その瞳に勝利を   作:カニ漁船

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※お詫び

昨日仕事が終わった後ぶっ倒れるように寝てたら書けませんでした。申し訳ありませんでした。


凱旋門賞の意気込み

 欧州のレース界は今揺れていた。10月の初週に開催される凱旋門賞、出走するウマ娘の名前に歓喜の声が沸き上がる。

 何故喜ぶのか? その理由は2人のウマ娘が関係している。

 

「ついに激突するのか。コンストリブルとアーモンドアイが!」

「これでどっちが上か決まるわけでしょ? 楽しみで仕方ないわ!」

「ようやくこの日が来たわけだからな。欧州の最強女王VS新時代の若き欧州女王、頂上決戦だ!」

 

 前回の凱旋門賞覇者であり、約1年ぶりの復帰戦であるセプテンバーステークスを楽勝した現・欧州中距離路線最強の女王コンストリブル。

 圧倒的な強さでティアラ三冠を勝ち取り、シニア級を相手にしたレースでも勝ちをもぎ取ってきた新時代の若き女王アーモンドアイ。

 現在における最強と、新しく台頭してきた最強の激突。これで盛り上がらないレースファンなどいないはずがない。ニュースやネットでは、コンストリブルとアーモンドアイどちらが勝つのか? と連日のように議論が交わされていた。

 出走するのは2人だけではない。だが、どちらも高いネームバリューと実績を誇るが故に、凱旋門賞はこの2人の間で話題は持ちきりになっていた。

 

 レース前のインタビューにおいても、両陣営はお互いのことを強く意識しているような発言を残している。

 

「最大の敵はミーティアのアーモンドアイ、ですね。彼女の強さは1月に模擬レースをした時とは比べ物になりません。進化の速度が異常です」

「アーモンドアイに勝てずして凱旋門賞二連覇はない……我々はそう考えている」

 

 特にコンストリブル陣営は、アーモンドアイに強く意識を割いている。勝つためには彼女を超えなければならない、アーモンドアイに勝てなければ偉業は成し遂げられない……そう断言するほどに。

 また、コンストリブル陣営に限らず、どの陣営もアーモンドアイを一番に警戒している。前年度覇者であるコンストリブルではなく、アーモンドアイをだ。

 このことについてコンストリブル陣営は、どこか納得したような発言を残している。

 

「それも仕方ないでしょう。彼女の強さは実際に走ってみるまで分かりません。下手をしたら、セントレジャーステークスの時よりも進化している可能性があるのですから」

「セントレジャーは全力ではなかった可能性もある。実際に走るまで、彼女の強さの底は見えないだろう。彼女を一番に警戒するのはなにも不思議なことではない」

 

 セントレジャーよりもさらに強くなっている可能性。アーモンドアイが見せてきた常軌を逸した進化速度は、一番警戒されるに値するとコメントを残した。

 

 とはいえ、癪に障るのも事実。前回覇者ではなく、新進気鋭のウマ娘が注目されることに、コンストリブルはにっこりとした笑顔を見せた。

 

「ですので、えぇ。分からせないといけませんね。誰が欧州最強のウマ娘で、誰が女王として相応しいのか。ファンの皆様には、ぜひともご照覧いただきたいものですわ」

「程々にな。油断しすぎて足元を掬われないように」

「まぁ! トレーナーは私が油断をするとでも? 油断できるような相手ではないことは、百も承知です」

「愚問だったな」

 

 笑顔で自分が勝つと。そう宣言したインタビュー。映像がお茶の間に流れた時は、レースファンの楽しみをさらに倍増させた。

 

 誰からも警戒されているアーモンドアイ。では、彼女が凱旋門賞に向けたコメントはというと。

 

「勝つわ!」

「……そういうことです」

 

 あまりにもシンプル過ぎる一言だった。いや、さすがにこれで終わりではなかったが。

 

「まず、コンストリブルさんは最優先で警戒しています。模擬レースをした時は負けてしまいましたから、ここでリベンジを果たさないと!」

「復帰戦でも問題なく勝利していました。なので、凱旋門賞では最優先で警戒するつもりです」

 

