元凡人による悪への道のり~裏ボス枠になるために~   作:悪なれず

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後編です。前編を読んでいない方はそちらからお読みください。


18(後編)

 

 

 笑わない。泣かない。喜ばない。そして――怒らない。

 

 種として異端になってしまった自覚はある。けれどもそれは、悪いことではない。

 怒ると言う本能が薄れ、思考と言う余地が生まれたことにより、以前まであった無鉄砲な蛮勇は顔を出さなくなった。

 喜怒哀楽を表に出す必要はない。冷静に観察する。冷静に対処する。望まれた事を的確に熟し、今日を生きる糧を手にする。

 それが今の自分に合っている事を、マンキーは理解していた。

 そして、その冷静さが、今の戦場に役立っている事もわかっていった。

 

――いなして、誘導して、巨体を盾に逃げ回る。

 それでも、種族による圧倒的な力の差は歴然だった。

 

 飛び散ったようかいえきが皮膚を溶かし、火の粉の炎が肌を焼き、素早い挟みが切り傷をつけてくる。

 的確に狙いを定める拳は衝撃を殺しきれず、どこからともなく飛んでくるシャドーボールが意識を散漫にさせる。

 

 直接狙われている、いないに関わらず、全ての攻撃は猛烈さを極めた。

 そうして、場の全てに対して鬱陶しさを感じたバンギラスによる尻尾の一振りが、偶然そこにいたマンキーに直撃した。

 

 一瞬の浮遊感。床を何度か跳ねて壁に衝突する。ぼやける視界で戦場を見つめれば、自分以外の強者たちは、未だにそこで戦いを繰り広げている。

 

――アレはどこにいる?

 

 ふと、マンキーは自身のトレーナーであるオトギリの存在が気がかりになった。

 なるべくオトギリから距離をとるように立ち回ってはいたが、あの最前線で強烈な技が飛び交う中、細かく主人にまで気を回す余裕がなかったのだ。

 

 どこだ、どこにいる。ど……こ……

 

 顔を向けた場所。マンキーのいる場所からそう遠くない四隅の一角。既にくっきりとした視界に映るのは、後頭部を壁に押し付けるように、仰向けに倒れ伏す人間。度々オトギリと呼ばれている子供。四つ足の妹分が、今にも泣きそうな顔で心配そうに寄り添っている。

 

 赤い、赤い、血が。子供の切れた額から垂れている。閉じた瞼の上を血液が覆っていた。

 

――それは、良くない。

 

 人間と言う種は、特に子供は貧弱だ。

 眠るにしてもあそこではだめだ。あんな固い地面に寝かせたら体を痛めてしまう。傷の手当てもしなくてはいけない。病気になってしまう。汚れたままなのもよくない、せめて水浴びをさせてやる必要がある。食事だってとらせてやる必要がある。

 

――早く、早く、早く。あの子供の下へ行ってやらねばならない。

 

 このマンキーは、彼女は、異端だ。

 毒餌の影響でおかしくなってしまった。

 

 笑わない。泣かない。喜ばない。怒らない。

 

――でも、感情はある。

 

 嘗ての群れを捨て、今の群れを生かそうとする意志がある。

 自分達を率いる、そして守るべきボスの存在も把握している。

 

 冷静に、冷静に。思考できる。行動できる。だから、わかる。

 

――今の自分には何もできない。

 

 どうして?

 邪魔だからだ。あの暴れ回っている有象無象共が、自分の道を塞いでいるのだ。

 

 アイツらがいる所為で寝かしつけてやれない。

 アイツらの所為で傷の手当てをしてやれない。

 アイツらの所為で傍にいてやれない。

 

 だから、だから……排除しよう。

 あの子供が目覚めるよりも前に、倒して。叩きのめして。安全を確保してやろう。

 だから早く消えろ。いなくなれ。邪魔をするな。

 

 ああ、そうだ。久しく忘れていた。これだ、これが原動力だ。身体中を駆け巡る、血が沸き立つような力。自分たちの種が動くときに身近にあった感情。

 

 怒り。

 

 膨大な感情が、エネルギーが。卵の殻を破ろうとするかのごとく、体の芯から溢れようとしているのがわかる。

 

 今なら行ける。今ならやれる。万能感が酩酊の如く支配している。

 

