元凡人による悪への道のり~裏ボス枠になるために~ 作:悪なれず
いつもより気持ち文字数が少ないかもしれません。許して。
――検証の時間だオラぁ!
偶然が重ねって進化したヒスイゾロア改めヒスイゾロアーク、以下ゾロアークに関して色々と調べてみることにした。
・進化したことによる身体的、及び精神的な変化によって伴うトレーナーとの関係性
・進化したことで得た能力、性質の把握
・暴走の条件、起きた場合の対処、再発防止→昔ながらの方法やオカルトグッズは効くのか。
大まかに知りたい事を纏めるとこんな感じだ。
オーキド博士とかならもっと詳細に調べるんだろうけど、研究職でもない俺にはこれで精一杯である。
気になったら都度調べればいい。
あ、そうだ。
※本内容に専門家の指導はなく、安全面にも配慮されていません。全て自己責任です。
――これでヨシ。
記録のために買ったノート。一番最初のページに、検証動画でよく見るテロップの注意書きを記しておく。
ただし文面は真逆だ。苦情待ったなしだが、遊び心も大事な要素である。雰囲気出るよね。
検証中の安全はオコリザルの武力に任せよう。あの時は蹴り一発で吹っ飛ばされてたけど。……頼むぞマジで。
じゃあ自由研究、よーいスタート。
☆☆☆
身長!
体重!
胸囲!
食欲!
その他諸々!
はい終わり。要するに個人でやれる健康診断の項目をこなせばオッケーなのである。
次。精神面。
取りあえず、雑に撫でまわしてスキンシップを図ると、嫌がる素振りは見せず、寧ろもっとやれと言わんばかりにすり寄ってくる。
『うぇひひっ。どぅふふふっ』
笑い方ちょっと気持ち悪いな……。
少なくとも、嫌悪感は抱かれていないようだ。
寧ろ前より……まあ、いいや。あと、想像していたよりもずっと触り心地がよかった。
ここで気になったのが、身内以外に対する反応。
普段と同じく、他人から見えないように幻影を使わせて連れ歩くと、俺とオコリザル以外にやたらとそわそわ……不安と敵意の入り混じった情緒が見て取れた。
進化した弊害だろうか? 少なくとも、ここまで表立った敵愾心は、進化前にはなかった特徴だ。
なお、裏賭博の打ち合わせで会いに行ったイトクリを見た時は、若干敵意が薄れているような気がした。
遊びに来たがっていたエリカを家に招いた時も同様の反応だったため、知り合いだと気持ち緩和されるのかもしれない。
そしてこの排他的な気質、実は人間だけではなく他のポケモンにも作用する。
試しに野生ポケモンと戦わせたら、倒すだけでは飽き足らず、執拗なまでに止めを刺そうとする動きが見受けられた。
ただし言えば即座にやめる。俺の言葉が届くことが分かっただけでも大収穫だ。安心できる要素が一つ増えた。マンキー時代のオコリザルも似たようなことしてたな。
個人的な意見としては……殺戮衝動というよりも、異様なまでに周囲を気にしている辺り、外敵を排除して安全を確保しようとしている印象だろうか。
『こいつらいると安心できないから殺したい』等の行き過ぎた防衛本能で、野生ポケモンに対する過剰な攻撃も『許可貰った。殺すか』のような感覚だ。
感情の基礎部分が狂ったんかね? 物騒。俺の手綱が命綱。冗談抜きで。
野性と戦わせた流れで、今度は能力と性質の把握についての検証。
野生ポケモンではなく、人の手で育てたポケモンと戦わせる。
とは言え、その辺にいるトレーナーの手持ちとは戦わせられないため、我が家のオコリザルと何度か試合をさせてみた。
主な戦い方は、能力で透明になって姿を消しながら、俊敏な機動力を生かした奇襲や、中距離からの攻撃がメイン。攻撃の瞬間だけ姿を見せる。
