元凡人による悪への道のり~裏ボス枠になるために~   作:悪なれず

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本日は2話分投稿です。

7話をお見逃しの方は、先にそちらを閲覧してからを推奨します。


8

 

 

 マンキーを捕獲してから早数日が経った。

 

 捕まえた当日、這う這うの体でタマムシに帰って早々班長にヤマブキでの仕事の報告を済ませ、続けざまに毒餌の使用感と副作用、危険度を滾々と訴え、ついでに受けた被害のクレームを入れまくってやった。

 

 そしたら、めんどくさそうに裏方の開発部を問い詰めてみると約束してくれた。余った毒餌は六千円で回収。お陰で収支はプラスだ。

 

 さて、件のマンキーだが、実は意外と大人しい。

 

 ポケセンが使用不可なため買っておいた回復アイテムでなんとか治療は済ませたが、まだ完治はしていないのか、ぼんやりとしている事が多い。

 あと結構言うことを聞いてくれる。餌の時間を待つように言えば大人しく待ってるし、物を取ってくるように伝えればぎこちない動きで持って来てくれる。下手したらヒスイゾロアより聞き分けがいいかも。

 

 毒餌を食わせた俺や攻撃したヒスイゾロアが近づいても拒否の姿勢ではなく、怨恨や怒り等の感情は見受けられない。

 

……でもなんか、偶に凄いガン見してくれる。無の表情。移動しても視線が追っかけてくる。怖い。

 

 夜中に勝手にボールから抜け出して枕元に立ってた時は心臓が飛び出そうになった。めっちゃ怖かった。いつからいたのお前。

 お陰でボールに戻した後は朝までいつでも起きられるように過ごす羽目になった。

 

 クレームをつけた当日の班長曰く、毒餌に後遺症はないので、食べたマンキーがどうこうなることはないとのこと。じゃあこいつのこれは個性だな。そう思いたい。

 だってここ何日か一緒に過ごしてるけど凄い大人しいから……ヒスイゾロアも懐き掛けてるし。俺の時より懐くの早いのむかつくな。

 

 実はマンキーを捕まえてから殆ど下請け業務を受けておらず、拠点で静かに過ごす日々が続いている。せめて新メンバーが完全復活するまでは静かに過ごそうかなと。

 

 だからこそ、このマンキーの異様さに慄いている訳だが。

 いや、流石にね、わかるよ。こいつがおかしいって。マンキーって短期で常に怒り狂ってるようなポケモンだって図鑑に書いてあったけど、こいつ手持ちになってから今日まで一度も切れてないからね。

 

「……俺の寝首掻こうとしてないよね?」

 

 ヒスイゾロアと食事を共にしているマンキーに話しかけるも、当然返答が帰ってくる訳もなく。もそもそと緩慢な動きでポケモンフードを口に運ぶばかりだ。

 

……大丈夫だよな?

 

 よしわかった。今日はコイツの事を少し探ろう。ぶっちゃけ捕まえた当初は興奮してたから殆ど気付かなかったし、何ならその後も不審な行動を敢えて見て見ぬふりをしていたが、手持ちにするのならやはり使うポケモンの事を知っておく必要がある。あと俺が怖い。どこにでもいる小心者の一般人なんだよ俺は。

 

 

 

「責任取って」

「なんだこいつ」

 

 という訳でいつもの班長である。数日振りだね。最近どう? ご飯食べれてる?

 

「どうだった?」

「あ?……ああ、毒餌か。あれな、失敗作だった」

 

 は? 次の台詞をよく考えろよ? じゃないと俺の嫌がらせを受ける羽目になるぞ? 毛根が死滅する運命を受け入れたくないないだろ? 

 運動会とか授業参観とかパパだけ来ないでって言われたいか? おん?

 

「説明して」

「あー……調合を間違えた失敗作だ。捨てるはずだったんだがな。サンプルが幾つか残ってたらしい」

「じゃあ俺のマンキーはそれの被害者ってこと?」

「まあ、そうだな。ただ、調合して毒性実験の段階では特に後遺症は残らなかったらしい。負担がデカくて小型のポケモンが死にやすいってだけだ。……お前のマンキーって言うと、前に毒餌で捕まえたやつか」

 

 そうなんだけど今のさらっと流していい内容じゃないよね?