 いつの間にか視線が高くなっていた。腕も、脚も。随分と太くなっている。

 手は拳を握ったような形になっていて、前よりも物を掴むのは難しそうだけど、邪魔な連中を殴り飛ばすには丁度良い形をしていた。ぐるぐると肩を回して調子を確かめる。

 

 子供を視界に入れる。

 意識はないが、遠目からでも呼吸している事はわかった。

 妹分は声を押し殺して引っ付いている。きっと見えないようにしているのだろう。

 あの妹分はやる時はやる。大丈夫、猶予はある。

 

 次いで、敵を見る。

 今まで大して気に留めなかった連中が、戦いを続けながらも、明確に此方に警戒を向けてくるのが理解できた。

 問題ない。やることは変わらない。

 

――今すぐ、そこを、退け。

 

 

☆☆☆

 

 起きたら医務室みたいな場所で寝かされてて全部終わってた件。

 まさかバンギラスの放ったげんしのちからで吹っ飛ばされるとは思わなかった。技の精密度えぐくない? 早すぎて見えなかったし。ゲームだと中途半端な技だったくせに。

 

 で、俺が気絶している間に何があったのかと言えばだ。

 

――オコリザルが大暴れしたらしい。

 

 真っ先に餌食になったのはゲンガー。影に潜もうとしていた所、即座に距離を詰めてぶん殴られてワンパンKO。

 すぐさま次の標的をウインディに変更。

 殴りまくって炎技を誘発させ、争っていたハッサムとウツボットを牽制。

 三竦みの状態を作り出し、今度はゴーリキーと睨み合っていたバンギラスに襲い掛かる。

 迎え撃つようなタックルで迎撃されて吹き飛ばされるも、受け身をとるや否やバンギラスを警戒していたゴーリキーに飛び掛かって組み付き、バンギラスに向かって投げ飛ばす。

 しかしゴーリキー、空中で体制を整えてバンギラスに対してドロップキック。見事に命中。仰け反ったバンギラスに接近していたオコリザルが追撃。殴る蹴るによる怒涛の近接攻撃。堪らず咆哮を上げるバンギラス。そのままダウン。

 

「――こんな感じだったよ、オトギリ君」

 

 そうやって試合の場面を延々と語ってくれているのは、俺をこの船に放り込んでくれた元凶ことエノキさんである。

 起きたらダンディなおっさんが泣きそうな顔で手を握りしめてくるもんだから吃驚した。

 

 なんか違うんだよな。

 その役割は別の役者、別の好きピにやって欲しいと言うか……ねぇ? 少なくとも俺はそう思うよ。

 ヒロインレース独走しようとするのやめて欲しいんだよね。

 

 ちなみにエノキさん曰く、俺の怪我は大したことなかったらしい。額の表面を軽く切った程度だと。

 

 

 で、進化したマンキー、もといオコリザル。

 医務室にはポケセンご用達である例の機械が設置されているため、死ぬような重傷でもなければ俺より起きるのは早い訳で。

 印象としては……デカくなったなぁと。以前は俺の半分程度しかなかったが、今は俺と同じくらいだ。もうちょい小さいイメージがあった。

 全体的に刺々しい体毛は、触ってみるとごわっとしているが、思ったほどの固さはない。

 

「そう言えばエノキさん。俺の順位ってどんな感じ?」

 

 早口オタクトークを鑑みるに、オコリザルが大活躍したことは理解した。しかし、じゃあ結果はどうなったのかと言うと、まだ聞かされていないのである。

 

「その……オトギリ君、君は圏外だ。反則負けらしい」

「えぇ……?」

 

 そんな馬鹿な。小細工なんてしてないぞ。そんな隙なかったし。

 

「試合中、カメラでキミの姿を上手く認識できなかったようでね。終わって負傷したポケモンやトレーナーを回収するときになって、ようやくキミをはっきりと認識できたんだ。そうなると、キミが別のポケモンを出して自分の姿を隠したんじゃないかと言う話になって、そこが反則負けに繋がったようだね」

 

……あー。わかった。そう言う事ね。

 ポケットの中に突っ込んでおいた、ヒスイゾロアの入ったボールを触って確認する。なんとなく、こいつがやったんだろうなと当たりを付けた。

 多分、俺が気絶したもんだから、能力を使って俺の姿が見えないように偽装したのだろう。それなら仕方ない。

 

「俺の近くに何かいた?」

「いいや、何も。キミと、オコリザルだけだった」

 

