その瞳に勝利を   作:カニ漁船

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なんだかんだ無料分でデジたん1凸はできたの嬉しい。逃げも差しもメインじゃないから石は突っ込まないけど。


ジャパンカップの前に

 ジャパンカップの直前インタビュー。出走者が一堂に会して記者からの質問に答える場が設けられた。

 出走するのでアイも参加。僕は他のトレーナー陣と一緒に、外から見守るだけだ。

 

 司会の人は興奮気味。近年でも稀に見る好メンバーだからか、表情から嬉しさがあふれ出ている。

 

「今回のジャパンカップは海外勢も超! 豪華! 凱旋門賞2勝のコンストリブルさんに、30連勝という大記録を打ち出したヴェガスクライさんが出走しています! 勿論それだけではありません! 他にも」

 

 海外勢総大将は、僅差でコンストリブル。実績面で言えばヴェガスクライに軍配が上がるけど、コンストリブルはアメリカのG1を勝っている。バ場の対応力はコンストリブルの方が上、好成績を残すのはこちらだ、なんて声が大きく、オーストラリアでの勝ち鞍が多いヴェガスクライよりも高い評価を得ていた。

 この辺はまぁ個人によるとしか言えない。コンストリブルを総大将とする声もあれば、ヴェガスクライこそが総大将とする声もあるし。気にする要素ではないだろう。当人がどう思っているかは別として。

 

 対する日本勢の総大将はラッキーライラック。つい先日秋天を制し、中距離ならば誰よりも強いという評価を得ての総大将選出だ。

 

「それでは日本総大将としてラッキーライラックさん! 意気込みの方をお願いします!」

「総大将、なんて言われてますけども、私は私のやるべきことをやるだけです。応援してくださると嬉しいですわぁ」

 

 大和撫子ってあぁいう感じのこのことを言うんだろうな。丁寧というかなんというか。所作の1つ1つが無駄なく洗練されている。美しい、なんて口にする人が多いのも頷けるね。

 なんて考えていたら、隣にいる朝霞さんが耳打ちしてきた。

 

「ララ、あぁ見えて凄く喜んでるよ聖君。ほら、耳とか尻尾見てみて」

「……確かに、さっきよりも倍近い早さで動いてますね」

 

 言われるがままに耳の方へ視線を向けると、忙しなく動いているのが見えた。表情にこそ出ていないが、日本総大将と呼ばれてかなり嬉しいらしい。朝霞さんは微笑ましそうにラッキーライラックを見ていた。

 

 海外総大将はコンストリブルかヴェガスクライ。日本総大将はラッキーライラック。この決戦になると目されて……いない。というか、大事な子が注目されていない。一番注目されるべきウマ娘の名前が出ていない。

 そう、アイだ。アイは日本総大将とは呼ばれていなかった。その理由は十分に想像がつくけど。

 

 アイはなんて言われているのか?

 

「えーそれでは。最後にアーモンドアイさん! えっと、その……げ、現在において世界最強の女王と呼ばれておりますが、なにか一言!」

「何で言葉を濁されたのかしら? わたしは」

「いえ、深い意味はありませんよラスボスとかレイドボスとか本人を前にして言えるわけないよ~

 

 建前上は世界最強の女王。その裏、というかファンの間では、日本と世界の共通の敵だとかラスボスとかレイドボスとか呼ばれている。なんともまぁ仰々しい呼び方だ。仕方ないけど。

 

(現役負けなしの22連勝。しかもG1レースを20連勝しているわけだから。そう呼ばれるのも仕方ないというか*1

「ひ、聖君。ちなみに知ってるの? 世間でアーモンドアイちゃんがなんて呼ばれてるのか?」

「知ってますよ。ラスボスとかレイドボスとか、それはもういろいろと呼ばれてますよね」

「あ、知ってるんだ」

 

 朝霞さんからまた耳打ちされたけど、もちろん知っている。その上で諦めていることも。ある意味名誉なことだし、それだけ強いってことだし。うん。

 

 それに、アイにとっては関係ない。どんな風に呼ばれていようが、やるべきことは変わらないのだから。

 

「一言、か。そうですね……わたしが勝ちます」

 

 今しがた威風堂々と宣言したように。揺るぎない、確信した表情で告げたように。僕らのやるべきことは1つに集約されている。

 

「ジャパンカップに集まったメンバーは強敵揃いです。レースは何が起こるのか分からない、もしかしたらわたしが負ける未来もあるかもしれない」

 

 誰かの息を飲む音が聞こえた気がする。ごくりと、喉を鳴らした音が聞こえた。

 

「でも、わたしには支えてくれるトレーナーがいる、とっても頼りになるチームのみんながいます。その人達のためにも、わたしは勝ちたい」

 

 気づけば視線はアイだけに注がれている。会場にいる全員が、きっとテレビの前にいる全員が。アイに注目している。

 

「だからここで、あえて宣言します」

 

 大きく息を吸って。瞳を輝かせて、周りにいるメンバー全員を見渡して。

 

「勝つのはわたし。勝つのはアイ。アーモンドアイに──負けはないわッッ!!」

 

 堂々と、自信満々に言い放った。

 

 周りの圧が跳ね上がる。隣にいる朝霞さんは震えてるし、何なら他のトレーナー陣や記者達も震えているのが見えた。その震えが恐怖によるものか、それとも楽しさによるものかは分からない。

 ただ、ウマ娘側の方は間違いなく言える……アイの宣言を、崩してやるという気概を。アイに勝利は譲らないと、目がそう語っていた。

 当のアイは変わらない。キラキラさせて、周りを惹きつけて。やることはやったと言わんばかりにマイクを返した。うん、盛り上がり的には大成功かもしれないね。記者さんも嬉しそうにしているし。

