一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話 作:しいたvol.3
我、流浪のものである
我、流浪のものなり。
なんてことのない辺境の星に生まれ、ほどほどに苦労して育ってきた。
偉大なる其達に直々に力を分け与えられることを夢見て幾星霜、ついぞ三十路に到達してしまったのである。
広大な銀河には30年という月日が刹那に感じられるほど長く生きる者たちもいるが、我には長すぎた。
スッカリあの時の夢は折れ、ほとんど諦めの感情で各地を巡っているわけである。
最近の目標は身を固めること。
もうこの歳になると地元の友人が子供を持つ時期なのだ。
認めたくないモノである。老いという現実は。
『Aセットおひとつで1200信用ポイントです』
二相楽園。かの愉悦の星神アッハと関係の深いこの地で、我は1年ほど滞在していた。
それにしても、ここ最近は物価が上昇した。
このカフェのセットもつい最近までは900信用ポイントで買えたというのに…
なんでも空に浮かんでいるあの幻月が満ち、幻月遊戯という催しが開催されるとか
過去訪れたことのある仙舟の人々を見かけるようになったのもその影響だろう。
物思いもそこそこにカフェを出ると、出てすぐの所に人が立っていた。
「あら、久しぶりね?」
白い髪に孔雀のごとき優雅な立ち振る舞い。
忘れるはずもない、仙舟「玉殿」の将軍、爻光殿である。
「無視なんて悲しいわね、甲冑さんはいつからそんなに冷たくなっちゃったの?」
彼女…爻光殿とは数年ほど前に仙舟「玉殿」で出会った。
当時、我は雇われとして戦場で豊穣の忌み物たちの対処に当たり、
何の因果か爻光殿と同じ場に立つことがあったのである
__久しぶりですな。爻光殿。よもやこのような場所で出会えるとは
「私も驚きだよ!甲冑さんったら私に連絡しないで玉殿から出て行っちゃうんだから…」
少々不満そうな目で見られる。
前回の美玉牌で勝ち逃げしたのがそんなに悔しかったのだろうか。
「あ、それより今からどこか食事にでも行かない?私、久しぶりに甲冑さんとお話ししたいな?」
我が仙舟を離れるまで、かつてもこうして彼女から誘われることはあった。
しかし、我のような流浪の身にかの戎韜将軍が気にかけてくれる理由とは何なのだろうか
__ええ、爻光殿からのお誘いとあらば、喜んで。
断る理由もないので了承しておく。
「決まりね、じゃあ早速行きましょ♪」
サラっと腕を組まれてしまった。
我は常に甲冑なので歩きづらいと思うのだが…
少々ぎこちなくなりながら二人で歩く。
我は童貞である。女性に寄られるとドギマギしてしまうのだ。
しばらくして。
我らは食事処にて互いに近況を話し合っていた。
「あ!そうだ!甲冑さんの今の運勢を占ってあげようか?」
なんと、かの占いをしてもらえるとのことである。
まさに僥倖。
これを逃す理由はないと我の今後を教えてもらうことにした。
「何について知りたい?やっぱり旅の方角とか?」
__お恥ずかしいことなれど、我の今後の恋愛を占っていただきたい。
もう歳ですから、大人しく身を固めようかと思っていまして。
「…ふ〜ん、わかったわ。」
少々目線が冷たくなったような気がする。
今更こんなヘンテコな甲冑男が相手を見つけたいなどと滑稽に思われただろうか。
少々の不安と期待を持ちつつ彼女の口から結果が紡がれるのを待つ。
彼女は我をじっと見て、
一瞬、冷め切った顔になった。
「…うん、ダメね。まるでダメ」
我に送られたのはその非情な言葉であった。
「いい?私以外の女性からアプローチを受けたとしてもそれは破滅への道。絶対に乗っちゃダメよ」
更に追い討ち!もう我のメンタルはボロボロである。
そんな我を見かねたのか、爻光殿は声をかけてくれた。
「そんなに落ち込まないで、吉凶は案外変わるものよ。」
そう言って我のことを優しく抱き留めてくれた。
なんと心優しき方か。
この方に仕えられる玉殿の兵はさぞ幸せだろう。
その後、占ってくれたことへの謝意を伝えつつ、我と爻光殿は解散する運びとなった
「まだこの星には残るの?」
__ええ、まだもう少しいようと思います。
では、また会えたらお食事でも。
「そっか。じゃあ私以外の女の子には気をつけてね?友人が占いで死ぬを見るなんて私、嫌だから」
優しく手を振って見送ってくれる爻光殿。
何処か心が満たされた気持ちになりながら、
我は宿への帰路に着くのであった。
・甲冑さん
鎧フル装備ニキ。旅人。人たらし。童貞。ボケ。アホ。まぁまぁつよい。
・爻光
甲冑さんが童貞なのは知ってる。つよい。