戦国の戦場では、雑兵だけが戦うわけではない。
雑兵の後ろには、訓練された兵がいる。
足軽。
槍を持ち、陣形を組み、弓や鉄砲を扱う。
戦場の主力と言ってよい兵だ。
彼らは雑兵とは違う。
少なくとも本人たちはそう思っている。
だが今日の戦場には、
まだ理解されていない敵がいた。
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戦場の中央。
倒れている雑兵。
転がる槍。
呻く声。
そしてその真ん中に。
( ゚∋゚)
クックルが立っていた。
周囲には誰も近づかない。
いや、近づけない。
雑兵の後ろでそれを見ていた足軽たちは、顔を見合わせた。
「……雑兵がやられた」
「殴り飛ばされたぞ」
「鳥だろ、あれ」
足軽大将が低く言う。
「落ち着け」
鎧の音が鳴る。
「雑兵とは違う。俺たちは足軽だ」
周囲の兵がうなずく。
確かに雑兵とは違う。
彼らは訓練されている。
戦場の動きも知っている。
そして。
陣形を組むことができる。
「弓隊、前へ」
十数人の弓足軽が前に出る。
弓を構える。
クックルを見る。
( ゚∋゚)「クックル?」
首を傾げている。
弓隊長が叫ぶ。
「放て!」
弦が鳴る。
ヒュン。
ヒュン。
ヒュン。
矢が飛ぶ。
空を裂き、クックルへ降り注ぐ。
ドゥ。
矢が弾かれる。
ドゥ。
矢が折れる。
ドゥ。
矢が地面に落ちる。
足軽たちが固まる。
「……効いてない」
「一本も刺さらんぞ」
足軽大将が叫ぶ。
「鉄砲隊!」
後ろから火縄銃部隊が前に出る。
火皿に火が灯る。
銃口が並ぶ。
クックルへ向く。
( ゚∋゚)「クックル」
パン。
パン。
パン。
斉射。
煙が広がる。
戦場が白くなる。
足軽大将が言う。
「槍隊、突撃!」
煙の中から槍足軽が走る。
槍が並ぶ。
叫び声。
「突けぇぇぇ!」
煙が晴れる。
そこにいたのは。
( ゚∋゚)
クックルだった。
無事だった。
槍足軽たちが一瞬止まる。
「……無傷?」
次の瞬間。
ドゥ。
一人飛ぶ。
ドゥ。
二人飛ぶ。
ドゥドゥドゥ。
槍が宙に舞う。
槍足軽が転がる。
「何だこれぇぇぇ!」
槍隊は一瞬で崩壊した。
足軽大将が歯を食いしばる。
「まだだ!」
「長巻隊、前へ!」
長巻。
長い柄に大きな刃を付けた武器だ。
斬撃力は強い。
重装兵を倒すための武器でもある。
長巻足軽たちが前に出る。
「囲め!」
半円を描く。
長巻が振り上がる。
斬る。
ドゥ。
兵が転ぶ。
ドゥ。
また転ぶ。
ドゥドゥドゥ。
長巻が地面に落ちる。
「無理だぁ!」
長巻隊も崩れた。
足軽大将の顔が引きつる。
「……力自慢を出せ」
後ろから大柄な足軽たちが前に出る。
手に持つのは。
金砕棒。
大太刀。
豪腕の兵だ。
「やれぇ!」
金砕棒が振り下ろされる。
ドゥ。
振った足軽が倒れる。
大太刀が振られる。
ドゥ。
大太刀ごと吹き飛ぶ。
ドゥドゥドゥドゥ。
豪腕兵たちが次々転がる。
戦場が静かになった。
弓隊。
鉄砲隊。
槍隊。
長巻隊。
豪腕兵。
全部倒れている。
立っているのは。
( ゚∋゚)「クックル」
一羽だけだった。
足軽大将は呆然とそれを見た。
「……何なんだ」
戦場に風が吹く。
旗が揺れる。
倒れた兵の間で。
クックルが静かに立っていた。
そして。
遠くで太鼓が鳴る。
ドン。
ドン。
ドン。
次の部隊が動き始めていた。