「改めて、よろしく頼むよ」
「ええ、任せてください」
「あんな美味しいお肉貰えるならいくらでも手伝うよ」
「まさか鉄板を買ってくるとは思ってなかったな」
「高い肉は一気に火を通してやった方が良いからな。あと鉄板はあげるよ」
「……なぁ、金遣いが昔より酷くなってないか?」
「近いうちに結構な額入ってくるから良いんだよ」
「なら大丈夫だな。……いや、収入があるからって金遣い荒くなってるのは大丈夫か?」
「世間的には割と終わってるとか言われる案件だけど、僕の場合は立場とか色々あるからな」
「自覚はあったんだな」
「流石にね。……それとそろそろ訓練の方を頼もうかな?」
「そうですね。まずは一度使って貰った方が早いでしょうからこちらを」
「試し撃ちだな。的は……あの木でいいか」
「エルさんが普段使っている物より反動が大きいと思いますので、気を付けてください」
「…………くっ……。そうだね、反動が重たい。でも、威力も集弾も申し分ないね」
「兄貴でも反動が重たいって感じるんだな」
「そりゃ感じるでしょ。訓練とかしてないし、筋力系のトレーニングもあんまりできないから」
「それでここまで狙いを付けて撃てるなら、日常生活を送るには十分ですよ。……あと、どうしてSRTの装備が必要になったのかお伺いしてもいいですか?」
「電話の時はこっちの問題だからって言ってたけど、どうせ盗聴が気になるとかそんな理由だろ?」
「サキはよく分かってるね。それでSRTの装備が必要になった理由は単純でね。友人が襲撃を受けるからって話だね」
「…………それだいぶ不味い案件じゃないか?」
「襲撃犯の方も調べてあるんだけど正式な情報ではないし、政治的な問題が大きいからあんまり外部の方を頼れなくてね」
「なるほど。エルさんの友人の方ですか……政治的な問題が大きいと言うことは生徒会の人ですか?」
「生徒会だし、かなりの重役だよ」
「なら学園の治安組織の方を頼ればと思いましたが部隊を動かすと相手方の動きが読めない可能性が高いと…………」
「まぁ、そう言うこと。それでSRTの装備まで求めた理由が襲撃とは言ったけど、正確に言うなら暗殺だからかな」
「……それは言葉通りに受け取ってもよろしいですか?」
「文字通りだよ。ヘイローを破壊すると言い換えても良い」
「ヘイローを破壊する技術を持った相手に対して、万全の装備を持って対応したい……そう言うことですね」
「そうだよ。理由としてはこれで以上」
「確かにこれは盗聴を警戒するのも納得の理由ですね…………」
「SRTの任務と遜色無いし、なんなら支援がない分ハード過ぎじゃない?」
「改めて……SRTの装備を貸して欲しい」
「そこまで真剣に頼み込んでくるなら、私は良いと思うぞ」
「そもそもお肉貰ってるから私は全然いいよ~」
「私も……そう言うことならいいと…………思う」
「改めてエルさんの状況を理解しました。想像以上の事をしていて驚きましたが……誰かを助けるために使ってくださるのであればSRTの装備をぜひお使いください」
「けど、きちんと扱えるようになるまでは渡さないからな。いくら装備がよくてもそれで兄貴が危険な状況になったら洒落にならない」
「それはもちろん分かってるよ。ありがとう、こんな面倒事に関わってくれて…………あと今回の事は他言無用で頼むよ?」
「もちろんです。そもそも話したところで信じる人なんていないでしょうが……」
「なら兄貴にはSRTのCQCを叩き込んでやらないとだな」
「そうですね……一度実戦形式でエルさんの実力を確認してもよろしいですか?」
「こっちこそよろしく頼むよ」
「実弾での訓練でも良いのですが、怪我をしてしまうとエルさんのお仕事にも影響が出るのでゴム弾で行いましょうか」
「SRTのは流石に一発食らうだけでも不味いからな」
「兄貴が戦闘してるの最近は見てなかったけど、前とあまり変わってないんだよな?」
「まぁ、やってみれば分かると思うよ」
「この辺りで始めましょうか。……相手を拘束或いは降参させれば一度終わりとしましょう」
「じゃあ、早速始めようか」
「…………戦闘開始です!」
ミヤコは銃口を傾け以前サキから聞いた話を思い出す
(エルさんは高速機動を用いての急襲を得意としている。ならば動き出したタイミングで攻撃するのが理想的でしょうか)
「……いくよ」
「…………はっ…………ふぅっ……!」
懐へと潜り込み射撃の動作に入ったエルの銃口を払いのけ、サブマシンガンの乾いた破裂音が響くが対象は大きく後退した
(事前知識がなければ確実にやられてましたね。ですが、攻め方は単純…………これならどうにか……)
