「……こんな場所で会うなんて、奇遇ですね?」
「っ……待ち伏せか」
「アリウス分校が仲間割れを始めた時点で、僕としてはもう争う理由がないんですよ」
「……なら、私たちの立場も知っているだろう。このままだとお前も狙われるぞ」
「別に良いですよ。ベアトリーチェが空井エルの殺害を命じない限り、アリウスは下手な行動を起こせない。三大校全てを相手に立ち回るのは不可能な事くらい誰でも理解している」
「それで、用件は何だ?」
「取引をしよう。これに応じるか、そのまま逃げるかは好きにすればいい」
「……内容はなんだ」
「僕が安全な場所を提供しよう。その代わりに傭兵として雇われてくれ」
「……リーダー、どうするの?」
「……そもそも私たちに拒否権は残されてないよ。手錠と……あれはヴァルキューレの書類かな? 取引に応じないならそのまま矯正局に送られるだろうね」
「えぇと、傭兵になったら一日3食でおやつと夜食は出ますか?」
「別に欲しいなら出しはするけど……」
「なら次いでに最新の雑誌とふかふかの布団もください!」
「布団はある。雑誌は自分の給料で買え」
「うわぁぁん」
「……ひとまずは、その話に乗ろう。追手も来てるからな」
「それじゃ、案内しようか。……ほら、掴まれ」
「……すまない。助かる」
「あそこの細道を通って行くんだけど、最後に入口だけは吹き飛ばしておいてくれ」
「分かった。私が最後に爆破しておく」
「頼んだ」
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「……っ」
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。続けてくれ……っ」
「……エルさん、これ全部食べて良いんですか?」
「上に置いてある奴は好きな様にしてくれ。……ん、よし。しばらくは安静にな」
「わかった。……それで、私たちは何をすれば良い?」
「しばらくは待機。基本的には護衛で、偶に破壊工作とかも頼むかな」
「護衛の経験はあまり無いが、破壊工作なら心得ている」
「それなら良かった。あと、ミサキについて聞いてもいいか?」
「……ミサキが風呂にいる間に話しておこうか。雇い主には自分達の情報を話さなければ行けないのは知っている」
「別に雇い主について聞きたいことがあれば、聞いてくれても大丈夫だからな?」
「いや、エルの事はマダムから聞かされてる。それと契約書にも一応署名しておいた」
「……」
「何かあったか?」
「世間一般の常識について学ぶ必要があると思ってな。……社会通念辺りは抑えておかないとな」
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「ケアはこれくらいで終わろうか。……お疲れ様」
「……さっきと明らかにキャラが違うんだけど、どういう風の吹き回し?」
「さっきまではパブリックだったからな。雇用の話も終わった事だし、アリウスの外について教えようと思って」
「いちいち撫でながら話すのもアリウスの外では普通なの?」
「妹には良くしてるな。その癖が抜けなくて後輩とかにも不意にやってるらしいけど……覚えはない」
「……本当に生きてるの? 凍ってるみたいに冷たくて、変な感じがするんだけど」
「生死の定義で言うなら生きてるかな。……まあ、1秒先では肉塊になってる可能性もあるけどな」
「……それは私達が裏切るかもしれないから?」
「違う。……ミサキは何が人を殺人者にするか、聞いたことがあるか?」
「……殺意の有無でしょ」
「そうだ、重要なのは認識の在り方。……それなら、ヘイローを破壊する技術を作り出した存在は殺人者足り得るか?」
「殺意が無かったらそんなもの作らないだろうし、殺人者足り得ると思うけど。……ヘイロー破壊爆弾の事について話してる?」
「それも一つだな。……ただあれは不完全な代物でもある。比較的簡単に作れる代わりに、爆弾としての要素も併せ持ってしまった。そのせいで、仮にゼロ距離から命中したとしても確実に壊せるとは言い切れない」
「……初めて聞いた。だけど、リーダーや姫が生きてるし実際にそういう代物なんだろうね」
「普通なら重傷を負って活動もままならなくはなるんだけど、アツコのマスクには色々と施されてたみたいだからな」
「それで、そう話すってことはエルが製作者?」
「一応は製作者だな。……ただ、元々は別の目的を持って作り出してた物の完全な副産物でもある。殺意を持たずして、殺人者を容易に生み出せる兵器を生み出してしまった。そんな人間はいつ命を落としても、何らおかしくない」
「ヘイローを砕く兵器を作れる人間は、何時でも狙われうるだろうね。……なら、日頃から私たちを連れて行けばいいと思うけどなんでそうしないの?」
「逆に聞くけど、常に護衛をし続けて、自由に遊ぶ時間が取れなくてもいいのか?」
「別に今までだってそうだったから。……むしろ、今の待遇が良すぎて混乱してるくらい」
「……なら、頼んでも良いか?」
「それが命令なら、私は従う。……だから好きに使って」
「……」
「……どうしたの? 何か変なこと言った?」
「……いや、少し考え事をしてた。……そこまで言ってくれるなら、お願いしようか。ミサキ、しばらくは僕の護衛として付いてきてくれ」
「了解」
「それじゃあ明日には出発するから、今日はみんなと話しておくといい」
「……私一人で良いの?」
「各地を転々とするからな。大所帯だと都合が悪いし、サオリもアツコもヘイローにダメージがあったのは事実だ。しばらくは安静にさせないといけない」
