「……社長たちも夕方くらいには戻ってくると思うから、それまでゆっくりしていったら?」
「ならそうさせて貰うよ。……見た感じお金の工面はどうにかなってるみたいだな」
「元から散財しなければ十分どうにかなるくらいには儲かってるから。……まぁ毎回上手く行けるわけでは無いんだけどね。そう言うエル……いや、ライトは上手く行ってるの?」
「相変わらずだよ、ブラックマーケットを経由したら痕跡を幾らでも誤魔化せるからな。まぁ、そのうち解体される可能性が高いから備えは進めてるけど」
「……辞めるのは時間の問題。それこそさっき見てたけど、エデン条約の代表って言う立場を持つならなおさら。元よりエルが手を汚す必要なんてなかったと思うんだけど」
「運び屋は収入よりも実地調査の面で始めたことだからな。正直なところもう辞めても問題無いとは思ってるんだけど、隠れ蓑として優秀でね」
「だけど、最近になって運び屋の話が表にも広がりだしてる。そこまで深い理由じゃ無いだろうけど気を付けて」
「忠告どうも。……それじゃアイスブレイクはこのくらいにしておこうか」
「ここに来たって事はそういう事で良いんだよね?」
「そうだな。……便利屋68に依頼したい事がある」
「さっきの会見から察しはつくけど、私達に依頼する意図を先に理由を教えて欲しいかな?ミレニアムにはセミナーの特殊部隊がいるでしょ?」
「前に融資がどうとか話したけど何もして無かったなって思い出しただけだよ。それと、信用できて実力のある足がつかない少数精鋭の組織ってのも……なんならこっちがメインか」
「カイザーPMCとかそこら辺の傭兵よりかは信頼できるだろうね。社長の性格を知ってるならなおさら。それで、エデン条約で何をするつもり?」
「カヨコ課長が思ってる通り……」
「……囮。って事でいいんだね?」
「そうだな」
「……今回の会見は空井エルと言う条約のウィークポイントを明確化する為に開いたもの。……自分を撒き餌にして相手から狙わせる事で標的を一掃する」
「ライトが情報戦に負けるなんて相当なんだね?」
「そもそも出遅れたのが全て悪いんですけどな。相手はこの為に何年も準備を続けてきた学園みたいだし」
「……学園!?それは戦争を始めるのと同じ意味ってことなのは分かってるよね!?」
「学園とは言っても正式に認可された学園じゃないし、その辺りは心配無用。まぁ僕一人で手が回らない規模ではあるけど」
「……はぁ、思ったより面倒な事になってるね。……けど、手を貸すかどうかは社長次第」
「それと、今回の要件ならシャーレの方を頼ってもいいとは思うけど……ダメなんだね」
「頼ろうとは思ってたけど、シャーレの動向は警戒されすぎてるからな。そこから漏れる可能性が高いし、電撃戦で一気に終わらせるから後処理を丸投げしようと思ってる」
「……バレたら怒られるよ、それ」
「だろうな。けど、それくらい甘んじて受け入れる」
「多少の責任感はあるみたいで良かったよ。前に……まぁ頼み込んだのは私だったけど、処理を全部投げられたからホントに……うん。いや、今はいっか。お陰で楽しくやれてるし」
「できたら忘れて欲しいんだけどな」
「それは絶対にない。どれだけ大変だったと思ってるの」
「……空井エルにはよく分からないな」
「はぁ……そこは変わってないか。表舞台に出てくるようになって変わったと思ってたけど、まだ諦めてないだけなんだね」
「それは立場が無いからやむを得なかっただけだ。……それに今は目的の為に潜む必要も無くなったし、協力者も見つかった」
「……協力者?え、本気で言ってるの?」
「本気。なんならもう共同研究も進めてる」
「えぇ……。そんな変わり者よく見つかったね。ほんとに、今度は何を仕出かしたの?」
「歩いてたら声を掛けられた。それだけだよ」
「それ騙されて……いや、ないか。ここで生きて来た人間がそんな初歩的な失敗をするはずもないし……ひとまず、おめでとう?で良いかな」
「……けど、一応言っておこうか。私はライトがあっち側になるのなら容赦しないから」
「勿論、分かってる。それに成り行きで前に行った時があっただろ。その時に収集は終わってる」
