第二十六話「従者」
騎士の世界。
ここでは騎士という存在がある。
彼らは名誉のために戦い、
領主のために槍を掲げ、
神のために剣を振るう。
だが騎士は、
いきなり騎士になるわけではない。
幼い頃は小姓。
城で礼儀と武を学び。
やがて従者となり、
騎士に付き従い、
戦場と人生を学ぶ。
そんな未来の騎士の前に、
今日も問題が現れた。
クックルである。
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春の草原だった。
風が吹き、草が揺れる。
平和な昼下がり。
その中を、
一騎の騎馬が進んでいた。
鎧を着た騎士。
その横を歩く若者。
従者だった。
「よいか」
騎士が言う。
「はい、騎士殿」
若者は真剣にうなずく。
彼は幼い頃から城に仕えていた。
小姓として。
皿を運び、
鎧を磨き、
武具を整え。
騎士の生活を間近で見て育った。
そして成長し。
今は従者。
騎士の付き人であり、
騎士見習い。
槍を運び、
剣を整え、
戦場では予備武器を渡す。
騎士としての行動を学ぶ立場である。
つまり。
未来の騎士。
希望に満ちた若者。
その教育を行うのが。
隣にいる騎士殿であった。
「騎士とはな」
騎士が言う。
「勇気である」
「はい」
「騎士とは」
「はい」
「名誉である」
「はい!」
「そして」
騎士は遠くを見た。
「恐れぬ心だ」
かっこいい。
とてもかっこいい。
完全に騎士である。
だが。
問題がある。
彼らがここに来た理由である。
「騎士殿」
「うむ」
「村の者が言っていた」
「うむ」
「変わった鳥が出ると」
「そうだ」
騎士は頷く。
「民を守るのも騎士の務め」
「はい!」
「どのような魔物であろうと」
「はい!」
「恐れてはならぬ」
そのとき。
草が揺れた。
風ではない。
何かがいる。
従者が目を凝らす。
そこに。
( ゚∋゚)
いた。
鳥。
いや。
鳥?
なんだあれ。
立っている。
草原の真ん中に。
普通に。
( ゚∋゚)
なんだあれ。
従者が言う。
「騎士殿」
「うむ」
「あれは」
「うむ」
「鳥でしょうか」
「わからん」
騎士は正直だった。
だが。
騎士は騎士である。
堂々と言う。
「だが恐れるな」
「はい!」
「騎士とは」
「はい!」
「恐れぬ者だ」
騎士は槍を構えた。
騎馬突撃の姿勢。
「見ておけ」
「はい!」
「これが」
騎士が言う。
「騎士の戦いだ!」
馬が走る。
ドドドドドド。
草原を駆ける。
槍が構えられる。
完全な騎馬突撃。
かっこいい。
すごくかっこいい。
騎士である。
だが。
( ゚∋゚)
クックルは動かない。
「食らえ!」
騎士が叫ぶ。
その瞬間。
ドゥ。
騎士が飛んだ。
「えっ」
従者が言う。
「えっ?」
ドゥ。
騎士が空を飛ぶ。
きれいに。
すごくきれいに。
完全に。
飛んだ。
馬も止まる。
従者が固まる。
「殴った?」
今。
鳥が。
騎士を。
殴った?
騎士が地面に落ちる。
ドサッ。
沈黙。
従者が叫ぶ。
「騎士殿!!」
騎士は起きた。
「ぐっ……」
生きている。
騎士は立ち上がる。
剣を抜く。
「よいか」
騎士が言う。
「はい!」
「騎士とは」
「はい!」
「諦めぬ者だ!」
徒歩突撃である。
さっき吹き飛ばされたのに。
徒歩突撃である。
勇気なのか。
無謀なのか。
たぶん両方である。
騎士が斬りかかる。
「はあああ!」
その瞬間。
ドゥ。
騎士が飛ぶ。
「また!?」
ドゥ。
もう一発。
ドゥ。
もう一発。
ドゥドゥドゥ!!
完全連撃。
騎士が転がる。
草原を。
転がる。
騎士殿が。
転がる。
従者が震える。
「騎士殿……」
怒りが湧く。
従者は弓を取る。
「騎士殿の敵!」
弓を引く。
ビシッ。
矢が飛ぶ。
一直線。
完璧な射撃。
だが。
パシッ。
弾かれた。
「えっ」
矢を。
弾いた?
鳥が?
何で?
その瞬間。
( ゚∋゚)
クックルが近づく。
早い。
すごく早い。
次の瞬間。
ドゥ。
従者が飛んだ。
「うわあああ!!」
未来の騎士が空を飛ぶ。
そして落ちる。
ドサッ。
沈黙。
そこへ。
「ぐ……」
騎士が来る。
まだ生きている。
騎士は従者を持ち上げる。
「立て」
「騎士殿……」
「退く」
「え?」
「退くぞ!」
騎士は馬に乗る。
従者を引き上げる。
「しっかり掴まれ!」
「はい!」
馬が走る。
全力で。
全力で逃げる。
草原を。
全力で。
逃げる。
後ろには。
( ゚∋゚)
静かに立っていた。
( ゚∋゚)「クックル」
春の草原。
風が吹く。
静かだった。
少なくとも。
あそこには。
二度と近づかないと。
騎士と従者は。
固く誓った。
たぶん。
あれは魔物だった。
たぶん。
いや。
もういい。
考えるのはやめよう。
エリア55が怖いからである。
だいたい殴る。
それが。
クックルである。