元凡人による悪への道のり~裏ボス枠になるために~ 作:悪なれず
なんか色々増えてるなと思ったら急に日間でランキング入りしててビックリしました。
素直に嬉しいです。ありがとうございます。
それなりレベルの底辺生活を経験してきた記憶があるため、体の記憶に引っ張られている影響もあって、最低限の衣食住が揃っていれば十二分に幸福を感じられる人間を自負している。
ただ、なまじ前世の記憶も残っている所為で、普段の生活にギャップを覚えることも多々ある。
ゴミ漁り、野良生活、世間の目から隠れる……うっ、頭が。
幸いと言うべきか、前世で程々な社会の荒波に揉まれ、今世の過酷な浮浪者生活を生き抜いた力と実績があり、それぞれの長所を生かした現実逃避でどうとでもなった。
そんな俺だが、生活水準を上げることに躊躇はない。確かに衣食住があれば幸せになれるけど、それ以上を求めるのは人間の性というもの。
具体的には携帯を購入した。懐かしのガラケータイプ。
凄いんだぜ、これがあれば遠くにいても会話ができるんだ。文明の利器って素晴らしい。
ついでにネット関連の設備も整えておいた。
配線自体は元からあのおんぼろアパートにも引き込まれていたらしく、あとは固定電話を買ってなんやかんや手続きをしたらその日の内に使えるようになった。
家でメールチェックできないの地味に不便だったのよね。
ママさんとハシバミの所で厄介になるとき以外は、毎回セキュリティリスクにびくびく怯えながらポケセンメインでどっかのフリーWi-Fiを数分だけ拝借していた。今考えても危機感が無さ過ぎて笑えて来る。
まあ定期的にママさんに確認して貰ってたし、裏ネットを使う時は身バレ防止で色々小細工をしていたから今の今まで問題は起きていない。多分。
余談ではあるが、電話が使えるようになった際、割と早い段階でハシバミ宅にも掛けた。電話番号は以前聞き出しておいたものだ。
以下、会話の一部を抜粋。
「ハロー。俺オトギリ。いま貴方の部屋にいるの。あと深爪してるの」
『え……。いないじゃん。いたずら電話なら切るよ』
フローリングの床を走る音が聞こえましたね。
冗談のつもりだったんだけど、本当に俺が部屋にいるかどうか確認しに行くのおかしくない?
なんだろ、オトギリならやりかねないとか思われてんのかな。合鍵を使って上がり込みはするけれど、他所様の家の寝室に無断で侵入する一線はまだ超えてないつもりなんだが。
この時は適当に雑談を交わして、近いうちに遊びに行く約束を取り付けて通話終了。
ハシバミ以外の知り合いや企画の件で細々とした電話を掛けていたりと、我が家にやってきた通信機器には大変頑張って貰っている。
――あとなんか知らんけど、ケトルや電子レンジを筆頭に、我が家に便利な道具が続々と揃っている。買ってないのに。
……嘘です。本当は原因も解明している。エリカである。……エリカである。
前回のお説教から何かを学んだらしいエリカが、「今なんか暇だなー」ってタイミングで電話をかけてきて、手土産持参で正々堂々と真正面から会いに来るようになった。
会いに来る頻度や滞在時間こそ短いが、土産を見せてくる際に「お父様と一緒に選びました」と予防線を張って渡してくるのだ。余計な知恵をつけおってからに。
エノキさんもエノキさんで「仲の良い友人の新生活を応援する」という善意からの気遣いなため断り辛い。都度調べているが、盗聴器やカメラなんかも仕込まれてなかった。
いやでも、カステラとか炊飯器なんかは理解できるし、洗濯板とかもギリ納得できるけど、縄跳びやらハンドグリップはいらんやろ。
貰っておいてなんだが、買い物のチョイスもうちょいどうにかならんのか。褒めて欲しそうにすり寄ってくんのやめろ。
こいつのコレ、恋愛感情じゃなくて、距離感のバグった友愛なんだぜ? お前との友情、重いよ。誰かこいつに適切な人付き合いを教えてやってくれ。
エリカの手持ちにいるナゾノクサが俺を慰めてくれるのが救いだ。お前……俺の手持ちにならないか?
