クックル物語〈ドゥドゥドゥ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第三話「王都」

王は報告書を読んだ。

 

勇者は生きていたらしい。

 

だいたい殴られたらしい。

 

エリア55という単語も書いてあった。

 

側近たちは真面目に議論した。

 

国家としてどう対処すべきか。

 

結論は討伐である。

 

そして扉が出た。

 

----------------------

 

報告書には、そこまで書いてなかった。

 

 王都、玉座の間。

 

 赤い絨毯の上に、重々しい空気が漂っている。

 

 王は報告書を片手に、ゆっくりと口を開いた。

 

「……森にて、正体不明の存在と遭遇。勇者パーティー、壊滅。生存は確認。殴打多数。エリア55への連行を視認――」

 

 大臣が咳払いをする。

 

「殴打多数、とは」

 

「だいたい殴られた、と書いてある」

 

「雑だな報告書!」

 

 将軍が腕を組む。

 

「鳥型魔物と推測されますな」

 

「鳥に殴られる勇者とは何事か」と別の大臣。

 

 魔導院の賢者が杖を鳴らす。

 

「問題はそこではない。“エリア55”なる領域です。異界か、隔離区画か――」

 

 王が眉をひそめる。

 

「王都にそのような地名はない」

 

「では国外か?」

 

「国外に“エリア”はないだろう!」

 

 議論が白熱する。

 

「討伐すべきです!」

 

「まずは調査を!」

 

「勇者の再派遣を!」

 

「もう殴られてるぞ!」

 

 王が手を上げる。

 

「静まれ」

 

 一瞬で沈黙が落ちる。

 

「国家は理不尽を許さぬ。騎士団三百を動員。魔導砲を準備せよ。クックル討伐とする」

 

 将軍が胸を叩く。

 

「御意!」

 

 そのとき。

 

 ガラララ。

 

 玉座の間の背後、石壁に、場違いな木製の引戸が現れた。

 

 全員が凍りつく。

 

「報告書の扉だ!」

 

「押さえろ!!」

 

 衛兵十数名が一斉に扉に飛びつく。

 

「開けるな!」

 

「絶対開けるな!」

 

 扉は静かに、ゆっくりと動く。

 

「力を込めろぉぉぉ!!」

 

 ぎぎぎ、と音を立てて開く。

 

「押してるのに開くな!!」

 

「逆に押せ!」

 

「逆とは何だ!?」

 

 衛兵が必死に体重をかけるが、扉はするりと全開になる。

 

 しかし――

 

 中はただの白い空間だった。

 

「……何もいない?」

 

「フェイントか?」

 

「報告書にフェイントとは書いてなかったぞ!」

 

 その瞬間。

 

 正面の巨大な会議室扉が、勢いよく開いた。

 

 バン!!

 

 全員が振り向く。

 

( ゚∋゚)「クックル」

 

「そっちかい!!!!」

 

 大臣が机を叩く。

 

「背後を警戒していたのに!」

 

「国家の威信はどうした!」

 

 将軍が剣を抜く。

 

「総員、迎撃!」

 

(#゚∋゚)「クックルクックル」

 

 空気が震える。

 

「報告書に“クックルクックル”はないぞ!」

 

「追記しろ!!」

 

 ドゥ!(将軍の顔面に直撃)

 

「ぐはっ!」

 

 ドゥ!(大臣が机ごと吹き飛ぶ)

 

「書類がぁぁ!!」

 

 ドゥ!(賢者が宙を舞う)

 

「まだ解析が――」

 

 ドゥ!(衛兵が壁に貼り付く)

 

「国家予算がぁぁ!!」

 

 玉座の間が一瞬で乱戦になる。

 

 王が立ち上がる。

 

「我は王だぞ!!」

 

( ゚∋゚)「クックル?」

 

「困惑するな!!」

 

 ドゥ!(王冠が宙を舞う)

 

 ドゥ!(玉座にひびが入る)

 

 衛兵たちが必死に叫ぶ。

 

「陛下を守れ!」

 

「いや守れてない!」

 

 賢者がよろよろと立ち上がる。

 

「陛下! 溜め動作です!」

 

(#゚∋゚)「クックルクックル」

 

「報告書にはないぞ!!」

 

「ページめくれ!」

 

「追記! 追記!」

 

 ドゥドゥドゥドゥ!!

 

 衝撃が走る。

 

 轟音とともに、王城の一角が吹き飛んだ。

 

 青空が見える。

 

 煙が立ち上る。

 

 玉座は半壊し、赤い絨毯は焦げている。

 

 静寂。

 

( ゚∋゚)「クックル」

 

 短く鳴く。

 

 誰も視線を外していない。

 

 だが次の瞬間、クックルはもういなかった。

 

 背後の扉も、正面の扉も、消えている。

 

 将軍が瓦礫の中から顔を出す。

 

「……討伐は」

 

 大臣が呻く。

 

「再検討で」

 

 王は崩れた玉座に座り直し、深く息を吐いた。

 

「……対策本部を設置せよ」

 

「名称は?」

 

 王は少し考えた。

 

「クックル対策局だ」

 

 遠くで、どこかで。

 

 ドゥ。

 

 と、音がした気がした。

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