元凡人による悪への道のり~裏ボス枠になるために~   作:悪なれず

7 / 22


ランキングとか見るととんでもない文章量のお話を週一投稿してる方とかいるんですよね。凄い以外の言葉が出てこない。

未熟な筆者ですが、私は私なりに、マイペースに頑張ろうと思います。


7

 

 賭博黙示録~三人のかっぺども~を終えてから既に二週間以上が経過している。

 

 風の噂で聞く限り、かっぺ三人衆はあれから随分と大人しくしているようだ。賭博場にもその姿を見かけることはなく、偶にロケット団の下請け業務を受ける程度とのこと。

 

 リーダー格に対する暴行犯も謎のまま。

 本人が口をつぐんでいるのもあるけど、そもそも誰かもわかっていない。そのうち夢破れてタマムシを出て行くんじゃないかとも言われている。

 ちなみに最有力候補はあの時出張ってた地元勢力のごろつき。本人達も面子の問題なのか否定すらしていない。このまま曖昧なままでいてくれ。詐欺師は撤退。仕事を与えていたロケット団は特に損得してない感じか。

 

 ちなみに班長との世間話で出た話題だ。なんでその話を俺にしたの? ねぇ。人の顔をじっと見るのやめてください。警察呼びますよ?

 

 ところで最近思う事があって、ポケモンバトルに手を出したくなっている。

 

 理由はお察しの通り、あの時の乱戦である。

 プロレスとか野球とか。スポーツにはあんまり興味ないけど、ポケモンバトルは素直に興奮した。凄かったね。最後まで見られなかったのが本当に悔やまれる。

 

 ともあれ、俺はポケモンバトルをしたくなったのだ。

 問題があるとするなら、ヒスイゾロアがレベルアップで覚える技をしらないことだろうか。

 うらみつらみがあるのは知ってる。あとハッピータイム。……ハッピータイムは特典か何かの気がする。

 

 試しに拠点近くの木を攻撃させたら樹皮に爪痕を残していたので、初期技のひっかく程度なら使えるのだろう。

 顔だけ振りむいた時のどや顔がなんとも言えなかった。無抵抗の相手に強いタイプかお前。どんどん属性が追加されるな。

 

 まあ、御覧の通り、お互いど素人もいいところだ。そもそもこいつを使えないと言う致命的な欠点まである。

 こんな馬鹿珍しいポケモン連れて戦ってみ? 一瞬で有名人よ? 誰に目をつけられるかわかったもんじゃない。

 多少マシになったとはいえ、底辺はどこまで行っても底辺である。

 

 

 なので、そろそろポケモン世界らしいイベントを果たそうかと思っているのだ。

 

 そう――野生ポケモンの捕獲である。定番だよね。ヒスイゾロアが駄目なら他のポケモンを出せばいいじゃんって言う理論。

 取りあえずタマムシ近くのポケモンを捕まえたい……と思ったけど、ここゲームだと四つ目くらいのバッジだから多分俺のヒスイゾロアじゃどうにもならないんだよな。

 

 罠でも張るか? いっそ、今からちょっと旅に出るか? マサラタウンくらい。原作のレッド様見に行こうぜ。いるかどうかわかんないけど。

 

 いやなんか、今の時代って多分原作じゃないのよね。

 なんかこう、全体的にファッションや流行りが古臭いと言うか。

 

 デパートの電化製品のコーナー見るとスマホがねぇのよ。ガラケー。

 並べてあるテレビもアンテナくっ付いてるし。あとGBCが並んでた。

 知らない? あ、はい。

 

 これ過去だよね? まさか並行世界のポケモンだったりしないよね?

 俺普通に原作主人公に会いたいんだけど。

 

 トキワシティに行ったらサカキ様に会えたりしねぇかな。まあそこまで行くこと出来ないんだけどさ。

 そもそもここにヒスイゾロアがいる時点でおかしいんだよな。

 

……まあいいや。

 

 俺そんなに頭良くないのよ。悪知恵は働く方だけど。

 小難しいこと考えても仕方ないし、取りあえず脱線しつつある話を当初の予定に戻そう。

 ポケモンだよポケモン。手持ち増やすんだよ。で、ポケモン図鑑なんてないからゲームのふわっとした知識とデパートの本屋……。

 ああ、いや待て、あそこに行こう。

 

 

――図書館。英知の結晶。

 

 前までは入ろうとすれば当然のように追い払われていたが、今なら軽く会釈するだけで入館可能だ。いいよね、本のにおい。具体的になんのにおいか知らないけど。

 用事があるのは地理とポケモンに関するコーナー。分布地を調べようかと。一昔前の奴から最新版まであるが、当然とるのは後者。

 