もっさもさの毛をわさわさと動かすと、オコリザルの足元から黒い影のようなモノがぶわーっと吹き上がる感じ。たぶん専用わざの「うらみつらみ」とかそんなん。
序盤こそ優位に立っていたゾロアークだが、即座に順応したオコリザルに戦況をひっくり返される。
攻撃を避けて距離を詰めたオコリザルが腕や足を振ると「スパッ」と風切り音が耳に響き、それを受けたゾロアークが目を回して倒れるようになった。
それ「つじぎり」じゃね? いつの間に使えるようになったんだ。
最終的にゾロアーク1勝、オコリザル3勝、引き分け1に落ち着いた。
ゾロアークを検証していたのに、オコリザルの戦闘センスがまた証明された。
これあれだ、オコリザルがおかしいのもあるけど、ゾロアークがまだ自分の体に慣れてないんだ。
距離感とか、身体の使い方なんかをまだ把握しきれてない。
それはそれとして、オコリザルとの戦闘でも活躍した幻影の限界点を知りたくなった。ヒスイの方だとデータが少ないが、原種の方だとかなり強調される能力だ。大勢を騙せるらしい。
「――ロリでも婆でもエッチなお姉さんでもいいから、とりあえず人型になってみ?」
要望に応えるかの如く、静かな陽炎のようにぼやけたゾロアークの姿が、少しずつ形作られる。
『いぇぁ』
「おー……」
ゾロアーク系統特有の前屈みの姿勢が直立になった。以上。
なんと言えばいいのか……ルカリオやミミロップを彷彿とさせる変化だ。ぶっちゃけ脚だけなんだけど、これもある意味人型と言えば人型だろう。
まあ、ヒスイゾロアークの域を出ていないが。背伸びしたとかじゃないだけ本人の努力が垣間見える。
あれこれ指示を出して色々とやらせてみた結果、姿を消すなどといった慣れた行為は問題なし。幻影を作り出す能力も比較的高い。
今まで特に触れてこなかった物や関心の薄い物は精度が落ちたり不安定になるようだ。
例えば、普段食べてるポケモンフードの幻影は完璧。味は知らんがにおいまで再現されてた。
でもスプーンだと柄の部分がぐにゃぐにゃになってた。
ただし、どちらも触れることをここに明記する。
ヒスイゾロアの時にはできなかった芸当だ。間違いなく現物はないため、俺の脳が勘違いをしているのだろう。
これはシン・ポルクですね。間違いない。
使い方によってはとんでもない悪事を働けそうだ。……せや!
欠点もあった。餌はともかく、スプーンの方だと金属製特有の冷たさを感じられなかったことだ。
さて、作り出す能力はここで終わりにするとして、変身する能力で面白いことが起きた。
ゾロアになれた。ヒスイだけじゃなくて原種の方にも。
なんで原種になれるんだ……? 心当たりがあるとすれば、こいつと出会った場所だろうか。
死体塗れのコンテナ内。その一角に積まれた、ゾロアの死体の山を蹴っ飛ばして現れたのがこいつである。
触った感じは……若干ごわついている程度であまり違和感はないため、場合によっては堂々と連れ歩けるかもしれない。要検討。
なお、原種のゾロアークにはなれなかった。
あと最後まで人間になれなかったのも残念。一家族一個までとかの特売攻略に役立つと思ったのに。
全体的に、何かしらの方法で練習すればもっと上達しそうだから、今後の将来性に期待する。とりあえず頑張ったで賞をあげよう。
☆☆☆
……さて、ラストは最も神経を尖らせたであろう内容、暴走関連のあれこれだ。
この検証自体は初日からちまちまと進めていた。
家に帰って夜になれば、否が応でも自然と検証が始まるのである。半強制イベント。
結論だけ先に述べてしまうと、特に何もなかった。少なくとも、俺の不都合になる変化はなし。進化前のように光る事すらしなくなった。日に日に毛並みが良くなっているくらいだ。
一応言っておくと、幾つか検証を行った末の結論だ。
