元凡人による悪への道のり~裏ボス枠になるために~ 作:悪なれず
トレーナーカードめっちゃ便利。色んな所で割引効く。
この世界の顔とも言える施設、ポケセンでも大活躍だ。
アイテムなしで回復できるし、部屋が空いてれば短期間の寝泊まりも出来る。食事だって出して貰える。前みたいに追い払われる心配もない。
ねぇ知ってる? トレーナーカードって電子マネーとしても使えるんだよ。
いや、普通に考えてとんでもない金額を現金で持ち歩けないだろう。
年代的に電子マネーが主流なのかどうかは……まあ、ポケモンって世界観が無駄にハイテクだし。公式のその辺を突っ込むとキリがない。
俺の場合は現金も残してるけど。電子マネーだけとか不安でしょうがない。箪笥貯金。
なお、ポケセンの一部設備はお金が掛かる。食事の提供とか泊まり込みもそのタイプだ。
アニメだと無料なのにね。部屋も個室か相部屋か選べないし。
それでも、部屋代と食費合わせて五百円未満なのは素晴らしくリーズナブルだと思う。部屋は綺麗だし御飯も美味しい。市民からの税金で安く回ってるんだろう。
……俺も払う側になるのか? もしかして、自然に税金として引かれているのか?
まあいいや。
今回ポケセンに来たのはマンキーの事を調べてもらうためだ。
ほら、捕まえてからそこそこ経つけど、毒餌の影響云々を知りたくて。流石に毒餌云々は省いたけど。言えねぇよ。
「――はい、どうぞ。結果は異状なし。それにしても不思議ですねぇ。診察中もずっと大人しくて、こんなに怒らないマンキーははじめてです」
どこか感心した様子のジョーイさんから、マンキーの入ったボールを受け取る。やっぱ珍しいんだな。レア個体。そんで異常はナシと。うーん……俺の感覚的に、結構な頻度でポケモンバトルしてるから、そろそろオコリザルになってくれてもいいと思うんだけど。
「そうですねぇ……それなら、ポケモンセンター以外の医療機関に通ってみるといいと思います。私たちも専門家ではありますけど、あくまで『治療する』ことがメインなんです。精密検査もその一環です。既存の怪我や病気には対処できるけど、もっと深いポケモンと言う存在そのものに関しては、研究所等で調べてもらうのがお勧めです」
要するに、病院でも出来る事と出来ないことがあるのね。餅は餅屋と。
「どこがおすすめですか?」
「近い場所だとタマムシ大学でしょうか? こちらから紹介状を書くことは出来ます。少しだけお金がかかりますけど……トレーナーカードがあるなら、割引も効きますよ」
トレーナーカードの恩恵がでかい。
班長とか売人とか会う度に気軽に見せびらかしてたけど、やっぱ凄い物なんだな。
ちなみに班長には鬱陶しがられてるけど、売人にはまだ褒めて貰える。立ち位置が近所の住む気の良い兄ちゃんみたいになってるなアイツ。
ちなみに、紹介状は割引込みで三千円だ。ちょっと痛い出費になった。
☆☆☆
でけぇ。
以上、タマムシ大学に対する感想。
キャンパス内では、育ちの良さそうな連中とその手持ちであろうポケモンが、和気藹々とやり取りをして花を咲かせてる。きっちり躾けてるから暴れる心配はないのだろう。
存在自体は知ってたんだけどね、タマムシ大学。
でも周囲に近づく事さえできなかったから、遠目から「大きな建物だなぁ」って思いながら眺めてた。タマムシシティってやっぱでけぇわ。
ちなみに、入り口前の守衛してる爺さんにトレーナーカードを見せたらなんなく通れた。
「申し訳ありません、紹介状があるとは言え、すぐには対応できかねなくて……」
で、建物内に入ってすぐ真横の、窓口にいる受付さんからの返答がこれである。
基本は予約制ということで、緊急性がなければ順番待ちになるのは必然とのこと。守衛の爺さんみたいにスムーズにはいかないな。一応、電話で問い合わせてみるが、あまり期待はしないでくれと言われた。
取りあえず、時間が掛かるから待っていて欲しいと言われたので、入り口に設置された椅子に座って待機しておく。背もたれがないクッションみたいな椅子。壁を背もたれにして座り心地をよくする。
「すー……すー……」
なんか俺以外にも座ってる奴いたわ。全然気づかなかった。
えー、黄色い着物、赤い袴、同色のカチューシャ……んー……? 年齢的には俺と同じくらい? 大学生ではない。そんで以って、頭の隅で、この少女をどこかで見たような記憶が……。
「ぅぉ」
倒れ掛かってきた少女の頭が丁度良く膝の上に乗った。
これは……ラブコメディのラッキースケベ!? まさか実在するとは……。いや別にエロい状況ではないんだけど。そう言うのはもう卒業したから。
退かすのも忍びないから適当にほっぽっといて掲示板に貼り付けられた紙を眺める。
サークルの勧誘とか、何かの注意喚起とか、あとオーキド博士が講義に来る予定日とか……え、オーキド博士くるの?
