領主の世界。
ここでは騎士だけでは戦争はできない。
騎士団があり、城があり、
そしてそのすべてを動かす者。
領主である。
封建の世では、
領主は互いに助け合う義務がある。
援軍を呼び、軍を集め、
大軍で敵を討つ。
そんな領主連合軍の前に、
問題が現れた。
クックルである。
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城の執務室。
領主は報告書を読んでいた。
被害報告。
騎士団壊滅。
城壁戦術全滅。
司祭負傷。
団長失踪。
領主は黙って紙を置いた。
「……鳥か」
騎士殿と新騎士。
「殴ります」
「殴ります」
領主は深く息を吐いた。
「援軍を呼ぶ」
封建の世である。
領主は単独では戦わない。
家臣領主。
同盟領主。
親族領主。
つまり。
援軍である。
使者が各地へ走った。
数日後。
三人の領主が集まった。
一人目。
金持ち領主。
南の肥沃な土地。
貿易都市を持つ富裕貴族。
鎧が豪華。
金装飾。
馬も豪華。
「魔物だと?」
彼は笑った。
「兵は金で集まる」
「傭兵三百連れてきた」
完全に資本主義である。
二人目。
野性味領主。
北の山岳地帯。
毛皮のマント。
巨大斧。
部下も毛皮。
「鳥か!」
豪快に笑う。
「狩れる!」
「食える!」
三人目。
貧乏領主。
痩せた土地。
装備も少ない。
兵も少ない。
「戦争は金がかかる」
ため息をつく。
「できれば帰りたい」
領主は言う。
「帰れない」
野営地。
中世軍のキャンプ。
そこには数百の兵がいた。
騎士の天幕。
兵士の焚き火。
馬の柵。
武器の整備。
鍋で煮込み。
パン。
肉。
酒。
完全に中世軍である。
兵士が鎧を磨く。
弓兵が矢を束ねる。
槍兵が槍を並べる。
傭兵が賭け事している。
誰かが歌っている。
誰かが寝ている。
戦争前の夜。
領主たちは大きな天幕に集まった。
地図。
作戦会議。
金持ち領主。
「兵力は?」
領主。
「騎士団残存」
「歩兵」
「弓兵」
野性味領主。
「うちは百」
金持ち領主。
「騎士五十」
貧乏領主。
「……十五」
沈黙。
金持ち領主。
「鎧は鋼製」
野性味領主。
「熊皮」
貧乏領主。
「木盾」
沈黙。
野性味領主。
「鳥は食える」
金持ち領主。
「食わない」
貧乏領主。
「食えたら助かる」
完全に文化が違う。
そのとき。
外から声。
「報告!」
全員。
「またか」
兵士。
「鳥の魔物です!」
全員。
「またか」
野営地の外。
そこに。
( ゚∋゚)
立っている。
身長二メートル。
三メートル近い。
ムキムキ。
二足歩行。
人間体型。
でも鳥。
いや。
鳥?
野性味領主。
「でけえ!」
金持ち領主。
「鳥か?」
貧乏領主。
「鳥だな」
騎士殿。
「殴ります」
新騎士。
「殴ります」
領主。
「野戦だ」
中世軍の戦術。
まず弓兵。
「射て!」
矢の雨。
本来なら敵兵を削る。
だが。
パシパシ。
弾く。
クックル。
矢。
弾く。
兵士。
「鳥だよな?」
槍兵前進。
槍の壁。
本来なら騎兵を止める。
だが。
ドゥ。
槍兵飛ぶ。
盾兵前進。
盾壁。
本来なら突撃防御。
だが。
ドゥ。
盾兵飛ぶ。
騎士突撃。
ランス。
本来なら戦場最強。
だが。
ドゥドゥドゥ。
騎士飛ぶ。
野性味領主。
「俺がやる!」
斧を振り上げる。
「うおおお!」
全力。
全力の一撃。
クックル。
ドゥ。
同時。
野性味領主。
吹き飛ぶ。
金持ち領主。
「鎧を見ろ!」
立派な鎧。
重装。
「この鎧は」
ドゥ。
殴られる。
鎧ごと。
吹き飛ぶ。
貧乏領主。
剣を抜く。
「……仕方ない」
領主も剣を抜く。
二人。
突撃。
「いくぞ!」
ドゥ。
二人まとめて飛ぶ。
野営地。
沈黙。
兵士が言う。
「なんだあれ」
騎士殿。
「殴ります」
新騎士。
「殴ります」
そのとき。
ガラララ。
見知らぬ引き戸。
看板。
エリア55。
金持ち領主。
「なんだこれ」
クックル。
掴む。
引きずる。
ガラララ。
扉閉まる。
消える。
野営地。
沈黙。
そこに。
( ゚∋゚)
( ゚∋゚)「クックル」
静かに鳴いた。
だいたい殴る。
それが。
クックルである。