元凡人による悪への道のり~裏ボス枠になるために~   作:悪なれず

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週一投稿も無理そうな件。どうして……。
やるだけやります。見捨てないで。


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 金が欲しい。

 

 トレーナーカードを買った所為で貯金の殆どを吐き出してしまった。

 現在、諸々の貯金を含めて五万円である。

 幾らホームレス孤児で光熱費が掛からないとは言え、ヒスイゾロアと言う成長期真っ只中なポケモン達の食費も馬鹿にならない。

 タマムシシティの一般市民として見られるためには身なりを整える必要もある。金が湯水のように消えていく。

 

 下請け業務、裏賭博、ハシバミの護衛。

 これら三つが俺の生活を支える主な収入源である。……収入源だった。

 

 まず班長。直属の部下を引き連れてナナシマへ出張。帰って来るまで数週間かかると言われた。

 班長とその部下たち以外だと、結構わかりやすい屑が多いから、あんまり相手したくないのよね。

 以前、試しに班長グループ以外から下請け業務を受けたら、報酬として五百円玉を渡された事がある。信用の積み重ねって大事なんだね。こっそり中指を突き立てておいた。

 

 次に売人。この時期は物流の関係で、違法性のある物品を正規の品物に紛れ込ませる作業で多忙を極めるらしい。

 あとなんか知らんが、タイミング悪く金持ち連中が裏賭博のイベントで港を貸し切りしようとしているらしく、それに間に合わせる意味合いもあって自棄になっているそうだ。

 

 最後に相棒(仮)であるハッシーことハシバミ。休業中である。以上。俺と違って馬鹿みたいに金を使う必要がないので、しばらくはのんびりと過ごせると言っていた。

 

 ちなみに、頼みの綱であるママさんも仲介人として色々な調整があるらしく、この時期はしばらく店を空けるらしい。ハシバミが言っていた。

 

――全滅である。

 

 一応、その辺のトレーナー相手に、つじぎり感覚でポケモンバトルを挑んだりもしたが……正直に言うと、割に合わない。

 ポケモントレーナーを探す。バトルの交渉をする。勝利する。

 それらを経てようやく賞金を獲得できる訳で、しかも貰える金額だって千円前後だ。

 短パン小僧とか虫取り少年に至っては三百円ぽっちしか貰えない。普通に負けたりするし。

 バタフリーのサイケこうせんがうざすぎる。許せねぇよあの羽虫。

 

 バタフリーにボコられたマンキーを治療するついでに、昼前に、ちょっとジョーイさんに「金がないんだけど」みたいな感じで雑談混じりに聞いて見た。そうしたら、色々と教えてくれた。

 

 一部のトレーナーは、トレーナーズスクールの成績によっては支度金や支援があったりするし、もっと言うなら、俺くらいの年齢なら保護者からの援助が定石だと。

 

 そうじゃないなら、うまいこと仕事を探すか、勧誘されるか、小規模な大会で賞金を獲得するか、或いは何か売ったりして賃金を稼ぐか。そもそも旅に出ないと言う結論まで提示された。

 

 そりゃそうだ。

 十代はもう大人扱いされるみたいな闇深設定がどこかで綴られてるけど、正気に戻って欲しい。十代は一応まだ保護される年齢だからね。俺は保護されてないけど。

 

 ポケセンで仕事の紹介とかないのかって? 掲示板にそれっぽい内容は記されている。

 迷子のポケモン、何々道路で大量発生したポケモンの鎮圧、みたいな。

 でもこれは、どちらかと言えばボランティアで、危険度の高い内容についてはジムバッジ必須だったりするみたいだ。

 ファンタジーで言うギルドじゃなくて、基本的にトレーナーの社交場とか地元のネットワークみたいな立ち位置にある訳なのね。地元民と仲良くしたいなら有効活用できるんじゃないかな。

 

 取りあえず、コツコツ集めて拠点に溜め込んでいる、使いきれない道具を売るのは確定。

 どこで売ろうかな……え、フレンドリィショップ? 無理なら素直に買取屋に持って行けと。

 

 直近の大会? バッジなしで参加できるやつがタマムシで開催されるって? 