普通に会いたい。
いやオーキド博士が好きだからとかじゃなくて、会える距離にいるなら会ってみたい。一目見て置きたい。
「すー……んぅ……」
あ、女の子起きた。
「やあ、おはよう」
「んー……おはようございます……あら、どちら様でしょうか……?」
起きてしばらくぼんやりとしていた少女が、ふにゃふにゃとした寝ぼけ眼で此方の素性を問いかけてくる。
「オトギリだよ。ポケモントレーナーのオトギリ。そっちは?」
まさか平凡な日常で自己紹介する機会があるとは思わなかったよね。まあ堂々と名乗ってやるけど。覚えてくれてもいいのよ?
「あら、どうもご丁寧に。タマムシのエリカです」
エリカね、はいはい。……エリカ?……エリカ!?
ちょっと確認してみるか。
「草タイプ好き?」
「はい、とても」
「今幾つ?」
「先日十になりました」
「将来の夢はジムリーダーだったりする?」
「切磋琢磨を重ねた果てに目指したい過程ではあります」
合法かと思って年齢を聞いたけど、普通に見た目通りだった。若くない? でも本物っぽいなぁ。あと会話の所為でナンパみたいになっちゃった。
グレンタウンの時の違和感もそうだけど、やっぱり俺がいる時代って原作よりだいぶ前なのかね。……ロリータなエリカか。
「ところで先程まで私が枕にしていたものは……?」
「俺の膝」
「それは……殿方の前で恥ずかしい姿をお見せしました。申し訳ありません。是非謝罪を受け取ってくださいますか?」
「いやまあ膝くらいならいくらでも貸すし、謝罪も受け取るけど」
凄く真面目。これが上流階級と呼ばれる華族の教育なのか。
本当に金持ちかどうかは俺の推測に過ぎないけど、言動がもうお嬢様なのよ。まさしく高根の花だな。
「オトギリさんはどのような理由でこちらへ?」
「手持ちのことで相談。ポケセン行ったらここを紹介された」
「何か病気がありましたの?」
「いや、健康。ちょっと様子がおかしいだけ」
話の流れでマンキーをボールから出して見せてやる。
「あらあら……はじめまして、エリカです」
ポケモン相手でも律義に頭を下げるのは、間違いなく育ちの良さが表われてる。何故かマンキーも軽く会釈を返している。
……他の学生が手持ちを引き連れてるから大丈夫かと思ってマンキーを見せたけど、これってルール違反じゃないよね? 部外者は駄目みたいな。何か言われた時に戻せばいいか。
こんだけポケモンがいるんだから、マンキー一匹程度なら注目されることもないだろう。
「マンキーと言えば、少しのことでも暴れてしまうくらい気性が激しいと習いましたけれども……貴方のマンキーは、随分と落ち着いていらっしゃいますのねぇ」
「そう、だから来たんだ。個性なのか別の何かなのか知りたくて。エリカは?」
「私はお父様に連れられて。かのオーキド博士がいらっしゃるとのことで、少し挨拶をしておけと言われまして」
顔繋ぎかね? 早いとこ顔見せして覚えてもらおうって感じかな。
金持ちって伝手とか人脈作りとかに勤しんでるイメージあるわ。偏見だけど。
「なんでここで寝てたのさ」
「お父様が、オーキド博士に会う前に、学園長に挨拶をしてくるから待っていなさいと。そうしたら、座り心地がよくて、つい、うつらうつらと……お恥ずかしい限りです」
原作でも、ジム戦の初っ端は昼寝の時間から始まってたな。ポケモン版のび太。寝る子は育つって言うから別に良いと思うけど。……いや良くないな。場所が悪い。
「――お嬢さん、キミがエリカかね?」
ロリータなエリカとの会話に花を咲かせていると無粋な乱入者が現れた。どこの不届き者だ。
白衣。老人。白髪の角刈りヘアー。
「御父上に紹介されてな。儂ゃオーキド・ユキナリと言う。本人はちょいとばかり手が離せんから、儂が先に会いに来た。何でも将来有望なトレーナーらしいのう。そちらの少年はお友達かね?」
……オーキド博士じゃねぇか。
やべぇ。不審者とか思ったのに本物のオーキド博士だったよ。非常に不敬。態度に出さなくてよかった。
「はい、先程ご友人になっていただきました。オトギリさんです」
「そうか、それは良いことだ。友人は何人いても困ることはないからのぉ」
いや、なってないよ、友達。
「……オトギリです。ポケモンセンターで紹介されたのでタマムシに来ました」
「ほぉ、ポケモンセンター……興味深い。少し見せてくれんかね?」
紹介状をチラ見せさせると、オーキド博士がそんな事を聞いてきた。
社交辞令かもしれないが、まあ別に見られて困る物でもないため、特に反抗することもなく手渡す。
「ふむ……マンキーが……これは……なるほど……」
お医者さんもそうなんだけど、専門分野の人が声に出して相槌打ってると不安にならない?
