元凡人による悪への道のり~裏ボス枠になるために~   作:悪なれず

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この小説は基本的にふわっとした設定で書いてます。
ポケモンが可哀想な目に合ってるので、嫌な人はちょっと注意して読んだ方がいいかもしれません。
一応、ダークとかシリアスとかのタグで注意喚起してるから……


4

「クチバに行く用事が出来た。お前も来るか?」

 

 襲撃事件の犯人に闘志を燃やしていた折である。

 ある日ふと班長からデートのお誘いがきた。

 

「なんでさ」

「行ったことがないだろう。これから世話になるはずだ、雰囲気だけでも知って置け。それに掘り出し物があるかもしれない」

 

……いやなんでだ。

 

 まさか班長は俺がボコられた事を知っているのか? 慰めようとしているのか?

 まあ、ボコられた翌日、普通に痣だらけの顔で会いに行ってたから知ってて当然なんだけど。

 何とも言えない表情をしていた。

 

 ともあれお誘い自体は嬉しい。あのクソどもの事を思い出すと腸が煮え返る思いばかりだ。

 もうあいつらの拠点も行動パターンも見つけたし、気分転換には丁度いいだろう。半人前のド素人共が。今は間抜けに笑ってやがれ。

 

 当日の深夜、るんるん気分でお洒落をする。

 見てくれこの格好。フード付きパーカーとジーパン。

 痩せている点に目をつぶれば、どこにでもいる子供だ。

 途中でよさげなポケモンを見つけた時のために、お気にの鞄に拾ったモンボも詰めておこう。

 30個くらい。まだ使えるやつ。なんとハイボもある。俺が売っても200円くらいだ。

 クソ重い。

 

「お待たせ」

 

 現地集合。タマムシの出入り口。地下通路方面。班長はロングコートとハンチングの渋いおっさんスタイルで佇んでいる。

 

「行くぞ」

 

 今回は車で移動するらしい。ロケット団の使っている移動用車両だとか。

 マジ? 俺ロケット団じゃないんだけど。

 いやまあ車の存在自体は知ってるし、タマムシの表通りをビュンビュン走ってるけどさ。なんかポケモン世界で車って違和感あるよね。

 

 あー。車に乗った時の懐かしいにおい。なんだろこれ、いいにおいじゃないんだよな。臭いって訳じゃなくて、色々な独特の香りが充満している。

 

「そら飛ばない?」

「なるべく使わない。それに夜だと視界が悪い。あと俺はその手のポケモンを持ってない」

 

 ゲームだと当たり前みたいに使ってるけど、こっちじゃそうでもないのか。あんま空を見上げる機会ないからよく知らないけど。

 クチバ自体はすぐについた。ゲーム画面じゃ見た事のない道をあっちこっち行ったり。割と凸凹な道も多いな。あんまり舗装されてないのかもしれない。

 まあ野生ポケモンとか言う化け物がいるから、自然に手を出すのは最低限に留めてるのかもしれない。

 

「磯臭い」

「海辺だからな」

 

 それはそう。流石に深夜だから活気はない。でも港の方にちらちらと出入りする影が見える。つまり闇の住民達か……響きはかっこいいな。

 

「どこ行く?」

「港。うちの組織が仕入れたポケモンを降ろすついでに確認していく。この時間帯なら裏市場もやってるから見て置け」

 

 おっす。あざーす。小遣い足りるかな。

 港に着くなり班長とは別行動をする。クチバの裏市場はランタンを灯した小舟の上で商品を広げるらしい。国家権力にばれそうになったらそのまま海にとんずらするからだと。賢い。

 

「お兄さん、何かいいのある?」

 

 試しにすぐそこの漁船の前で御座を引いている男に話しかけてみる。

 

「アイヤー! 小さいお客様ネー! 色々見てってヨー!」

 

 草。なんだその胡散臭い訛りは。闇取引なんだからもっと忍べや。こてこて過ぎて笑いそうになった。

 

「何がある?」

「ちょと珍しいポケモンのアイテムがイッパイネ!」

 

 珍しいアイテムがいっぱいらしい。なんか俺が知ってるゲームのアイテムないかなと目を皿にして見てみる。欠けた茶碗とか欠けてない茶碗とかある。どっかで見たような気もするけど忘れた。

 

