ニュースになった。
やらせではなかった。
警察も現場を確認した。
証拠も押収した。
配信者は病院で目覚めた。
国家は対策本部を設置した。
制御できるかもしれないと誰かが言った。
国家はやらせではない。
扉は会議中でも出る。
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午前九時。
ワイドショーの特番が始まる。
『謎の生物による暴行事件か!?』
スタジオではコメンテーターが真顔で頷いている。
「やらせではない、ということですね?」
映像が流れる。
森の中。
カメラが揺れ、
( ゚∋゚)「クックル」
そして。
ドゥ。
スタジオが一瞬静まる。
「CGでは?」
「現場からは第三者の痕跡は見つかっていません」
「新種の動物の可能性も――」
テロップが踊る。
《政府、対策本部設置へ》
都内病院。
包帯だらけの配信者ヨシオが目を覚ます。
「……ここは」
ベッドの横には警察官。
「おはようございます。事情をお聞きします」
「やらせじゃないんです」
「その話はもう全国が知っています」
ヨシオが震える。
「あれは……鳥みたいで……でも……」
「鳴き声は?」
「クックル」
警察官がメモを止める。
「……クックル?」
「はい。あと……ドゥ」
「ドゥ?」
沈黙。
内閣府地下会議室。
モニターに森の映像が映る。
自衛隊幹部、警察庁長官、科学顧問。
「物理的接触の痕跡は?」
「被害者の骨折は通常の打撃と一致します」
「正体は未確認」
科学顧問が指を組む。
「極めて興味深い存在です」
別の幹部が低く言う。
「利用できる可能性は?」
部屋の空気が変わる。
「制御できれば、抑止力になる」
「対象は単独。捕獲を前提に――」
そのとき。
ガラララ。
会議室の背後で、木製の引戸が静かに現れる。
全員が凍る。
「警備は何をしている!」
SPが銃を抜く。
だが、扉は勝手に開く。
「押さえろ!」
数名が扉に飛びつく。
しかし。
正面の自動ドアが開いた。
静かに。
( ゚∋゚)「クックル」
「そっちか!!」
SPが即座に拳銃を向ける。
「動くな!」
発砲。
乾いた銃声。
弾丸が飛ぶ。
ドゥ。
弾丸が床に転がる。
「は?」
次の瞬間。
ドゥ。
SPが壁に叩きつけられる。
「うわぁっ!」
(#゚∋゚)「クックルクックル」
科学顧問が叫ぶ。
「溜め動作です!」
「報告書にあったのか!?」
「ありました!」
ドゥ。
幹部が机ごと吹き飛ぶ。
ドゥ。
警察庁長官が椅子ごと転倒。
「国家だぞ我々は!」
( ゚∋゚)「クックル?」
「疑問形で見るな!!」
ドゥドゥドゥドゥ!!
会議室が半壊する。
資料が舞う。
モニターが割れる。
科学顧問が最後に叫ぶ。
「制御は――」
ドゥ。
沈黙。
机の下に転がるスマートフォン。
監視カメラが全てを映している。
クックルがゆっくりと近づく。
レンズを覗き込む。
どアップ。
( ゚∋゚)「クックル」
画面が乱れ、ブラックアウト。
地下会議室には、壊れた机と静寂だけが残った。
遠くで。
ドゥ。
と音がした気がした。