クックル物語〈ドゥドゥドゥ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

27 / 40
第二十七話「騎士」

 

 

騎士の世界。

 

ここでは騎士という存在がある。

 

彼らは名誉のために戦い、

領主のために槍を掲げ、

神のために剣を振るう。

 

だが騎士は、

いきなり騎士になるわけではない。

 

幼い頃は小姓。

やがて従者となり。

 

長い鍛錬と戦場を経て、

ようやく騎士となる。

 

そんな騎士誕生の神聖な日に、

問題が現れた。

 

クックルである。

 

--------------------

 

 数年前。

 

 草原で。

 

 騎士と従者は。

 

 鳥に殴られた。

 

 いや。

 

 正確には。

 

 よくわからない何かに。

 

 殴られた。

 

 そして逃げた。

 

 全力で。

 

 名誉とか勇気とか。

 

 そういうものを一旦横に置いて。

 

 全力で逃げた。

 

 騎士とは退く勇気も必要だからである。

 

 たぶん。

 

 きっと。

 

 そういうことにしておこう。

 

 そして。

 

 数年が経った。

 

 城。

 

 訓練場。

 

 剣が打ち合わされる音。

 

 若者が剣を振るう。

 

 元従者である。

 

「そこまで!」

 

 騎士殿が言う。

 

 元従者は剣を止める。

 

 汗だくである。

 

 だが。

 

 その動きは鋭い。

 

「よく鍛えた」

 

「ありがとうございます」

 

 元従者は頭を下げる。

 

 数年間。

 

 彼は鍛錬を続けた。

 

 剣。

 

 槍。

 

 弓。

 

 騎乗。

 

 戦術。

 

 すべてである。

 

 もちろん。

 

 理由の一つは。

 

 草原の。

 

 あれである。

 

 あの。

 

 鳥。

 

 あれはなんだったのか。

 

 いや。

 

 考えるのはやめよう。

 

 エリア55が怖い。

 

 そして今日。

 

 城では儀式が行われていた。

 

 礼拝堂。

 

 神官。

 

 騎士団。

 

 領主。

 

 全員が集まっている。

 

 騎士叙任式である。

 

 元従者が跪く。

 

 領主が剣を取る。

 

 肩に軽く触れる。

 

「汝」

 

「勇気と名誉を持ち」

 

「民を守り」

 

「神に仕える者」

 

「騎士として認める」

 

 剣が肩を叩く。

 

「立て」

 

 元従者は立ち上がる。

 

 ついに。

 

 騎士である。

 

 騎士誕生である。

 

 神聖な瞬間である。

 

 だが。

 

 扉が開く。

 

 兵士が飛び込む。

 

「報告!」

 

 嫌な予感しかしない。

 

 騎士殿が思う。

 

 新騎士も思う。

 

 兵士が叫ぶ。

 

「鳥の魔物が城に迫っております!」

 

 やっぱりか。

 

 やっぱりあれか。

 

 騎士殿が言う。

 

「……行くか」

 

 新騎士が言う。

 

「行きますか」

 

 全員が城門へ向かう。

 

 そして。

 

 城門前。

 

 そこに。

 

 立っていた。

 

( ゚∋゚)

 

 いた。

 

 完全に。

 

 あれである。

 

 あれだ。

 

 間違いない。

 

 草原の。

 

 あれだ。

 

 騎士殿が小声で言う。

 

「覚えているか」

 

「はい」

 

「逃げた」

 

「はい」

 

 新騎士が言う。

 

「逃げましたね」

 

「逃げたな」

 

 完全に逃げた。

 

 そして。

 

 城の騎士団が集まる。

 

 その中から。

 

 一人の騎士が前に出る。

 

 城で最も強い騎士。

 

 鎧は重厚。

 

 剣は巨大。

 

 背が高い。

 

 完全に強い。

 

 強そうである。

 

 騎士殿が言う。

 

「まずい」

 

 新騎士が言う。

 

「まずいですね」

 

「非常にまずい」

 

「非常にまずいです」

 

 だが。

 

 最強騎士は言う。

 

「魔物か」

 

「ここは騎士団が守る城」

 

 後ろから三人の騎士が出る。

 

 四人である。

 

 完全にパーティーである。

 

 装備が違う。

 

 一人は槍。

 

 一人は盾剣。

 

 一人は大斧。

 

 一人は長剣。

 

 戦い方も違う。

 

 バランス型パーティー。

 

 強そうである。

 

 すごく強そうである。

 

 だが。

 

 問題がある。

 

 相手が。

 

 クックルである。

 

 槍騎士が突撃。

 

「はあああ!」

 

 槍が突き出される。

 

 完璧な突撃。

 

 その瞬間。

 

 ドゥ。

 

 槍騎士が飛ぶ。

 

「早い!?」

 

 盾騎士が前へ。

 

 盾を構える。

 

「囲め!」

 

 大斧騎士が回る。

 

 長剣騎士が斬る。

 

 見事な連携。

 

 騎士戦術である。

 

 すごく騎士である。

 

 だが。

 

 ドゥ。

 

 盾騎士飛ぶ。

 

 ドゥ。

 

 大斧騎士飛ぶ。

 

 ドゥ。

 

 長剣騎士飛ぶ。

 

 ドゥドゥドゥ!!

 

 四人全部飛ぶ。

 

 騎士殿が言う。

 

「ほらな」

 

 新騎士が言う。

 

「ほらですね」

 

 城門前。

 

 騎士四人が転がる。

 

 完全敗北。

 

 騎士団がざわつく。

 

 そこへ。

 

 司祭が出る。

 

「退け」

 

 司祭が言う。

 

「神の御前にて」

 

「魔物よ去れ!」

 

 聖印を掲げる。

 

 祈る。

 

「神よ!」

 

「この地を守りたまえ!」

 

 神聖な祈り。

 

 神の力。

 

 神の奇跡。

 

 その瞬間。

 

 ドゥ。

 

 司祭飛ぶ。

 

「神父様ー!?」

 

 司祭が転がる。

 

 完全に転がる。

 

 礼拝堂担当が。

 

 完全に転がる。

 

 城門前が静まり返る。

 

 誰も動かない。

 

 いや。

 

 動けない。

 

 騎士殿が言う。

 

「……な?」

 

 新騎士が言う。

 

「……はい」

 

「騎士とは」

 

「はい」

 

「退く勇気も必要だ」

 

「はい」

 

 その瞬間。

 

 二人は同時に言う。

 

「逃げろ!!」

 

 城門が閉まる。

 

 ガラガラガラ。

 

 全力で閉める。

 

 兵士が叫ぶ。

 

「門閉鎖!」

 

 騎士団が慌てる。

 

 司祭が担がれる。

 

 城の上。

 

 壁の上。

 

 全員が見る。

 

 門の外。

 

( ゚∋゚)

 

 クックルが立っている。

 

 静かに。

 

 ただ。

 

 立っている。

 

 そして。

 

( ゚∋゚)「クックル」

 

 鳴いた。

 

 城の上。

 

 全員が思った。

 

 あれは。

 

 魔物だ。

 

 絶対魔物だ。

 

 いや。

 

 考えるのはやめよう。

 

 エリア55が怖い。

 

 だいたい殴る。

 

 それが。

 

 クックルである。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。