クックル物語〈ドゥドゥドゥ!!〉   作:ヒツジ(ラム肉

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第三十四話「ロック鳥」

伝説の世界。

 

ここでは空にも怪物がいる。

 

地を這う蛇。

人を石にする鶏。

そして。

 

象すら掴み上げる、

空の王。

 

ロック鳥。

 

千夜一夜の物語に語られる、

巨大なる伝説の鳥である。

 

そんな巨鳥の前に現れたのは。

 

クックルである。

 

しかも今回は。

 

なんか王として仕上がっている。

 

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 砂漠の奥地。

 

 切り立った谷があった。

 

 深い。

 

 とても深い。

 

 見下ろせば、足がすくむ。

 

 というか普通に怖い。

 

 谷底には岩。

 

 岩。

 

 岩。

 

 そして。

 

 きらきら。

 

 光る。

 

 宝石である。

 

 商人の一人が言った。

 

「見ろ!」

 

「ダイヤだ!」

 

 別の商人が言う。

 

「ルビーもあるぞ!」

 

「サファイアだ!」

 

 谷底は宝の山であった。

 

 だが。

 

 問題がある。

 

 深すぎる。

 

 降りられない。

 

 降りたら戻れない。

 

 というか戻る前にたぶん死ぬ。

 

 そこで。

 

 商人たちは古くから伝わる方法を使う。

 

 肉である。

 

 大きな肉塊。

 

 羊肉。

 

 牛肉。

 

 とにかく肉。

 

 商人の親方が胸を張った。

 

「よいか」

 

「この谷の宝石は」

 

「肉で拾うのだ」

 

 若い商人が言った。

 

「いや理屈がわからん」

 

 親方が言う。

 

「谷底に肉を落とす」

 

「すると宝石が肉にくっつく」

 

 若い商人。

 

「うん」

 

 親方。

 

「そこへロック鳥が来る」

 

 若い商人。

 

「うん?」

 

 親方。

 

「肉を巣へ運ぶ」

 

 若い商人。

 

「いや待って」

 

 親方。

 

「その隙に宝石を回収する」

 

 若い商人。

 

「待ってください親方」

 

「その説明だと」

 

「ロック鳥が全部危険じゃないですか」

 

 親方。

 

「そうだ」

 

 若い商人。

 

「そうだじゃないんですよ!!」

 

 だが他の商人たちは慣れたものである。

 

「縄を用意しろ!」

 

「肉をもっと持て!」

 

「欲張るなよ!」

 

「いや欲張るだろ宝石だぞ!」

 

 完全に利欲の民である。

 

 商人とはそういうものである。

 

 そして作業開始。

 

 肉。

 

 ドサッ。

 

 肉。

 

 ドサッ。

 

 肉。

 

 ドサッ。

 

 谷底へ投げ込まれる。

 

 しばらくすると。

 

 宝石がくっつく。

 

 肉に。

 

 べったり。

 

 きらきら。

 

 商人たち。

 

「ついた!!」

 

「ついたぞ!!」

 

「でかいダイヤだ!!」

 

「待てあの肉は俺のだ!!」

 

「まだお前のじゃない!!」

 

 盛り上がっている。

 

 非常に盛り上がっている。

 

 だが。

 

 空が暗くなる。

 

 商人の一人が言った。

 

「……来た」

 

 全員が空を見る。

 

 巨大な影。

 

 でかい。

 

 いや。

 

 でかすぎる。

 

 翼が空を覆う。

 

 バサァァァァァ!!

 

 風圧。

 

 砂が舞う。

 

 商人たちが目を細める。

 

「うわあああ目があああ!!」

 

「砂!!」

 

「羽ばたきで砂嵐起こすな!!」

 

 ロック鳥。

 

 伝説の巨鳥。

 

 象を掴むと言われる怪物。

 

 いや象を掴むって何だ。

 

 サイズ感がどうかしている。

 

 山のような胴体。

 

 岩のような脚。

 

 鉤爪ひとつが人間の背丈ほどある。

 

 商人が震えながら言った。

 

「でかすぎる!!」

 

 親方が言う。

 

「だからロック鳥なのだ!!」

 

 若い商人が叫ぶ。

 

「もっと早く言ってくださいよ!!」

 

 ロック鳥は谷底へ降りる。

 

 肉を掴む。

 

