『……聞こえてるか?』
[聞こえてる]
[今日は何やるの? ]
[音質バッチリだよ]
[なんで緊急ってあるの? ]
[もしかして、引退!? ]
『あはは……今日は顔出し兼《ライター》が政治に関わるからお知らせをしようと思ってな』
[とうとう顔出しか]
[前にチラッと画像流れてきたけど消えてたんだよな]
「どんな顔してるんだろ」
[政治に関わるってどゆこと? ]
[なんかやらかしたか? ]
[けど、最近配信とかしてなかったしな]
[これガチの奴? ]
『ガチだな。皆はエデン条約って聞いたことあるか?』
[ナニソレ]
[なんか聞いたことあるような……]
[マジで? ]
[なんか去年くらいに聞いたような]
[説明しましょう! エデン条約とはトリニティ総合学園とゲヘナ学園が互いに結ぶ不可侵の事を指します。これは昨年に連邦生徒会長が発案したものですが、ご存知の通り肝心の人物が失踪してしまい宙ぶらりんになってしまいました。ですが、今年になり急に条約締結の流れが作られ…………]
[解説助かる]
[こういう時は頼りになる]
[それはそうと長い]
[つまり……どゆこと? ]
[要するにトリニティとゲヘナの平和条約]
[あの二校が平和条約結ぶんだ? ]
[クックック、どうしてここで配信してしまったんですか]
『新規チャンネル作っても人来ないし、某報道部を通すのはちょっと不安がな』
[納得の理由]
[言うほど納得か? ]
[普通にここでやる事じゃないだろ]
[実はこれクソゲー攻略のルートだろ]
[↑トリニティとゲヘナの仲を考えると……はい]
[なんで一介のクソゲー走者がエデン条約に関わってんだ? ]
[そりゃ、……なんでだ? ]
『と言うかまだ重大発表してないんだけど』
[さっきの入りで分からないわけないだろ]
[伏せてない伏線だろ]
[↑それ実線]
[モモッターに重大発表とかあって来たけど思ってたんと違いそう]
[ある意味でこれは詐欺だろ]
[でも顔出しは重大発表だからな]
[それに付随して来るのがエデン条約なのは色々おかしいだろ]
[散弾銃を撃たれたと思ったら対戦車砲だった]
『取り敢えず顔出しから行くか。今回の為に整えてきたからな』
[整えてきた? ]
[視聴者数が六桁超えてるんですけど]
[増えすぎだろ]
[モモッターのトレンドになってる……]
[ここで、エデン条約会見するの無謀だろ]
『あ、それと今回は予行練習みたいなもんだから期待すんなよ』
[なんかガチャガチャやってる]
[これカメラの付け方忘れた奴だろ]
[ライターに限ってそんなバカな]
[あれじゃない? 刺客でも送られたんでしょ]
[↑そんな馬鹿なこと……あるかもしれない]
[これ流石に釣りじゃないの? ]
『……よっと。……さて、カメラ付けるぞ』
[おお]
[思ってたんと違う]
[……いや、ホントに違う]
[狐みたいな顔立ちだなぁ]
[百鬼夜行のお面じゃねぇか]
[それ顔出してねぇじゃん]
[ただのお面紹介だった……? ]
[……普通に仮面外したな]
[天然かこれ? ]
[普段は仮面着けてしてたの……? ]
『改めて、エデン条約機構、通称ETO代表兼クソゲー攻略者の、ミレニアムサイエンススクール所属空井エルだよ』
[あまりにも長い]
[ジャゲムかな? ]
[クソゲー攻略者だけ浮いてんな]
[↑でも一番ムズいぞ]
[TSCノーデスと条約の代表ならいい勝負だな]
[たしかに]
[エルじゃん]
[何処となく後輩に似てる雰囲気があるな]
[普通に知ってる人だった]
[うちの会社に技術提供してくれた人じゃん]
[前に電車と並走してたバケモノだろ]
[↑いくらなんでもウソ]
[↑ところがどっこい、現実です]
[!? ]
[TSCでノーデスだったのは製作者が直ぐ側にいたから? ]