 

 と、こんな感じで進んだ直前インタビュー。特に問題なく終わって、後は当日を待つのみとなった。

 ジャパンカップの打ち合わせは後日やるとして、学園の寮に帰るまでは適当な世間話で時間を潰す。

 

「そうだ、トレーナー。マイルチャンピオンシップはグランちゃんが勝ったのよね?」

「そうだね。シニア級を相手にして4バ身差で勝ってたよ」

「ふふ、戦う時が楽しみね! わたしの方からグランちゃんの舞台に挑戦しに行くわ!」

 

 フンスフンスと鼻息荒く語るアイ。そうだ、グランアレグリアと言えば1つ。

 

「その時のレースを見繕っておくよ……まぁ、グランアレグリア本人はこのジャパンカップに乗り込もうとしていたらしいけど」

「あら、そうなの? でも、メンバーにはいなかったわよね? なんでいないかは想像がつくけど」

「倉科君やヴィルシーナに止められたらしいからね。さすがにこの連闘は無理だって」

 

 アイが出走するジャパンカップを走ろう、なんて考えていたらしい。中距離だし、三階級制覇には必要な道筋だからと乗り込もうとしていた。

 ただ、マイルチャンピオンシップからの連闘だ。前例がある連闘とはいえ、出来る限り無理はしたくないというのが倉科君の判断。なんとか説得し、無理だから諦めろと突きつけて、なんとか理解してもらったらしい。ヴィルシーナやサトノクラウンの力を借りて。

 

 ちなみに決め手はアイの存在である。倉科君曰く。

 

「万全じゃない状態でアーモンドアイと戦っても全然喜び100マイルじゃないだろ」

 

 とのことらしい……喜び100マイルって何? どういう単位?

 との理由で、次走は香港マイルに定めているのだとか。すでにG1レースを7勝している彼女が香港マイルでどんな走りをするのか……興味があるね。

 

「むっ、トレーナー。今グランちゃんのこと考えてたでしょ?」

 

 声の方へと向くと、膨れっ面のアイがいた。なんか、よく見かけるようになったねこの表情。どういう感情なんだろうか?

 

「まぁ、考えてたけど。話の流れ的に仕方なくない?」

「ダメとは言わないけど……今は目の前にわたしがいるのよ?」

「そうだね。それがなにか?」

「~~~っ! なんかもやもやするじゃない!」

 

 よく分からない理屈をぶつけられた。確かにグランアレグリアのことを考えてはいたけど。

 

「う~ん……でも、アイが戦うとしたらどこかなぁ、って思ったんだ。だからまぁ結果的にはアイのことを考えていた、と思うんだけど」

「ならいいわ!」

 

 いいんだ。相変わらず分からないけど許してもらえたなら良しとしよう。

 

 マイルチャンピオンシップはグランアレグリア。エリザベス女王杯はラヴズオンリーユーが勝ったらしい。なんというか、アイの下の世代の子達もかなり強いというか。

 

「下の世代も強いよね。アイの世代も大概だけど」

「グランちゃんにラヴズちゃん、クロノちゃんね。ふふ、戦う時が楽しみだわ! 有記念を走るのもいいかも!」

「さすがにダメね。年末にはアレが控えているんだから」

「分かってるわよ。言ってみただけ」

 

 今後のレース選びも楽しみだね、うん。

 

 

 

 

 

 

 世界中から日本へと人が集まる。今度のG1レース、ジャパンカップを観戦するために。

 世界の強豪が集まるレースは多く存在している。凱旋門賞を始めとし、ブリーダーズカップにドバイワールドカップデー、香港国際競走といった多くのレースがある。

 その中でジャパンカップの立ち位置はどちらかといえば微妙より。近年は海外の有力ウマ娘があまり出走していない、ということもあり、注目度は低かった。

 

 しかし、今回は違う。世界最強の女王であるアーモンドアイを筆頭に、世界の強豪が集ってきていた。コンストリブルやヴェガスクライが筆頭、世界の総大将として期待が集められている。

 迎え撃つ日本勢もこれまた豪華メンバー。ブラストワンピースにラッキーライラック、キセキとG1を賑わせているウマ娘が多く出走。ジャパンカップを彩っている。

 他のメンバーもG1で好走もしくは勝利した経験のあるウマ娘ばかり。史上類を見ない、過去最高レベルで豪華なジャパンカップと報道され、世界有数のレースと遜色ない注目度を誇っている。

 

 ……とはいえ、だ。やはりこのレースで最も注目されているウマ娘はたった1人。世界統一女王、アーモンドアイである。

 短距離から長距離まで。ダートにまで出張してくる真のオールラウンダー。所属しているチーム全員がそうとはいえ、やってること自体はかなり頭がおかしい。最高にクレイジーと誰もが叫んだ。

 すでにSMILE区分+αを達成している。勝ち方はともかくとして華がある。そんなウマ娘が出走するとなれば、ジャパンカップが注目されるのは分かるだろう。

 

 今回のジャパンカップの図式は、日本VS海外VSアーモンドアイである。一応日本のウマ娘であるにも関わらず、個人軍のような扱いを受けているのだ。それだけで、ジャパンカップでも抜けた強さを誇っていると察するには十分すぎる。

 未だ止まらない連勝記録。公式戦において土をつけられたことがない、全距離を統一した世界最強の女王。一体どんなレースをするのか、どれだけの不利を被るのか。その不利を受けた上で──どう勝つのか。

 

 

 期待せずにはいられない。アーモンドアイのレースに、ジャパンカップに。どんな結末を迎えるのか、世界中の人々が注目していた。

*1
主犯からのありがたいお言葉




アグネスデジタルもびっくりのミーティア軍。
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