元凡人による悪への道のり~裏ボス枠になるために~   作:悪なれず

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 暑い。


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――オーキド博士が企画を通してくれない。

 

 初回の顔合わせ以降、週1程度のディベートは、毎回決着がつかない。実質こちらの全敗である。

 

 ただし、多少の収穫もあり、最近は博士の研究結果やスケッチを見せて貰ったり、別地方の論文や資料を取り寄せてもらう約束をしたり、当初の予定とは多少違うが色々と融通を利かせてもらってはいる。孫を甘えさせてくれる祖父って感じ。

 

 ポケモンリーグのお偉いさんと話をしたいと言ったら、俺の企画が通れば会談の手筈くらいは整えてくれると匂わせもしていた。

 じゃあ早く承諾しろ。首を縦に振れ。いつまでも足止めをするな。英才教育なんていらないから。

 

 まあ、そっちは別方面で何とかできるけど。オーキド博士の力添えも、無理なら無理で表の権威を諦めて裏から手を回してなんとかしよう。

 オーキド博士がオンリーワンだったとしても、権力者というのは星の数ほどいるのである。

 

 そこそこの期間が経過している事もあって、オーキド博士以外のことでも、色々と目まぐるしいあれこれが起こっている。

 

 最たる例を挙げるなら、サカキさんに起こったとある事件だろう。

 あれはタマひゅんモノでしたね……。

 

 まさか足を引っかけてスッ転んだ風呂桶が股間に直撃するとは。何事もなかったかのように立ち上がるサカキさんには是非とも敬意を表したい。顔が少しひくひくしてたけど。

 戻ってかのぴっぴに慰めて貰ったりしたんだろうか。悪の組織のボスなんだから愛人くらいはいるだろう。きっと献身的に対応してくれたはずだ、氷嚢を当てたりとか。

 とりあえず、生殖機能が死んでいなければ問題はない。じゃないと金銀のライバルが不在になってしまう。俺の行動で原作が多少ズレるのは仕方ないとしても、こんなくだらない事で未来が変わったら居た堪れなくなる。

 

 歯痒い現状が続いてはいるが、ディベートでもなんでも、嫌な事があったらスロットでパチカスになってストレス発散である。ギリギリ勝ててるからまだ娯楽として楽しめる。脳汁どぱー。

 現状の娯楽が、スロット、レスバ、ポケモンバトルが主流。物事が上手く進まない時のストレス発散がダメ人間みたいだ。博打と煽り行為。酒と女は肉体年齢的にまだ早い。

 

……10は超えてるはずだが、未だ性欲は湧かず。……はじまる前から枯れてるなんてことはないよね? 別に将来子供を作るつもりはないけど、使いものにならなかったら悲しみを背負う覚悟が必要になる。まあ、女相手にドキドキできるから大丈夫か。偶に現実逃避でしょうもない事を考えてしまう。悪い癖だ。

 

 閑話休題。

 

 最近のタマムシは比較的落ち着いている。グレンタウンで起きた火災事件の影響でピリついていたロケット団が、徐々に収まりを見せつつあるのだ。まあ、無くなった訳じゃないけど、これくらい大人しければないのと一緒だ。……あれ、これもしかして、ミュウツーの所在地ってハナダの洞窟になったのか? もしそうなら、未来知識を出し渋ってたら終わった事になるんだが。勿体ない事したなぁ。……ちょっと知ってそうな奴に聞いてみるか。

 

「――どすこい!」

「ぐぉっ」

 

 一本! 打ちとったり!

 

 

 

 

 

「――死にてぇのかクソガキ」

 

 げんこつしなくても……。

 腰に向かってぶちかまししただけじゃないか。懐いた犬猫が喜んで飛びつくのと同じノリだ。愛情を持って受け止めて欲しい。

 

「久しぶり。ナナシマの出張長くない?」

「面倒ごとが多くてな。新人の教育もあって、無駄に伸びちまった」

 

 場所は前までよく待ち合わせにしていた某路地裏。子供の前でも煙草を吹かすロケット団所属の彼こそ、我らが班長その人である。名前は知らない。役職で呼んでる。

 最近、ちょくちょくこの人の部下を見かけるようになったから、本人も帰って来てるんじゃないかなと思ってはいたが、久しぶりに見たら嬉しくてついやっちゃったよね。

 班長とオトギリゎ……ズッ友だょ……!!