 で、えー……いや無駄に多いな。しかもポケモンの絵が描いてない。わかっちゃいたけど子供向けじゃないわ、これ。簡易的な地図があるのが救いか。

 というか、日本語じゃないから読みづらいな。

 

――あ、そうそう。この世界の文字って日本語じゃないんだよね。なんかあれ、ポケモン世界特有の謎の文字。

 

 じゃあ何でお前それ読めるのって? 元から読めてた。

 正確に言うなら、元の体の持ち主だった子供が、日本語で言う『ひらがな』と『カタカナ』だけを読めるように勉強してた。そこの記憶が都合よく残っててよかった。

 数字はまあ同じだし、あとはもう前後の文章を予想して組み立ててる。意外となんとかなるわ。……いつかちゃんと勉強しよう。

 

 閑話休題。

 

 図鑑ナンバーからポケモンを探して、具体的な出現場所……あ、あった。……こいつって出現場所ここだっけ。もっと序盤のイメージあるんだけど。初代とリメイク版で違うのかな。記憶の基準がリメイク版なんだよね。

 

 まあ、いいや。取りあえず大まかな場所はわかったから、まずは拠点に帰って色々と準備しよう。ボールとか傷薬とか元気の欠片とか。ついでだから仕事も貰っておこう。

 

 

 

――という訳でヤマブキにやってきた。タマムシと対を為すカントー地方の大都会。

 雑多入り混じるタマムシとは違い、こちらは洗練された街並みだ。リーマンが契約をもぎ取るためにあくせく働いている。正にビジネス街。

 

 厭な顔をされていた昔と違って、今ならぱっと見はそこいらにいる子供なので誰も気にしない。見向きもしない。関所も無事に通れたし、今日だけで行ける場所が二つも増えた。嬉しい。

 

 さて、何故ヤマブキに居るか。

 欲しいポケモンがここから行けるハナダとクチバの道中にいるからだ。具体的には5番道路と6番道路。

 

 それと、都合よくいた班長に仕事も貰えた。出生不明の調教済みポケモン3匹。モンボ入り。

 お上品な清廉潔白染みたヤマブキにも、この手のポケモンが欲しい連中はいるらしい。業が深いな。

 用件を伝えてポケモンを渡した相手は、タマムシでよく見かけるヤバい連中じゃなくて、外見は普通の人だった。最後の婆さんは煎餅までくれたぜ。美味い。

 

 ついでに馴染の買取屋を見に行ったら潰れてた。悲しい。新しい場所探さないといけない。

 タマムシにもあるんだけど、ちゃんとした店は身分証だとか住所記載だとか、場合によってはお子様お断りみたいな場所ばかりだ。俺でも入れる場所は換金レートが低い。

 その点、ヤマブキの買取屋は、この子供がはじめて自分の決断で通うくらいにはマシな場所だったのに。

 

 まあいいや。ポケモン探しに行こう。

 

 

 ヤマブキの北にある関所を何事もなく素通りすると5番道路に辿り着く。真っすぐ行くと段差の激しい道だが、木々を切り開かれ作られた両端に回り込めば比較的平坦な道が続いている。

 ポケモンの姿もちらほらと。タマムシよりも凶暴度が低いのだろうか? 警戒こそすれど、襲い掛かってくる様子は見受けられない。……いや怖いな。色々修羅場もどきを潜って来たけど、普通に怖いわ。

 

 怖いから念のためにヒスイゾロアを召喚。抱えていざという時の逃走手段にしておく。何回か触れあったお陰か、こいつも特に拒否することなく抱き上げられてくれる。

 

『んべ』

 

 俺の顔を舐めようとするな。

 

 ところで、最初に態々5番道路か6番道路を選んだ理由だが、まあここに欲しいポケモンがいるからだ。こっから見えるかな……あ、いるわ。ほらあれ。木にぶら下がってる。

 

『うっきー!』

 

 サルである。マンキー。ぶたざるポケモン。格闘タイプが欲しかった。

 

 ゴーリキーとニョロゾの死闘が忘れられないんだ。でもゴーリキーの見た目は好みじゃないし、ニョロゾも別に使いたくない。

 他にはエビワラーとかサワムラーがいるけど、どっちも出現場所がわからない。進化前のバルキーはカントーにいないとまで書かれていた。サワムラー欲しかったなぁ。

 

 で、妥協してマンキー。いや気になった事があって、こいつ最終的にコノヨザルに進化するのかなと。

 イレギュラーの存在としてヒスイゾロアがいるんだから、別地方の系統進化も出来るのではと思い、試しにマンキーを選んだ。あとオコリザルまでならポケモンバトルに出しても違和感ないからね。