 

 偉い親切だなこの人。むかし俺を追っ払った奴とは大違いだ。どんなやつなのか覚えてないけど。

 

 ポケセンの受付って見た目が似てるから覚えづらいんだよな。ちゃんと見れば違うってわかるんだけど。

 このジョーイさんの特徴……笑顔の時はわかり辛いけど、目が若干半目だな。心の中でジト目さんと呼ぼう。

 

「ジョーイさん、ベテランみたいだね。もう長いの?」

「ここに配属されてまだ一ヶ月程度ですね。基本的に受け付けは私です。頼りにしてくれてもいいんですよ?」

 

 へー。思わぬ所でよくわからない個人情報を得てしまった。じゃあ新人さんなのか。

 お前もタマムシの闇に染まらないか? でもやっぱり、出来ればずっと優しいままでいて欲しいな。癒し枠は幾らあっても足りないから。

 

 じゃあ俺、今から拠点戻って売る物を選別する作業があるから……。

 

 

☆☆☆

 

 

――翌日、フレンドリィショップに寄ったら十万円くらい稼げた。

 

 これを高いと見るか、安いと見るかは人それぞれだが、俺としてはまあ悪くない結果なんじゃないかなと。

 いつの間にか拾ってた『きんのたま』の値段が本当に五千円なのを見た時、若干感動すらした。安すぎて。

 これ純金って言ってたけど違うんじゃないの? まあ確かに大きくはないけどさ。不思議だ。

 

 ともあれ、これで当面の生活費はなんとかなる。次は、ジト目ジョーイさんが教えてくれたタマムシの大会に赴こう。

 メモには……午前から午後にかけて。場所はタマムシデパートのすぐ近くにあるバトルコート。あそこね。コートが幾つか並べられた場所だった記憶がある。

 

 当たり前だけど、街中で『目と目が合ったらポケモンバトル!』なんて蛮行は許されない。

 戦いたいならそれ相応の場所がある。具体的にはバトル専用のコートが街の至る所に設けられている。コートの広さも大小様々だ。仕組みは今一よく分かっていないが、ここだとある程度ポケモンが暴れても問題がないらしい。一般人がそこまで詳しい事を知っている訳ないじゃないか。

 

 

「どうぞ、名前を」

 

 オトギリ、っと。

 

 イベント用に設置された日除けテントで、参加条件を説明された後、自筆で名前を書いて受付をささっと済ませる。自分の名前書くのはじめてだな。

 

「うーん、字が汚いなぁ」

「あら、そんな事はありません。ほら、ここの留めも、跳ねも。線がしっかりしてる。

オトギリさんの書く字は、基本を押さえた綺麗な字だと思いますよ、私は」

 

――この声は聞き覚えがある。お前エリカだな?

 

 声のする方に顔を向ける。

 受付の方からひょっこりと顔を出して俺の書いた文字を覗き見ているのは、予想通りというべきか、ほんの数日前に会ったロリータなエリカだった。

 出番速くない? 表でトレーナーとして活動するなら、おかしいことでもないのか……? 

 

「なんでいるのさ」

「父から見解を広めなさいと。此度は、参加者としてではなく主催側です」

 

 うふふ、と笑いながら裾で口元を隠す仕草は、若干大人びた子供特有の可愛らしさがある。これは魔性の女ですわ。原作でファンが多いのも頷ける。

 だからと言って、この小娘に何か特別なあれやそれを感じる事はないが。そう言うのはね、二次元だけでいいんだよ。

 

「今回の大会は選手一人につき、手持ちは一体だけですが……オトギリさんはどなたを使うのでしょうか?」

「ネタバレする訳ないんだよね」

「あのマンキーさんですか?」

「ネタバレするのよくないと思うんだよね」

 

 利敵行為やめてください。

 俺の生活がかかってるんだからな。可愛いからって何しても許されると思うなよ。

 

「じゃあ俺、コートの状態見てくるから……」

 

 雑に切り上げてその場を去る。

 受付担当の爺さんが凄い微笑ましそうに見てくるし、横で受付するトレーナーも、こいつら何してんだって不思議そうな視線を向けてくるのが気まずい。

 

「それでですね……」

 

 いや、ついてくんなよ。

 え、なんでそんなグイグイ来るの。やめてよ。どこで好感度上がったのさ。……待てよ、このシチュエーション、知ってるぞ。

 あれだ、傲慢な金持ちが、自分に靡かないヒロインを見て『おもしれー女』とか言いながら、謎にちょっかい掛けてくるやつだ。このあと婚約者がヒロインに陰湿な嫌がらせをしてくるんだろ? 小説サイトで馬鹿みてぇに流行ってたぞ。

