一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話 作:しいたvol.3
「ただ、強く在るためである」
「ッ…そう、ですか」
「それにしても、随分成長したな。…ルアン、と呼んだ方がいいか?」
「ええ、過去の名前はもう捨てましたから」
「…大丈夫か?顔色が悪いぞ」
「少し前まで研究続きでしたから、そのせいかもしれませんね」
嘘だ。
彼の様相を見てから、血の気が引いていくのを感じている。
息ができない。まるで体が呼吸の仕方を忘れてしまったかのように。
でも、そんなことはどうでも良かった。
あの時はただ、彼の変わりように絶望を感じていた。
その鎧は何?なんで脱がない?その口調は何?私との約束は?
頭に様々なことが渦巻いて、気持ちが悪い。
こんなことが起こったのは私の人生の中で初めてのことだった。
「ごめんなさい。少し体調が悪いようなので休みますね」
「謝る必要などない。ゆっくり体を休めてくれ。何か我が手伝えることはあるか?」
「少し休めば…治りますから。また明日、来てください」
「しばらく滞在する予定であるから、いつでも我に連絡してくれ。いつでも手伝う」
そこから丸一日。私は自室のベッドでただうずくまる事しかできなかった。
数えきれないほど吐いた。
頭の中は常に黒いなにかが思考に枷をつける。
命を絶とうとさえ、考えた。
それだけ彼の変化は、私の存在をどうしようもないほど歪めてしまったのだ。
__おー。よしよし、焦らずとも順番に撫でる。
我、流浪の身である。
ファイノンとキメラたちの服選びを終えたあと、我はキメラたちと遊んでいた。
すると、思いのほか懐くキメラたちが多く、こうしてキメラたちを撫でまわしているというわけである。
「羨ましいなぁ。僕なんて服を着せようとしたキメラ全員に逃げられちゃったよ。僕ってそんなに怖いかな?」
多分それはファイノンが怖いのではなく、単に服のセンスが壊滅的であるからである。
しかし、彼にここまで服選びのセンスがないとは…
普段はアグライア殿が仕立てたという服を着ているから気づかなかった。
「こんにちは。とってもキメラちゃん達に懐かれていますね~」
声に反応して後ろを振り返ると、いつの間にやら背後に少女が立っていた。
全体的にふわふわとした雰囲気で、ピンクの髪に赤を基調とした服装をしている。
「もしかして、最近キャスたんが話していた『ヨロイさん』ですか?」
__恐らくそうであろうな。そういう貴殿は…ヒアンシー殿であろうか?
一応、キャストリス殿にも他の黄金裔について色々聞いていた。
アグライア殿のことをしつこく聞きすぎた時は少しむくれた顔をしていたが。
少々デリカシーというものが足りなかったようである。
「はい!昏光の庭の医師、ヒアンシーです!これからよろしくお願いしますね!ヨロイたん!」
ヨロイ…たん?
「あはは、ヒアンシーは大体いつもこうだよ」
「それよりも!ヨロイたんは戦闘中ケガをしても治療しにいかないそうですね」
「確かに、いくら君とはいえ任務中ケガすることは珍しくないよね。なんで治療しに行かないんだい?」
__ああ、そうである。我の鎧は多少の傷くらいなら一日で塞がる機能付きであるからな。
我がこの鎧を着ているのにはそれなりの理由があるのだ。
でなければこんなゴッツい鎧常に装着していないのである。
「だとしてもです!任務帰りにあなたを見て毎回心配しているキャスたんの気持ちを考えてあげてください!」
お、押しが強い…
彼女の纏うふわふわとした空気感とは裏腹に、しっかり物は言うタイプなようである。
__むぅ、分かった。できる限り治療に行くことを約束しよう。
「約束ですからね!体の傷は治っても、心の傷は治すのが難しいんですから」
そう言ってヒアンシー殿はにこっと笑った。
どことなく、彼女に優しい太陽を見た。
「そういえば、なんでヒアンシーはここに来たんだい?」
「私ですか?アグライア様に別件で用事があったのでお話ししていたのですが、『ここにヨロイという名前の新しい仲間がいます。中々気骨のある人ですから、話してみるのもいいでしょう』と伝えられたので…」
__む?アグライア殿が我のことを話していたのであるか?
「ええ、とってもお褒めになっていましたよ!」
なんと!これは僥倖である。
彼女に振り向いてもらうためにも、明日からの任務にも励まねば。
我はしばらくヒアンシー殿とファイノン、そしてキメラたちを加えて体と精神を癒した。
他の黄金裔たちとも早く会いたいものだ…
おまけ
ある星のこと。
この星を訪れたのは、しばらく前のことだ。
その星では特異な怪物が跋扈しており、俺はそのアタマとタイマン張ってギリギリ勝利した。
それはもう強かったものだ。
まさに鬼といってもいい。一手違えば俺が死んでいた。
「見事だ…強者よ。我はじきに死ぬ。この鎧を持っていけ…」
今際の際の怪物は俺へと鎧を渡してきた。
「この星の至宝だ。着ると様々な効果がある」
そのあと、彼は少しだけその過去を話して息絶えた。
_ああ、貰っていく。すっげぇ強かったよ、お前。
彼の剣と共に墓を作り、そこに遺体を埋めた。
しばらくの後、俺の意識は彼の残したその鎧に向いていた。
それにしても、超カッコイイ鎧だ…
しかも鎧をくれた怪物の話し方とかもいかにも「強者」って感じでかっこよすぎるぞ!
__最大限の敬意を評して、彼の言動と鎧を継ぐことにした。
鎧を着て、試しにそれっぽいことをしゃべってみた。
__我が旅路に安寧なし。強さの果てに、ただ死合うのみ。
…くぅ~!カッコイイ!
思いのほか気に入ってしまった俺…我は、こうして誕生したのである。
•ヨロイさん
バカ、アホ、マヌケ。
厨二病(new!)
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