 ごっそり。

 

 宝石つき肉を。

 

 そのまま翼を広げる。

 

 商人たち。

 

「今だ!!」

 

「縄を引け!!」

 

「巣の方へ回れ!!」

 

「宝石を取れ!!」

 

 だが。

 

 ここで問題が起きる。

 

 欲張り商人がいた。

 

「もっとだ!」

 

「もっと肉を落とせ!」

 

「もっと宝石をつけろ!」

 

 親方が叫ぶ。

 

「やめろ!」

 

「十分だ!」

 

 だが欲は止まらない。

 

 肉。

 

 ドサッ。

 

 また肉。

 

 ドサッ。

 

 さらに肉。

 

 ドサッ。

 

 若い商人が言う。

 

「いややりすぎでは!?」

 

 そのとき。

 

 ロック鳥。

 

 止まる。

 

 ゆっくり。

 

 商人たちを見る。

 

 沈黙。

 

 若い商人。

 

「……怒ってません?」

 

 親方。

 

「怒っているな」

 

 欲張り商人。

 

「まさか」

 

 ロック鳥。

 

 ギャアアアアアアア!!

 

 咆哮。

 

 風圧。

 

 砂嵐。

 

 商人たち。

 

「うわあああああ!!」

 

「怒ったああああ!!」

 

「そりゃ怒る!!」

 

「肉泥棒だと思われてる!!」

 

 ロック鳥。

 

 急降下。

 

 鉤爪。

 

 岩を砕く。

 

 バキィン!!

 

 商人が吹き飛ぶ。

 

「ぎゃあああ!!」

 

 荷車がひっくり返る。

 

 宝石が転がる。

 

 肉も転がる。

 

 商人も転がる。

 

 完全に地獄絵図である。

 

 親方が叫ぶ。

 

「逃げろ!!」

 

 若い商人が叫ぶ。

 

「だから危険だって言ったじゃないですか!!」

 

 そのとき。

 

 谷の縁。

 

 ズシン。

 

 ズシン。

 

 ズシン。

 

 何かが来る。

 

 全員が振り向く。

 

 そこにいた。

 

( ゚∋゚)

 

 クックル。

 

 だが。

 

 前回までとは違う。

 

 あの蛇柄の緑色はない。

 

 落としたのだろうか。

 

 もう飽きたのだろうか。

 

 知らん。

 

 とにかく今回は。

 

 本来の白い羽。

 

 白。

 

 とても白い。

 

 そして。

 

 頭。

 

 王冠。

 

 しかも前より豪華である。

 

 バジリスクから奪った王冠をもとに。

 

 宝石を盛ったのか。

 

 巨大化している。

 

 きらきら。

 

 ぎらぎら。

 

 無駄に威厳がある。

 

 若い商人が言った。

 

「なんか王になってる!!」

 

 親方が言った。

 

「前から王だったのかもしれん!!」

 

「知らんけど!!」

 

 欲張り商人が言った。

 

「鳥だ!!」

 

 若い商人が言う。

 

「鳥ですね!!」

 

 親方が言う。

 

「しかも王だ!!」

 

 若い商人が叫ぶ。

 

「王って何なんですかこの谷!!」

 

 ロック鳥も気づく。

 

 見る。

 

 クックルを見る。

 

 白い羽。

 

 王冠。

 

 ムキムキ。

 

 二足歩行。

 

 身長二〜三メートル。

 

 ロック鳥に比べると小さい。

 

 だが存在感がおかしい。

 

 若い商人が言う。

 

「……仲間ですか?」

 

 親方が言う。

 

「知らん」

 

「だが鳥だ」

 

 欲張り商人が言う。

 

「鳥対鳥だ!!」

 

 若い商人が叫ぶ。

 

「このサイズ差で!?」

 

 ロック鳥。

 

 巨大翼を広げる。

 

 風。

 

 轟音。

 

 クックル。

 

 立っている。

 

 白い羽が揺れる。

 

 王冠が光る。

 

 なぜか妙にかっこいい。

 

 腹が立つ。

 

 クックル。

 

 静かに鳴く。

 

( ゚∋゚)「クックル」

 

 次の瞬間。

 

 ロック鳥が突っ込む。

 

 速い。

 

 でかいのに速い。

 

 なんだその機動力は。

 

 鉤爪。

 

 クックルを掴む。

 

