クックル物語〈ドゥドゥドゥ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第五章「侍もだいたい殴る」
第二十一話 「雑兵」


第21話 「雑兵」

 

戦国の世。

侍とは限らない者たちも戦場に立っていた。

 

田畑から集められた雑兵。

そして地域によっては武士とも扱われ、そうでないこともある足軽。

 

名も家も持たぬ者たちが、槍を持って戦う。

 

だが今日の戦場には、もっと分からないものがいた。

 

----------------------

 

 戦国の戦場。

 

 朝靄がまだ残る野原に、二つの軍勢が向かい合っていた。

 

 旗が風に揺れる。

 槍が並ぶ。

 鉄砲の火蓋が準備される。

 

 だが前に立つ者たちの多くは、侍ではない。

 

 雑兵。

 

 農民や町人を集めて槍を持たせただけの兵だ。

 

「おい、今日はどこの戦だ?」

 

「さぁな。隣村と同じで、侍様が決めたことだ」

 

「まぁ槍持って前に立ってりゃいいんだろ」

 

 緊張感のない会話が続く。

 

 彼らの後ろには、少し装備の良い兵が立っている。

 

 足軽だ。

 

 雑兵よりは訓練され、刀も持つ。

 

 地域によっては武士と扱われることもある。

 だが多くの場合は、侍と雑兵の間の存在だった。

 

 足軽の一人が前を見て眉をひそめる。

 

「……おい」

 

「ん?」

 

「あれ、何だ?」

 

 雑兵たちが顔を上げる。

 

 双方の陣のちょうど真ん中。

 

 そこに一つの影があった。

 

( ゚∋゚)

 

 立っている。

 

 ただ立っている。

 

 戦場のど真ん中に。

 

 旗も持たず。

 槍も持たず。

 鎧も着ず。

 

 丸い目でこちらを見ている。

 

「……鳥か?」

 

「いや鳥だろ」

 

「鳥だな」

 

 雑兵の一人が笑う。

 

「こんなところに迷い込むとは運の悪い鳥だ」

 

 槍を持ち上げる。

 

「よし、突いて落としてやる」

 

 槍が振り下ろされる。

 

 ドン。

 

 いや。

 

 違う。

 

 振り下ろされるはずだった槍は、途中で止まった。

 

 なぜなら。

 

 クックルの目が開いたからだ。

 

(#゚∋゚)「クックル」

 

 次の瞬間。

 

 ドゥ。

 

 雑兵が空を飛んだ。

 

「え?」

 

 槍を持ったまま、見事な弧を描く。

 

 そして。

 

 ドサッ。

 

 地面に落ちる。

 

 周囲が沈黙した。

 

「……今」

 

「殴った?」

 

「殴ったな」

 

 足軽の一人が刀を抜く。

 

「何だあれは」

 

 もう一度クックルを見る。

 

( ゚∋゚)「クックル?」

 

 首を傾げている。

 

 その顔はどこか愛嬌がある。

 

 だが。

 

 足軽は刀を構える。

 

「ふざけるな。ここは戦場だ」

 

 走る。

 

 刀を振り上げる。

 

 斬る。

 

 はずだった。

 

 ドゥ。

 

 足軽が横に吹き飛んだ。

 

「がっ!?」

 

 刀は地面に刺さる。

 

 足軽は転がる。

 

 雑兵たちは一歩下がった。

 

「何だあれ!?」

 

「鳥じゃねぇ!」

 

「殴ったぞ!」

 

 その騒ぎは、敵陣にも届いた。

 

 向こうの兵がざわめく。

 

「何が起きている?」

 

「真ん中で揉めてるぞ」

 

「今が好機だ!」

 

 誰かが叫んだ。

 

「突撃!」

 

 敵陣の兵が一斉に走り出す。

 

 槍。

 刀。

 鉄砲。

 

 怒号と共に押し寄せる。

 

 雑兵たちは慌てた。

 

「敵だ!」

 

「構えろ!」

 

 だがその間にいるのは。

 

( ゚∋゚)

 

 クックルだった。

 

 敵兵が最初に突っ込む。

 

「どけぇ!」

 

 槍が突き出される。

 

 ドゥ。

 

 兵が後ろに飛ぶ。

 

 次の兵。

 

 ドゥ。

 

 また飛ぶ。

 

 三人。

 

 四人。

 

 五人。

 

 ドゥドゥドゥドゥ。

 

 殴られる。

 

 吹き飛ぶ。

 

 転がる。

 

 槍が宙を舞う。

 

 刀が地面に落ちる。

 

 叫び声が上がる。

 

「何だこの鳥!」

 

「殴るぞ!」

 

「殴ってくる!」

 

 戦場は一瞬で混乱した。

 

 敵も味方も関係ない。

 

 突っ込んできた者が、ただ殴られる。

 

 ドゥ。

 

 ドゥ。

 

 ドゥドゥ。

 

 槍隊が崩れる。

 

 足軽が倒れる。

 

 雑兵が逃げる。

 

 戦場は止まった。

 

 誰も前に出ない。

 

 そして。

 

 しばらくして。

 

 土埃が落ち着いた。

 

 そこに立っていたのは。

 

( ゚∋゚)「クックル」

 

 一羽だけだった。

 

 戦場の中央で。

 

 風が吹く。

 

 旗が揺れる。

 

 誰も近づかない。

 

 ただ一つだけ、はっきりしていた。

 

 この戦は。

 

 まだ始まってすらいなかった。

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