「これ何?」

「それ泥炭ヨ。珍しいから売りに来たネ。博物館に寄付するの癪だから売ってるネ。二束三文ヨ」

 

 捻くれてんな。でも俺は好きだよ。ヒロインがいないからおっさん共にしかlikeを使う相手がいないな。

 一個くれ。一個しかないけど。マイクラのブロックみたいで面白いから部屋に飾ろう。

 

「お客さん初めてだから安くしてあげるネ! もっと買うヨロシ」

 

 うーん、商魂逞しい。袋に入れられて渡されるの感心しつつ受け取る。あ、袋はタダ? 消費税かからないのか。

 リュックのボールが邪魔過ぎてあんまり買えそうにないな。その折れた刃みたいなのに?……爪? 鋭い爪か? 急所率アップじゃん。それ買うから木の実おまけして。

 そんな感じで幾つか回った結果、少ない小遣いで買えたものは結局例の泥炭と鋭い爪と木の実だけだった。キャラの濃さと勢いで買ったけど、多分まだそんなにほいほい買うもんじゃないんだろうな。

 

 うろちょろしてたら奥の方まで来てしまった。コンテナばかりで何かを売っている様子はない。

 

「でもッ! これは確かに貴重なポケモンなんだ!」

 

 帰ろうと思ったら、何やらコンテナを背に喚き散らす男を見つけた。傍らには我らが班長の姿が。

 

「――ふざけてんのか?」

 

 え、こわ。めっちゃドスの効いた声で話すじゃん。いつもの気だるげな班長はどこに行ったんだ。

 あ、待って。ここ臭いわ。磯じゃねぇ、血のにおいする。腐敗臭。配達先から偶に漂うニオイ。

 

「いいか、どこぞのくそったれな田舎モン。

本来俺らが受け取るもんはなんだ?

生きてぴんぴんしてるポケモンだろ?

なのにいざ開けてみたら出てきたのはクソみてぇに積みあがった死体の山だ。

テメェの不手際で俺らが受け取る利益がパァになっちまったんだ。

それを定期の価格で買えって? 舐めんのも大概にしろよ」

「それは……でもっ!

死んでても売れるはずなんだ、価値はあるだろ!?」

「普通はな。状態が良くねぇ。これじゃ剥製にも出来ねぇよ。

お前ならやれるってか?

出来るなら値段を考えてやるよ。どっちにしろ死んでるから満額は出さないけどな」

 

 あー。はいはい。そう言うことね。海外から輸入したポケモンの管理が杜撰だったから全滅してんのね。

 え、やばくね? 損失ってレベルじゃないよそれ。じゃああのコンテナの中はバイオハザード状態なのか。……ちょっと見てみたいな。掘り出し物ありそう。

 

「班長」

「あ゛? ああ、お前か。待ってろ、いま大人の話し合いの途中だ。もうちょい遊んでろ」

「中見て良い?」

『……』

 

 班長と売人の男から信じられないようなものを見る目で見られた。

 

「だめかな」

「……いや、わかった。行ってこい。最初に見た時には死体以外なんもなさそうだったし、どうせ後でこっちからも何人か出さなきゃいけないんだ。今しか入る機会はないだろうよ。目を瞑ってやる。ただし自己責任だぞ」

「適当だね」

「表でばれなきゃ基本なんでもアリなんだよ。おい、開けろ」

「うぇ!? わ、わかった」

 

 売人さんびくびくで草。

 施錠を外して重い扉を開く姿はまるで奴隷である。惨めだねぇ。草草の草。

 

――くっっっっさ!?

 

 隙間から漏れていたにおいが、両開きのドアを解放することによって一気に拡散された。

 くせぇ! いやもう只管にくせぇ!

 

 これあれだ、多分血と糞尿と腐敗臭。施錠を外した売人の男も涙目だ。

 お前これを売りつけようとしたの? 殺されても文句言えねぇぞ。班長とかめっちゃ遠くにいるし。煙草ふかしてんじゃねぇよ。

 

 でも行くもんね。上手く行くか行かないかじゃない。

 悪役はなぁ、有言実行なんだよぉ! 

 

 よく見えない。売人から懐中電灯を受け取る。棚から籠や肉塊が落ちてる。

 鼻呼吸すると死ぬから口呼吸。空気が舌に触れるとにおいを連想しそうになる。

 歩く度に靴底からぐちゅぐちゅとした感触が伝わる。いま何踏んでるんだろうな。

 

 ポケモン。ポケモン何がいる?