 

 そして見よ、今回の秘策。ロケット団ご用達。野生ポケモン捕獲用毒餌。食べると麻痺状態になる特別な餌。

 仕事貰うついでに班長に相談したら、特別価格で買わせて貰った。拳大の餌は一玉なんと三千円。ヤマブキ関連の仕事の報酬がこれだった。帰ったら使用感を報告すると言う条件付きでの前払い報酬。

 

 取りあえず目ぼしい個体を探そう。さっきのやつはどっか行った。はじめての捕獲だから駄目で元々。半分は失敗前提で行こう。マンキー以外にも良さげなのいるかもしれないし。

 

 

☆☆☆

 

 

――助けてくれぇ!

 

 ヒスイゾロアを抱えながら森の木々を避けつつ全力疾走。後方にはブチ切れたマンキーの群れ。

 失敗した、やらかした。一匹だけはぐれた奴がいると思って餌でおびき寄せたら、そいつが毒餌を食べた瞬間に泡吹いて倒れた所を別個体に見られた。

 

 しかもヒスイゾロアが危機感を抱いてなかったから幻影も発動してねぇ!

 追いかけられてる今ならするはずじゃないかって? ガチギレしたマンキーの投石が、耳元を通り過ぎて地面に当たって砕け散ったのを視認した後に気絶しやがった! だから出来ない!

 

 腕は塞がるし枝は避け辛いし足元は見えにくくなるし! 邪魔くせぇなこのキツネ! でもこの状況でボールに戻す暇もないんだよ!

 

 兎にも角にも走る。そしてあのぶたざる集団には早く諦めて欲しい。俺の体力が持たない。お前もいつまで寝てんだ、早く起きろ! 俺が死んだらお前も死ぬんだよ!

 

『――んぇ?』

 

 起きた! 早く幻影かけろ! 俺たちの気配を消せ!

 俺の必死な形相にようやく先程の状況が続いていると理解したヒスイゾロアが、むむむと唸るように目を瞑ると、後ろで追いかけていたマンキーたちの動きが一瞬だけ鈍るような気配を感じた。恐らく幻術が成功したのだろう。

 

 俺も少しずつ走る速度を緩め、なるべく足を音をたてないように慎重に、それでいて素早くその場を離れる。

 止まりそうな呼吸を静かに整えながらマンキーたちを確認すると、連中は四方八方に飛び跳ねながら探索を続行しようとしている。これで諦めないのかよ。執念深すぎだろ。

 

 まあいい。兎に角離れよう。逃げよう。第一回ポケモン捕獲作戦は失敗だ。マンキーは諦める。もっと扱いやすい奴を探す。

 ていうか、ここどこだよ。脇道それた所為で道もわからんわ。

 

☆☆☆

 

 

――悲報、帰り道が分からない。

 

 ここどこなの。誰か助けて。

 念のために持ってきた食料と水で凌げるが、夜までここに居たらどうなるか分かったもんじゃない。

 ここを抜けられないって事は、下手したらマンキーたちに鉢合わせしてまた逃げる羽目になる。

 

「お前、鼻で帰り道わかんない?」

『むぃ』

 

 無理っぽい。首傾げてるから俺の言葉の意味すらわかってないだけかな、多分。

 ちょっと疲れたからヒスイゾロアと背中のリュックを降ろして近場の木に背中を預けて座り込む。あー大自然だわー。

 都会の喧騒から離れるとこんな感じなのな。雰囲気はいいわ、状況は最悪だけど。

 

――ぐにぐに。

 

 なんだよ、手を掴むなよ。餌が欲しいのか? ちょっと待って、今からポケモンフード……え、待って。お前の手ってこんなんだっけ? こんなしっかりした指じゃな――

 

「――ぃっ!?」

 

 

 手首に鈍い痛みが走り、次いで宙を舞う感覚に襲われた。状況を把握するより前に背中が強かに打ち付けられ、衝撃と共に息が止まりそうになった。

 

「うぎぎっ……」

 

 痛む背中と止まりそうな息でなんとか無理やり体を起こして顔を上げる――マンキーがいた。一匹だけ。

 

 けど、そいつはふらふらとした足取りで、焦点の合わない血走った目つきとしていて、偶に口元からごぽごぽと泡を吹いていた。

 

 否が応でも理解できる。……毒餌を食った個体だ。

 嘘だろお前。どうやって俺のこと見つけたんだよ。まさか意地か? 執念深いってレベルじゃねぇぞ。

 