 

「今日誰ときたのよ?」

「送迎はあそこにいる家の者に。両親は後ほど顔を見せると申していました」

 

 あ、本当だ。ちょっと離れた場所にお姉さんがいる。ロングドレスのメイド服を身に纏っている。

 会釈してくれたから軽く返しておいた。

 

「他に誰か来てないの? フィアンセとか」

「まあ……オトギリさん。私、同世代の男の子と話す機会さえ殆どありませんのよ? フィアンセなんて、とても……」

 

 何を照れているんだこのマセガキは。

 まあいいや。小娘に気取られている場合じゃない。大会と言うには、きっと強者が立ち並んでいるのだろう。こちらも戦略を練って勝利をもぎ取りに行かなくては。

 

 

 

――優勝しちゃったんだけど。嘘だろおい。

 

 大会の内容は、わかりやすくトーナメント形式だった。

 

 渡された番号札を胸につけ、どこから持ち込んだのか大型のディスプレイに、あみだくじみたいな割り振りがされている。

 一位から三位までが賞金を貰える仕組みのようだ。一位は二十万円とアイテムを複数。そこから順位が下がる毎に十、五……。アイテムも同じように減っていく。

 

 中サイズに届かない程度のバトルコートが三つ。これをフル活用。妙に参加者が多いんだよね。ちまちまやってたら間に合わないと思う。

 そんな中、自分のポケモンを見せびらかすかの如く、ボールから出して引き連れてる奴もいて……なんか、こう、弱そう。

 ここ確か参加条件に『ジムバッジなし』があったから、みんなポケモンバトル初心者みたいな感じなのかね。

 

 で、まあ、予想通り、あんまり強くない。

 

 蹴り一発で吹っ飛んでいくコラッタ。

 引っ掻かれただけで逃げ惑うキャタピー。

 飛ぶ前に叩きのめされるピジョン。

 出てくるゴーストタイプは、はたきおとすでガオンガオンやってたら萎んで気絶してた。

 

 いや、会場の反応自体は悪くなかったから、大丈夫だとは思うのよ。

 ひな壇みたいに設置された観客席からは拍手が飛んでくるし、相手からも基本的に悪い感情は向けられなかった。

 まあ、小手先の戦いを抑えたのもあるが。流石に目潰しや関節外しなんて指示出来ねぇよ。冷えっ冷えになるわ。

 

 逆に言えば、それをしなくてもいいくらいには余裕だった。

 

 勝った後もあっさりしたもので、一位から三位までが表彰台に上がって、ひも付きメダルを首にぶら下げて、終わり。

 賞金はさっき日除けテントで貰った。20万の入った封筒と、何か色々な道具が入ったビニール袋を手渡されて、良かったねぇ、みたいな雰囲気で包まれて終わり。うーん……?

 

「オトギリさん、おめでとうございます」

 

 あ、はい。

 まだ片付けられていない日除けテントのパイプ椅子でぼんやりしていたら、ひょこひょことエリカが近づいてきて祝の言葉を述べてくれた。

 

「主催側の席で拝見させていただきました。素晴らしい戦いでしたわ」

「お、そうだな」

「あら、オトギリさんには物足りなかったようですね? まあ、この大会は、ポケモンバトルと言う行為そのものに意味がありまして」

 

 新たなトレーナーにバトルの楽しさとポケモンとの共存を~みたいな事を滾々と言われたけど、多分、要約すると青田買いだなと思った。成長の芽がありそうな若いやつに唾つけておくのが目的っぽい。エリカがそこまで理解してるかわからないけど。

 

……え、ていうか、俺は?

 

 いや、大会優勝者の俺が一番買い得じゃないの?

 誰も来ねぇんだけど。ほら、あそこの少年とか声かけられて目をキラキラさせてるんだけど。

 え、なんで? 差別? 差別されてるの?

