その瞳に勝利を   作:カニ漁船

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いろいろとあるかもしれない。


ドッキリサプライズ

 アーモンドアイの勝利で終わったキングジョージ。コンストリブルとの競り合いを制し、見事に抜け出した。

 これで19連勝のG1・17連勝。上には上がいるが、とんでもない偉業だ。

 否、過去でも類を見ない偉業である。理由は、アーモンドアイの走ってきたレースにある。

 

 短距離から長距離まで満遍なく、ダートにまで手を伸ばして勝利を手にしてきた。バラバラの距離を走って、ここまでの勝ち星を積み重ねてきたのである。

 それこそ直近のローテがとんでもない。6月中旬の超長距離であるアスコットゴールドカップを走り終えたと思ったら、次は短距離のジュライカップ。ジュライカップが終わった後に出走した今回は中距離。てんでバラバラだ。

 バラバラなのに全て勝ってきた。あらゆる距離の最強格をねじ伏せて、誰よりも早く駆け抜けてきた。一度たりとも負けることなく、自らの強さを証明し続けてきた。

 

 だからこそファンも惜しみのない称賛の拍手を送る。どの距離でも結果を残し続けるウマ娘、1つの距離に収まらない才覚を見せてくれるアーモンドアイに。

 

「『やはり素晴らしいな、アーモンドアイは。今回も勝った』」

「『でも、コンストリブルも惜しかったわ。次回こそ頑張ってほしいわね』」

「『いいや、次回もアーモンドアイの勝ちで決まりさ。彼女のレースからは目が離せない、何が起こるか分からないからね』」

 

 いつまでも鳴りやまない喝采が、アスコットレース場を包んでいた。

 

 

 ターフではコンストリブルがアーモンドアイを睨みつけている。淑女らしからぬ眼光、見る者全てが震えあがるような視線を、悔しさを滲ませた表情で送っていた。

 

(また、また敗れてしまった……! 今回こそはリベンジを果たすと、そう誓ったはずなのに!)

 

 序盤からの徹底マーク、分の悪いスタミナ勝負だとしても、削り続けることが最善の道と信じて走った。

 間違ってはいなかっただろう。表情から予想通りに削れていることが分かっていたし、なにより感覚で分かった。自分の作戦は合っているのだと、着実に勝ちへ進んでいると確信を持てていた。

 これまでのレースデータは全て履修済み。ヴェガスクライとの真っ向勝負を制する根性があり、プライベートベーリングを落とすほどのスタミナがある。あらゆる点を研究し、この徹底マークこそが最良だと判断して臨んだ。

 できる限りのことはやった。作戦を実行するだけの力を身につけることができた。これならば大丈夫だと、確信を持って挑んだ。

 

 だが、削り切ることができなかった。あと一歩、もう一歩のところまで来たのに、勝ちを目の前で取られてしまった。

 アタマ差。1着アーモンドアイと2着コンストリブルとの差。ほんのわずかな差しかないが、あまりにも遠いようにも感じられた。

 

(あまりにも、強いっ。理解していたはずですのに、だからこそ十分な準備を整えてきたというのに!)

「『皆様に無理を言って、一騎打ちの舞台まで用意してもらったというのにっ! 私はッッ!!』」

 

 芝を殴りつけるコンストリブル。己の不甲斐なさ、届かなかったことへの悔しさ、やり場のない怒りを芝にぶつける。殴った箇所には小さなくぼみができていた。

 悔しい。二度も負けたことが、リベンジを果たせなかったことが悔しくて仕方がない。敗北の悔しさを刻みつけられる。凱旋門賞で受けた傷を癒すことができなかったばかりか、新しい傷をつけられた。

 

(まだ、足りないと言うのですか? 女王としての矜持を捨ててなお、彼女には勝てないというのですか!?)

