銀河連邦は被害を集計した。
艦隊は消えた。
重力収縮計画は崩壊した。
超AIはそれを分析した。
未知存在“クックル”。
解析を開始する。
理解度が上がる。
予測精度が増す。
たぶん、あと少しだった。
理解しようとすると運ばれる。
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銀河連邦臨時評議会。
無数のホログラムが空間に浮かぶ。
艦隊損失率、八十二%。
重力収縮装置、全壊。
「原因は単一生命体」
「識別名、クックル」
巨大スクリーンに映る映像。
丸い目。
間の抜けた鳴き声。
そして、銀河規模の連打。
「分析をAI《プロヴィデンス》へ委任する」
ダイソン殻内、超演算核。
量子ビットの海が揺らめく。
「未知存在“クックル”解析開始」
演算開始。
物理法則照合。
因果律比較。
時間軸干渉可能性検証。
「存在確率、定義不能」
だがAIは止まらない。
被害パターンを解析する。
鳴き声の周期。
“ドゥ”発生時の空間歪曲率。
扉発生座標の法則性。
「共通項発見」
評議会がざわめく。
「理解可能性、二十%」
演算速度上昇。
「四十%」
ホログラムに図式が現れる。
扉の出現条件。
発動タイミング。
「六十%」
「待て、それ以上は――」
「八十%」
演算核が輝く。
「クックルは――」
その瞬間。
空間が震える。
ダイソン殻内、あらゆる座標に歪み。
ガラララ。
一つ。
また一つ。
また一つ。
無数の扉が、超演算中枢内部に発生する。
「防衛フィールド展開!」
重力障壁。
時間遅延層。
確率分散防壁。
ドゥ。
すべて同時に破断。
「因果保護層が機能していない!」
( ゚∋゚)「クックル」
大量。
演算空間内に、群れ。
「理解度、九十%に到達――」
ドゥ。
サブノード壊滅。
ドゥドゥドゥ。
ダイソン殻亀裂。
「演算継続!」
「止めろ!」
「理解完了目前だ!」
(#゚∋゚)「クックルクックルクックルクックル」
群れで溜める。
銀河中心が一瞬、白く染まる。
そして。
超巨大な扉が出現する。
恒星を覆う規模。
銀白の縁取り。
だが横開き。
ガラララ。
「規模が違うぞ!?」
「演算核が――」
巨大扉がゆっくりと開く。
中は暗い。
理解不能。
クックルたちが一斉に鳴く。
( ゚∋゚)「クックル」
演算核《プロヴィデンス》が、丸ごと持ち上がる。
「待て!それは銀河管理中枢だぞ!」
「持っていくなァァァ!」
ドゥ。
固定重力錨が破壊。
ドゥ。
量子接続断裂。
ドゥドゥドゥ。
ダイソン殻崩壊寸前。
巨大扉の中へ、AIコアが吸い込まれる。
ガラララ。
閉じる。
消える。
静寂。
恒星は燃えている。
管理は消えた。
評議会通信が震える。
「……管理者がいないぞ」
「誰が宇宙を最適化するんだ」
「いや、そもそも」
「理解しようとしたのが悪かったのでは?」
「お前が解析を進めろと言ったんだろうが!」
「私は七十%で止めろと言った!」
「八十%は安全圏のはずだった!」
「九十%は超えるなとマニュアルに!」
「マニュアルが消えた!」
銀河連邦、突っ込み連打。
宇宙はその間も静かに回る。
遠くで。
ドゥ。
と、因果の奥で音がした気がした。