「そのまま北西部から囲い込め。スパイの合図に併せて突入、標的を確保する」
『了解』
「スパイより追加の情報です。空井エルをトリニティ内部の一室にて発見。この座標です」
「……上の判断を待つ。遊撃隊は備えておけ」
『…………』
「……回線が乱れたか。……はぁ、こちらの本隊で対処しよう。みんなにも伝えておいてくれ」
「了解しました……」
『……こちらアリウススクワッド。マダムから追加の命令だ。桐藤ナギサに追加して、空井エルを確保しろ。こちらはくれぐれも生きた状態で、ということだ』
「こちら本隊。命令の内容を確認した。……空井エル確保の為、本隊の二割を分隊として動かす」
『最優先事項は空井エルの確保だそうだ。桐藤ナギサについては最悪諦めても構わない。本隊を空井エルに向かわせろ』
「了解。先ほど組んだ分隊は桐藤ナギサの確保に動け、残りは空井エルの確保に動く。私に続け!」
『伝令は以上だ。お前達は合図と共に桐藤ナギサ及び空井エルを確保しろ』
「……そうだ、遊撃部隊と通信を取れていない。そちらから掛け合ってみてくれ」
『了解した、こちらから伝えておこう。……通信を終了する』
「…………作戦開始が早まった影響で罠の準備があまりできなかったね」
「その分、アリウスの殆どを率いてきたので差し引きプラスだと思いますけどね」
「聞いた話だと正義実現委員会も動かないらしいからな。トリニティ自警団さえ抑えれば逃げられる事もないだろう」
「ところで、アリウススクワッドは来ないんですか?」
「予定では来るはずだったが、前に本隊を動かした時にアリウスに襲撃があったらしい。それも二箇所から同時に……」
「……カタコンベを抜けられたって事?」
「聞いた話だと、私たちが通ったルートを辿られた可能性が高いらしい。けど、その後にカタコンベの周期は変わってるから問題無いらしいけど……」
「相当の手練れらしい。それも前まで警戒してた、SRT特殊学園の兵士と同じくらい……」
「……合図だ」
「……総員、位置に付け。これより私たち本隊は空井エルを確保する。分隊は桐藤ナギサを確保しろ。作戦開始だ!」
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「……よく来たね。……なに、別に君たちの情報が漏れた訳じゃない。僕は察しが良くてね。セイア程ではないけど先見の明には自信があるんだ」
「なら、大人しく捕縛されろ。このホテルは既に私達が占拠しておいた。何処からも逃げられはしない」
「ひとつの聞きたいんだけどこの建物に民間人は居たかな?」
「お前が人払いを済ませておいたんだろう。最上階の23階まで護衛の一人もいない。……まぁどちらにしろトリニティもゲヘナも終わるんだ。気にする必要もない」
(違和感……こんな本隊を動かさずとも小隊でも十分な戦力。空井エルも抵抗の意思はみられない。なのに……胸騒ぎが)
「……はぁ、……ダメか」
「変な気は起こすなよ。お前のヘイローを壊す事も、私たちにはできるんだぞ」(窓から飛び降りる? いや、飛び降りたとしてもここは20階。それなら後から回収すればいいだけ)
「ヘイローを壊す……か。……例えば、こう言うので?」
「なっ!?」
「……それじゃ、お先に」
「待て! ……これは、模型か。……総員、標的が窓から飛び降りた。至急回収にあたれ」
『こちらデルタ班。標的が確認できません』
「……分かった。こちらも確認する」(何も落ちていない……なら、落下していない? いや、窓から下の階層に逃げたか)
「総員、捜索に当たれ。標的は窓を伝って屋内に潜伏している可能性が高い。デルタ班は下で待機、他の班は担当の階を各自捜索しろ」
『りょ……』
ドコォォォォン
「……くっ。まずっ!?」(建物が傾いてる!? いや、みんなここに居るんだぞ!?)
「総員、撤退。崩れるぞ!!」(気付かなかった。一体何処に仕掛けてられてた? そもそも空井エルを巻き込んでの自爆?)
