戦場は終わらなかった。
だが決着もつかなかった。
雑兵は倒れ、
足軽は倒れ、
陪臣までもが倒れた。
戦は止まり、双方の軍は引いた。
残ったのは、説明のつかない出来事だけである。
ゆえに話し合うしかない。
内政、外交、財政。
戦だけでは国は治まらない。
大名と家臣たちは、頭を抱えていた。
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城の評定の間。
畳が並び、屏風が立つ。
家紋の旗が静かに揺れていた。
その中央に、大名が座っている。
左右には家臣たち。
武将。
奉行。
側近。
戦場から戻ったばかりの顔だ。
重い沈黙が流れていた。
やがて一人の家臣が口を開く。
「……足軽三十、陪臣四名がやられております」
別の家臣が言う。
「敵の軍勢ではありませぬ」
大名が眉を寄せた。
「では何だ」
家臣が答える。
「鳥でございます」
沈黙。
もう一度言う。
「鳥でございます」
大名がゆっくり言った。
「……鳥が足軽を殴ったと?」
「はい」
「陪臣も?」
「はい」
大名が天井を見上げた。
「妖怪か」
別の家臣が頷く。
「妖怪変化の類と考えるのが妥当かと」
別の者が言う。
「弓も鉄砲も効かぬとのこと」
さらに別の家臣。
「槍も通じませぬ」
大名が腕を組んだ。
戦だけならば話は早い。
だがこれは違う。
国を治める者は、戦だけでは動けない。
もし妖怪ならば。
寺か。
陰陽師か。
あるいは他国の策か。
外交問題になる可能性もある。
財政も動く。
家臣の一人が言う。
「放置するのは危険かと」
別の家臣。
「だが敵意があるとは限りませぬ」
「戦場に立っていた」
「殴っただけです」
「十分敵意ではないか」
議論が続く。
大名がふと眉をひそめた。
「……あれは何だ」
家臣たちが振り向く。
評定の間の隅。
そこに。
引き戸があった。
見慣れない戸だ。
城の作りにはない。
家臣が言う。
「……いつから」
「先ほどは無かったはず」
大名が腰の刀に手を置いた。
「誰が置いた」
誰も答えない。
沈黙。
そのとき。
ガラララ。
引き戸が勝手に開いた。
家臣たちが一斉に刀を握る。
「構えろ!」
だが。
戸の向こうには何もいない。
ただ暗い空間だけ。
家臣の一人が言う。
「……何も」
その瞬間。
反対側の襖が開いた。
スッ。
全員が振り向く。
そこにいた。
( ゚∋゚)
クックルだった。
静かに立っている。
評定の間のど真ん中に。
家臣が叫ぶ。
「妖怪!」
刀が抜かれる。
斬る。
ドゥ。
一人吹き飛ぶ。
ドゥ。
二人転がる。
ドゥドゥ。
刀が宙を舞う。
家臣が倒れる。
「殿を守れ!」
武将たちが突っ込む。
ドゥ。
ドゥ。
ドゥドゥドゥ。
次々と転がる。
畳が乱れる。
屏風が倒れる。
評定の間が一瞬で壊滅した。
大名だけが残る。
座ったまま。
刀を握る。
クックルを見る。
( ゚∋゚)「クックル」
そのとき。
天井梁の上から。
影が落ちた。
音もなく。
畳の上に降り立つ。
黒装束。
顔を覆う布。
そして。
+激しく忍者+
クックルの前に立つ。
しばし沈黙。
空気が張り詰める。
大名が呟く。
「……誰だ」
家臣が息を切らしながら言う。
「殿……あの忍び……」
大名が聞く。
「誰が雇った」
家臣たちが顔を見合わせる。
「……存じませぬ」
「我らではありませぬ」
「城の忍びでもない」
大名が目を細めた。
「では誰だ」
答える者はいない。
その間にも。
畳の中央で。
クックルと忍者が向かい合っていた。
( ゚∋゚)「クックル」
+激しく忍者+
次の瞬間。
動いた。