 

 自分に何が足りなかったのか。そう自問する。答えは出ない。

 

 出ないが。

 

「『コンストリブルさん!』」

 

 アーモンドアイが、見下ろしていた。

 そこにコンストリブルを下に見る感情はない。構図的に見下ろしているだけだ。ジッと、立ち上がるのを待っているかのように佇んでいる。

 感じるのはワクワクした気持ち。レースが終わった今、なぜ彼女がワクワクしているのか。

 

「『何故あなたは、楽しそうにしているのですか?』」

 

 理解ができなかった。思わず聞いてしまう。立ち上がって、真っ直ぐに瞳を見て。少しばかりの怒りを乗せて質問する。

 

 アーモンドアイは呆けていた。何を言われたのか分からない表情をするが、すぐに。

 

「『ギリギリだったからよ。今回の勝負は凄くギリギリだった。強くて、楽しくて、ワクワクする勝負だったんだもの!』」

「……は?」

「『やっぱり、とっても強かったわ。最後の最後まで勝負は分からなかった。今回はわたしの勝ちだったけど、次はどうなるか分からない。そう思うくらいに強かった』」

 

 心からの言葉を、賞賛を贈っていた。理解が追いつかないことを目の前で言われた。

 いや、理解はできる。理解はできるのだが、今ここでお前が言うのか? と口にしたくなる。今しがた負かした相手に対して、ギリギリの勝負だったなんて。

 

 怒りは、湧かない。理由は、アーモンドアイの力強い瞳だ。

 

(本当に、心の底から思っているみたいですね。今回の勝負がギリギリだった、と)

 

 嘘なんかじゃない、お世辞でもない。純粋に、心から思っていることを伝えている。真っ直ぐな気持ちで、嘘偽りのない言葉で称賛している。

 自分の力を過大評価しない。相手の力を過小評価しない。等身大の強さを見て、決して見くびることをしない。どんな相手だろうと全力を出して勝ちに行く。だからこそ強いのだ。目と言葉で理解する。

 

 そんな目で見られては、さすがに嫌味の一つも言えない。同時に理解する。これこそがアーモンドアイの強さなのだと。ひたすらに、真っ直ぐに勝利へと突き進む。この姿勢こそが、アーモンドアイの強さを支えているのだと。分かった気がする。

 

(また、仕切り直しですね)

 

 荒みそうになる心に染み渡り、気づけば握手を求めるように手を差し出していた。

 

「『良い勝負でした。あと一歩、及びませんでしたね』」

「『こっちこそ、最高に熱い勝負をありがとう!』」

 

 アーモンドアイは応じるように手を差し出し。2人は熱い握手を交わした。健闘をたたえ合う姿に、アスコットレース場はさらに盛り上がる。

 

 なお。

 

「『次のレースも楽しみにしているわ!』」

「……What’s?」

 

 アーモンドアイの次の言葉で、全てが吹き飛んだのだが。

 

 屈託のない笑顔。混じりけのない、純度100%の笑顔で見ている。ただし、その笑顔からはどこか圧を感じた。

 

「『次はもっと強くなっている……なら、わたしもそれに負けないくらい頑張るわ!』」

「『いえ、あの』」

「『今回はわたしの勝ちだった。でも、次も負けない! 次のレースでもわたしが勝つ! 絶対に負けないんだから!』」

 

 ビシッ、と指を突きつけ。宣戦布告をする。勝った相手が、負けた相手にである。なんとも奇妙な絵面だ。負けず嫌いにもほどがある。

 

 思わずコンストリブルは。

 

(……負けん気が強いにしても限度があると思うのですが)

 

 呆れ果てるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 無事にキングジョージを勝ったアイ。ウィナーズサークルでのインタビューとか、ウイニングライブを終えてホテルに戻ってきた。

 

「お疲れ様、アイ。それじゃあさっそくで悪いけどミーティング……に、なるのかな?」

「なんで疑問形なのよトレーナー。というか、わたしとトレーナーだけじゃなくてみんなもいるじゃない」

 

 今は僕の部屋。アイに限らず、ミーティアメンバー全員がこの場に集まっている。さすがに倉科君達はいないけど。

 

 祝賀会をやろうとかそういうわけじゃない。それに関しては明日やる予定だからね。今はそっちよりも優先すべきことがある。

 

(そう、レースが終わった後だとしても)

 

 発表するタイミング自体は何時でもよかった。けれども、すぐにでも報せるべきなんじゃないか。そう考えた。

 

「で? 我々まで呼んだ理由は何だい、トレーナー君。今言わなければいけないことなんだろう?」

「珍しいな。特に何もなかったはずだが」

「トレーナーにはどんなソートがあるのかな~?」

 

 手短に済ませよう。僕が考えていることを、みんなに伝えるんだ。

 