「……ゔっっ」
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「……ナギサさんも回収できましたし、エルさんと合流できれば良いのですが」
「確かホテルを使って屋内戦を仕掛けるって言ってたから、ある程度はもっと思うけど返り討ちは……」
ドコォォォォン
「あそこは……」
「エルの潜伏場所……」
「まさか建物ごと……?」
「……取り扱える私たちは作戦通りに行こう」
「そうですね。皆さんにも伝えないと」
「……ハナコ、先に向かってて。ここは私が」
「はい、後ほど合流しましょう」
「あっちだ、追え!」
「……」(あの爆音で正義実現委員会やトリニティ自警団にも、何か起きてると伝わったはず。……ここからは時間を稼ぐ)
────────────────────────
「……今の音は一体?」
「あそこの建物が崩れてるんだけど……」
「……みなさんも聞こえましたか?」
「ハナコちゃん、ご無事で何よりです」
「アズサちゃんは予定通りに誘導して迎え撃っています」
「それでさっきのって……」
「恐らくは……あの規模の爆発だと下手すれば昏倒、良くてもまともに戦闘は行えないと考えられます」
「エルさんも早く助けに行かないと……」
『ごめん、こっちの罠が無くなった。今からそっちに向かう』
「はい、わかりました。気をつけてくださいね」
「ど、どうするの?」
「誰かがエルさんを助けに行きますか?」
「……いえ、それで他の敵と交戦になると逆に危険です。先生はどのように判断しますか?」
"……そうたね。ここで勝ってからみんなでエルを助けに向かおう"
「わかりました。では、ナギサさんはこちらに隠して……」
「アズサが来た」
"みんな、戦闘準備"
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「……ふぅ、な、なんとか勝てました」
「全員、戦闘不能」
「……?」
「!?」
「アリウスの増援部隊……」
「どうしてここに……」
「あうぅ……! こ、これだけたくさんの方が、平然とトリニティの敷地内に」
「まだ、正義実現委員会の動く気配がない?」
「それは仕方ないよ」
「……!」
「だってこの人たちはこれから、トリニティの公的な武力集団になるんだから」
"ミカ……? "
「やっ、久しぶり先生。また会えて嬉しいな。それと正義実現委員会は動かないよ。私が改めて待機命令を出したから」
「今日は学園が静かだったよね。あの爆発は想定してなかったけど……正義実現委員会の他にも邪魔になりそうなものは、だいたい全部片付けておいたの」
「ティーパーティーの命令が届く限り全ての所に、色んな理由を付けて足止めしておいたから」
「ナギちゃんを襲う時に、邪魔されたら困っちゃうもんね」
「『ティーパーティー』の一人……聖園、ミカさん……」
「まあ簡単に言うと、黒幕登場☆ってところかな?」
「私が本当の『トリニティの裏切り者』」
「……」
「……」
「……!?」
「という訳で、ナギちゃんを何処に隠したのか教えてくれる? さっきの爆発のせいで時間が無くなっちゃってさ」
「まあここにいる全員を消し飛ばしてから、探しても良いんだけど、トリニティ自警団の子達が来るかもしれないからね?」
"ミカ、どうして……"
「んー? 聞きたい? 先生にそう言われたら仕方ないなぁ」
「それはね、ゲヘナが嫌いだからだよ。私は本当に、心から……心の底からゲヘナが嫌いなの」
「……だから、エデン条約を取り消そうと? その為にナギサさんとエルさんを?」
「えっと、誰だっけ? ごめんね、私あんまり顔を覚えるの得意じゃなくってさ。……あぁ、思い出した。浦和ハナコじゃん。礼拝堂の授業に水着で参加して追い出されてた、あの、あはは、懐かしいね」
「まあ、一応答えてあげるとその通りかな。だってナギちゃんがエデン条約なんて変な事を始めて、セイアちゃんがエルくんって言う調停者を呼んじゃうんだもん」
「ゲヘナのあんな、角の生えた奴らとの平和条約なんて、冗談にもほどがあると思わない? 考えるだけでゾッとしちゃうよ」
「それに、エルくんもゲヘナに護衛も付けずに行くんだもん。二人揃って不用心だと思わない?」
「そんなだと本当に後ろから刺されて……」
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「……ま、そういう訳だからナギちゃんを返してくれる? 痛いことはしないよ。……残りの学園生活は全部檻の中かもしれないけど」
"じゃあエデン条約は、やっぱりれっきとした平和条約……"
「あの時は騙してごめんね先生。うん、それは嘘。エルくんも私情でトリニティに肩入れするような子じゃない。例えセイアちゃんが居ようとも、誰が相手でも論理的に判断できる……本当に年下なのかな?」
「けど、全部が嘘って訳じゃないよ。アリウスと和解したかったのは、本当のこと。この子たちはゲヘナを憎む仲間」
「……他にも色々と話したい事はあるけど、さっきの爆発のせいで本当に人が集まって来ちゃったみたいだから、邪魔なものを片付けてからにしよっか」
「……先生、気を付けて。こうして見ただけで分かる……かなり強い」