 これ……これあれだ、あのあれ。第5世代の。ミネズミ。こいつ腹食い破られてる。かわいそう。

 あれなんだ。蟲? 思い出したクルミルだ。丸まってピクリとも動かない。

 うわ人間……じゃねえや。これダゲキか。ややこしいな。ガリガリじゃん。前の俺見てるみたいで親近感湧くわ。

 ラインナップから察するに、こいつらイッシュ地方からの輸入品か。

 

 無駄に広いコンテナを彷徨う。

 カゴは殆ど落ちてるのに、棚はきっちり固定されてるから無事なのが多い。

 でもポケモンはほぼ全滅してるっぽい。

 

 あー、隅っこんとこ凄いわ。小型のポケモンがみっちり詰まってる。小山。

 カゴから出たはいいけど死んでそのまま波に揺られて積みあがった感じか。

 うわゾロアいるじゃん。勿体ない。これ絶対売れるってば。ゲームでもレアだったぞ。

 

――ん?

 

 なんかこの死体の山もぞもぞしてね? どれか生きてる? 手ぇ突っ込むのやだな。でも気になる。足で蹴っ飛ばして山を崩す。

 

 血塗れのゾロアが出てきた。懐中電灯の明かりでびくびく震えている。生き残りか。運が良いな。少し衰弱してるけど。

 いや、なんか白いなこいつ。ゾロアってこんな色だっけ。色違いが青で……

 

 あ、ちげぇ! こいつヒスイゾロアだ!

 

 欲しい! 欲しい欲しい欲しい!

 

 ボール! 30個くらいのボール! 捕まえろ捕まえろ捕まえろ! くっそ出てきやがる! 班長達にばれてないよな? いやばれたらそん時はそん時だ! 取りあえず今は捕獲しろ! レアポケってレベルじゃねぇぞ! 死なせたら大損だ! 何で今の時代いるか知らねぇけど!

 

「っしゃ……」

 

 ポケモン、ゲットだぜ。

 

 

――カポーン。

 

 音声にしたらこんな感じ。深夜営業の銭湯で身体を洗い流す。

 においもそうだが、ヒスイゾロアを捕獲する弊害で全身が血と汚物に塗れてしまった。

 とりあえず班長には、ヒスイゾロア捕獲後に偶然見かけた、衰弱していたフシデを抱きかかえて見せつつ『他にも生きてるかもしれんよ』という事をさり気なく伝えておいた。

 

 ヒスイゾロア? いや伝えてないけど。出来れば俺の手持ちにしたい。今はボールに入れたままリュックに詰め込んで上手いこと隠してる。ばれたらヤバいな。殺されそう。

 

 ちなみにここの銭湯は班長の奢りだ。

 数は多くないが、生きているポケモンがいたことに対する早期発見の手柄とのこと。売人さんはコンテナ内で生きてるポケモンを探すことを強いられていた。俺もやったんだからさ。

 

 いやー。しかしヒスイゾロアかぁ。はじめての手持ちにしちゃかなり上等な代物だ。割と先の世代で生まれたポケモンだ。いや古代のポケモンなんだけど。絶滅種。

 

 なんで生きてるんだ? 少ない生き残りが紛れ込んでいたとか? それにしたってイッシュで見つかるのはおかしいだろ。どっちかというとシンオウにいるべきだろ。

 

……あ、そう言えばヒスイゾロアって生存競争で負けた成れの果てとして生まれたみたいな図鑑説明なかったっけ。じゃあこいつ、もしかしたら生きてたんじゃなくて死んだゾロアの山から新しく生まれたのか。ガチ幽霊ってこと? こわい。

 

……まあ、でも。一回死んだ奴の方が仲良くなれそうだな。俺なんか二回も死んでるんだし。

 

「でゅふふ」

 

 あー、やべ。変な笑い出ちまいそうだよ。

 

 早くこいつ以外にも良さげなの欲しいなぁ。

 

 

 





手持ち初ゲットです。どうか祝ってあげてください。ポケモンが残酷な目に遭うのが嫌な人はごめんね。上手いことSAN値回復してきてください。動画でも何でも癒されるの一杯あるから。
伏線回収は未来の私に任せます。頑張ってくれ。

お読みいただきありがとうございました。

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