一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話   作:しいたvol.3

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我、流浪のものである15

「実験?」

 

「ええ、少し手伝ってもらいたいのです」

 

約二日ほど連絡が取れない状態が続いていた彼女は、唐突に『来てください』

とだけメッセージを送った。

 

もとより彼女のことは心配していたのですぐに向かった。

少しやつれたように見える彼女からされたのは、実験の協力を求めるものだった。

 

「構わないが…我である必要はあるのか?」

 

「ええ、あなたでなければいけません。絶対に」

 

「…分かった。我にできることならいくらでも協力しよう」

 

我は彼女のことが心配だった。

故に、特に内容の確認もせずに了承をしてしまったのだ。

 

彼女が我に向ける視線が、獲物を狩る捕食者の眼であることに気づかずに。

 

「ありがとうございます。やっぱり、あなたは優しいのですね」

 

少しだけ彼女は微笑んで、施設の地下へと我を案内した。

 

そこには様々な施設があった。

もはやこの地下だけで生活が完結するほどに。

 

「しばらく、この地下で生活してもらいます。と言っても実験のために私もここで生活するので寂しさはないと思いますが」

 

それから、彼女に実験の説明をされた。

 

1.地下から出ない事。

2.毎日彼女と話し、バイタルチェックを受けること。

3.彼女と話す際には鎧を脱ぐこと。

 

この三つさえ守っていれば、後は何をしてもいいらしい。

こうして、我と彼女…ルアンはしばらく寝食を共にした。

 

我も悪い気分ではなかった。

彼女とは親しい仲であるし、娯楽も少ないがある。

 

しかし我がこの星を出ようと思っていた時期を過ぎたころ、我は違和感を覚えた。

 

この実験はいつまで続くのだろうか?

 

気になった我は彼女に聞いてみることにした。

 

「ルアン。この実験はいつまで続くのだろうか?」

 

ある日の彼女との会話の中で、それとなく聞いてみることにした。

それを聞いた彼女は少し驚いたような顔をしたが、すぐにじっとりとした笑みを浮かべた。

 

「不思議なことを聞きますね。期間なんてありませんよ、あなたと私は一生、ここで果てるまで生活するのです」

 

 

「いけませんよ。私のもとから離れるなんて。あなたは私のすべてですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我、流浪の身である。

現在神悟の樹庭で欲しい情報を得るために文献を読み漁っている。

 

これらを読むためにアナイクス殿に鎧や武器を貸しているのだが…

毎度思うが、鎧がないと違和感がものすごいのである。

 

我の持ち物の中で一番貴重なものは恐らく鎧である。

剣も業物であるが大した効果はないし、ピストルに関しては価値というか…アレは兵器そのものであるからな。

 

「ヨロイたん?アナイクス先生がお呼びですよ~」

 

気づけばヒアンシーに呼ばれていた。

集中しすぎて周りへの意識が散漫になっていたようである。反省であるな。

 

__終わったのであるか。ヒアンシーも手伝っていたのであるか?

 

「私は助手ですからね。色んな文献を運ばされたりして大変だったんですから!」

 

どうやらかなり大変だったようだ。

やはりあの鎧は相当特殊な代物らしい。

 

__お疲れ様である。案内してもらえるか?

 

「はい、こっちですよ~」

 

我は呼んでいた書物を元に戻し、ヒアンシーの後ろをついていった。

しばらく彼女の後ろを歩いていると、アナイクス殿の私室らしき場所へと辿り着いた。

 

「来ましたか。解析は終わりましたから、鎧と荷物はお返ししますよ」

 

机の上に鎧と荷物が置かれていた。

我はそれを受け取ってすぐさま鎧を着た。やっぱりこれが落ち着くのである。

 

「それにしても、随分特殊な鎧ですね。効果が多すぎて私も手を焼きました」

 

__そうであろうな。この鎧の元の持ち主も至宝だと言っていた。

 

その後は少し我自身の血液や身体検査をされて解放された。

アナイクス殿とは少し話したくらいだが、彼の矜持や考え方は不思議と吸い込まれそうなほど深いものであった。

ヒアンシーから聞いたところによると大地獣が好きらしい。今度ぬいぐるみでも作って贈ってみようか…

 