 コンストリブル陣営を意識している発言。一度負けたことがあるから今度こそは勝つと意気込み、そのためのトレーニングを積んでいるとコメント。

 それでも、彼女の目に見えているのは。

 

「でも、そうですね。わたしは勝ちます。レースを走って勝つ。とてもシンプルですけど、これがわたしなので」

「僕はその手助けをするだけです」

 

 勝つことのみ。対戦相手のことをしっかりと見た上で、それでも視界に収めているのは勝利だけ。このメンタルこそがアーモンドアイをアーモンドアイたらしめる要素だろう。

 

 

 注目が集まる凱旋門賞。前日開催予定のカドラン賞では、創設して早々ステイヤーズミリオンの全競走を制したプライベートベーリングが出走を回避したのもあって、注目はほぼ凱旋門賞に集まっていた。

 コンストリブルとアーモンドアイ。注目の2人が前評判通りの強さを発揮して終わるのか? それとも、この2人以外の伏兵がレースを制して中距離路線の王者として君臨するのか?

 凱旋門賞の結末に、注目が集まっていた。

 

 

 

 

 

 

 イギリスのとある練習場。1人のウマ娘が玉のような汗を流しながら、トレーニングに励んでいる。

 

「……まだまだ、追い込みをかけますわよトレーナー。この程度では、彼女に追いつかれてしまう」

 

 コンストリブル。レースやインタビューで見せるような優雅さは微塵も感じさせない、一競技者としての努力の姿がそこにはある。

 本来であればケガ明け。強い負荷のかかるトレーニングは心理的にも避けたい。復帰戦を楽勝して、気が抜けていてもおかしくない状況だ。

 

 コンストリブルは油断しない。少しでも強くなるために、限界ギリギリまで強くなろうと負荷を強めている。目には強い意志が籠っており、まだまだいけると言わんばかりだ。

 トレーナーもこの瞳を見て頷く。問題ない、この程度の負荷はこなせると、コンストリブルを信じていた。

 

「あぁ。まだ大丈夫だお嬢様。今度はしっかりと、限界を見極めている」

「頼みますわよ。私の限界を攻めないと、彼女に勝つことは出来ない」

 

 彼女、という言葉にトレーナーは眉を顰める。コンストリブルが走るレースで、最大の障害となる相手だからだ。

 

「……アーモンドアイ、か」

「彼女の進化スピードは異常です。世代で飛び抜けている、なんてレベルではありません」

「我々すらも超えそうな勢い、というべきか。すでにシニアトップ層と比べても、彼女は遜色ない実力を身につけている」

 

 コンストリブル達は感じ取っていた。アーモンドアイの強さは、すでに自分達の領域に届いていると。油断しなくても負ける段階まで成長していると、セントレジャーステークスで感じ取った。

 

 おかしい、ありえない。そんな言葉が思わず出てくるほどの成長速度。アーモンドアイの強さは、あまりにも常軌を逸している。

 

「私と彼女は1つの世代差がある。私のホームスポットで、コースも熟知していて、バ場も問題ないと来ている。なのに」

「油断できない。世代差を覆して、彼女は頂点へと届きかけている。何と恐ろしいことか」

「これこそがミーティアの強さ、ですか」

 

 本来であれば覆すのは難しい世代の差。混合戦でクラシック級のウマ娘が勝つ例は稀で、大体はシニア級のウマ娘が勝つことが多い。経験の差が大きいからだ。

 だが、アーモンドアイは届きかけている。欧州最強と呼ばれるコンストリブルの喉元に。

 

「セントレジャーで、私は背筋が凍りました。彼女の強さが私に届きうると、そう感じました」

「私もだ。末恐ろしい……まさか、あそこまで鍛え上げてくるとは」

 

 恐怖を覚える2人。インタビューで答えたことに嘘は1つもない。

 アーモンドアイこそが最大の脅威。アーモンドアイに勝たなければ、凱旋門賞二連覇という偉業を成し遂げることは出来ない。アーモンドアイの強さは──自分達に届いている。

 

 だからこそ、限界を攻める。

 