 

「てっきり他の団員に何かされたと思って心配したよ」

「そいうのは、先に申請通してこっちから対処する」

 

 サラリーマンみたいな台詞だ。実際やりそうなんだよな、この人。俺も初対面は下手打ったら首掻き切られそうな状況だったし。

 

「ナナシマどうだった?」

「場所は悪くない。ただ、ごろつきのスクーターが鬱陶しかったな」

「ドンパチとかした?」

「いや、してない。妙に馴れ馴れしい奴が混ざってたりしたな。田舎モンが都会のちょい悪に憧れてるみたいなノリだろ」

「ほーん……。実際さ、何してたの? ブートキャンプ?」

「まあ、そんな感じだ。邪魔な密猟グループに手を出してた」

「同業者潰してたんだ」

「話し合いで解決してきたんだよ。善行だぞ」

 

 そういう体でいくのね。実際はロケット団の方が大規模に悪い事してんのに。

 

「なんで戻って来たのさ」

「あー……結構前に穴埋めで呼び戻されてな。引継ぎして直属の部下だけ連れて帰ってきた」

「だったら、帰ってきたことだけでも知らせてくれればいいのに」

「有休とって家族サービスしてた」

 

 あ、はい。

 

「出張中は会えなかったの?」

「いや、週に何度か嫁がチビを連れて会いに来てた。大人しくしろっつたんだがな。問答無用だったわ」

 

 奥さん強いっすね。惚気やがって。

 班長を見ていると、ロケット団って下手なブラック企業よりマシなんじゃないかと思ってしまう。

 所属している団員と活動内容が屑とカスのオンパレードだが、ちゃんと部下を気遣って有休とらせてくれてるし。福利厚生がしっかりしてる企業は長生きしそうなイメージがある。

 

 まあ、未来では小童に滅ぼされて事業畳むんですけどね、この組織。……はみ出し者たちの受け皿がなくなったらどうなるんだろうか。

 

 終わり、ちゃんちゃん――で何もかも済むはずないのだが。現実はゲームと違ってその後があるのだ。まあ世界が世紀末になる頃には俺もう死んでるから関係ないけど。

 

「そいや穴埋めってどんなん? グレンの火災関連?」

「言わねぇよ。何でもかんでも喋れないんだよ」

「じゃあ勝手に想像するわ。そこで聞いててよ」

 

 流石に人の妄想に口出しはしないだろう。止める気配がないため、好きにしろという解釈をする。

 

「グレンタウンが燃えました。研究してた何かが逃げました。探してます。おわり」

「早いな」

「だらだら説明してもしょうがないし」

「せめてそこに至った経緯を説明しろ」

 

 いざ説明しろと言われると困る。原作知識で未来を知ってるからじゃ駄目かな。駄目だよな。でっちあげるか。

 

「前にグレンタウンに行ったことあるんだよね。研究所の近くにある大きなお屋敷。あそこに用事があって、その時にフジ博士に会ってるのよ。

で、あそこってロケット団が出入りしてるじゃない。なんもなきゃいる訳ないし、じゃあロケット団主導で何かしらの研究してんだろうなって。

そんで今回の火災事件以降ロケット団がピリついてるし、あー、多分失敗したんだろうなって。作ったモノが逃げたとか」

 

 ひとりじゃなくて付添人としてだったけど、同行者のことは伏せておく。多分そこまで細かく調べない。興味もないだろう。

 状況を繋ぎ合わせたツギハギだらけの説明だが、取っ掛かりになるならそれでいい。

 

「……ガキの妄想だな」

「妄想って楽しいんだよ」

 

 授業受けてるときに襲撃してきたテロリストを撃退する妄想とか。まあ今世の俺は学校行ったことないけど。

 

「妄想の続きだけど。もし逃げるならどこに向かうかだよね。班長的にはどこだと思う?」

「さぁな。同じ場所にはいねぇだろ」

「じゃあまだ逃亡中っていう仮定で話すと、多分どんだけ頑張っても途中で捕まえるのは無理だよね。だって火事起こして逃げ出せるくらい強いんだし」

 

 実際、戦闘特化のミュウツーを一般のロケット団がどうこうするのは無理じゃなかろうか。

 毒とか格闘ばっかり使ってるし。タイプ相性が悪いよ、タイプ相性。悪タイプはリメイク版でデルビル使う奴がいるくらいだっけ? あとはかみつくみたいな悪タイプの技。

 

「最終的にどこに行くか……多分、ある程度は強いポケモンがいる場所かな。本土にいるなら……どこだろう。前に図書館で見た危険区域の場所だと、ハナダシティの洞窟とか怪しいよね。立ち入り禁止されるくらい野生のポケモンが強いし。番犬にはぴったりだよ」

