一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話   作:しいたvol.3

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想像より多くの方々に見ていただいて驚きでございます。
感想と評価を貰えると作者がキーボードを壊す勢いで文章を書きます。


我、流浪のものである11

「…名前、なんていうんだい?」

 

「…──。」

 

「そうか。いい名前だ」

 

「…ねぇ。なんで旅をしているの?」

 

「…強くなるためだ。ついでに、出会いを求めて、ってところだな。ハハ」

 

「それ、俺の名前よりも気になることだったか?」

 

「うん」

 

ある日堕ちてきた宇宙船の中にいた彼に、私はよく話しかけられていた。

 

彼のことを知ろうとした。

よく分からなかった。

 

彼くらいの歳ならまだ親の元に居ても何らおかしくない。

なのに、彼は危険を冒してまで旅をしたいというのだ。 

 

彼は優しかった。強かった。

私の頭を撫でる手は、とても暖かいものだった。

幼い私にとって、ただそれだけで良かった。

 

幾度か季節を経て、私はすっかり彼に心を許していた。

彼が星を出ると言った時、みっともなく引き留めたのを覚えている。

 

「大丈夫だ、俺は変わらないさ。いくらか経ったら、また会おう。約束だ」

 

そして彼は行ってしまった。

定期的に手紙は送りあっていた。

彼はどんなに遠くにいても私のことを気にかけてくれる。

 

彼だけは変わらずに、あの頃の笑顔で私を包んでくれる。

 

たとえ、両親が死のうと。

 

たとえ、私の名前が変わろうと。

 

いくら月日が私たちを隔てたとしても。

 

きっと、きっと、きっと…

 

 

 

…そう思っていた。

でも、久しぶりに私と会った時の彼は──

 

「久しぶりであるな。息災であったか?我は…」

 

「なんで。」

 

思わず声が出た。

 

「…む?」

 

 

 

「なんで、変わってしまったのですか」

 

 

 

辺りを静寂が支配した。

周りの雪のせいで、時が止まったんじゃないかと錯覚するほどに。

 

 

「それは…」

 

再びの静寂の後、その重い兜の内から、言葉は紡がれた。

 

 

 

 

 

「ただ強く、在るためである。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我、流浪の身である。

アグライア殿との会話の後、いくらか月日が経過した。

 

この都市での生活にも慣れてきた。

一番の収穫は黄金裔たちと接点を持てたことである。

 

我は今、居住している部屋を少し出たところにある裏庭のようなところで日課の素振りを行っていた。

一日たりとも鍛錬を怠ることはない。

 

「やぁ、今日も朝から鍛錬かい?精が出るね」

 

__ああ、ファイノンか。申し訳ない、邪魔したか?

 

「いいや、むしろ僕も一緒に鍛錬させてもらおうと思ってね。ヨロイさんの剣術にはすごく興味がある」

 

興味津々といった目で我の方を見るファイノン。

確かに、我の剣術はかなり珍しい。

一定の型というか、今まで見てきた強い技を都度切り替えるようなものである。

 

__ともに鍛錬するのはこちらとしても嬉しいのである。強さを求めることも、我の生きる理由の一つであるからな。

 

「なんというか…クレムノスの人たちみたいなことを言うんだね。あそこの人たちと仲良くなれるんじゃない?例えば…モーディスとか」

 

「言われなくとも俺とこの者はすでに固い友情を築いているぞ、『救世主』。」

 

気づけば背後にモーディスが立っていた。

そう、我と彼はともに漢の勝負を繰り広げた仲。

最も深い絆で結ばれているといっても過言ではないだろう。

 

「俺との勝負であそこまで耐えられた人間はお前が初めてだ。

それに加えて火を追う旅にも協力するときたら、それは仲良くもするだろう。」

 

「あれ、そうだったのかい?てっきり君は仲良くできないと思っていたよ」

 

「フン、貴様にできて俺にできない事はない」

 

なんともまぁ、仲の良いことである。

ファイノンとモーディスはよきライバルであろうな。

 

「…そういえば、今日からは僕が監視官になったんだ。よろしくね」

 

__変更であるか?そうか…キャストリス殿に礼を伝えておかねば。そしてこれからよろしく頼む、ファイノン。

 

「ああ!オクヘイマの案内と任務の補助は僕に任せてくれ」

 

__うむ、では今度空いている日に共にオクヘイマを巡ろうではないか。

 

いまだに監視制度は続くらしい。まぁ、黄金裔と仲良くなるチャンスと言えばそうである。

事実昨日までの監視担当だったキャストリス殿とはおすすめの本を共有するような仲になれた。

 