[いや、前にゲーム開発部って所に問い合わせたけど説明とかしたことないって]
[色々言われてるけど政治とそんなに関係ある人なの? ]
[ミレニアムの技術提供はこの人の判断で決まってるらしい]
[普通に外交官でしょ]
[へ〜、やっぱりクソゲープレイヤーは優秀なんだな]
[……いや明らかにもっとヤバいこと言ってたよね!? ]
[エデン条約機構代表とか言ってるんだけど]
[これホントに大丈夫なのか? ]
[駄目そう過ぎる]
[けど、手腕は確からしいな]
『なんとこの度、ライターこと空井エルはエデン条約機構代表を務めることになりました。イエイ』
[イエイ(にっこり笑顔)じゃねぇだろ]
[何この気の抜けた感じ]
[モモッターで色々と武勇伝みたいなの出てきてるんだけど]
[でもクソゲーよりかは展開読みやすそうだし……]
[ライターが最近動画とか上げてなかったのエデン条約の影響だったのか。政治とか興味ない雰囲気あったから意外]
[↑けどシュミレーションゲームでクーデターと革命起こしまくって全学園転覆RTAの記録を樹立したからな]
[↑それ全学園やれたのライターしかいなかったろ]
[その時に政治戦もそれなりに出来るとか言ってたけどリアルの基準でかよ]
[これ聞くとクロノスとか通さないのは英断だなって……]
[わかる]
[理解できる]
[大正解! ]
[そういうこったぁ! ]
『あと、調印式当日は僕のボディカメラで会場内の映像を配信に残すから歴史的な瞬間を見れるぞ』
[神じゃん]
[ミレニアム画質で見れるの有難い]
[そんなに見たいか? ]
[正直トリニティとゲヘナが手を取り合う瞬間を見れるの面白そうだな]
[ライターって変な事するよな]
[クソゲープレイヤーは元から変だろ]
[今日はお知らせだけか]
[面白そうだし楽しみ]
『まぁ本当にそれを伝える為だけの配信だな。あと普通に忙しいから動画は期待するなよ。それじゃ、今日は本当にそれだけだからおやすみ〜』
──────────────────────────
「……ゲヘナ自治区第15エリア77番街、廃墟の1階か」
「ゲヘナですよね……」
「それにエデン条約を直前にこのような事をするのは……」
「こんなのどうすればいいのよ」
「とにかく試験会場まで向かおう。深夜3時に開始なら、今から出ないと間に合わない」
「……大体は分かった。僕が案内しよう」
"会見があるから試験監督はできないって……"
「いえ、会見自体は普段のテストの時と同じなので逆に対応ができるようになりましたね」
「不幸中の幸い……ですかね?」
──────────────────────────
「一先ずこのブラックマーケットを抜けようか」
「……!? 真っ黒ですね」
「だが身元を割れないようにするのは今回のような任務なら重要だからな」
「なら私も♡」
「……ストップ。……ここから先は戦闘になる」
「分かった。作戦は?」
「僕が全員抑えよう。怪我をしたら試験に悪影響だからな」
「そうか。なら支援だけしておこう」
「ホントに大丈夫なの?」
「流石に一人であの数は難しいかと……」
「……いえ、そういう訳でも無いみたいですね」
「歩いてる?」
「歩いてるような、走っているような?」
「……何かに引っ張られているみたいですね」
「移動する時に少しだけ足を浮かせてる。それによって移動速度を誤認させ不意を突いているな」
「あれ? もう全員倒してる」
"みんな、進むよ"
────────────────────────
「……えっと、なんとか内部には入れましたが」
「人の気配がありませんね……」
「銃声も聞こえるな。エル、別のルートは無いのか?」
「……あるにはあるけど僕以外を連れて通れる場所じゃない」
「取り敢えず行ってみてから考えませんか?」
「そ、そうですね。一旦予定通りに進んでみましょうか」