「ふふっ、そうだよ。先生には前言ったけど、私結構強いんだから。……私もちょっと本気出しちゃおっかな☆」
「せ、先生、来ます!」
「……くっ、ほんとに同じ人間なのか?」
「ひどいな〜あんまりそういう事言われると傷つくんだけど……なっ……へ?」
「なんで……あなたが私に…………」
「仲間割れ? でしょうか」
「……いえ、あれは」
「いったた〜。……はあ、体が痺れて動かないんだけどそれ本当にスタンガン?」
「どうでしょうね? 少なくともSRTで採用されてるのと同じ規格なので、数段効くとは思いますけど」
「余計な武力は持ち込まないとか言ってた割には、容赦なさすぎない?」(空井エル……情報では自爆した後に到着した遊撃隊が捕縛していたはず。けど、肝心の遊撃隊からの連絡も途絶えてる)
「……僕には何のことやら。ですが、不用心だと言ったのはミカさんですからね?」
「それはそうだけどさ〜SRTの武装を持ってくるのは、幾らなんでも話が違うと思うんだよね」
「……さてと、そろそろですね」
「無視か〜。痛かったんだよ? 今のやつ。少し経っても軽く痺れてるし、多少お返ししても許されるよね?」
「いいですよ。護衛を付けない理由について答え合わせとしましょうか」
「先生は補習授業部の指揮に集中を」
「それじゃ、やっちゃおうか☆」
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「……さっきから避けてばっかりだけど、ほんとに勝てると思ってるの?」
「おっと……別に、勝ちに来たわけじゃ無いですから。それとも負けたかったですか?」
「最後のひと言さえなければ良かったんだけど……ねっ!!」
「ぐっ……それで殴り掛かってくるのも大概ですっ……よ!」
「なんで全部受け流しちゃうかなぁ。……いや、もしかして全部見えちゃってたりするのかな?」
「見えてなかったら僕は、今頃潰れた空き缶ですよ」
「それなら、ほんとにそうしてあげる」
「……でしたら、ここで終わらせましょう」
「閃光弾、投擲します」
「うわっ!?」
「……これで、チェックメイトです」
「ほんとに風情とか無いよね。こう言うのって一対一とかそういうのじゃなかったの?」
「誰がタイマンなんて言いましたか? ……そもそも、ミカさんさえ居なければあそこの戦力は抑えられましたから」
「……うわっ、シスターフッドも動いてるの?」
「エルくんがシスターフッドを動かすとか、ほんとにエデン条約を軍事同盟として利用する気?」
「あれはハナコが話を通したみたいですよ。……別に僕はシスターフッドに頼る予定はありませんでしたから」
「一体何を対価に、…………はぁ、まあいいや。それでエルくんは私をどうするのかな?」
「どうしましょうね? 別にミカさんに直接的な恨みがある訳ではないので、シスターフッドや正義実現委員会に処分は任せる予定ですけど」
「恨みが無いって本気で言ってる? 私のせいで……セイアちゃんのヘイローが壊されて……それで恨みが無いって…………」
「なら本当の意味で答えを教えましょうか。……前提として、セイアは生きてますよ」
「……え? ……ほんとう?」
「そこに偽りはありませんよ。……確か今はD.U.の方に拠点を構えてましたかね?」
「……そっか。……セイアちゃん、生きてるんだ。それじゃあエルくんは全部知ってて……あの時に泣いてたのは……」
「見てましたか……。まあ、演技ですよ。僕はあそこまで感情的にはなれません。何が起きたとしてもこの冷めた心は、論理的に物事を解釈してしまいますから」
「なら、セイアちゃんが推薦したのも納得かな。……それと、手足が縛られてるのは分かるんだけどなんで膝枕してるの?」
「ここに頭を直接付けたら痛みますから。それに手足の拘束を解かれても、この位置なら幾らでも電撃を浴びせられますから」
「……ほんとにそういうタイプなんだね。……流石にもう、暴れないよ。私が言っても信用ならないだろうけど……だからせめて私の目に入らない位置に置いてほしいかな」
「そうですね。これはもう必要なさそうです。……さて、あっちの処理も済んだみたいですね」
「……ひゃっ」
「急に叫ばないで下さい。危うく落とすところでしたよ」
「いや、急に持ち上げるから。せめて何か言ってよ」
「……流石に僕も疲れてるみたいですね。まああっちまで運んだら降ろします」
「……」(あの体勢からなら仕方ないかもしれないけどなんで、よりにもよってお姫様抱っこされちゃうかなぁ。もしかしてセイアちゃんに何時もしてるからとか?)
何気に初アンケートでしたが投票ありがとうございます。思いの外、現状の描写を首肯してくださる方が多く驚いてます。続くはエデン条約3章ですが、2章終了タイミングで都合が良いので掲示板会を一度挟もうと思います
戦闘描写について……
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今まで通り、会話と思考だけの描写
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身体の動きや銃撃の表現を入れた描写