 それならよかった。

 ヒスイゾロアに関しては、絶対に人前に姿を曝け出すな、と。それだけは徹底して教え込んでいたのだ。最近は「案外見られても大丈夫なんじゃないかな」と思うようになっているが、用心するに越したことはない。

 だからボールをバイブレーションさせるのやめろ。怒らないからビビるな。なんかくすぐったいんだよ。

 

「ちなみに、反則負けじゃなかったら二位だったよ」

 

 あんだけオコリザルを持ち上げておいて一位じゃないのか……。

 

「一位は?」

「ゴーリキーを使っている青年だね。名前は確か……シバだったかな」

 

――ファっ!? あの半裸の変態ってシバかよ!?

 

 あ、いや、確かに原作で四天王してる時も半裸だったな。あのゴーリキーが未来のエースであるカイリキーになるんだろうか。通信交換ってどういう扱いなんだ。今度調べてみよう。

 

「それじゃあ、オトギリ君。僕はこれで帰るよ」

「早くない?」

「仕方がないんだ。まだ少しだけやり残した仕事があってね。本当は、キミと二人で試合の観戦をしたかったけれど……キミのオコリザルの勇姿が見られただけでもよしとするよ」

 

 言って、エノキさんは立ち上がった。

 

「あぁ、そうだ。エノキさん」

 

 仕切りをスライドさせてその場を去ろうとするエノキさんに声を掛けると、彼は俺の声に反応して足を止めた。

 

「貴方とは仲良くしたいから、正直に答えて欲しいんだけど……俺のこと裏切った?」

 

 少し。ほんの少しだけ、ピンと糸を張ったように、空気がひりついたような気がした。

 椅子に座っていたオコリザルが、佇むエノキさんの背をじっと見つめている。ポケットで振動していたヒスイゾロアの入ったボールが止まり、どこかぞわぞわとした気配を放っているように感じた。

 

「……家名に誓って、そんな事はしていない。疑われるのは承知の上だ。でも、どうか信じてほしい」

 

 張り詰めた空気のままに、こちらの問いかけに対して、彼は一拍呼吸をして間を空けてから、やや硬い声音でそう返答した。

 

「……そっか。呼び止めてごめんね。今回の事はあんまり気にしてないから、また誘ってくれると嬉しいな」

「勿論だよ。また誘わせてくれ。今度こそ二人で一緒に見に行こう」

 

 微かにヒリついた空気が徐々に霧散しつつある中、去り際に微笑みかけてくるエノキさんに対して、こちらも笑顔を向けて軽く手を振っておく。

 

「ふぅー……」

 

 彼がその場からいなくなった頃に、深く深く息を吸い込んで、それをゆっくりと吐き出す。

 内に溜まっていた不平不満が、呼吸と共に吐き出され、徐々に薄まって行くような気がした。

 

……自分が考える以上に、今回の事態に対して思う事があったらしい。

 

 そりゃあ、当初とは違う予定になって、しかも誘った本人はそんなもん知らずにのうのうとしているんだから、胸中面白くはない。

 八つ当たりと言われればそれまでだが、やはりまあ、前と比べて、感情のコントロールが下手になっている気がする。子供の姿だからだろうか? 

 

 とは言え、溜飲は下がった。エノキさんだけが悪い訳じゃない。調子づいていた俺も悪い。そもそも参加するな、せめて勝とうとするなと言う話になる。

 

 いや、なんか止められなくてぇ……。ムキになって追いガチャしちゃったみたいなぁ……。

 

 なんにしろ、こういう時は聞くに限る。それが嘘であれ、真であれ、自分を納得させるには必要なことだ。

 あの人とは仲良くしたい。一番最初のパトロンだし。……少々、警戒する必要も出てきたが。

 

……まあ、いいか。

 

 進化しにくいと言われたマンキーが進化してくれた。

 偶然とはいえ、きっかけを与えてくれたエノキさんは恩人に等しい。ある程度はチャラにさせて貰おう。

 仮に何かあっても、どうこう言える立場じゃないしね。……まだ。

 

……ごわごわしてんなぁ、こいつ。これはこれで悪くない触り心地だ。

 

「くぁ――」

 

 欠伸が出る。このまま眠ってしまおう。怪我の具合は……

 

 

 

☆☆☆

 

 

――実際のところ。

 

 エノキは、しっかりと。オトギリにクルーズ客船の招待状を渡すつもりであった。

 