「そっか。あの時に……」
「まぁそれなりに被害を被った甲斐はあったよ。流石に死ぬと思ったけど」
「あれで生きてる方が怖いまであるけどね。……今回も前みたいにやるつもり?」
「場合によっては。……敵の数が把握し切れてないからできれば避けたいけどな」
「敵の数が分かってもしないで欲しいかな。見てる側の方が色々と削れるから……」
「最低限、誰にも見られないようにはする。……秘密兵器が表沙汰になるのはそれだけで破滅に足を踏み入れる事になるから」
「……うん。それを知るのは私達だけで十分。……あ、そう言えばお昼は食べた?」
「そう言えば食べて無かったな。……そっちも?」
「私も。食べに行こうと思った矢先にエルが来たから……どこか良いお店ある?」
「え~と…………あ、前に教えてもらった所にしようか」
「……美食研究会のお墨付きなら大丈夫そうかな。そのお店はここから近く?」
「徒歩数分くらい。裏路地から抜けるから荷物は少ない方が動きやすいな」
「ならさっさと行こうか。もうお昼には遅い時間だし、暗くなったら歩きにくいからね」
「……早速、案内しようか。僕も行ったことは無いけどな」
「この辺りなら識ってるんだから、問題ないでしょ」
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「整備の方は上手く行ってるみたいですね」
「はい、通功の古聖堂の修復は予定通り順調に進んでいます。それとエルさんが指示した通りに、カタコンベに人員は入れていません」
「……なるほど。少し見学しても良いですか?」
「それでしたら私が案内いたしましょうか。古聖堂の各所に刻まれた古代語について知恵を貸して頂きたいのです」
「見たところ風化している部分が多いですね。……少し触ってみても良いですか?」
「この辺りのものであれば問題ありませんよ」
「……ん~~っ…………はぁ……。流石に届かないですね」
「全体的に造りが高くなっていますからね。……私がエルさんの事を持ち上げましょうか。あと数センチあれば届くでしょうしエルさんであれば私でも持ち上げられる筈です」
「後で見る機会も取れないでしょうし……お願いします」
「……では、行きますよ。……それっ」
「……っと……んっ!すこし左に」
「はい、左ですね。……この辺りで届きますね?」
「……ふむ。……へ?」
「……何かありましたか?」
「解読できはしたんですが…………ええと……」
「では一旦下ろしますね。……こちらにどうぞ」
「ありがとうございます。それで内容でしたね……」
「何か複雑な内容のものが書かれていたんでしょうか?」
「いえ……どう伝えれば良いのか……」
「……?もう少し具体的に伺っても?」
「センシティブな内容の記述が見受けられましたね。それと付近の内容からこの辺りは天井の裏に当たる場所みたいです」
「天井の裏……一種の断熱層のような役割を担っていたと言えるでしょうか。……それと内容については後ほどにしましょうか。他の方々に聞かれては少しショックを与えるかもしれません」
「……エルさんは今晩集まれますか?調査を進める過程で調べられる事も多いので、聖徒会の事についてなどまとめておきたいんです」
「僕は問題ありませんよ。サクラコさんの方も良いんですか?色々とやる事が多いので大変だと思いますが……」
「今の時期に大変なのは皆さん同じですし、……特にエルさんは心身共に疲弊しているでしょうから」
「……あぁ、セイアの事ですか。それならご心配なく。少なくともエデン条約の締結までは託されましたから」
「……もしお辛いことがあれば何時でも吐き出して下さい。今は外部の方に伝える訳には行かないので、私が聞くことしかできませんが……それでも気持ちは楽になると思います」
「思った以上に心配させてしまっているみたいですね。……ただ、今は仕事に奔走して気を紛らわせるのが一番楽ですから」
「……そうですか。……では、本日中にこの辺りの古代語を解読して改修作業に取り掛かれるようにしましょう。……エルさん続けてよろしくお願いしますね」