止めようにもねぇ……なんかあの手この手で躱されるから。強引で困っちゃうわ。
治安を理由に遠ざけようにも、実はこのアパートまでの治安ってあんまり悪くないのよね。社会のはみ出し者たちはいるけど、比較的大人しくて絡んでくることもない。
お付きの人が同伴且つ車で送迎してるみたいだし、その辺はあまり心配していないのだ。
仕方がないので、あまり高い物は買ってくるな、来る前は必ず事前に連絡しろ、あと来る頻度も下げろと伝えて妥協する。
ふにゃりと緩い笑みで承諾してくれた。その笑い方ちょっと好き。可愛い。お前のことはそんなに好きじゃないけど。
あ、原作キャラとしては好きだよ。創作物と現実を分けて考えてるだけだから。
家族ぐるみで貢がれるの気まずいわ。今度何か返礼しなきゃいけない。田舎の近所付き合いじゃないんだからさぁ……。
あとあんまり来られると、ヒスイゾロアにこそこそさせなきゃいけないからめんどいのよ。折角家で寛いでんのに。最近は寝てばっかりだけどな、こいつ。お前、調子悪いんか? 別にそうでもない? あ、そう。
いい加減、こいつに大手を振って表を歩かせたい。
本当は自分でなんとかしたいけど、これに関しては俺の我儘なので、駄目なら重鎮ジジババコンビの力を借りることを要検討。
……まあ、なんだ。
見ての通り、私生活の方は割と順風満帆だ。
バトルテント計画の方も、これといった障害が起きなければ何れは完成する事だろう。俺はただ静かに待っていればいい。
その間は、当然暇になる。だから俺は思った。
――せや、悪い事したろ!
裏社会で大成したい人間としては、いつまでも平穏なぬるま湯に浸かり過ぎるのはよろしくないのである。
定期的に悪いことしないと鈍っちゃうからね。何かしら悪っぽいことをしてステップアップを目指すのだ。
こういうのはね、思い立ったが吉日のロマンなのよ。表立ってやらなきゃばれない。そしてバレなきゃ犯罪じゃない。
賢い。完璧な理論だ。これはレイブンクローですね。脳内組分け帽子もそう言ってくれるはず。
『ふぅむ――。アズカバンっ!』
なにっ。
☆☆☆
タマムシには幾つも穴場がある。
この場合の穴場と言うのは、表から見え辛かったり、人気の少ない暗がりや空き地、廃墟と化した施設の事だ。決して花火や夜景が綺麗に見える隠れスポットではない。今から行く場所もそんな感じだ。
夜間。
組分け帽子の唐突な裏切りによって、寮ではなく監獄に収容されてしまった事に傷心しつつ、向かう先は潰れた町工場が資材置き場として利用していた空き地だ。
幅の狭くてやや入り組んだ道は、バイクや車、場合によっては自転車ですら通り辛い。
近辺に自販機やベンチがなく、日中ですら薄暗く、壊れた街灯がそのままの所為で夜ともなればさらに視野が悪くなるのは必然だった。
ロケット団は拠点が離れているからここには来ないし、不良や暴走族は利便性で近寄らない。明るい内にほんの少し子供が立ち寄るかもしれないが、何もないから飽きてすぐに帰る。
治安云々じゃなくて、立地が悪い。その一言に尽きる。
誰も見向きのしない、そもそも知らない、知ってても余程の事がない限り足を運ばない。
地元民ご用達にもなれない、哀れな場所だ。
――俺が目を付けるまではな!
距離を離して両端に置いたライトを中央に向けて光源を確保。
光の照らされた簡易的なフィールドには、二匹のコラッタが相対している。
それをぐるりと取り囲むのは、まだ年若い少年少女。
「――はじめ!」
レフェリーが掛け声を上げるや否や、向かい合っていたコラッタ達がお互いに体当たりで攻撃を繰り出した。
――要するに、違法賭博に手を出そうと思ったのだ。
ただし主催側で。
以前まではクチバまで移動して身分を隠した上で違法賭博に参加していたのが、最近はめっきりやっておらず、どうせなら参加者ではなく主催者側に回りたいなと思い、こうして人気の少ない場所をリサーチして開催しているのである。
本当はその手の隠れ家にでも行って場所を借りようと思ったんだけどね。
観戦と賭け事なら見逃されても、主催しようとすると未成年お断りが多いんだわ。警察に隠れてコソコソ活動してる癖に偽善者ぶりやがって。
だから思った。
じゃあ自分が主催で元締やって、どうせならあっちが手を出さない客層を見繕えばいいじゃん――と。
通貨を金と交換させて、その独自通貨で商品を購入する。システム的にはカジノとかパチンコと一緒よな。
で、客層は、法的にはまだ守られている少年少女。つまり未成年対象の違法賭博。
素業の悪い不良から、ちょっと放置され気味の子供など、多種多様な子供たちを数日掛けて勧誘し、日頃のストレスをここで発散させる。
