?

 

……大丈夫かここ。実は今日がミュウツー暴走の日だったりしない? 巻き込まれるの嫌なんだけど。

 

「ま、取りあえず飯を食いに行くぞ。考えるのはその後だ。二人とも食べたい物あるか?」

「ハッシーどこにする?」

「わたしは別にどこでも……」

「それなら、適当にぶらついて探すか」

 

 

 ☆☆☆

 

 

――なんもイベント起きなかったんだが?

 

 飯食った後は何事もなく一泊させて貰って、そのまま朝を迎えた。今は帰路についてる途中の海上。最初と同じようにクチバ経由で帰るつもりだ。

 

 絶対何かが起きる雰囲気だったよね? 離島で初対面のおじいさんに泊って行けって言われるとか、ばりばりフラグ立ってたよね? こんな事ある?

 

 いや、割と真面目な今後の事柄に関する仕事の途中だから、変な強制イベントはいらないんだけどさ。なんだかなぁ。

 

「いい人だったね。フジ博士」

 

 そうね。

 夜は風呂貸してくれて、寝る前にお話もしてくれた。屋敷を出る前にはお菓子まで貰った。手持ちに毒見させたけど別に何ともないし、本当にただの善意だったようだ。

 まあメタ知識だけど、未来ではポケモン専用の孤児院とか立てたり愛護団体設立するような人だから、この頃から根っこの方では善良な爺さんではあったんだろうね。

 

 なんで裏組織と繋がってまで実験してるのかねぇ……。案外、研究者としての血が騒いで引くに引けないのかもしれないな。欲には勝てないからね。

 

「あ、見て。あのポケモンすごく大きいよ」

 

……ギャラドスじゃね?

 

 やべぇって。気付かれたら死ぬぞ俺ら。

 ヒスイゾロアもあいつだけはなんとかしろ。マンキーも、くたばってないで今だけはいつでも戦えるようにしておけ。

 帰り道に特大の地雷置いて行くのやめてくれよ……

 

 

 この後なんやかんや無事にクチバの港に着いた。平和だなぁ……。

 

 

 

 





はい。フジ老人です。知らないって? シオンタウンで笛をくれるあの人です。ロケット団の関係者と言うことになりました。

綺麗どころを期待していた方々には、大変申し訳なく思っております。主人公の立ち位置的にも、人気キャラは中々出す機会がなくて……。許して。


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