「……ミレニアムの生徒なのに転々とするの?」
「僕の役割は外交の管理だからな。何かと予算も嵩むから財源確保に勤しんでるってだけだよ。公的な内容は……だけどな」
「裏で何かやってるって話は聞いてるけど、今回のと関係は?」
「……大きく絡む事になるな。一応これからの行動について伝えておくと、ベアトリーチェとカイザーグループ周りの対処に当たっていく」
「まあ、簡単に言えばトリニティと手を組んでアリウスに攻め込むって事だな。ベアトリーチェが支配してる間はどうにもならないだろうし、早いところ消してしまいたい」
「私が言うのもあれだけど物騒だね。……それでカイザーの方は何か理由があるの?」
「殺人者足り得る存在は切り捨てる。金に目が眩み、浅ましい欲に引かれる存在は害にしかならないからな。それに個人的な恨みも込みだな」
「……意外だったか?」
「聞いてた人物評には、感情は人を利用する時しか持たないってあったから思ってたより人間味があると思っただけ」
「どんな人物評がされてたかはあとで全部聞かせて貰おうか。自分自身を客観視した情報を知る機会は貴重だからな」
「……大体はわかった。みんなにも伝えてくる」
「今日はお疲れ。それじゃまた明日な」
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「こんな真夜中に来るのは予想してなかったのかな」
「ちょうど良かった……と、そうしておこうか。私も眠り疲れていたところだ」
「隣失礼するよ。相変わらずいいベットだな」
「医療的観点から長期睡眠による身体への負担を、人体の代謝と修復から事実上0にする……そう、書いてあるね」
「実際に長期間の使用をしてみてどうだ?」
「体が悲鳴を上げているね。悠久の闇に沈む中でミネの補助があったとはいえ、微睡みの淵から舞い戻った私には抗えぬ性だね」
「なら袖だけ外してくれ。ここには塗布薬だったり湿布も一通りは揃ってるから、さっさとやっておこうか」
「君の首肯は予測していたからね。既に準備は済んでいるよ」
「それじゃあ今まで何を見て、どんな変遷を辿って未来を変数にしたのか聞かせて貰おうか」
「そうだね。いや、君には既に語っていたと……?」
「僕も一回聞いたような気はするんだけどな。あいにく完全記憶なんて離れ業をこの身に持ち得ないんだ」
「どちらにせよ、君には共有をしたい。私には理解できずとも、君になら全ての要点を結わえる事もできるだろう」
「なら、応対に深入りする前に失礼しようか」
「っ……なかなか、強烈っ……だね」
「五感が研ぎ澄まされてる様なところかな?」
「……っ……正確に言うのなら、第六感とでも言うべきか」
「肉体の強張りも幾つか消えてるみたいだな。……ここまでの対価を得たんだ。それなりに重要なんだろ?」
「私の手記におおよそ纏めてある。……君に聞きたいのはクズノハと言う人物についてだ」
「クズノハ……心当たりは無いな。服装とかは分かるか?」
「恐らくは和装だろう。スニーカーにも下駄と言ったかな? その様な物が付けられていたね。……それとエル、君に助言を任されていてね」
「……助言か。それも名指しで」
「君は少しばかり、近付きすぎたらしい。私はソレに触れてしまった様な状態だったが、代償を払い戻ってこれた。しかし君には猶予が残ってはいない……と」
「お人好しとでも考えておこうか。元よりこの道の果てにある終幕くらいは理解してる。……ソレは何時でもこちらを見ている。深淵は常に浅瀬を見つめて、不変が崩れるのを待っている」
「……クズノハだったな。百鬼夜行の方の伝承で聞いた事があるにはある。大預言者クズノハの名を冠していたはずだ」
「先ほどは門外漢を肯受していたと記憶しているが、やはり完治はしていないようだね」
「まだこれで済んでるだけ御の字だな。……一年前の手記にあるかな。直接は特定できないけど、体は覚えてる」
「……随分と迷ってるみたいだね。君にとって並列動作は苦手分野だったかな?」
「いいや、寧ろ専門だな。……クズノハについては後に回しておこうか。手元が疎かになってちゃ世話ないな」
「ああっ、……そうっ、だね……思いのほか、刺激的でっ……くっ」
「眠気覚ましにちょうど良かったな。……後でブラッシングもしておこうか。久々に人前に立つんだし、荒れた姿を見せるわけにもいかないだろ?」
「よろしくおっ……おねがいするよ」
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「大預言者クズノハの伝承とかあったよな?」
『たまにお話は聞きますけど、それがどうかしたんですか?』
「ちょっと情報や言い伝えがあったら教えて欲しいと思ってな。噂話とか眉唾ものくらいで構わないから、何かあったら教えてくれ」
『常連さんに確か歴史家の方もいらっしゃったので、その人にも伺ってみますね。……エルも無事みたいで良かったです』
「その節は心配を掛けたな。こっちは他と違って無傷だから支障もないけど、後始末に追われることになりそうたから半日ずつしか行けそうにない」
『事情はわかりました。では、日程は追々送るので商品制作の方お願いしますね』
戦闘描写について……
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今まで通り、会話と思考だけの描写
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身体の動きや銃撃の表現を入れた描写