偶にすれ違う学生が興味深そうにこっちを見るのも相まって、若干の居心地の悪さを感じる。何見とんじゃこら。見せもんちゃうぞ。
女学生ににっこにこで手を振られたから、手を振り返したらきゃっきゃとはしゃぎながらどっか行った。テンションが高い。
「キミはそこのマンキーの事を知りたくてここに来たと。確かに、どちらかと言えば科学者の分野じゃな……どれ、もしよかったら、儂に調べさせてくれんか?」
そりゃありがたい。
ポケモン学会でも有数な科学者であるオーキド博士の検査なら、信憑性も高いだろう。
この爺さんが創作物でよく見る若手の手柄を横取りする屑でもなければ。まあ、流石にそれは穿った見方をしているが。アニメだと色々な意味で有能だったよね。川柳とか。何故生きている……?
「是非」
「そうか、ではそうしよう。エリカよ、親御さんには儂から言っておくから、どうせならキミも来るといい。ひとりでは退屈だろう。少なくとも、暇を潰す程度には良いぞ。あっちの方が座り心地の良い椅子もあるし」
「あら……でしたらお願いできますか? 娘を放って置くお父様には良い薬ですわ」
ちょっと拗ねてんの草。親って大変だな。
「よしよし、では行こうか。付いて来なさい。飲み物とお菓子も出そう」
迷子になると困るから、マンキーはボールに戻しておこう。
さて、どういう結果になるかな……。
☆☆☆
――マンキーの怒ると言う行為は、溜まったエネルギーを怒りによって段階的に爆発させ、最終的にどかんと大きく溢れたエネルギーが、オコリザルに進化するために必要な引き金となると言われておってな。キミのマンキーは効率よく相手を倒す事を考えておる。天賦の才じゃな。その代わり、マンキー本来の能力が少し欠如しているかもしれないから、普通の個体より進化するのが遅れるかもしれんのぅ。あとキミのマンキーは雌じゃ。
……と言うのが、かのオーキド博士の見解であった。わかるけど、もうちょい子供向けに説明してほしいよね。
ゲームで言うと進化レベルが高く設定されてるか、もしくは貰える経験値がとんでもなく低く設定されているか。そんなところだろう。
横で見ていたエリカは酷く痛ましそうな表情をしていたが、それを聞いた俺の反応は……『そっかぁ』程度に過ぎなかった。
俺としては、進化までの過程がちょっと遅れる程度の認識である。
そこまで気長に育てるか、駄目なら次に新しい手持ちを入れるまでのツナギにでもなって貰えばいいか程度の考えだった。
別にうちのマンキーが弱い訳じゃないし。小さい方が有利な場面もある。手持ち二匹で天下とれるとも思ってないからなぁ。まあもうちょい様子見して、進化しなかったら新しい手持ちを考えよう。
どちらかと言えば、こいつの性別に衝撃を受けた。パッと見だと棒も玉も見当たらないから今一断定できなかった、毛むくじゃらだし。ゲーム画面みたいに手持ち見ただけで性別わかんねぇよ。ポケセンでも教えてくれなかったし。
これどうやって分別するの? やっぱり直接確認するしかないの? ヒスイゾロアも? ポケモンに人権はないからセクハラにならないよね?
オスとメスで必要な物の違いはあるのか……? わからん。オーキド博士に聞いておけばよかった。
まあ、追々だ。追々。それより原作キャラ二人に会えた方が嬉しい。フジ博士も原作だけどモブ寄りじゃん? あの二人はがっつりメインだから。
イベントを消化した気分だから、今日はちょっと奮発して良い物を食べよう。
寿司のパックでも買っていくか。夕方になれば割引されてるだろうし。何個か買ってみんなで分け合おう。
――ちなみに、ヒスイゾロアの性別も気になったので、帰って自分で確認したらメスだった。
肩身が狭いぜ。……痛いからガジガジ噛まないで。
はい。原作のお二人に出て頂きました。エリカ様はちょくちょく出ると思います。オーキド博士は知らないです。
マンキーは強い代わりに成長が遅い大器晩成型みたいになりました。すぐに進化すると思いますけど。
あ、更新速度が落ちます。書き溜めがなくなってしまいました。今度から週一更新になりそうです。許して。
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