宇宙を管理する者はいなくなった。
時間を剪定する者も消えた。
それでも宇宙は続く。
だが、その外側があった。
無の空間。
そこに揺らぎが生まれる。
新しい宇宙が創られるらしい。
従来の宇宙がいくつか吹き飛んだ。
興味はないらしい。
扉は無にも出る。
----------------------
光もない。
闇もない。
時間も空間も存在しない領域。
無。
そこに“在る”何か。
姿はない。
形もない。
ただ、創造の意思だけが揺らめいている。
『揺らぎ、開始』
無に微細な震えが走る。
量子でもない。
因果でもない。
純粋な創発。
そこから宇宙が芽吹く。
爆縮。
膨張。
光。
物質。
時間。
ひとつの宇宙が生まれる。
余波で、既存の宇宙が二つほど消える。
泡のように弾ける。
だが創造存在は興味を持たない。
『不要』
再び揺らぎを生む。
別の宇宙。
物理定数の違う宇宙。
重力が反転した宇宙。
時間が逆流する宇宙。
創造は止まらない。
そのとき。
無の一点が、わずかに歪む。
横に。
ガラララ。
何もない場所に、引戸。
存在は反応しない。
『外的因子、無視』
( ゚∋゚)「クックル」
鳴き声が無に響く。
創造存在は初めて“視る”。
『干渉体、確認』
『宇宙生成プロセスとは無関係』
『排除不要』
揺らぎを再開する。
新宇宙の芽が生まれる。
ドゥ。
揺らぎがずれる。
『……?』
位置誤差。
創造座標が微妙に逸れる。
『再調整』
ドゥ。
揺らぎが裂ける。
『干渉を確認』
クックルが近づく。
(#゚∋゚)「クックルクックル」
溜める。
『この干渉体は何だ』
『物理法則外存在?』
『因果未定義?』
ドゥ。
創造波が歪む。
ドゥ。
無が震える。
『驚異認定』
『興味深い』
『創造対象として適格か?』
「……何だお前は」
初めて言葉に近い何かが漏れる。
ドゥドゥドゥ。
乱打。
新宇宙の揺らぎ位置がずれる。
爆縮点が回転する。
無が軋む。
『停止せよ』
創造存在が力を増す。
複数宇宙を同時生成し、干渉を埋める。
宇宙が生まれ、消え、生まれ、消える。
ドゥドゥドゥドゥドゥドゥ。
連打。
揺らぎが一点に収束する。
『座標、固定不能』
『干渉体が中心を奪取』
無の中心に、クックル。
( ゚∋゚)「クックル」
最後の一鳴き。
揺らぎが爆発する。
ビッグバン。
光が走る。
時間が始まる。
空間が広がる。
物質が生まれる。
重力が結ばれる。
その中心に、クックルの影。
鳴き声が、宇宙背景放射になる。
“ドゥ”の振動が、基本相互作用になる。
宇宙は広がる。
星が生まれる。
銀河が形成される。
文明が芽吹く。
どこかの森に、小さな揺らぎ。
どこかの王都に、わずかな歪み。
どこかの宇宙に、横開きの可能性。
創造存在は消えたのか、溶けたのか。
わからない。
ただ、宇宙はある。
その宇宙そのものが、
( ゚∋゚)
だったのかもしれない。
遠くで。
ドゥ。
と、始まりの音がした。