「……ナナシマに逃げ込んでたらどうする」

「本当に行くならお手上げだけど、流石にロケット団も追い込み魚みたくとおせんぼするんじゃないかな。逃げ回ってるなら真正面からやり合う頻度も少ないだろうし。ナナシマ行くなら班長みたいに団員を呼び戻す必要ないでしょ」

 

 実物のミュウツーを見た訳ではないのでどれ程の危険性があるかはわからないが、流石に一つの組織を相手どれるほどの余裕はないだろう。

 戦いは数であり、数は力である。一騎当千が出来る化け物なんて、そうそう現れやしない。……いや、ミュウツーでも無理だろ。補給地点とかもないだろうし。

 

「どうよ? 名探偵じゃない? 今の推理使って昇進してくれてもいいよ」

 

 真実はいつもひとつ。じっちゃんの名に懸けて。名探偵オトギリ。

 毎週土曜日の午後19時に放送の予定は未定。

 推理パート疲れた。

 

 

「話が長い。良くて二流。酒の肴か何かで使えるかもな」

 

 説明しろって言うから詳細に伝えたのに、いざ説明したら長いとか。我が儘だなこの人。

 この反応だと、ロケット団がミュウツーの所在をどこまで把握してるかわからないな。腐っても組織に属する人間。子供相手でもそこまで教えてくれないか。

 

「ポケモンの仕入れって輸入以外だと団員が自力で捕まえるの?」

「あ? まあ、そうだな。事前に場所を調べて、どっか移動する前にクスリ吸わせて捕獲だ」

「勝てないくらいめっちゃ強くてレアなポケモンは?」

「大型の機械と、腕の立つ団員を状況に合わせてぶつける」

「じゃあ今回のもそれで行くんだ」

「おう」

「ボロが出たね」

「まあな」

 

 ワザとだった。まあ具体的に何を捕まえに行くのか口にしてないから、ギリギリセーフの判定か。

 おっさんが若い世代を弄って遊ぶノリだろうな。嫌われるから気をつけた方がいいよ。未来だとセクハラ判定されるし。

 

「……ここいらで戻らせてもらうぞ」

「おつかれっしたー。今日はゆっくり休んでくださーい」

「馬鹿が。今から仕事の続きなんだよ、俺は」

「何すんの?」

「打合せ。じゃあな」

 

 非常にストイック。別れはいつも唐突に。去り行く薄情な背中にさよならバイバイ。

 久しぶりに班長と話してたらスッキリした。友達と駄弁ってストレスを発散したような気分だ。

 色々あって知り合いは増えたけど、なんだかんだ班長は安定してると思う。程よくひりついてる感じがして好きだ。定期的に悪い波動を浴びないと鈍っちゃうからね。

 

……なんか腹減ったな。

 

 仄暗い話をした所為か、胃が空腹を訴えている。

 時刻は昼過ぎ。食べ損ねた昼飯を調達するため、比較的近くにあるタマムシデパートへ向かう。

 年代的にはまだコンビニも安いのだが、ラインナップに溢れるデパートで買った方が何かとお得感がある。

 

 割引がされた惣菜パンをカゴにぶち込んだ後、エレベーターで屋上へと上がる。

 風が気持ちいい。天気がいい。絶好の外食日和だ。

 

 誰も座っていない、ペンキの乾いた安っぽい白のテーブルを選び、買ったパンを置き、椅子を引いて腰を落ち着かせる。ついでにオコリザルを召喚して空いた席に座らせる。ひとりで食事をすると話しかけられそうになるかもしれないから、その対策だ。ヒスイゾロアはなんか気が付いたらボールから出て足元で丸まってた。誰も気にしていないため、きっと能力で姿を隠しているのだろう。偉い。サラミ上げる。

 

 オコリザルにメロンパン。俺はカレーパン。足元のヒスイゾロアに饅頭。もそもそと食べながら何気なく屋上を見渡す。人の数はマチマチといったところか。

 屋上に併設されたショボい遊園地から聞こえてくる楽し気な子供の声が非常にやかま……。何を話しているのだろうか。

 

「ママー。きょうのごはんなにー?」

「今日はねー。ハンバーグよー」

「わーい」

 

 微笑ましい会話である。家族愛って素晴らしいね。今世の俺に親がいたら、こんなやりとりをしていたのかもしれない。一抹の寂しさを覚えてしまう。

 

