クックル物語〈ドゥドゥドゥ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第二十九話「領主」

領主の世界。

 

ここでは騎士だけでは戦争はできない。

 

騎士団があり、城があり、

そしてそのすべてを動かす者。

 

領主である。

 

封建の世では、

領主は互いに助け合う義務がある。

 

援軍を呼び、軍を集め、

大軍で敵を討つ。

 

そんな領主連合軍の前に、

問題が現れた。

 

クックルである。

 

--------------------

 

 城の執務室。

 

 領主は報告書を読んでいた。

 

 被害報告。

 

 騎士団壊滅。

 

 城壁戦術全滅。

 

 司祭負傷。

 

 団長失踪。

 

 領主は黙って紙を置いた。

 

「……鳥か」

 

 騎士殿と新騎士。

 

「殴ります」

 

「殴ります」

 

 領主は深く息を吐いた。

 

「援軍を呼ぶ」

 

 封建の世である。

 

 領主は単独では戦わない。

 

 家臣領主。

 

 同盟領主。

 

 親族領主。

 

 つまり。

 

 援軍である。

 

 使者が各地へ走った。

 

 数日後。

 

 三人の領主が集まった。

 

 一人目。

 

 金持ち領主。

 

 南の肥沃な土地。

 

 貿易都市を持つ富裕貴族。

 

 鎧が豪華。

 

 金装飾。

 

 馬も豪華。

 

「魔物だと?」

 

 彼は笑った。

 

「兵は金で集まる」

 

「傭兵三百連れてきた」

 

 完全に資本主義である。

 

 二人目。

 

 野性味領主。

 

 北の山岳地帯。

 

 毛皮のマント。

 

 巨大斧。

 

 部下も毛皮。

 

「鳥か!」

 

 豪快に笑う。

 

「狩れる!」

 

「食える!」

 

 三人目。

 

 貧乏領主。

 

 痩せた土地。

 

 装備も少ない。

 

 兵も少ない。

 

「戦争は金がかかる」

 

 ため息をつく。

 

「できれば帰りたい」

 

 領主は言う。

 

「帰れない」

 

 野営地。

 

 中世軍のキャンプ。

 

 そこには数百の兵がいた。

 

 騎士の天幕。

 

 兵士の焚き火。

 

 馬の柵。

 

 武器の整備。

 

 鍋で煮込み。

 

 パン。

 

 肉。

 

 酒。

 

 完全に中世軍である。

 

 兵士が鎧を磨く。

 

 弓兵が矢を束ねる。

 

 槍兵が槍を並べる。

 

 傭兵が賭け事している。

 

 誰かが歌っている。

 

 誰かが寝ている。

 

 戦争前の夜。

 

 領主たちは大きな天幕に集まった。

 

 地図。

 

 作戦会議。

 

 金持ち領主。

 

「兵力は?」

 

 領主。

 

「騎士団残存」

 

「歩兵」

 

「弓兵」

 

 野性味領主。

 

「うちは百」

 

 金持ち領主。

 

「騎士五十」

 

 貧乏領主。

 

「……十五」

 

 沈黙。

 

 金持ち領主。

 

「鎧は鋼製」

 

 野性味領主。

 

「熊皮」

 

 貧乏領主。

 

「木盾」

 

 沈黙。

 

 野性味領主。

 

「鳥は食える」

 

 金持ち領主。

 

「食わない」

 

 貧乏領主。

 

「食えたら助かる」

 

 完全に文化が違う。

 

 そのとき。

 

 外から声。

 

「報告!」

 

 全員。

 

「またか」

 

 兵士。

 

「鳥の魔物です!」

 

 全員。

 

「またか」

 

 野営地の外。

 

 そこに。

 

( ゚∋゚)

 

 立っている。

 

 身長二メートル。

 

 三メートル近い。

 

 ムキムキ。

 

 二足歩行。

 

 人間体型。

 

 でも鳥。

 

 いや。

 

 鳥?

 

 野性味領主。

 

「でけえ!」

 

 金持ち領主。

 

「鳥か?」

 

 貧乏領主。

 

「鳥だな」

 

 騎士殿。

 

「殴ります」

 

 新騎士。

 

「殴ります」

 

 領主。

 

「野戦だ」

 

 中世軍の戦術。

 

 まず弓兵。

 

「射て!」

 

 矢の雨。

 

 本来なら敵兵を削る。

 

 だが。

 

 パシパシ。

 

 弾く。

 

 クックル。

 

 矢。

 

 弾く。

 

 兵士。

 

「鳥だよな?」

 

 槍兵前進。

 

 槍の壁。

 

 本来なら騎兵を止める。

 

 だが。

 

 ドゥ。

 

 槍兵飛ぶ。

 

 盾兵前進。

 

 盾壁。

 

 本来なら突撃防御。

 

 だが。

 

 ドゥ。

 

 盾兵飛ぶ。

 

 騎士突撃。

 

 ランス。

 

 本来なら戦場最強。

 

 だが。

 

 ドゥドゥドゥ。

 

 騎士飛ぶ。

 

 野性味領主。

 

「俺がやる!」

 

 斧を振り上げる。

 

「うおおお!」

 

 全力。

 

 全力の一撃。

 

 クックル。

 

 ドゥ。

 

 同時。

 

 野性味領主。

 

 吹き飛ぶ。

 

 金持ち領主。

 

「鎧を見ろ!」

 

 立派な鎧。

 

 重装。

 

「この鎧は」

 

 ドゥ。

 

 殴られる。

 

 鎧ごと。

 

 吹き飛ぶ。

 

 貧乏領主。

 

 剣を抜く。

 

「……仕方ない」

 

 領主も剣を抜く。

 

 二人。

 

 突撃。

 

「いくぞ!」

 

 ドゥ。

 

 二人まとめて飛ぶ。

 

 野営地。

 

 沈黙。

 

 兵士が言う。

 

「なんだあれ」

 

 騎士殿。

 

「殴ります」

 

 新騎士。

 

「殴ります」

 

 そのとき。

 

 ガラララ。

 

 見知らぬ引き戸。

 

 看板。

 

 エリア55。

 

 金持ち領主。

 

「なんだこれ」

 

 クックル。

 

 掴む。

 

 引きずる。

 

 ガラララ。

 

 扉閉まる。

 

 消える。

 

 野営地。

 

 沈黙。

 

 そこに。

 

( ゚∋゚)

 

( ゚∋゚)「クックル」

 

 静かに鳴いた。

 

 だいたい殴る。

 

 それが。

 

 クックルである。

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