元凡人による悪への道のり~裏ボス枠になるために~   作:悪なれず

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 二話目です。どうぞよろしくお願いします。


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 憑依してから一週間。

 最初の三日ほどは死の淵をさ迷っていたが、今日まで死なずに生きている。

 運がいいのか、この体が頑丈なのか。水と消費期限切れのパンしか食ってないのによく生きてたな。あとノミとかダニがいなかった。不快害虫isどこ。

 ただ、コラッタに噛まれた箇所の瘡蓋はまだ剥がせない。これ傷跡ちゃんと消える? 体中に出来てるんだけど。

 案外、運命に導かれているのかもしれない。お前は悪役として大成しろ、的な。

 

 とは言え現状は悲しいもので、相変わらずゴミ漁りしかやれることがない。

 悪役なんて程遠い、社会の底辺として今日も苦汁を舐めている最中である。

 この世界は腐っている。おファックですわ。

 

 子供と言うと保護の対象だ。しかし、煌びやかなタマムシシティにいる小汚いガキは害虫と同等の扱いらしい。基本的に誰も眼中に入れようとすらしない。

 

 ただ、試しに路上で物乞いの真似をしてみたら、何人かの物好きが小銭を恵んでくれた。やったぜ。

 しかし、ずかずかとやってくるロケット団に『みかじめ料』と称して分捕られた。死ね。

 取り返そうとしたらコラッタをちらつかされた。

 おのれ腐れネズミども。ここでも俺の邪魔をするのか。いつか俺の方が上だと理解させてやるからな。

 

 不思議な事に、小汚い格好をしている連中はいるが、俺以外の浮浪者や孤児は基本的にはいない。つまりタマムシは俺の独壇場……?

 まあ実際はちゃんと理由があって、不良やちんぴら等のごろつき、ロケット団が原因だ。危険度が高すぎる。いないと言うか、気が付けばいなくなっていると言うのが正しい。

 

 要因があれなだけに、無関心や見て見ぬふりが続出。行政が介入しにくい。国家権力が弱体化。俺が保護されにくい。という役満が出来上がってしまった。誰も関わろうとしない背景にはこんな理由もあったのだ。あと俺が保護されないのは隠れるように生きてきたのも理由の一つか。この異様なまでの悪運のお陰で、良くも悪くも今日までタマムシで生き残れている。

 

 弱者お断りである。じゃあ俺は強者だな。

 

 そう言えば一昨日、路地裏で何匹かのコラッタが齧られた状態で捨てられてたな。多分、俺を襲った新参共が元々居ついていたポケモンに負けたのだろう。縄張り荒らした報いを受けたな。ざまぁ。好き勝手するからだ。

 食うもんがなかったから、吐きそうになりながら止めを刺した後、そのまま火に放り込んで焼いて食料にした。

 

 はじめて食ったけど美味かった。……嘘、あんまり美味しくなかった。臭いし固いし食えるところも少ない。役に立たねぇネズミだ。

 でも、骨と皮ばかりのガキには悪くない栄養源になってくれたと思う。やっぱ役に立つネズミだった。

 

 どっか別の場所に行くか? このガキも偶に時間かけてヤマブキに出張に行ってゴミ漁りしてたみたいだし。

 一番近い買取屋があそこだからなぁ。個人的には行っておきたい。……いや、行けばいいんじゃないか?

 どうせここにいても全てが敵な訳だし。金も分捕られる。それならロケット団の影響が薄い場所に行くべきだろう。

 

 よし、じゃあ行くか――とはならない。悲しいけどこれが現実。自衛手段がないのに町の外に出るとか自殺行為だろ。ヤマブキに行ってたこのガキって相当な命知らずだな。

 自衛手段のポケモンをくれ。ガーディとか。犬が好きなんだよ。この際コラッタでも良い。妥協する。もう食っちまったけど。

 ロケット団から分捕る……無理だな。やれることなんもないわ。しょうがねぇ。頭下げてロケット団のパシリでもするか。裏バイト。ガキでも出来る事あるだろ。

 

 

 

「仕事が欲しいっつったな? 俺の代わりに荷運びをしろ」

 

――あったわ。仕事貰ったわ。

 

 ポケモンの運び屋。

 正式に入国が認められていない別地方のポケモンだったり、他人の捕まえたポケモンを分捕って再度調教を施したり。そういうのを購入者の下へと届けるのが仕事だ。もちろん違法。

 基本的にこの街で俺のことを気に掛ける奴はいないので、運び手としてそこそこ適任がありそうだ。ただまあ実績がないため最初は屑ポケしか運べない。盗まれたら損だし。

 

「他のチンピラに襲われるかもしれないから戦えるの貸して」

「あ゛?……しょうがねぇな」

 

 駄目もとで自衛手段が欲しいと言ったらコラッタを渡された。お、こいつ色違いじゃん。攻略サイトで見たわ。薄い緑色。病気みたいな色してんな。いらねー。本能がコラッタに対して嫌悪と恐怖を抱いている。押し殺しておこう。