 

「――ああ、エリカ。ここにいたのか」

 

 来たか、フィアンセ。

 恐る恐るその姿を確認する。……あれ、だいぶ年が行ってるように見えるな。二回りくらい上に見える。政略結婚かな。

 

「お父様。ご足労頂かなくてもこちらから会いに行きましたのに」

 

 フィアンセじゃなくてパパだった。後ろに撫でつけた髪とスーツ姿が実にダンディ。紳士みたいだ。

 

「やあ、キミがオトギリ君か。試合は見させてもらったよ。はじめまして、エリカの父です」

「お初にお目にかかります、オトギリです。不作法がございましたら、どうかご容赦をお願いいたします」

 

 エリカは大丈夫だけど、大人の金持ちってなると結構緊張するな。挨拶これであってる? 間違ってても良いか別に。ちゃんと伝えてるし。

 

「いやなに、大丈夫だとも。気にしていない。それより、優勝おめでとう。見事な腕前だったね。ポケモンバトルはいつからやっているんだい? 師はいるかい?」

「お褒めに預かり光栄にございます。ポケモンバトルは数ヶ月前に。師はおらず、素人ながらに試行錯誤を繰り返しました」

 

 もうやめてくれ。ボロが出る。なんでそんな楽しそうな顔してるんだこのおっさん。

 

「お父様、あまり質問を投げかけてばかりいてはオトギリさんが困ってしまいますわ」

「おっと。そうだね。申し訳ない。ついつい興奮してしまって」

 

 こいつもしかしてオタクか?

 

「……お好きですか、ポケモンバトル」

「うん? ああ、好きなんだ。生憎、僕にはその手の才能は一切なかったけれども、見るだけなら楽しめるからね。有名どころのトレーナーが戦ったビデオテープは大切に保管しているよ。そうそう、風の噂で聞いたけれども、隣のジョウトでは、まだ若いのに才能あふれるドラゴン使いのトレーナーがいるって聞いて気になっているんだけど――」

 

 オタクだなぁ。好きなことに夢中になると早口で巻くし立てるタイプのオタクだ。なんか親近感湧いてきたな。

 

「お父様。お母様はどうなされたんですか?」

「――四天王の……ん? ああ、風邪を引いて寝込んでしまってね。一緒にいようかと思ったんだけど、世話は侍女に任せるから行ってきなさいと言われたよ」

 

 エリカの口出しによって、エリカパパの会話が中断された。

 ちょこちょこ気になる話があったからまだ聞いておきたかったんだけど、十代の娘からすると、オタク全開モードの父親は見ていてきついのかもしれない。

 

「それなら、早く帰って差し上げないと。きっと寂しがっておりますよ」

「ふーむ……確かに君の言う通りかもしれないな、エリカ。それじゃあオトギリ君、機会があったらまた会おうか」

 

 先程までのオタクモードが嘘のように紳士モードに戻ったエリカパパは、先程まで一方的に話しかけていた子供と娘を置いて、さっさと行ってしまった。

 

「……申し訳ありません、オトギリさん。父の代わりに謝罪します」

「別に謝られる事でもないけど」

 

 オタクの話に付き合っただけだし。

 

「いえ、恐らく、他の方々がオトギリさんのもとに訪れなかったのはお父様の所為かと。

優勝した貴方を見て、自分が先に話しかけるから待っていてくれ、と。そのように釘を刺したのでしょう。ああ見えて、我が強い人なんです」

 

 あー、そう言う感じ? 生粋の金持ちによる傲慢の結果なのね。我が強いって言うけど、お前も大概だと思うよ。

……この親子、行動が似てるな。血の繋がりを感じる。どっちも強引に距離を詰めてくるし。

 

 まあ、いいか。思わぬ副産物で原作登場人物の身内に会ってしまったが、あんなお偉いさんに顔を会わせる機会なんて早々ないだろうし、差ほど気にする事でもないだろう。

 

「じゃあ俺、帰るから」

「ええ、私もお暇します。機会があれば、また会いましょうね」

 

 なんかもう俺に話しかけてくれそうな人もいないし、今日はこのまま帰ろう。……このメダル邪魔だな。ついでだから売っちまおう。幾らになるかな……。

 




お賃金が欲しいと言うお話でした。エリカの両親って公式で出てましたっけ。いなかった気がする。覚えてない。モウナニモワカラナイ。
あ、エリカパパの出番はまだあります。メインキャラになる可能性もあります。ご安心ください。オリキャラは積極的に出番を増やさないと消えていく定めですからね……。

次のお話も気長にお待ち頂ければ幸いです。

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