安いペットカメラを購入して部屋に仕掛け、ゾロアークに留守番させて家を一晩明ける。
その際、俺とオコリザルはポケセンで借りた個室に退避。その晩の異常はなし。翌朝帰宅すると、べろべろ俺の顔を舐め回して甘えてきた。
同じ状況で、今度はオコリザルと留守番させてみた。勿論俺はポケセンに避難済み。これも異常なし。
今度は普段通り一人と二匹で一晩を明かす。異常なし。
クッソ怖かったけど、オコリザルをボールに仕舞った状態で、ゾロアークと一晩を共に過ごす。
この際、お札、数珠、経典、十字架、聖水、祓串などのミックス宗教で完全武装。当然のように異常なし。
他にも念仏を流したり、お札をゾロアークの顔に張り付けたり、鈴を鳴らしたり、綺麗な数珠を前足に巻かせてみたりもした。異常なし。
――なんもわかんね。
考察。考察をしよう。俺には現実逃避で培った妄想力がある。
進化前にデブと発光のダブルコンボを食らっていたのは、キャパオーバーで取り込んだエネルギーを消費しきれなかった結果だと仮定する。
進化後の現在、それらの兆候は見られない。
これはつまり、例えばゾロアーク自身がそれを制する術を得たか、容量がアホほど増えて器としての性能が上がったか、はたまた、アパートそのものに何かしら変化があったかのどれかだと思われる。
まあ、仮説である。妄想だよ、妄想。
結局のところ、解決したのか暴走スイッチがどこにあるのかわかっていないことに変わりない。
俺が今回わかったことを強いて挙げるなら、鈴と数珠がゾロアークのお気に入りになった事くらいだ。
鈴は偶に鳴らして遊んでるし、数珠は着脱してきゃっきゃと喜んでいる。
成長しても子供っぽいのは変わらんのねぇ。
――いやまて。
自分がまだ進化前のヒスイゾロアと同じような感覚でいるんじゃないだろうな、こいつ。
あの進化が無理やりエネルギーを注入された末の強制的に促されたものだったら、ワンチャンありそう。
それなら、全体的にちぐはぐなのにも多少は説明がつく。
子供染みた行動、中途半端な幻影能力、未熟な感情制御……。
体は大人、心は子供。その名もゾロアーク(ヒスイの姿)。あると思います。
……子供は好奇心旺盛である。何を仕出かすかわからない。少し徹底して躾けるのがよさそうだ。
大丈夫、ヒスイゾロアの時も、なんだかんだ上手く躾けてたし。
色々やって無理そうなら……仕方ない。手放そう。
オーキド博士か、ロケット団か。この二択になる。
「……お前って幾らになるのかね?」
『んぅ?』
ゾロアークが珍妙な声で此方に目を向けた。
弄り回していた数珠を腕に着け、緩慢な動作で床を這ってこちらに近づいてくる。
それから、にゅっと伸ばした両腕を俺の背に回したかと思えば、ぐりぐりと腹に顔を擦りつけてきた。
『あむあむあむ……』
人の腹に顔を埋めながら口を動かすな。くすぐったいからやめろ。
なんか不安になって来たな……。
――翌朝。
起きたらちゃぶ台の上に瀕死のコラッタが置いてあって、ゾロアークがどや顔で此方を見つめていた。
褒めてもらえると思うなよ駄ギツネ。
コラッタは治療されて裏賭博の選手になりました。以降はイトクリくんの管理下に置かれます。
ヒスイゾロアークはヒスイの部分を除去してゾロアークと表記します。まあゲームでも確かゾロアーク呼びだから妥当かと。
状態としては、未知のエネルギーで体だけ急成長して精神面は甘えん坊の子供といった感じです。戦闘力と幻影の技術が上がりました。それ以外に変化はナシ。
いつかは清楚系やギャルになれるかもしれません。無理かな。無理かも。
今回も読了ありがとございました。
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