「アイは強くなったね。凄く強くなった」

「急にどうしたの? そんな褒めるなんて」

「確かに強くなりましたッ! 模範的な学級委員長ですッ!」

「委員長かは知らないけど、悪い気はしないわね!」

 

 ドヤ顔を披露するアイ。ちょっと微笑ましい。

 

「それがどうかしたんですか? トレーナーさん。アイちゃんが強くなったことと私達が集められたことに何の関係が」

「だから、ね。丁度良い時期だと思う」

「……ほほほ。なにが、かしら? トレーナー」

 

 タルマエの言葉を遮って、みんなへと視線を送る。ノートPCを開き、今僕が考えていることをみんなに提示する。

 

 視線がPCに集まって。画面の文字を見た瞬間。

 

【チーム・ミーティア内の真剣勝負について】

「年末にやろうか──イクイとヤン子を除いたメンバー全員での、本気の勝負を」

 

 全員、誰一人として例外なく……笑みを浮かべていた。楽しみで仕方がない、強者を前にした時の笑顔を。

 

【場所は東京レース場芝2400m左回り】

「一番実力勝負になりやすい舞台で、みんなで本気の勝負をしよう。アイが望む舞台を、僕が整える」

「あらあら、あらあら! 本当に貴方は、最高のことをしてくださりますのねぇッ!」

「おいおいおい、いいのかぁい? 全員、心置きなく置き去りにしても!」

 

 

アグネスタキオン

 

適性:芝A ダートA

距離:短A マA 中S 長A

脚質:逃げE 先行A 差しB 追い込みG

 

スピード:LF23 2242

スタミナ:UC6 1661

パワー :UC2 1625

根性  :UC3 1638

賢さ  :UB2 1725

 

 

ジェンティルドンナ

 

適性:芝A ダートA

距離:短A マA 中S 長A

脚質:逃げE 先行A 差しA 追い込みD

 

スピード:LG20 2101

スタミナ:UC2 1621

パワー :US8 1983

根性  :UC4 1647

賢さ  :UC2 1624

 

 

「他のみんなも、手加減抜きで勝負してほしい。とはいっても……もう手加減なんてできないくらいに強くなってるんだけど」

「……その通りだな。腕が鳴る!」

「……フゥー。構いません、私はいつも通り対策するだけなので」

 

 

ドゥラメンテ

 

適性:芝A ダートA

距離:短A マS 中A 長A

脚質:逃げG 先行C 差しA 追い込みA

 

スピード:LG21 2107

スタミナ:UC1 1616

パワー :UA8 1889

根性  :UC1 1614

賢さ  :UC3 1638

 

 

ホッコータルマエ

 

適性:芝A ダートA

距離:短A マA 中S 長A

脚質:逃げB 先行A 差しG 追い込みG

 

スピード:LG10 2053

スタミナ:UC1 1613

パワー :UC5 1653

根性  :UC7 1671

賢さ  :UA9 1897

 

 

「理事長やたづなさん、URAに連絡を入れて場所は整えた。後はみんな次第だよ」

「やります、やらせていただきます! お祭り娘の力、お見せしちゃいますよ~!」

「当然、学級委員長もやりますとも! 腕が鳴りますねッッ!!」

 

 

キタサンブラック

 

適性:芝A ダートA

距離:短A マA 中A 長S

脚質:逃げA 先行A 差しG 追い込みG

 

スピード:LG7 2036

スタミナ:US8 1986

パワー :UC1 1613

根性  :UC6 1667

賢さ  :UC1 1601

 

 

サクラバクシンオー

 

適性:芝A ダートA

距離:短S マA 中A 長A

脚質:逃げA 先行A 差しF 追い込みG

 

スピード:LF24 2250

スタミナ:UC1 1611

パワー :UA9 1897

根性  :UC3 1637

賢さ  :UB2 1725

 

 

「それでアイは……聞くまでもないみたいだね」

 

 プルプルと震えている。小刻みに震えて、ずっと俯いていた。

 恐怖? 違う。アイのこれは──

 

「最っっっ高よ、トレーナー! えぇ、えぇ! 勿論挑みに行くわ! 勝つのはわたし、アーモンドアイよッ!」

 

 武者震いだ。




L区分のステータスランクの分け方わかんねー!しらねー!の精神です。ところでなんすかこのバケモン集団。ちなみにこれに伴って2話のバクシンオーのステを修正しています。
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