「譲りませんわ……私にも、譲れない思いがありますもの」

「凱旋門賞二連覇。最後に達成したのはヴェニュスパークと短いが、達成者は例外なく歴史に名を残すウマ娘達」

「私はその程度で終わりません。私が目指すのは──三連覇。誰もが届かない、前人未踏の領域です」

 

 凱旋門賞二連覇は通過点。目指すのはその先……誰も到達したことがない領域、三連覇の偉業。コンストリブルの目標は、凱旋門賞の三連覇にあった。

 ここで負けるわけにはいかない。二連覇は通過点、三連覇のためにも、負けることは許されない。

 

「勝ちますわ、絶対にっ!」

「その意気だ、コンストリブル。絶対に勝つぞ」

 

 その情熱は、周りの空気が歪んで見えるほど。コンストリブルのやる気はこれ以上ないほど満ち溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 凱旋門賞が近づいている。レースが近づくと特別指導は少なくするんだけど、今回に関しては話は別だ。

 

「バクシンバクシーーンッ! 今日も元気にバクシンしていきましょうアイさんッ!」

「分かっているわ! バクシーーン!」

「ついにバクシンが感染したねぇ」

「感染って言い方止めましょうよタキオンさん。間違ってないかもしれませんけど」

 

 限界ギリギリまで特別指導を続ける。レースが始まるその日まで、攻めた調整をする予定だ。

 

 理由は簡単で、相手が相手だから。

 

(今度相手をするコンストリブルは、欧州トップ層よりもさらに上のステータスをしている。彼女に勝つためには、こっちもギリギリを攻めないといけない)

 

 ノートを開いて、この前のレースで見えたステータスを確認する。コンストリブルのステータスは、現在こんな感じだ。

 

 

コンストリブル

 

適性:芝A ダートG

距離:短G マE 中S 長B

脚質:逃げB 先行A 差しA 追い込みG

 

スピード:UD1 1518

スタミナ:UG9 1296

パワー :UF5 1359

根性  :UG9 1293

賢さ  :UF2 1328

 

 

 中距離Sに加えて、満遍なく高い。スキルも相応に豊富、勝つのは至難の業だろう。

 

 ただ、アイも負けてはいない。あの日からずっと成長を続けている。

 

 

アーモンドアイ

 

適性:芝A ダートC

距離:短A マA 中S 長A

脚質:逃げG 先行A 差しA 追い込みD

 

スピード:UD2 1527

スタミナ:UG3 1234

パワー :UF2 1325

根性  :SS 1142

賢さ  :UF1 1312

 

 

 スピードは僅かながら勝っている。ただ、それ以外のステータスは劣っているのが痛い。この時点で迫っているアイの方がおかしいんだけど、それはそれこれはこれだ。勝つためにアイが努力した結果でもある。後は僕自身も。

 

(バクシンオーにキタサン、ドゥラの時にも痛感したことだ。クラシックやシニアの枠組みを超えて、僕は彼女を勝たせたい)

 

 ネームドがどうとか、ステータスの差がどうこうとか。いろいろとあるけど、僕は彼女達の負ける姿を見たくない。どれだけの差があろうとも、絶対に勝たせたいと思っている。過去経験したことを二度と繰り返さないように、僕自身も成長している、のかな? 多分そうだ。

 

 どちらにせよ、凱旋門賞は五分の勝負になる。甘く見積もっての五分、贔屓目なしで見るなら4:6か、3:7の勝負だ。

 

(向こうは一度制したことがあるレース。だとしても、油断は期待できない)

「……バクシンオー、アイ。レースもあるんだから程々にね。特別指導を引き延ばしてはいるけど、疲れを残して、本番に影響が出たらダメだよ」

「わ、わかり、ましたッ! で、では、っここで終、終わりに、しましょうッ!」

「ゼェ……ゼェ……わ、分かった、わ」

 

 後できることは、こうして少しでもステータスを上げるのとコースへの理解、対戦相手の情報を頭に叩き込むこと。やれるだけのことをやって、やり残しがないようにしないとね。




どうして届きそうになってるんやろなぁ。
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