騎士の世界。
ここでは騎士という存在がある。
彼らは名誉のために戦い、
領主のために槍を掲げ、
神のために剣を振るう。
だが騎士は、
いきなり騎士になるわけではない。
幼い頃は小姓。
やがて従者となり。
長い鍛錬と戦場を経て、
ようやく騎士となる。
そんな騎士誕生の神聖な日に、
問題が現れた。
クックルである。
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数年前。
草原で。
騎士と従者は。
鳥に殴られた。
いや。
正確には。
よくわからない何かに。
殴られた。
そして逃げた。
全力で。
名誉とか勇気とか。
そういうものを一旦横に置いて。
全力で逃げた。
騎士とは退く勇気も必要だからである。
たぶん。
きっと。
そういうことにしておこう。
そして。
数年が経った。
城。
訓練場。
剣が打ち合わされる音。
若者が剣を振るう。
元従者である。
「そこまで!」
騎士殿が言う。
元従者は剣を止める。
汗だくである。
だが。
その動きは鋭い。
「よく鍛えた」
「ありがとうございます」
元従者は頭を下げる。
数年間。
彼は鍛錬を続けた。
剣。
槍。
弓。
騎乗。
戦術。
すべてである。
もちろん。
理由の一つは。
草原の。
あれである。
あの。
鳥。
あれはなんだったのか。
いや。
考えるのはやめよう。
エリア55が怖い。
そして今日。
城では儀式が行われていた。
礼拝堂。
神官。
騎士団。
領主。
全員が集まっている。
騎士叙任式である。
元従者が跪く。
領主が剣を取る。
肩に軽く触れる。
「汝」
「勇気と名誉を持ち」
「民を守り」
「神に仕える者」
「騎士として認める」
剣が肩を叩く。
「立て」
元従者は立ち上がる。
ついに。
騎士である。
騎士誕生である。
神聖な瞬間である。
だが。
扉が開く。
兵士が飛び込む。
「報告!」
嫌な予感しかしない。
騎士殿が思う。
新騎士も思う。
兵士が叫ぶ。
「鳥の魔物が城に迫っております!」
やっぱりか。
やっぱりあれか。
騎士殿が言う。
「……行くか」
新騎士が言う。
「行きますか」
全員が城門へ向かう。
そして。
城門前。
そこに。
立っていた。
( ゚∋゚)
いた。
完全に。
あれである。
あれだ。
間違いない。
草原の。
あれだ。
騎士殿が小声で言う。
「覚えているか」
「はい」
「逃げた」
「はい」
新騎士が言う。
「逃げましたね」
「逃げたな」
完全に逃げた。
そして。
城の騎士団が集まる。
その中から。
一人の騎士が前に出る。
城で最も強い騎士。
鎧は重厚。
剣は巨大。
背が高い。
完全に強い。
強そうである。
騎士殿が言う。
「まずい」
新騎士が言う。
「まずいですね」
「非常にまずい」
「非常にまずいです」
だが。
最強騎士は言う。
「魔物か」
「ここは騎士団が守る城」
後ろから三人の騎士が出る。
四人である。
完全にパーティーである。
装備が違う。
一人は槍。
一人は盾剣。
一人は大斧。
一人は長剣。
戦い方も違う。
バランス型パーティー。
強そうである。
すごく強そうである。
だが。
問題がある。
相手が。
クックルである。
槍騎士が突撃。
「はあああ!」
槍が突き出される。
完璧な突撃。
その瞬間。
ドゥ。
槍騎士が飛ぶ。
「早い!?」
盾騎士が前へ。
盾を構える。
「囲め!」
大斧騎士が回る。
長剣騎士が斬る。
見事な連携。
騎士戦術である。
すごく騎士である。
だが。
ドゥ。
盾騎士飛ぶ。
ドゥ。
大斧騎士飛ぶ。
ドゥ。
長剣騎士飛ぶ。
ドゥドゥドゥ!!
四人全部飛ぶ。
騎士殿が言う。
「ほらな」
新騎士が言う。
「ほらですね」
城門前。
騎士四人が転がる。
完全敗北。
騎士団がざわつく。
そこへ。
司祭が出る。
「退け」
司祭が言う。
「神の御前にて」
「魔物よ去れ!」
聖印を掲げる。
祈る。
「神よ!」
「この地を守りたまえ!」
神聖な祈り。
神の力。
神の奇跡。
その瞬間。
ドゥ。
司祭飛ぶ。
「神父様ー!?」
司祭が転がる。
完全に転がる。
礼拝堂担当が。
完全に転がる。
城門前が静まり返る。
誰も動かない。
いや。
動けない。
騎士殿が言う。
「……な?」
新騎士が言う。
「……はい」
「騎士とは」
「はい」
「退く勇気も必要だ」
「はい」
その瞬間。
二人は同時に言う。
「逃げろ!!」
城門が閉まる。
ガラガラガラ。
全力で閉める。
兵士が叫ぶ。
「門閉鎖!」
騎士団が慌てる。
司祭が担がれる。
城の上。
壁の上。
全員が見る。
門の外。
( ゚∋゚)
クックルが立っている。
静かに。
ただ。
立っている。
そして。
( ゚∋゚)「クックル」
鳴いた。
城の上。
全員が思った。
あれは。
魔物だ。
絶対魔物だ。
いや。
考えるのはやめよう。
エリア55が怖い。
だいたい殴る。
それが。
クックルである。