「…………エデン条約締結に向けてお忙しい中で、お時間をくださりありがとうございます。ミレニアムサイエンススクールセミナー所属の空井エルです」
白を貴重とした空間にシャンデリアが明かりを灯す。その空間で1人の生徒会長は来訪者へと視線を合わせる。そしてティーカップを下ろし話を始める
「こちらこそ、わざわざトリニティまでお越しくださりありがとうございます。私はティーパーティーのホストを務める桐藤ナギサと申します」
「確かセイアちゃんが言ってた昔馴染みの子だよね! あ、私は聖園ミカだよ。いつもセイアちゃんの相手をしてるなんて、すごく大変そうだね」
「ミカさん……今回はエデン条約でミレニアムの参列に関して協議するために来ていただいたんですから、失礼の無いように」
「それにしても時代劇を見ているようだね。エルの畏まった言葉遣いを見れる日が来るとは思ってなかったよ。それほどの演技力があるなんて始めて知ったね」
「セイアと話す時に丁寧に話そうとか思わないし大抵はこっちの方が立場上だから、一通り言葉遣い確認して来たんだよ」
「君にも人間らしいところがあるようで安心したよ。どこぞやの言葉遣いも改められないおてんば娘と違って場の空気も読めるようだしね」
「セイアちゃん、それはどういう意味かな?」
「なに、自覚があったのかい? それなら日頃から心掛けて欲しいね」
「お二人とも、今は落ち着いてください。お客様が居る場でその様なことをしていれば、ティーパーティーの品位にも関わります」
「セイアから常々聞いていましたから僕は大丈夫です……」
「ならもっと気楽に行こうよ。ナギちゃんもエルくんもそんな緊張せずにさ~」
「相変わらず短絡的だね。しかしエルがその様な口調で話しているのは、私もむず痒いからね。交流の一環として少しはリラックスすると良い」
「いっっつもセイアちゃんは一言余計だよね」
「こほん、以前セイアさんからお話は伺っておりますが改めて確認をさせてください。"エルさんがミレニアムの代表としてエデン条約の立会人を務める"と言うことで、お間違い無いでしょうか?」
「間違いありません。本来は会長が務めるべき案件ですが、当人が不在のためセミナーの空井エルが立会人を務めます」
「それと、エルさんにはお願いしたい役割があります」
「……恐らく"
「はい。本来は連邦生徒会側の人員が中立的な立場から管理すると言う予定だったのです。しかし、今回の条約に連邦生徒会は関与しないそうで、ETOの責任者を探していたのです」
「そこで私は君を推薦した。ミレニアムのセミナーと言う立場であり、論理的な行動ができると言う確かな信用があるからね」
「ETOの責任者を引き受けましょう。端からこの件については僕が背負うつもりで居たので、既にミレニアムには話を通して許可も貰っています」
「ありがとうございます。ゲヘナの方にもこちらで話を通しておきますので…………」
「あちらには既に今回の件を伝えて承諾を得ているので、直ぐに話は通ると思いますよ」
「相変わらず用意周到だね。……いや、今日の午後に時間を空けさせたのは午前中にゲヘナの方に話を通すためか」
「敵は動く前に撃てって言葉もあるように、こう言う話題は早いうちに全体へと周知させることが大事だからな」
「………ところでエルくんの護衛の人はなにやってるの?」
「…………? 護衛……ですか?」
「ゲヘナからそのまま来たなら、護衛の人が居ないのはおかしくな~い?」
「あ~、いや。護衛は初めから居ないですよ」
「エルくんって護衛付けないの? ミレニアムなら人じゃなくてもオートマタのいくつかは準備できると思うんだけど」
「余計な武力は持ち込む必要がないってだけですよ。今回の場合は、第三者としてエデン条約の締結を手助けするのが目的ですから」
「不用心すぎない? ほんとに大丈夫なの?」
「心配は要らないとも。仮にエルをどうにかしようと武力を向けたとしても、風のように消えて見失うだろうから」
「要するに足が速いから問題ないってことだ」
「でも、こうされたら逃げられないと思うな☆」
そう言った途端に腕を捕まれる。ただ純粋な疑問を口にする子供のように語る言葉と裏腹に、力強く握られた腕を振りほどこうとする
「…………くっ…………ダメか。……力強くないですか?」
「パテル派の代表は武力の高いものがなる……と言えば君にも分かるかな?」
「要するにパテル派で一番強いと。……え~……よっと」
「あれ? 抜け出されちゃった」
「ミカさんが掴んでたのは腕とは言っても、外付けのアタッチメントみたいなものですから」
「これが俗に言うミレニアムの技術なんだね」
「あと、ここに護衛を入れなくても心配の顔色が無かったのは強い護衛が既に居たからと言うことでしたか」
「先ほどからミカさんが迷惑を掛けて申し訳ありません」