 渡すタイミング、渡す場所、なんなら、迎えの車を出してやる手筈まで考えていた。

 

 しかし、それらはあくまで、エノキの中で完結している日程だ。件の少年とは共有されていなかった。

 

 エノキの誤算は幾つかある。

 

 一つ。彼が考えるよりも早く、オトギリがクチバシティに向かってしまったこと。

 

 二つ。部下の予定がかみ合わず、招待状そのものを渡せなかったこと。

 

 三つ。オトギリとの時間をとるために、必要以上に予定を詰め込んで多忙だったこと。

 

 これらの不運が重なり、報告、連絡、相談が上手く行かなかったのだ。

 エノキがオトギリ関連の不備を知る頃には、オトギリは既に船に乗り込む直前になっていた。

 

 だから、連絡した。

 

――自分が後で合流する事を説明し、それから、子供が乗ろうとするならば、是非とも参加させてあげて欲しい。その子は知人だから、と。ギリギリの瀬戸際であった。

 

 ここでエノキ、さらなる失態。焦りのあまり、対象となる子供……オトギリを、どの立場で船に乗せるか伝えていなかった。

 まだ裏初心者の彼は『まあ相手は子供だし大丈夫だろう』と。無意識に思い込んでしまった。確かに、それは正しい。ここが裏でなければの話だが。

 

 ここでオトギリの……正確には、彼の連れているマンキーの中途半端な知名度が牙をむく。

 護衛にマンキーを引き連れ、堂々と受付をする彼を見て、担当の従業員は目を細めて思案する。

 

――あれ、このマンキー……。

 そう言えば前まで裏賭博で珍しいマンキーが戦ってたらしいけど、近頃めっきり見なくなったって聞いたな……。こいつじゃね?

 

 ここでこの担当者に、エノキの連絡した子供の存在が、インカム越しに伝えられる。

 そして察する。目の前にいるマンキーを連れている少年のことだろうなと。実際、この船にはオトギリ以外に子供は乗船していない。

 

――まあ選手だろ。噂っぽいマンキー連れてるし。

 

 そんな安易な理由で選手として決めつけられてしまったオトギリは、そのまま選手専用の区域に案内されてしまったのである。まさかのヒューマンエラー。

 子供であり、また、服装だってお世辞にもこの場に適していると言えない。完全に見下された結果である。

 

 ここで反論の一つでもすればよかったのだが、クルーズ客船でテンションウキウキのくそボケと化したオトギリはそれに気付かず。

 案内された部屋でも、多少違和感を覚える程度で、監視カメラや盗聴器の類こそ疑ったものの、ないと知るやそのままベッドで寝入ってしまった。

 

――そうして、エノキがオトギリが選手として参加している事を知ったのは、ようやく時間をとれた最終日だった。

 面倒な書類仕事を熟し、流通ルートに変化がないかを確認する作業。

 それから、集まり。会議。名ばかりだ。うんざりする年寄共の小言や過去の栄光を聞き流し、退屈なお茶会を終わらせ、残った業務を淡々と済ませる。そこでようやく一息つける。

 

 るんるん気分で少し遅れてクルーズ客船へと向かえば、合流するはずの少年はおらず。

 特徴を口に出して問えば、選手として参加していると言うではないか。

 

 案内された大部屋は、映画館のような空間には幾人もの乗船者たちが、座り心地の良さそうな椅子に腰を落ち着かせていた。

 大型モニターを見れば、成人済みの大人に混じって、何故か頭陀袋を被った、ぽつんと佇む小柄な子供がひとり。傍らに控えたマンキーを見て、すぐさまそれがオトギリだと気が付いた。

 

 勿論、エノキは伝えた。彼は違う。本来ならば選手ではない。即刻取りやめてくれと。

 しかし、従業員は申し訳なさそうな表情こそすれど、今更やめる訳にはいかないと。ならば上に問い合わせてくれと言えば、似たような返答が戻ってくる。

 

 そうだ、ことここに置いて、自分は新参者。

 表の名前を出して駄々をごねるのは、それこそ不利になるばかり。

 匿名。だからこそ、ここは成り立っている。

 

 指名された席に着いたエノキには、改めてモニターの映像を眺める。

 

 オトギリ以外の選手は、何人かは見覚えがあった。

 最終日に選ばれた選手なだけあって、引き連れたポケモンも、種と言う括りで見れば上位の強さを誇っている。

 幾らあのマンキーにポテンシャルがあると言え、生き残るのは至難の業だろう。

 