「あれは、検問…………?」
「止まれ! ここから先は立ち入り禁止になっている!」
「そもそも今日は、街全体に外出禁止令が出されているはずだ! 早く戻って……」
「……その制服、トリニティ?」
「どうしてここに……! ゲヘナに何をしに来た! 目的は何だ!」
「い、いえその、本当にここを通りたいだけでして……!」
「何の目的もなしにトリニティがゲヘナに……ぐっ……」
「ちょっ…………」
「二人だけで良かった」
「ちょっとエルさん!?」
「なるほど。橋の下から潜り抜けて来たのか」
「ここ下に道なんてあったの?」
「普通にフリーソロだけど」
「フリーソロ?」
「命綱なしで行うボルダリングの事ですね。死角を取るには確かにそれくらいしかありませんでしたが……もう少し安全な方法で」
「……後方から誰か来るぞ!」
「あらっ★やっぱり先生でしたか!」
「大当たりでしたわね。ご機嫌よう。ここで何をされているのですか、先生?」
"美食研究会のみんな! "
────────────────────────
「なるほど、状況は概ね理解しました。とにかくその場所に行かなければならないのですね」
"うん"
「事情は分かりましたが、タイミングが悪かったですね。この辺りは今、それなりに大きな騒動になっていまして」
「温泉開発部が市街地の真ん中でドカン★と爆発させたとかでとにかくめちゃくちゃな状態なんです」
「そのせいで風紀委員会も慌ただしく動いているという状況で……まあそのお陰で機に乗じて、私たちも風紀委員会の牢屋から抜け出せたのですけれど。ふふっ♪」
「それに非常事態ということもあって、またしても偶然その場に居合わせた給食部のフウカさんが、部の車を快く貸してくれましたし★」
「……その友情のお相手、縛られたままトランクに積まれてません?」
「フウカさんはこういう事に慣れていますから」
「もう気付かれたか。風紀委員会来るから急いで移動するぞ」
「それでは、とにかく乗ってください!」
"ありがとう、よろしくね"
「えっと、エルさんは乗らないんですか?」
「問題無い。それに全員で乗ったら動きにくいからな」
「仲間の為に一人で時間を稼ぐなんて……アカリさん、あの方の期待に応える為にも皆さんを無事に届けましょう」
「では、ちゃんと捕まっていてくださいね★出発です!」
─────────────────────────
「……二時間も走りながら迎撃をするとは、私も恐れ入りますわね」
「ホントにエルさんは大丈夫なんですよね!?」
「……ふむ、あの方はエルさんと言うのですね」
"もしかして知り合い? "
「私がよくお世話になっている方と似ているなと思いまして」
「確かに何処か面影を感じます★」
「それにこの様な戦術を扱えるのもその方ぐらいなので、後で聞いてみましょうか」
「……こんな状況でよく楽しそうに喋れるな」
「一時間も車と並走しながら戦闘して息が乱れもしていない方が不思議ですよ」
「エル、そろそろ目標のポイントに着く」
「そうだな。……それじゃあ後はお願いしますね、先生」
"任せて! "
「みんなも試験、頑張れよ」
「う、うん!」
「エルさんの犠牲は忘れません」
「私も頑張りますね」
「必ず任務は成功させてみせる!」
「……プランBに移行。作戦を開始する」
「ビルが倒れて!?」
「なるほど、これで道を封鎖して撹乱すると」
「地の利を活かした作戦だな」
「なんでエルに地の利があるのよ……」
「でも、これで無事に会場に着きます」
「それに時間もあるから、追加の勉強もできそうだ」
「では、このまま飛ばしますよ★」
色々とやってみようの回です。どういう要素が欲しいのかだったり、どういうシーンを増やして欲しいとか在れば、感想にそれとなく投げてみてください。作者は天邪鬼ではないので拾えたら拾っていきます