一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話 作:しいたvol.3
料理はじっくりやった方が旨くなる。
我、流浪の身である。
つい最近アグライア殿からある程度の自由を許された。
本格的な火を追う旅の協力が始まる、ということであろう。
__「神悟の樹庭?」
「はい!」
目の前のピンク髪の少女、ヒアンシーは元気よくそう答えた。
曰く、神悟の樹庭という場所に一度来てみないかという話らしい。
「ヨロイたんはこの前外出に制限がなくなりましたよね?アグライア様からお聞きしたんです」
随分と耳が早いものだ。
アグライア殿と会話してからたいして時間は経ってないハズなのだが…
__ふむ…その「神悟の樹庭」とやらはどのようなところなのであるか?
「神悟の樹庭は学術都市で、様々な学問が共存しているんです。ヨロイたんはこのオンパロスのことをよく知らないんですよね?
あそこには様々な文献がありますから、ぴったりだと思うんです!」
成程。確かに我はオンパロスについて知らなさすぎると思っていた。
星たちから聞いたのは黄金裔たちの特徴とタイタンたちの権能くらいである。
彼女たちはもっと教えようとしてくれたが、全てを知ってから体験するというのは些か興が削がれてしまう。
故に我は自分でオンパロスのことを知ろうとしているわけだ。
そんな我に天啓のごとくヒアンシーからの神悟の樹庭への誘い。これは受けないわけにはいかんのである。
「それに、私はそこに居るアナイクス先生の助手をしているんです。ちょっと厳しい人ですけど…とってもいい人ですよ」
…アナイクス!我が未だに会えていない黄金裔のうちの一人である。
ファイノンやキャストリスから話は聞いていたが神悟の樹庭に居たようだ。
我は昨日までオクヘイマの外どころか自室の外に出る際には監視がついていたので気づかなかったというわけか。
尚更行かなければならない理由が増えたわけであるな。
少々癖の強い人物らしいが…学者は大抵癖が強い人物である。
__ぜひ行かせてくれ。我もアナイクス先生とお会いしてみたかったのである。
「本当ですか?じゃあ明日の朝に私と一緒に神悟の樹庭に向かいましょうね!先に行っちゃダメですから!」
__あ、ああ。我はまだそういう交通手段に慣れていないからそうしてくれると助かるのである。
一通り彼女と予定を確認し、その場は解散した。
これで、残りの会っていない黄金裔は…この時間軸で会えそうなのは「脆術」のみか。
名前はサフェル…本名はセファリアだったか?盗賊をやっているらしい。
早く会ってみたいものだ。
「それで、この大きな鎧を纏った方はどなたでしょうか。ヒアンシー?」
神悟の樹庭。樹庭の通り天を衝くほどの巨木を生かした建築の様相だった。
このオンパロスには随分と美しい景色が多いものだ。
我の旅先が物騒な星が多すぎるだけかもしれぬが、この世界は独特の美しさが多く共存している。
ヒアンシーと共に大地獣に乗り、その神悟の樹庭へとたどり着いた我は、着くや否やヒアンシーにアナイクス殿のもとへと案内された。
「いえ、おそらく見当はついています。最近火を追う旅に参加したヨロイという名前の流浪者ですか?」
__正解だ。お初にお目にかかる、ヨロイと申すものである。
「私に畏まる必要はありません。天外から来た存在なのはあの女から不本意ながら伝えられましたから」
「あれ?アグライア様とお話ししていたんですか?」
「あなたがここを出発した少し後に文書が届きましてね。最初は燃やしてやろうとかと思いましたが、随分と興味深いことが書いてあったものですから」
話を聞く限り、彼とアグライア殿の仲はあまりよろしくないようであるな。
それにしても、彼の様相はなんというか…
目につく眼帯に、腕についている謎のマーク…中々カッコイイのである。
我とヒアンシーはアナイクス殿にここの文献を少し読みたいことを伝えた。
彼は考えるような素振りを見せ、我の方をしばらく見つめた後口を開いた。
「文献を見たいのなら自由にしてもらっても構いません。少し私の実験に手伝ってもらえるのなら、ですが」
__一応、内容を聞いても?
内容を聞かずに実験を受けるのは危険な事なのだ。
学者の友人を持つとこういうことには敏感になってしまうのである。
「少し肉体とあなたの持ち物を解析させてもらうだけです。あなたの身と物に損害は与えません」
__持ち物?この鎧とかであるか?
「できることならあなたが普段使っている武器もです」
__その程度ならお安い御用である。それではこれを。
我はその場で鎧を脱ぎ、我の愛用の武器であるピストルと剣を彼に手渡した。
ピストルを見た彼は少し不思議そうな顔をしつつそれを受け取った。
なにやらしせんを感じるので横を見てみると、ヒアンシーがまじまじとこちらの顔を覗いていた。
「…わぁ。ヨロイたんってこんなお顔だったんですね。ちょっと意外です」
__それは褒めているのか?
「褒めですよ!思っていたより精悍な顔つきでしたから」
「…ヒアンシー、少し荷物を運ぶのを手伝ってください。私のような文弱な学者には少し重すぎますから」
__鎧は我が持とう。…して、アナイクス殿は我の武器が不思議であるか?
「そうですね…剣士と聞いていましたから。ですが、私も同じような道具を使いますからある程度は分かります」
そう言って、ピストルをカチャカチャとその場で始めた。
一応我の武器ではあるのだが、このピストルの出番はあまりない。
我の得手は剣であるし、そもそも威力が普段使い用のそれではないのである。
「…この拳銃、弾が一発しか入らなさそうですが」
__この銃を作った奴が「威力と冷却の都合上一日一発しか撃てない」と言っていた。
「それはかなりの威力が期待できそうですね。…樹庭の文献を読んで待っていてください。
終わったらヒアンシーに呼ばせますから」
そう言うとアナイクス殿はヒアンシーを連れて奥の方へと行ってしまった。
さて、我は我で知りたいことを調べねばな。
生憎こういう作業は慣れている。
ある程度知識がなければいくら強くても旅では死ぬのである。
適当に欲しい情報が載っていそうな本をいくつか取り出し、我はしばらく読書に耽ることにしたのであった。
おまけ
「ヨロイちゃん!あそこの書物を取ってくれるかちら?」
我はトリビー殿の書斎の整理をしている。
本棚はかなり高く、加えてはしごを使っても届かない段があるとのことでデカい我が選ばれたというわけだ。
言われた通り書物を取り出し、トリビー殿に手渡す。
我が屈まないと書物を手渡せないほど小さいこの少女は、元はトリスビアスという聖女らしい。
なんでも、最初に半神になったのは彼女であるのだ。
千人に分裂し、仲間を集める旅路の中でその人数は3人にまで減ってしまった。
「百界門」。彼女たちが作り出すその門は、実質的なワープゲートとして機能する。
戦争においてこの能力は言うまでもなく強力であるが、彼女たち曰く「もうそんなに多くは使えない」らしい。
「ありがとう!ヨロイちゃんはかちこくて助かるわね!随分と慣れているみたいだけど…もちかちて、こういう経験があるの?」
__古い学者の友人がいてな。しばらく同じところに住んでいた故、そういう手伝いもしていたのである。
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