「ヨロイたんはこの後どうするんですか?」

 

__ある程度情報は知れた故、オクヘイマに戻ろうと思う。

 

「そうですか…。私はアナイクス先生のお手伝いがまだ残っているので、ここでお別れですね」

 

__そうか。少し寂しくなるな…また、機会があれば。達者でな。

 

「はい!ヨロイたんも自分の体を気遣わないとダメですからね!」

 

__ああ、分かっている。君が居なくてもその約束は守るのである。

 

その言葉と共に我とヒアンシーは別れた。

外に出ると、あたりは暗くなっていた。

 

今からオクヘイマに向かうとなれば着くのは明け方か…

さっさと大地獣の背中に乗り、御者に頼んでオクヘイマへと送ってもらう。

 

寝転がって星空を見ながら、我は眠りへと落ちて行った。

 

 

 

起こされると、もう既にオクヘイマへと到着していた。

御者に代金を支払って自室へと戻ると、何か違和感を感じた。

改めて部屋を見渡せば、その正体はすぐに分かった。

 

 

 

識刻アンカーだ。識刻アンカーが光っている!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

__久しぶりであるな。もう二月も連絡がないから見捨てられたかと思っていたのである。

 

「二月?私の方では数分だけど…やっぱりこっちの空間は時間の流れがおかしいみたいだね」

 

星の時もそういうことはあったらしい。

こちらの時間はあちらの時間よりはるかに引き延ばされていると…

一回自殺して戻ろうかと考えたほどである。

 

そして彼女がここにいるということは、どうやらある程度この状況についての解析が終わったらしい。

 

『結論から言うけど、あなたが入り込んだのはキュレネが固定した因果の最中。万一あなたがその固定を崩せば、鉄墓は誕生して銀河が亡ぶだろうね』

 

どうやら我は『紡がれた物語』の中の固定された因果の中にいるらしい。

我がいることによって多少の因果は変化するものの、その変化は変化足りえない。

つまり、我が何をしようとフレイムスティーラー…ファイノンにより、再創生は成されるということだ。

 

星とキュレネ、そして黄金裔によって鉄墓の誕生は阻止される。

そういう因果は既に固定されていて、今はただそこに入り込んでいるだけであると。

 

『ここでさっさと帰ってなにも見なかったことにするのが一番だと思うんだよね。その方があなたのためだよ』

 

彼女は淡々とそう述べる。

それはそうだ。変えられないと分かっている現実を味わい続けることになる。

 

別に我が干渉しなくても、もとより固定された因果だ。

鉄墓の誕生は星たちによって未然に防がれる。

 

__ヘルタ殿。この固定された因果内では我は『何をしても』その因果を変えることはできないのだな?

 

『…あなたのためにも、断言してあげるよ。あなたのような凡人がどう足掻いても、この因果を変えることはできない』

 

__そうか。なら、我は最後までこの物語を見届ける読者であり続けると、今ここに誓おうではないか。

 

『…ふーん。あなたはてっきり、戻ると思ってたよ』

 

__生憎、好みの女性がいたものでな。彼女に童貞を貰ってもらうまではこの世界を出ることはできんのである。

 

『呆れた…別に私は構わないよ。逆にもし途中で折れたら、その発言とあなたの位置情報をルアンのスマホに送り付けてあげる』

 

__ハハ、それは絶対に辞められないのであるな。ちなみに、再創生を行ったら我は一度現実へと戻るのか?

 

『ないね。表現を合わせるのならただ次のページに移動する…ってだけ。

もしあなたが死んだらページからはじき出されるような感じ』

 

__成程。では一度あちらへと戻る。星に『紡がれた物語』をしばらく貸してもらわねばならんからな。

 

『はいはい。さっさと帰ってきてねー』

 

ブツっと識刻アンカーが光を消した。

モノ言わぬそれを鎧の中にしまって、我は一度自刃することにした。

 

よもや自刃する機会があろうとはなぁ…

 

 

 

 

あと何回…

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