 

……待て。色違いってレアだろ。なんで寄越した?……まさか俺に失敗させようとしてるのか? わからん。全然わからん。……いや、わかったかも。

 これあれだ、このコラッタ持ったまま高跳びしたら殺されるパターンだ。信頼できる運び屋かどうかを試されてる。道中で死なせたらそれを理由になんかケチつけてくるんだろ。そんで以って、死んでもいいレア個体ってのはなんか訳ありだろ。やっぱネズミって疫病神だわ。クソがよ。

 

 とは言え、やいのやいの言っても仕方がないので仕事をはじめる。

 最初どこ? タマムシアパート? ああ、はいはいあそこね。ぼろっちいアパート。不燃ごみの日によく壊れたモンボが捨てられてるゴミ捨て場の場所。よく漁ってるわ。

 

 おら行くぞドブネズミ。

 マジで仕事が終わるまで死ぬんじゃねぇぞ。俺が死ぬから。

 

――そんな感じではじめたお使い。

 

 体力の少なさもあって合間合間に休憩を挟みつつも、仕事自体は上手く行った。

 

 パンイチの眼鏡。入れ墨入れたはげたデブのおっさん。けばい女。他のも合わせて十人くらいか。

 なんて言うか、こいつら社会不適合者だなぁってイメージを抱いた。話し方がおかしい奴もいた。薬でもやってんのか? ポケモン世界にあるとは思わなかったよ。

 

「おう、終わったか」

 

 で、煙草を吸っている例の団員と合流。誰にも見つからない裏路地。

 寛いでんじゃねーよ下っ端風情が。無駄に貫禄ある見た目しやがって。いぶし銀みたいで好き。

 

「取りあえずコラッタ返せ。……よし、駄賃だ」

 

 結局出番のなかったコラッタを言われた通り返却。代わりに万札を一枚手渡された。……裏バイトっつってもあんま儲かんないのな。ピンハネか? いや俺からしたら大金なんだけど。どこぞの二人組みたいにもっと儲かると思ってた。

 

「それ色違い? なんで?」

「お前が下心出して盗んでとんずら扱いたら、首んとこ噛み千切って帰って来いって命令してたんだよ。近頃は馬鹿な連中も多いからな」

 

 ガチモンじゃん。

 お前下っ端だろ? もっとお馬鹿キャラでいろよ。

 色違いとは言え、コラッタとか言う序盤雑魚がやるには役者不足だろ。

 

「話の分かりそうなのに何人か声をかけておいてやる。お前は使えそうだからな。俺以外でもそいつらから仕事を貰え。集合場所はここ。……しかしまあ、意外だな。タマムシの小汚いガキが、今になって俺らに会いに来るなんて」

「有名? 俺」

「三、四年くらい前からいるのに今更話しかけられるなんて思わないだろ」

 

 マジ? このガキそんなにここで生きてんの? それであの最期は報われないな。

 もうこの体に帰ってくるなよ。早く成仏して次の人生を謳歌して来い。幸せになれ。この体を俺の物にさせろ。いっぱいいっぱい気持ちよくなりたい。

 

「部下には軽く言い含めておく。ただ、他の班は自分で対策しろ」

「あんた偉い?」

「普通。班長」

 

 普通の子供に班長って言っても多分伝わらないよ。

 でも良かった。普通の下っ端はやっぱ馬鹿なんだな。安心したよ。ロケット団が有能な集団だと思った。やっぱりロケット団は馬鹿で間抜けでいいんだよ。

 

 まあいいや。何はともあれ、推定日給一万の単発バイトが見つかった。

 

「コンビニでパンとジュース買ってきて。これお金」

「図々しいなお前」

 

 真面なもん食わせてくれ。生ごみとかコラッタの丸焼きってあんま食いたくない。

 ゴミ袋開けて「お、これ食えんじゃね?」ってやるのが凄い惨めなんだ。こんなに悲しいガチャがあるかよ。

 

 その後なんだかんだ買って来てくれた。なんなら奢ってくれた。

 俺が偉くなったら部下にしてやろう。

 それまで死なずに過ごしたいよな、お互い。

 

「タバコ吸わせて」

「駄目」

 

 ケチ。

 

 

 

 






 相変わらず説明と独白が多いな。少しくらいはコメディなお話に出来たんでしょうかね? クスッとしてもらえたら嬉しいな。

主人公:死の淵から舞い戻ってきた。ハードモードなのに適応が高すぎる。


班長:ロケット団の班長。上と下からせっつかれる可哀想な中級管理職。色違いコラッタでの試し行為によって主人公を恐怖に陥れた。渋めのおっさん。

色違いコラッタ:暫定班長の手持ち。こわい。

新参者のコラッタ:調子に乗った代償は大きかった。何匹か既存のポケモン達に洗礼を受け、内一匹は主人公の栄養源へとなり果てた。不味かったらしい。



 こんなお話でした。ほんの少し書き溜めがあるので、そこまではまぁ気が向いたタイミングで投稿出来たらなと思います。

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