「ねぇ、瞬きしたらサキのお兄さん消えてたんだけど」
「ミヤコ良くあれに対処できたな」
「ジャンプであんな速度が出るんだ…………」
「サキは前に見たことあったんだよね?」
「なんか前より速い気がするな」
「…………銃を撃つ時に、一瞬……止まって……たね…………」
「確かに引き金を引く時に速度がちょっと弛んでたな」
「初見なら先輩らでも食らってくれたんだけど、通らないなんて驚いたよ」
「……エルさんの戦い方はサキから聞いたことがあったので。事前情報がなければ勝負は付いていたかもしれません」
「事前情報だけで、反撃まで仕掛けてくるのは流石だよ」
「……エルさんはまだ、余裕がありそうですね」
「そう見えるかな? …………まぁ、次で終わらせようか」
(恐らくまだ速度が上がる、だからこその余裕でしょう。なら動き出しで潰して攻め入る隙を無くしましょうか……)
「臨むところです」
「…………!」
一瞬の変化を見逃さず引き金を引いた瞬間、視界は星空を映し出し照準はエルから外れる
「……っ! …………なっ!?」(転ばされた? 足が拘束されて……)
「隙ありだな」
その言葉と共に腹部を膝で押さえつけ身動きを封じられたことで、銃口とそこ背景の星空を眺めさせられた
「…………ええ、そうですね。降参です」
「今のは何が起きたんだ? ミヤコが急に転んだみたいだが」
「ワイヤーですね。始めに接近してきた時に仕掛けていたのでしょう」
「ほら見えるかな? 結構細いから分かりにくいとは思うけど」
「ほんとだ。しかも光学迷彩じゃんこれ、どうやってんの?」
「さぁ? 開発者じゃないからそこまでは分からないかな」
「それにしても、この細さでかなり丈夫そうですね」
「大型船とかでもこれ一本で固定出来るくらいには、耐久面を追い求めたからね」
「普段は自爆装置とか作ってばっかのところって前に言ってたけど、こう言うのもちゃんと作ってるんだな」
「元々はモノレールのワイヤー強度を上げて、運用年数延ばせるように依頼した物だからな。倫理観が飛んだり実用性よりロマンを優先することがあるだけで、技術は一級品なんだよ」
「途中の倫理観とか実用性の話で台無しじゃないか?」
「まぁ、否定はしない。けど何が役に立つか分からないから、活動してるならそれで良いかなとは思ってるよ」
「そのワイヤーって余ってたりしないか? この辺りの罠だったり、戦闘で使えたら便利そうだ」
「なら追加の製造を頼んでおこうか」
「このワイヤーを戦闘で活用するのは難しくないですか?」
「頑丈だし相手に気付かれないし携帯性も良くて適任だと思ったんだが、何かダメだったか?」
「視認性が悪いと言う点です。相手に見付からないのも大事ですがここまでのものだと自分自身でも見失いませんか?」
「…………言われてみればそうだな。戦闘中に仕掛けて場所を見失ったら自分の罠に掛かる可能性も考えられる」
「ならサキのお兄さんは、さっきの戦闘の時にどうやって使ってたの?」
「……う~ん。普通に視認できるからこれと言って問題が無かったんだよね」
「もしかして、光学迷彩とか見破れる感じ?」
「普通に分かるかな。空間に輪郭が浮いてる感じで違和感が凄いんだよね」
「そりゃ子ウサギ公園の罠をどれも軽々と避けれるわけだわ」
「でも特殊部隊みたいに知識があるわけではないから、罠を解除したりして支援をするみたいなことは出来ないんだけどね」
「ですが、エルさんが敵陣地に攻めに行くわけではないのでそこまで問題はないと思います」
「それに兄貴なら基本的に逃げ切れるだろうしな」
「……ふと思ったんだけどどのくらいの速さで走れるの?」
「確か何年か前に百鬼夜行へ旅行に行っただろ? その時に暴走した電車に追い付いて無かったか?」
「帰りの電車が暴走してて、操縦士不在だったから乗り込んで無理やり止めたな」
「けどあの後に疲れた様子もなかったよな」
「まぁ、そうだな。あれくらいなら特に問題はないかな」
「それこそキヴォトス全土を駆け巡っても問題無さそうだな」
「いつか機会があれば試してみようか」
「それで、ミヤコ的にはどうだ? 兄貴の訓練に関しては」
「恐らく戦術の勉強をした方が良いと思います。特に対多数の際の戦闘方法を学ぶべきですね。個人相手なら負けることはないでしょうし」
「なら明日からもよろしく頼むよ」
「二週間後に向けて出来るだけの事をしましょう」
星空の下、月を見ながらウサギは協力に応えた。それは自分達が一番得意とするものだったから
組織ごとに保安部だったり情報部だったりがいるけど、私はそう言う情報収集とかして上に伝える組織が大好きです