そう、ここは大人たちの目を掻い潜って出来た子供の国であり、夢の国なのだ。
お菓子や化粧品の中に、さり気なく高めの価格設定で酒と煙草を景品として混ぜたのは英断だと思う。
お前らこう言うのに憧れてるんだろ? これが一足先に味わえる背徳感だぜ。
大人がやってるけど子供はやっちゃ駄目な悪いことを経験できるって、背伸びしたい子供からすると結構な麻薬なんだよね。特別な価値がある。
立地のよろしくないこの場所も、秘密の隠れ家としては一級品だ。ちょっと不便な所にロマンがある。売り方の問題なのよ。
子供だから悪事がばれてもイキリキッズのお遊びで済むしね。真っ先に補導されるのは、年齢的に俺以外だろう。頭陀袋で顔を隠してるから身バレ対策もばっちり。
ぱっと見仕切ってるのはあのレフェリーだから、いざとなったら罪を全部おっ被せてケツまくって逃げればオッケー。
あぁ~~道徳と倫理観を狂わせるの楽しいんじゃぁ~~。
ちなみに儲けはあんまり出ない。
小道具の仕入れ、レフェリーの人件費で分配したら雀の涙ほどしか残らない。子供の小遣いなんてたかが知れてる。
でも、経験とか雰囲気を学ぶなら、お遊び染みた内容でも十分だと思ってる。
やり過ぎると目を付けられたり口止め料金が掛かったりするからね。今はノウハウを蓄積する方が大事。客層を増やして規模を大きくするのは未来でのお話だ。
余裕が出来たら、今度は家事育児に気疲れした母親とか主婦とか狙おうかな。やるかどうか知らんけど。予定は未定。
「――勝者、東のコラッタ!」
勝敗が決まったらしい。
買った方は「わぁ」と喜び、負けた方が悪態を吐きながら地面を蹴る。縮小しててもギャンブルが成立してる。非常にご満悦です。
試合を終えたコラッタはレフェリーが回収。傷薬で回復させて本日のお務めは終了である。この後も数試合分のポケモンがいるから大丈夫。
今んとこ選手たちの体調管理はばっちりだ。事故って死んだら適当に焼いて皆に振る舞おうかな。
誕生日でもキャンプファイヤーでも、特別なイベントってみんな嬉しいじゃん?
死ぬほど不味いだけで死なねぇよ。経験済みの俺が言うんだから間違いない。ぽんぽんペインはするかもしれないけど。
次の試合は……ニャース同士の対決? 野良猫同士の縄張り争いかな。
☆☆☆
本日の収入、15000円なり。
少なく見えるけど、これでも比較的マシって言うね。
クチバで選手として参加するなら、5万くらい稼げるんだけどなぁ。
所詮はガキのおままごとか。世知辛いぜ。
ちなみに一番盛り上がったのはキャタピーvsビードルによる、芋虫と毛虫のガチンコバトルだった。
まさかあんなスタイリッシュな動きをするとは、このオトギリの目をもってしても見抜けなかった。色々あり過ぎて笑っちゃうよ。
「あ、これ今日の儲けね」
「ぁ、あぁ……悪いな……」
目標値に届かなかった場合の儲けは折半。レフェリーとして活躍した男はおどおどしながらそれを受け取った。
――ところで俺が個人的に雇ったこのレフェリー兼雑用の人物、実は嘗てかっぺ三人衆と呼ばれたうちの一人、そのリーダー格その人なのである。
あれだね、一年くらい前に、まだ年端も行かない俺に暴行を加えてお賃金を略奪したクソ虫だね。
そのあとこいつ自身が誰かに拘束と目隠しされた挙句散々暴行を受けたらしいけど。因果応報。未だに犯人は不明とのこと。
まあ犯人は俺なんですけどね。ふひひ。
出会いは数日前に遡る――やっぱやめた。
回想シーンがめんどうだからざっと説明すると、件の事件で溜めていた資金をほぼ全て失い、仲間から信頼を失って且つ連中が夢破れて地元に戻る中、諸事情で帰る場所がないこいつは、タマムシにしがみ付いて暮らすことを決意。
ただこいつ、目隠し状態で暴行された所為で、それがトラウマになってしまったらしい。
周りにいる全員が、あのとき自分を傷つけた犯人なのではないか、と。日々疑心暗鬼に陥ってしまったそうだ。
それでもなんとか酒と煙草に溺れながら毎日を過ごしていたとのこと。相当怖い目に遭ったんだろうねぇ。痛ましい事件です。
――そんな残酷な世界に一筋の光が降り注ぐ。俺である。
こいつの夢、自分の賭博場を開いて大成させるみたいな感じだったんだけど、やっぱりそれが諦めきれなかったのねぇ。
偶々裏路地に座り込んでぐずぐずしてるのを見かけたことが発端。
この時点で既に俺の中のゴーストが囁いてたよね。野生の勘と言いますか……。
まさかタマムシには俺以外にも堂々と現役で浮浪者をやっている奴がいたのかと思い、同族意識で話しかけてみることに。