「では次はあそこを…………」
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「……なるほど。つまりユスティナ聖徒会の正装について綴られていたと。では、内容をそのまま直訳して下さい」
「今からの発言はあくまでも直訳したままを語っただけ。その事に留意してください」
「はい、分かりました。私はどのような内容であっても正しく知る事を恐れはしません」
「……では、『あの鼠径部は後世に残そう。これを見る同志がいるとすれば託すことがある。聖徒会長の鼠径部があまりにも欲情を誘い我々にとってのオアシスであった。しかし、いつの日からか合法露出制服が後退し■■■がチラ見えしたり■■■■が溢れる事案もなく……』「す、少し待ってください!?」
「センシティブな内容だと言ったでしょう?」
「確かにセンシティブでしたが、私が思っていたのはこう『爪を剥いでいた』とかそのような話とばかり……」
「……そのような物は無かったですよ。やはり、概要を伝える事にしましょうか。重要なのはここでは無いので」
「……いえ、先程の続きをお願いします。一度頼んで想定と違うからと逃げるのは上に立つものとして避けるべき行為。それに先程は驚いてしまいましたが、当時のユスティナ聖徒会を知る為の貴重な資料ですから」
「……少し時間を取りましょう。サクラコさん、頭が茹で上がってしまいますよ?」
「……はい、ありがとうございます」
「紅茶を淹れてきましょうか。長丁場になりそうなので、菓子類もいくつか……」
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「『……という訳で最後の一着は秘蔵の地に眠っている。設計図も何とか準備してある。同志よ!再びド■■■シスターが芽吹くその日まで、永遠にあれ!』……以上です」
「…………」
「なかなか生々しい実状はありましたが、何気付いたことはありますかね?」
「……え、えぇと。そうですね。ユスティナ聖徒会の正式な制服の設計図と原本が保存されているようなので後日、回収に行ければ良いのですが……」
「書き手からすれば宝のような物言いでしたから、本物があってもおかしくはないですね。制服の評価としてはあまりにも酷いと思いますが……」
「人により主観は変わりますから……艶麗さを見出されたからと言って必ずしも不適切と言うわけではありません」
「……ですが、他の方々に回収を任せるのも流石に気が引けてしまいますね」
「前提としてカタコンベ内の探索になるのと、僕が同伴するのは確定事項なので頼れる人も居ないんですよね」
「……やはり、私が直接出向きましょう。この関係が外部に洩れる可能性も考えれば、シスターフッドを空けることにはなりますが致し方ありません」
「本当に大丈夫ですか?」
「少し空ける程度であれば問題は無い……はずです。それに、いざとなればマリーも居ますから」
「……僕が一人で回収してくると言うのでも良いんですよ?」
「よろしいんですか?いえ、言われてみればそれが一番ではあると思いますが……」
「サクラコさんがいいと言われるのなら……。あれは元々はユスティナ聖徒会……今はシスターフッドの物ですから」
「なるほど?……!、そう言えば正式な認可はしていませんでしたね」
「カタコンベに眠るユスティナ時代の制服、遺された言葉を使うなら財宝を掘り出すのと等しい行為ですから。財宝と言うのは正しい手順で正式な人間が日の目に晒さなければ時に剣呑を形取り■■と為す……そう、習いましたから」
「そういう事であれば……"宣誓"を立てましょう。シスターフッドの長として……礼拝堂までお願いします」
「今から……いえ、今でないとですね」
「はい、それでは……」
ハナコ(サクラコさんが密会?……お相手はエルさんでしょうか)
エル「……鼠径部……欲情……■■■が……見え……」
サクラコ「す、少し待ってください」
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