……カレーパン食ったばっかなのに、ハンバーグ食いたくなってきた。

 

 

☆☆☆

 

「ただいまー……」

「おかえりー。今日はハンバーグよー」

「なんでうちにいるの?」

「お風呂沸いてるよ。あと洗濯物取り込んでおいたから畳んでおいてね」

「ありがとう。でも質問には答えて」

「ママさんから予備の鍵を預かってるから」

 

 ハシバミに何かがあった時のためにと、以前祝って貰った誕生日の日からずっと預かっているのだ。そう、あの日である。

 勿論、ママさんからの承諾は頂いており、これはつまり、保護者公認なのだ。なので勝手にお邪魔しても問題ないのである。冷蔵庫にジュースとか入れちゃうぜ。げへへへへ。

 

「あ、このクソみてぇなデザインのエプロン借りてるよ」

「やめて、酷いこと言わないで」

 

 明るいポップな布地。口も鼻もない、人間の瞳だけが浮かぶ顔。

 愛くるしさを捨て去りホラー路線に突っ切った、中指を立てたピカチュウもどきの絵が描かれている、そんなエプロンだ。

 パチモンである。デザインした奴も売る奴もあれだけど、なんでこれを買おうと思ったんだ?

 無駄に凝ったデザインしやがって。マスコットだからって何しても許されると思うなよ。ポリゴンを解放しろ。

 

「……かわいくない?」

「お、そうだな」

 

 実は今世で真面に包丁を握ってキッチンに立つのは今回が初めてだったりする。なんなら生肉を買ったのもはじめてかもしれない。たぶん。

 まあ、前世ではちょこちょこ独身男飯を作っていたから、やたら凝ったものでもない限り、そう妙なものが出来上がる事はないだろう。

 任せろ、俺流三ツ星キッチンを見せてやる。

 

「――いざっ!」

 

 

 

 

 

「なに作ったの?」

「ハンバーグ」

「小さくない?」

「ミニハンバーグ」

「まん丸だね」

 

 お互いの平皿に乗った山盛りてんこ盛りの肉団子……ミニハンバーグ定食を見ながら、ハシバミが容赦ない感想を口にする。

 

 いや、サイズをね、どうしようかと。

 大きくしてロマンをとるか、中くらいにして適度な食べ応えを選ぶか、それから、どんな味付けにしようかなとか。

 あれこあれ考えていたら、なんやかんやあってミニサイズになってしまった。

 

「いただきます……あ、美味しい」

 

 せやろ? 見た目はハンバーグと言うより肉団子だが、味はいいのだ。

 こういう系ってあんま見た目気にしないんだよね。フライパンのまま炒めた焼きそばを食う感覚。

 

 チーズ入れたり野菜切り刻んだりで無駄に工夫を凝らして楽しんでたら、ラインナップが豊富になった。ロシアンルーレットミニハンバーグ。多種多様な味を楽しんで欲しい。

 

 当然ながら、おかしな素材は入っていない。ちゃんと食べられる物で統一している。どうせなら最後まで美味しく頂きたいので。

 

「ぅ、辛い……。これなに?」

「クラボの実」

 

 無言で食べかけを俺の茶碗に乗せるんじゃない。しょうがないから処理してやる。

 

「間接キスですな。デュフフ」

「冷めるよ」

 

 擦れ過ぎじゃない?

 あ、でもちょっと目が泳いでる。今になって恥ずかしくなったな?

 まあ俺は気にしないで食べるけど。思ってたより辛さがダイレクトに来るな、これ。

 

 なお、ミニハンバーグの総評として、好評だったものの、結局全部食べ切れなかったため、手を付けていない物はタッパーに詰めて冷蔵庫に。食べかけは我が家の手持ちの腹に納まった。

 オコリザルは兎も角、ヒスイゾロアが強請ってたから……。

 

 美味かったか? そうか、良かったな。

 

 

 

 

 

――余談だが。

 

「……あのパチモンクソエプロン、調べたら廃盤でプレミアム化してんだけど。……これ売らない?」

「売らない」

 

 後日、こんなやり取りがあったとかなかったとか。




ぴかちゅうです。
ぴかちゅうはいます。
ぴかちゅうはいました。
よろしくおねがいします。
ぴかちゅうでした。
かしこ。

この小説、元々ノリと勢いで書いてる小説だから、着地点は思いついてるけど、それ以外が割と行き当たりばったりなんですよね。だから日常回も挟まると思います。早く進めたいんですけどね。

読了ありがとうございました。

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