『その…ここまで、私に恐れない人は初めてです。

距離がいつもより近いものですから、少し…いえ!決して嫌なわけではないのです。むしろ嬉しいというか…』

 

恐れないというか、我は死んでも戻ってこれるのである。

そもそもこんな儚く可愛らしい少女を恐れ一人にするなど男のすることではない。

我、童貞ではあっても女子には紳士でありたいのだ。

 

「君が暗黒の潮の討伐任務で見せた剣技は今でも覚えているよ。これなら僕の仕事も少し楽になるかな?」

 

この世界には暗黒の潮という簡単に言うと敵が存在する。

強さ的には豊穣の忌み物やヴォイドレンジャーとさして変わらない。

蛆のように沸くことと、他の生物、特にタイタンすら飲み込んで汚染するその力は驚異的であるが。

 

十数体程度なら我でも相手どれる。

しかし、モーディスと初めて任務に行ったときは衝撃だった。

なんせ彼は不死身の肉体を持つのだ。その身一つでバッタバッタと敵をなぎ倒す眺めは壮観である。

 

__どうであろうか。書類仕事は勘弁であるな。

 

「ハハ、そういう仕事は大体アグライアがしているよ。彼女は少し働きすぎな気もするけどね」

 

「おい救世主。剣が止まっているぞ?英雄様は呑気で羨ましいものだ」

 

モーディスの言葉にわかりやすくファイノンはカチンと来ている。

 

「ああ、してやるとも!ただし、打つのは的じゃなくて君だけどね!」

 

「フン。望むところだ!」

 

ドガッ。バキッ。およそ木剣と拳から出る音ではない重音があたりに響き渡る。

大地が削れ、綺麗な中庭の芝生がどんどんを土色になっていく。

うむ。朝から元気でよろしい!

 

ちなみに後でアグライアに三人で叱られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくの後。

我とファイノンは任務の場所であるという「生命の花園」に来ていた。

 

綺麗なところだ。今までも斯様な景色は見てきたが、ここは…形容しがたい暖かさを感じる。

このような場所に来るということは、まさか今回の任務は戦闘ではないのだろうか。

 

「綺麗だろ?僕もここはお気に入りなんだ」

 

__ああ、綺麗だ…。して、今回の任務は何であるか?

 

我がそう聞くと、なにやらファイノンは面白そうな目で我を見つめている。

なんであろうか。我の鎧に虫でも止まっているのであるか?

 

「ふっふっふ…実は今回の任務はね…なんとキメラのお世話だよ!」

 

…キメラ?ルアンが前に作ったスキャラガバズのようなものであろうか。

まさかオンパロスにそのような獣を飼いならす技術があるとは!

 

「…あ、ほら。ヨロイさんも触ってみなよ!」

 

なにやらファイノンが小さな生き物を両手で我の目の前に持ち上げている。

 

「ガオ?ガオー!」

 

我の視界に移ったのはマスコット的なかわいさの…猫?犬?どれとも似つかわしくない生物だった。

おお、キメラという名前のわりに癒される見た目なのであるな。

 

__これは可愛らしい。今日はこの生き物の世話であるか?

 

「そうだよ。まぁこの子たちは賢いからそんなにお世話はいらないんだけど。

ほら、ヨロイさんここに来てから戦闘任務ばかりで疲れてるだろ?今日はこの子たちと遊んでリラックスしよう!」

 

確かに。ここにきて2か月そこら経っている。

そのうち半分以上の日数我は戦っていた。

 

目の前のキメラは無邪気な目でこちらを見つめてくる。

うむ。可愛いのである。

 

__そういうことなら、全力で彼らの世話をするとしよう。

 

「決まりだね。じゃあまずはキメラたちの新しいファッションを選んでみようか」

 

しばらくキメラたちの新しいファッション選びに時間を費やした。

 

そういえば、ヘルタ殿たちの調査は順調なのであろうか。

オンパロスが楽しすぎていくらか過ごしてしまっていたが、そろそろ確認してもいい頃合いかもしれない。

 

このオンパロスは不思議に満ち溢れている。タイタンらの権能もそうだ。

もしかしたら何か強くなるヒントがあるかもしれないのである。

 

「ねぇヨロイさん!このスパンコールが付いたキラキラの服なんてイケてるんじゃないか?」

 

…たった今一つ分かったことは、おそらくファイノンのファッションセンスは終わっているということである。

 

 

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