なお、後に判明する事だが、実際には浮浪者ではなかった模様。俺の期待を裏切りやがって。ファッションホームレスがよ。
最初こそ死んだ目で無視されていたが、暇つぶしがてら何日か慰めて肯定してを繰り返して着実に信頼を獲得。
ぽつぽつと自分語りをはじめたので話を聞いてやり「じゃあ俺が場所作るからリハビリがてらやってみれば?」と誘いをかければ、最初こそ渋っていたが、最終的にはうんと頷いてくれた。
数日で絆されるとかちょろいわ。攻略難易度は低。
人の優しさに飢えてたんですかね。愛です、愛ですよ。
ぶっちゃけ、自分語りするまでこいつが俺の報復相手だったこと気付かなかった。
髪は伸びてて服はボロボロ。薄っすら残った記憶の姿と見た目が変わり過ぎなのよ。わからんて。
なんかこいつの過去に聞き覚えあるなと思ったあとにようやく合点が行った。
ともあれ、今じゃ不定期のイベントを喜んで手伝ってくれる。
何度か自分らで主催したこともあるだけに、段取りが分かってて結構便利。
試合に必要なポケモンの捕獲をしてくれたし、管理もコイツがやってくれる。俺の勘は正しかったね。いい拾い物したわ。
どんな経歴があってタマムシなんかで一山当てようとしたんだろうね。
「次って三日後でよかったよね?」
「そう、そうだな……三日後のこの時間帯なら、いけ、いける。本当だ。あ、いや、お前が言うなら明日でも良いる」
「いやいや、そこまでしなくていいよ。私生活の方が大事でしょ? あ、買い出しだけ頼んでもいいかな。今日の稼ぎ全部渡すから。足りなかったら教えて。俺からも幾らか出せるから。悪いね、こんなショボい規模の賭博場で」
「買い出しは、だ、大丈夫。子供でも買える方法を知ってる。規模、規模は気にしなくて、いい。気を遣ってくれて、あり、ありがとう」
昔のイキった態度が嘘のようにとても従順だ。ちょっとどもり気味だけと。
そんなに喜んでもらえるなんて……。徳を積めて俺も嬉しいよ。
一度人生ぶっ壊された人間が救いを得るとこうなるんですね。学びました。貴重な教材です。次に活かそう。
お前、むかし複数人で俺のこと殴ってカツアゲしたんだぜ。
道端の貯金箱みたいな扱いしてた子供の報復で、お前の人生は狂って落ちぶれたんだよ。
でもなんか今は俺に救われてるっぽいから、藪蛇突かない方がお互い気持ちよく過ごせるんじゃねぇかな。一度〆た相手に追い打ちかける理由もないし。
そうすれば、これから先もこいつの恩人でいられる。そっちの方が間違いなく気分が良くなるんだよね、俺の。
WinWinの関係を目指そうじゃないか。
ォトギリとかっぺゎ……ズッ友になれるょ……!!
ちなみにかっぺの名前はイトクリ。いまの年齢は16歳だった。……16!?
え、若いのね。過去に会った時の雰囲気とか趣味とかで、勝手にもっと年行ってると思ってたわ。
あん時は色々と余裕のない時期だったし、復讐心に燃えてたから、大まかな背格好や雰囲気以外はあんま興味なかった。
あ、お前だけ年下で、前まで一緒にいた他二人は成人してたんだ。
そいつらをリーダーとして引っ張ってたのね。ふーん……。子供ながらに大人二人を率いていたからこそ、俺目線だと年齢層が高めに見えてたのかな。
まあ今のこいつには苦労して貯めた金も付いて来てくれてた仲間も残されてないけどな。惨めだね。可哀そう。
あと未成年の喫煙と飲酒は良くないですよ。
よくよく見ると、身長は平均的だけど、不摂生な生活をしてた割には細身でスタイルが良くて、目元の隈はともかく顔立ちもかなり良い部類というか……。
もうちょい健康的になったら顔目当ての女が何人か釣れそうだ。
いや、男相手でも女装させれば行けるかもしれない。
はたまた、敢えて中性的な格好で行動させて別方面で人気を得るのも……。
すぐさま商品価値に気づいて戦略を組める辺り、やはり俺は賢くて優秀な人間だ。
知的で頭脳派とはまさにこのこと。これは今度こそレ――
『アズカバンっ!』
どうして。
どっちかつーとスリザリン。でも思想的にアズカバンが妥当。そんなお話。
このキャラが再登場すると思わなかったでしょ? 私もですよ。
ちなみに初登場は3話です。一人くらい信頼できる部下みたいなのがいてもいいかなって。
作中の登場人物全員がヒロイン候補です。ヒロインなんてなんぼいてもいいですからね。100ヒロ。
あ、未成年の飲酒や喫煙は犯罪です。やらない方がいいと思います。健康面で考えたら百害あって一利なしですよ、多分。
読了ありがとうございました。
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