 とはいえ、最早エノキには何もできない。モニター越しにオトギリの無事を祈るばかりだ。

 彼が無事に戻ってくるなら、後の叱責も恨みも甘んじて受け入れよう。己の些細なミスの積み重ねが、彼をあそこに立たせているのだから。

 

――けれども、ああ。もしかするならば、杞憂だったのかもしれない。

 

 土壇場のピンチは、彼の手持ちの覚醒への布石としかなり得なかった。

 マンキーから進化したオコリザルは、種族としての特徴ともいえる荒々しい、しかし、それとは真逆な冷静さのある戦い方で、場の流れを一気に支配した。

 

 観ている側の者たちでさえ、その戦いに魅入られてしまっているようだった。

 そうだろう、そうだろう。彼は類まれなるトレーナーなのだ。エノキは後方パトロン面でしたり顔で頷く。

 

 結果だけで言えば、彼は圏外だ。

 

 試合中、最後の最後まで姿の見えなかった彼は、確認こそとれなかったが、二体目を使用したと断定され、ルールに則って失格扱いとなった。

 

 しかし、だからと言って、彼のオコリザルが見せた活躍が薄れる事はない。

 最後の最後。ゴーリキーの攻撃を受けて倒されてしまったが、あの場を支配していたのはあのオコリザルだ。

 ポケモンの強さは、トレーナーの腕に繋がる。オトギリの存在に注視する者がいてもおかしくはなかった。

 

 それからエノキは、医務室に連れていかれるオトギリを心配し、様子を見に行った。

 ベッドの上で眠っているオトギリの傍らには、椅子に座っているオコリザルがいて、一瞬エノキを視界に入れたが、ふいっと眠っている主人に視線を戻した。

 しばらく無言でオトギリの体調に不安を覚えていたエノキは、オトギリが目を覚ますと、晴れやかな気持ちになった。

 

……しかし、やはり彼の怒りを買ってしまったのだろう。

 

 去り際、張り詰めた空気と共に投げかけられた質問。敵意ではないが、威圧感のある三つの視線。

 肝が冷えたと言うべきか、選択を間違えた瞬間、頭を砕かれるかもしれないと言う錯覚を得た。

 

 こちらの誠意ある回答もあり、最後は空気も軽くなり、笑顔で対応できたが……印象は悪くなってしまっただろう。

 

 一ファンとして、悪印象を持たれたままなのは、些か悲しい。出来るだけのお詫びが必要だろう。

 運営側には、意図せぬトレーナーを選出したとして、選手として参加した以外にも、見舞金を出すように説得しよう。将来有望なトレーナーへの器量を見せて欲しい。

 

 オコリザルの奮闘を見て、何人かの富裕層はトレーナーであるオトギリの存在を気にかけているはずだ。丁度いい、匿名で、パトロンやスポンサーとして引き込めるか試してみよう。自分以外の支持者が増えれば、それは力になる。少し規模の大きいファンクラブとして扱えば、周囲も突っ込んでは来ないだろう。

 

 そして、彼が試合中に姿を消した要因。恐らく、エノキの知らない他の手持ち。医務室での態度を察するに、なるべく他には知られたくないのだろう。適当な噂を流して有耶無耶にしてしまおう。

 

 

――それにしても。

 

 あの時の威圧感。

 あの場では肝が冷えたが、それが自分だけに向けられたと思うと……ファンとして、少しだけ、悪くないかもしれない。

 

 まあ、だからと言って、あまり向けられたい感情ではないが。次からは気をつけよう。

 

 

 何せ、自分はファンなのだから。

 

 いつだって、推しには喜んで欲しい。

 

 

 





『ふぇぇ、このままじゃ助けてあげられないよぉ……』
→『どけ! 私はお姉ちゃんだぞ!』

多分こんな感じ。

そろそろ進化させたかったんですよね、マンキー。

ちなみにマンキーの大きさは十歳の平均身長を目安にしました。
ピカブイだと最大一メートル四十センチとのこと。それくらいですね。デカいな。

あとエノキさんにドジっ子属性がつきました。うちの小説にいる登場人物は矢鱈と属性が盛られる傾向がある。どんどん盛るペコ。


次回の更新は未定です。なるはやで書き上げて投稿したい。

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