クックル物語〈ドゥドゥドゥ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第二話「酒場とエリア55」

勇者たちは生きていた。

 

たぶん奇跡である。

 

酒場でクックルの話をしていたら、悪役が出た。

 

いい感じに戦った。

 

そして殴られた。

 

今回は持っていかれた。

 

エリア55と書いてあった。

 

書いてあったのだから、たぶん本当だ。

 

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 王都の酒場は、いつも通り騒がしかった。

 

 勇者アレスはテーブルに突っ伏し、うめき声をあげている。

 

「まだ痛い……」

 

 戦士ガルドは肋を押さえ、弓使いは肩を回し、僧侶は回復魔法を自分にかけ続けていた。

 

 魔法使いリオが低い声で言う。

 

「間違いない。あれは実在した」

 

「夢じゃねぇのか?」とガルド。

 

「夢であんな連続膝蹴りはない」

 

 酒場の主人が苦笑する。

 

「森で鳥に殴られたって噂、広まってるぞ」

 

 そのとき。

 

 扉が勢いよく開いた。

 

 黒い外套の男が入ってくる。

 

「金だ。全員、金目の物を出せ」

 

 盗賊団の頭目だった。

 

 客が悲鳴をあげる。

 

 アレスが立ち上がる。

 

「悪いが、今日は機嫌が悪い」

 

 剣を抜く。

 

 ガルドも笑う。

 

「ちょうど暴れ足りなかったところだ」

 

 戦闘が始まった。

 

 盗賊の剣を受け流し、アレスが斬り込む。

 

 炎弾が炸裂し、ガルドの一撃が男を壁に叩きつける。

 

「おいおい、案外やれるじゃねぇか!」

 

 頭目が血を吐きながら笑う。

 

「勇者だと? 俺は公爵家の庇護を受けている! 手を出せば――」

 

 ガラララ。

 

 酒場の奥、厨房の横に、木製の引戸が現れた。

 

 全員が止まる。

 

「またかよ」

 

 アレスが呟く。

 

( ゚∋゚)「クックル」

 

 静かに立っている。

 

 頭目が怒鳴る。

 

「なんだその鳥は!」

 

( ゚∋゚)「クックル?」

 

 首をかしげる。

 

「今、会話してる空気だったよな?」と弓使い。

 

「読まないな」とリオ。

 

 頭目が斬りかかる。

 

(#゚∋゚)「クックルクックル」

 

 ドゥ!(右ストレート)

 

 ドゥ!(腹部に蹴り)

 

 ドゥ!(背負い投げ)

 

 頭目が床を滑る。

 

「ま、待て! 俺は権力者と――」

 

( ゚∋゚)「クックル?」

 

「通じてねぇ!!」

 

 ドゥ!(顔面に回し蹴り)

 

 ドゥ!(膝打ち)

 

 ドゥドゥドゥドゥ!!

 

 酒場のテーブルが粉砕される。

 

 客たちが壁際に避難しながら叫ぶ。

 

「衛兵呼べ!」

 

「いや誰に!?」

 

 クックルは意識を失った頭目を片手で持ち上げる。

 

 ガラララ。

 

 引戸が開く。

 

 そこには看板がかかっていた。

 

 白地に黒文字。

 

『エリア55』

 

 酒場が静まる。

 

「書いてあるな」

 

「書いてある」

 

「フォント普通だな」

 

「妙に事務的だ」

 

( ゚∋゚)「クックル」

 

 そのまま中へ入る。

 

 扉が閉まる。

 

 消える。

 

 酒場に残ったのは、壊れた家具と沈黙。

 

 アレスが深く息を吐く。

 

「……連行型か」

 

「前は殴って帰っただけだったのにな」

 

 リオが腕を組む。

 

「第五拾伍域……おそらく隔離領域だ」

 

「詳しく言うな」と全員。

 

 そのとき。

 

 遥か北の魔王城。

 

 水晶が酒場の様子を映していた。

 

 魔王が腕を組む。

 

「ふん。小悪党を回収したか」

 

 側近が震える。

 

「陛下……あれは」

 

「我は関係ない」

 

 ガラララ。

 

 背後。

 

 魔王が振り向く。

 

「またか!!」

 

( ゚∋゚)「クックル」

 

「いや待て今回は我は何も――」

 

 ドゥ!(みぞうち)

 

「ぐっ」

 

 ドゥ!(顎)

 

 魔王が再び沈む。

 

 側近が頭を抱える。

 

「突っ込んだからでは……」

 

 扉は消え、玉座の間に沈黙だけが残った。

 

 酒場も城も、やがていつもの喧騒に戻る。

 

 だが誰もが知っている。

 

 理屈は通らない。

 

 書いてあったのだから、本当なのだ。

 

 どこかで、また音が鳴る。

 

 ドゥ。

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