 駆け寄ってくるヒスイゾロアが、俺を守ろうと盾になってくれている。体を震えさせ、精一杯の威嚇を取っている。

 その姿に感動するよりも、自分のやらかしたツケが、マンキーと言うはっきり見える形で帰ってきた事に恐怖を覚えた。

 

 

――今にも倒れそうな体。

 泡に混じった荒い吐息。

 どこを見ているかもわからない両目からは、薄っすらと強い意志を感じ取れた。

 

――欲しい。

 

 アイツ欲しい。凄く欲しい。是が非でも欲しい。

 だって毒の餌食って泡吹いてふらふらになってんのに、仕返しのためだけにここまでくるような奴だぞ。あんな根性のあるやつ早々いないって。

 

「ふ、ぐぅ……ぉい、やるぞ……」

 

 ヒスイゾロアが不安げに此方を見ている。今回ばかりはこいつにも手伝ってもらう。はじめてのポケモンバトルだ。

 

「……技わかんねぇ。まあいいや。行け!」

 

 一瞬だけ間があった。

 

 けれども、ヒスイゾロアは瞳に決意を宿し、だっとマンキーに距離を詰めると、飛び掛かって鋭利な爪で引っ搔いた。

 

 攻撃を避け切れなかったマンキーが仰け反る。倒れない。片手で木を掴み、カウンター染みた動きで空いた方の手を振り下ろした。

 

「避けろ! もう一回攻撃!」

 

 俺の掛け声に意味があるのだろうか。

 すっと横に体をずらして攻撃を避けたヒスイゾロアは、先程と同じようにマンキーを引っ掻いた。その爪は明確にマンキーの鼻へと命中し、微かに血が滲んだ。

 

 少しだけ、マンキーの体がぐらついた。片膝を突き、ごぽごぽと口から何かが混じったような鳴き声が漏れ出る。

 そして、驚いたことに、奴はその姿勢の腕を伸ばして殴り掛かってきた。

 

「避けっ……!」

 

 俺の指示が入る前に、ガツンと拳がヒスイゾロアの顔に的中する。ああ、やっちまった……そう思った。

 でも俺は思い出した。ポケモンをやってたら覚えてなきゃいけないルールがある。

 

 例えば、そう――タイプ相性。

 

――するりと。

 

 マンキーの拳は、まるで空を切るかのように。ヒスイゾロアの体をすり抜けたのだ。

 

 それを見たマンキーは、最後に呆然とするヒスイゾロアを一睨みすると、どさりとうつ伏せに倒れ込んだ。

 

 十秒……二十秒……三十秒。

 

 マンキーは動かない。動く気配も見せない。

 

「――はぁ……」

 

 マンキーは起き上がらない。ようやく緊迫した空気を霧散させるように溜息を吐いた。

 それとほぼ同じタイミングで、呆けていたヒスイゾロアがきゃんきゃんと鳴きながら駆け寄ってくるので、適当にわしゃわしゃと撫でておいた。

 

 ああ、そうだ。忘れちゃいけない。メインディッシュのお時間だ。

 

 腹を出してくねくねしているヒスイゾロアを横目に、先程自分がいた場所に戻って落ちてるリュックを漁ってモンスターボールを取り出す。

 幸い、戦闘の余波は受けていないようで、中身は全て無事だった。

 

 リュックを担ぎ、取り出したモンスターボールを倒れているマンキーに向ける。マンキーに軽く投げつけて当てると、ぱかんと開いたボールに吸い込まれる。

 

 しばらく左右に揺れていたが、最期にはカチッと軽い音がして、モンスターボールは動きを止めた。

 

――ポケモン、ゲットだぜ。

 

「……お前の後輩だぞ、よかったな」

 

 人の靴をぺしぺしと叩いて来るヒスイゾロアに向かってそう告げると、何もわかっていない表情で、不思議そうに首をかしげていた。

 

「……他のマンキーに襲われる前に帰るか」

 

 ヒスイゾロアを抱き上げながら、誰にともなく呟く。

 なんだか、今ならそのまま帰れる気がする。

 

 あとお前、街に入る前にボールに仕舞うからな。見られたら困るし。

 

 

 

 





毒餌で泡吹いて倒れる設定にしてるけど、どくどくはどれだけヤバいダメージになるんですかね。

ちなみに毒餌さんの出番は多分もうないです。あまりにもチートすぎるから、次回で何かしらの設定を加えて、少なくともこの主人公の手からは離れるようになります。

感想、誤字脱字報告の報告、お気に入り登録や評価を貰えると私のモチベが上がります。
よろしくお願いします。

あ、本日の21時くらいにもう1話投稿します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。