「いいんですよ。それと、時間が迫ってるので本日はこれくらいで失礼します」
「では、エルさん本日はありがとうございました」
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「ゲヘナにも話を通してあるって言ってたけど、もしかしてここまで自分で走って来たとかだったりするのかな?」
「……! よく分かったね。今日の君はいつもと違って冴えているようだ」
「冗談のつもりだったんだけど? あといつもと違っては余計じゃないかな?」
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帰路に付いたエルはブラックマーケットへと足を踏み入れる。顔を隠しコートを羽織り、闇の世界の制服へと着替えた
「久し振りだなライト。今日は何をお探しだい?」
「ワインを何本か頼めるか?」
「なら赤が6あるな」
「全部貰おうか。35でいいか?」
「ライトは相変わらず太っ腹だな。今度も良いやつを取っといてやるよ」
「また頼むよ。それじゃ元気でな」
そうしてブラックマーケットで数々の品を買い集めていった
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「……あれ? アルか。どうしたんだ銀行なんかに」
「融資を受けに来たんだよ。ライトはいつも通りお金を入れに来た感じかな」
「ライトじゃん! 最近見掛けなかったからアルちゃんが心配してたんだよ~」
「べ、別にそこまで心配してなかったわよ!」
「それは悪かったな。忙しくて時間がなかったんだよ」
「どうせそんなことだろうとは思ってたよ。色々聞きたいこともあるけど先に入ろうか」
「そうだな、積もる話しもあるだろうし」
そうして銀行へと5人で入る。辺りには表の社会では見ることの無い様々な顔が番号を呼ばれるまで待っている
「今日はあんまり混んでないかな?」
「番号札取ってきますねアル様」
「僕は先にお金を入れてくるよ」
番号札には目もくれず受付へと直接出向き、銀行員へと話し掛ける
「預け入れしたいんだけど行けるか?」
「え~と、番号札をお取りいただいてから……」
「ライトだ……これで良いか?」
「ライト様でしたか。もちろん大丈夫ですよ」
「このカバンにあるのを頼む。大体7000はある」
「確かにお預かりしました。では、少々お待ちください」
4人で座る便利屋の隣へとライトは腰を下ろす
「それで? なんで融資を受けに来たんだ?」
「ライトはアビドス高等学校って知ってる?」
「砂漠のほぼ廃校も同然の崖っぷち学園だろ?」
「そう、生徒数も五人で多額の借金がある」
「そして便利屋68は、そのアビドスの校舎を占領する依頼を受けたの!」
「けどアルちゃんが傭兵を雇うのに予算使いきっちゃって、もう依頼達成がムリそうだから借りに来たって訳」
「…………その依頼はもう諦めた方が良くないか?」
「そうしたいのは山々だけど、相手がカイザーなの」
「……そりゃ諦めきれないな。あそこ相手はキツいもんな」
「なぁ、便利屋って融資受けれるような実績あるか?」
「正直なところ、ムリかな。ペーパーカンパニーとか言われるのがオチだと思う」
「まだ銀行強盗でもした方が可能性あるかもな。少なくとも7000万は現金であるから」
「それはライトがさっき預け入れした奴でしょ。いいの?」
「別にブラックマーケットの銀行なんてリスクヘッジの一環でしかないからな。別に盗られてもそこまで影響はない」
「そう。……あと時間掛かりそうだね」
「まぁ、6時間コースかなぁ」
そして時計の針が半周した
「…………ほら順番来たぞ、行ってこい!」
「……へっ、あ、そ、そうね。行ってくるわ!」
「ほら起きろ!」
「えっ……!? あぁ……寝てたのか……」
「取り敢えずアルは融資受けに行ったよ」
「ありがとうライト、危うく寝過ごすとこだった」
「6時間コースだったからな。人少ないとか言うもんじゃなかったよほんとに」
「ハルカとムツキも起こさないとな」
「そうだね。……ほら二人とも起きて」
「う~ん、…………!?」
「…………アル様!?」
「あの感じ融資受けるのムリだな」
「そうだね。日雇いから始めたらとか言われてるよ」
「つまり私達ただ寝ただけ?」
「まぁ、そうなるね」
「このまま行ったらそうだな。けど聞いていいか? なんで僕がずっと待ってたと思うよ」
「……そう言えばもう用件は終わらせてたね」
「もしかして、ライトが融資してくれるの?」
「ここで見捨てるレベルまで落ちた覚えはな……停電!?」
辺り一帯が暗闇に包まれ、銀行内へと駆け込んでくる何人かの影と足音が鳴り響いた
改めて銀行を襲うくだり見て思ったけど、ヒフミが不憫だなと思う気持ちと、本性を知ってるが故の感情が湧いてきますね