 持ち上げる。

 

 そのまま空へ。

 

 商人たち。

 

「うわあああああ!!」

 

「終わった!!」

 

「連れていかれた!!」

 

「白いのが空へ!!」

 

 空中。

 

 ロック鳥の爪に掴まれたクックル。

 

 普通なら終わりである。

 

 というかたいていの生き物は終わりである。

 

 だが。

 

 クックル。

 

 腕を振り上げる。

 

 そして。

 

 ドゥ。

 

 ロック鳥の顔面に一発。

 

 ロック鳥。

 

 ぶれる。

 

 商人たち。

 

「空中で殴ったああああ!!」

 

「やるのかそこでも!!」

 

 ロック鳥。

 

 怒る。

 

 さらに上昇。

 

 クックル。

 

 もう一発。

 

 ドゥ。

 

 ロック鳥。

 

 体勢を崩す。

 

 若い商人が叫ぶ。

 

「やばい!!」

 

 親方が叫ぶ。

 

「落ちるぞ!!」

 

 ロック鳥。

 

 ぐらり。

 

 翼がぶれる。

 

 クックル。

 

 さらに。

 

 ドゥドゥ。

 

 連打。

 

 ロック鳥。

 

 墜落。

 

 ドォォォォォン!!

 

 谷全体が揺れる。

 

 岩が崩れる。

 

 宝石が跳ねる。

 

 商人が転ぶ。

 

「うわあああ!!」

 

「谷が揺れた!!」

 

「巨鳥落ちた!!」

 

「落とした!!」

 

 地面に叩きつけられたロック鳥。

 

 まだ起き上がる。

 

 強い。

 

 さすが伝説の巨鳥。

 

 伊達に象を掴んでいない。

 

 いや象掴むな。

 

 ロック鳥。

 

 咆哮。

 

 翼を広げる。

 

 クックル。

 

 着地。

 

 王冠きらり。

 

 なんか着地まで堂々としている。

 

 腹が立つ。

 

 ロック鳥。

 

 突撃。

 

 クックル。

 

 ドゥ。

 

 翼に一発。

 

 ロック鳥。

 

 よろける。

 

 ドゥ。

 

 脚に一発。

 

 ロック鳥。

 

 傾く。

 

 ドゥドゥドゥドゥ!!

 

 怒涛の乱打。

 

 巨鳥の羽が舞う。

 

 砂が舞う。

 

 宝石が跳ねる。

 

 商人たちが叫ぶ。

 

「殴ってる!!」

 

「ひたすら殴ってる!!」

 

「ロック鳥が押されてる!!」

 

「押されるなそんな巨大なのに!!」

 

 最後に。

 

 クックル。

 

 大きく振りかぶる。

 

( ゚∋゚)「クックル」

 

 ドゥ。

 

 ロック鳥。

 

 飛ぶ。

 

 横に。

 

 でかい鳥が。

 

 横に飛ぶ。

 

 そのまま岩壁に激突。

 

 ズガァァァン!!

 

 沈黙。

 

 静寂。

 

 砂が落ちる。

 

 羽がひらひら落ちる。

 

 商人たち。

 

「……」

 

 若い商人。

 

「……伝説の巨鳥が」

 

 親方。

 

「……殴られたな」

 

 欲張り商人。

 

「殴られたな」

 

 谷の縁。

 

 宝石のきらめき。

 

 倒れたロック鳥。

 

 そして。

 

 立っている。

 

 白い羽。

 

 豪華な王冠。

 

( ゚∋゚)

 

( ゚∋゚)「クックル」

 

 若い商人が言った。

 

「……あれ」

 

「ロック鳥より」

 

「こっちのほうが怖くないですか」

 

 親方が即答した。

 

「怖い」

 

 欲張り商人も頷いた。

 

「怖い」

 

 完全に一致した。

 

 珍しいことである。

 

 そのとき。

 

 谷底で光る。

 

 宝石。

 

 親方の目が輝く。

 

「……よし」

 

 若い商人。

 

「何がよしなんですか」

 

 親方。

 

「あの鳥がいる間に拾うぞ!!」

 

 若い商人。

 

「懲りてない!!」

 

 欲張り商人。

 

「今しかない!!」

 

 結局。

 

 商人とはそういうものである。

 

 だいたい殴る。

 

 それが。

 

 クックルである。

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