クックル物語〈ドゥドゥドゥ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第二十三話 「陪臣」

戦国の世。

武士と呼ばれる者にも、様々な階層があった。

 

功績を挙げ、ようやく苗字を許された者。

だが主家の家臣ではなく、家臣の家臣。

 

陪臣。

 

武士ではある。

だがまだ家格は低い。

 

ゆえに彼らは鍛える。

功績を求め、武名を求め、戦場で前へ出る。

 

だが今日の戦場には、

武功という概念が通じない相手がいた。

 

----------------------

 

 戦場の中央。

 

 弓隊は倒れた。

 鉄砲隊も倒れた。

 槍足軽も長巻隊も、金砕棒の豪腕兵も倒れている。

 

 倒れた兵たちの間に。

 

( ゚∋゚)

 

 クックルが立っていた。

 

 風が吹く。

 旗が揺れる。

 誰も近づかない。

 

 その様子を、少し離れた丘の上から見ている者たちがいた。

 

 四騎の武士。

 

 いや、正確には。

 

 陪臣である。

 

 鎧は立派だった。

 胴丸に籠手。

 兜もきちんとしたものだ。

 

 足軽より装備は明らかに良い。

 

 そして体格も違う。

 

 鍛錬を重ねた筋肉。

 弓を扱う腕。

 馬を扱う技。

 

 彼らは武士だった。

 

 ただし。

 

 主君の直臣ではない。

 

 家臣の家臣。

 

 陪臣。

 

 一人が口を開く。

 

「……足軽が全滅したな」

 

「雑兵もだ」

 

 別の陪臣が目を細める。

 

「噂は聞いていたが」

 

 クックルを見る。

 

( ゚∋゚)

 

「本当に鳥か?」

 

 四人目が言った。

 

「どうであれ好機だ」

 

 馬の手綱を握る。

 

「足軽が崩れた今、我らが武功を挙げる」

 

 他の三人も頷いた。

 

 陪臣とは、そういう存在だ。

 

 武功を挙げねばならない。

 

 武名を立てねばならない。

 

 そうでなければ。

 

 一族は上へ行けない。

 

 先頭の武士が弓を取った。

 

 四張りの弓。

 

 普通の弓よりも強い弓だ。

 

 腕力がなければ引けない。

 

 矢をつがえる。

 

 弦を引く。

 

 ギリ、と音がする。

 

 狙う。

 

 戦場の中央。

 

( ゚∋゚)

 

 クックル。

 

「放つ」

 

 弦が鳴った。

 

 ビィン。

 

 矢が飛ぶ。

 

 ただの矢ではない。

 

 重い弓から放たれた矢だ。

 

 空気を裂く。

 

 まるで槍のような勢い。

 

 ヒュン。

 

 一直線。

 

 クックルへ。

 

 ドゥ。

 

 矢が弾かれた。

 

 地面に落ちる。

 

 陪臣たちが沈黙する。

 

「……弾いた」

 

「今、殴ったか?」

 

 クックルが首を傾げる。

 

( ゚∋゚)「クックル?」

 

 先頭の陪臣が歯を食いしばる。

 

「もう一度だ」

 

 矢をつがえる。

 

 弓を引く。

 

 今度は二本。

 

 放つ。

 

 ヒュン。

 

 ヒュン。

 

 ドゥ。

 

 ドゥ。

 

 また弾かれる。

 

 陪臣の顔が引きつる。

 

「……弓は効かぬ」

 

 別の武士が槍を取る。

 

「ならば槍だ」

 

 馬の腹を蹴る。

 

 ドッと走る。

 

 蹄が地面を打つ。

 

 槍が振り上がる。

 

「武功、頂く!」

 

 槍が振り下ろされる。

 

 その瞬間。

 

 ドゥ。

 

 陪臣が空を飛んだ。

 

 槍を持ったまま。

 

 見事な弧を描いて。

 

 ドサッ。

 

 地面に落ちる。

 

 馬だけが走り抜ける。

 

 残る三人が固まる。

 

「……殴った」

 

「殴ったな」

 

「殴った」

 

 クックルは静かに立っていた。

 

( ゚∋゚)

 

 首を少し傾げる。

 

「クックル」

 

 三人の陪臣が槍を構える。

 

「行くぞ」

 

「武士だ」

 

「退くな」

 

 三騎が一斉に走る。

 

 槍が並ぶ。

 

 馬が駆ける。

 

 斬撃。

 

 突き。

 

 横薙ぎ。

 

 同時に来る。

 

 だが。

 

 ドゥ。

 

 一人飛ぶ。

 

 ドゥ。

 

 二人飛ぶ。

 

 ドゥドゥ。

 

 三人転がる。

 

 馬が逃げる。

 

 槍が地面に落ちる。

 

 戦場がまた静かになる。

 

 土埃が落ちる。

 

 倒れた陪臣たちの間で。

 

( ゚∋゚)「クックル」

 

 クックルが立っていた。

 

 遠くの陣から、それを見ていた武士たちがざわめく。

 

「陪臣がやられた」

 

「弓も槍も通じぬ」

 

「……侍だぞ、あれは」

 

 風が吹く。

 

 旗が揺れる。

 

 戦場の中央で。

 

 クックルはまだ立っていた。

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