 取りあえず、班長にマンキーの挙動を説明してみる。

 

「……うちで扱ってる毒物の後遺症ってのは体が上手く動かなくなる奴が殆どでな。少なくとも、お前のマンキーみたいな事例は報告されてない。同じ種族に食わせた時は気絶したけど数時間で目を覚ましたし、健康上の問題はなかった」

 

 悲報、俺のマンキーがおかしいかもしれない。

 

「……これはエスパータイプの話なんだが、アイツらは偉く頭が良くてな。下手をすると人間の動きを模倣する事もある。そいつも薬の影響で頭になんかあってそんな状態なのかもしれないぞ」

 

 速報、サル、人間を模倣するかもしれない。……いや速報ではねぇな、普通に怖いわ。ホラー展開とか望んでないんだけど。あとその言い方だと後遺症あるじゃねぇか。

 

「ま、しばらく様子を見て扱いきれなくなったら持って来い。こっちで処理してやる。珍しい個体ってのは売れるからな。今日は下請けするか?」

「しない。人間休む事も大切だよ、班長。偶には奥さんと娘さんに家族サービスしたら?」

「余計なお世話だクソガキ」

 

 デコピン食らった。地味に痛い。適当に手を振って班長と別れる。

 

 取りあえず何もわからないことが分かった。

 試しにマンキーを出して連れ歩いてみると、やっぱり大人しい。

 

……常に怒りを抱いていたやつがそのリソースを減らしたらどうなるんだろうか?

 思考する余地が出来る? つまりこいつは考えてる?

 

……試してみよう。

 

 適当に見つけた自販機でジュースを買う。プルタブを開けて飲む。

 

「やってみ」

 

 小銭を入れて顎で指し示すと、しばらくぼんやりとしていたマンキーは、のそのそと指をさ迷わせてからボタンを押し始めた。

 何買った? ミックスオレ? 甘くて美味しいよね。ちなみに俺はサイコサイダー買った。

 俺が開ける前に自分で開けてちまちま飲み始めた。

 

……ひとつわかった事がある。

 

 こいつ怒りのパラメータ減らした分、賢くなってる。

 ぎこちないながらもここまで流れ作業が出来るの凄いわ。普通のマンキーなら操作方法わからなくて切れそう。

……え、やばくない? ここで始末した方が人類のためなのでは?

 

「クッソ怖いわぁ」

 

 さて、この言葉の意味も理解しているのか、していないのか。

 うーん、色々やってみたくなった。ちょっと野生ポケモンに喧嘩売ってみるか。コラッタとか。

 

「お前ちょっとバトルして見ない?」

 

 違う、相手は俺じゃない。構えるな。無表情で見上げてくるのやめろ。お前やっぱ俺のこと恨んでるだろ? いいから相手探しに行くぞ。

 

 

☆☆☆

 

「ちょちょちょちょ。やり過ぎやり過ぎ」

 

 慌ててマンキーを止める。

 タマムシ周辺のポケモンは難しいだろうなと思いつつ、適当な場所にいたポケモンに突っ込ませてみた。何が出てきたかって? 野良マンキー。お前タマムシの近くにもいたのか……。

 

 それは兎も角、物の数分であっという間に制圧してしまった。寧ろ止めを刺そうとしている。ゲーム基準で言うとあっちの方がレベル上だよな? 同族相手に容赦なさすぎない?

 

 俺が停止命令を出すと、動きを止めたマンキーはこちらを見上げる。野良マンキーはあたふたと逃げ出している。

 頼むから報復には来ないでくれ。弱肉強食の結果だから納得してくれ。街の中に入ろうとしたらこれ幸いとロケット団に捕獲されるだけだろうし。

 

……ヒスイゾロアの代わりにこいつを戦闘枠にしたかったんだけど、これ大丈夫か? 試合中うっかり相手のポケモン殺しそうなんだけど。慰謝料とか払えないぞ俺。いや命令は聞くしなんとかなるか?

 

「いやマジで頼むぞお前。戦えるの多分お前だけなんだから」

 

 無言だよな。そりゃそうだ。

 取りあえず一旦帰るか。ボール……え、何、手繋いで帰るの?

 お前が先導するの?……帰り道わかんの? 真面に連れ歩いたの今日が初めてなんだけど。

 

……え、やっぱこいつおかしくね?

 

 本当に大丈夫か? 俺に扱いきれるのかこいつ。……いいや、今日はもう考えるのやめよう。俺の特技は現実逃避なんだ。

 

 初のポケモンバトル祝いにお菓子買って帰ろうぜ。お徳用のやつ皆で食べよう。

 

 

 

 





ヒスイゾロアが出てこれない限りは彼女がメインポケモンになります。ヒスイゾロア可哀想。
班長は舞台装置として本当に便利な枠です。原作キャラも近いうちに出したいですね。

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