一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話 作:しいたvol.3
「一つ言っておきますが、私の許可がない限りあなたはここから出られません」
「どうしても出たいというのなら、私を殺せば出られますよ」
彼女の眼を見ればわかる。
彼女の言っていることは疑いようもなく「マジ」であるのだ。
「…意地の悪い。我が、お前を殺せないことを理解してそう言っているだろう」
「どうでしょうか。私はあなたに殺されるなら本望ですよ?」
「ほら、あなたの力があれば私くらいすぐに殺せるでしょう?例えば…この首を締め上げる、とか」
彼女は我の手を掴んでその首へと添えた。
我からすれば力を込めてへし折る事すら可能であろう。
天地がひっくり返ってもするわけがないのだが。
我は彼女の手を空いている手でそっと振りほどいて、さっきまで座っていた席へと座った。
「まったく、困ったものだ。いつのまにこんな子になったんだか…」
「あら、私を変えたのはあなたですよ?さっきも言ったでしょう。あなたは私の全てであると」
「…そうか」
我は少しの間、机に項垂れていた。
本当に困ったものだ。我は旅がしたいが、しかし彼女は命を賭しても我を止めたいらしい。
我のような凡人が彼女のような天才を殺すことは…どう考えても、宇宙の損失だろう。
少しため息を吐き、一応彼女に聞いてみることにした。
「…どうしてもか?ルアン」
「どうしてもですよ。私の愛する人」
「あ、ヨロイさん帰ってきた。まだ数分しか経ってないけど、もしかしてまたリスキル?」
起きると、星となのかがゲームをしながら我を見つめていた。
やはりこちらとあちらの時間は異なるらしい。
それにしても、まだ数分しか経っていないのに彼女たちは我が渡したお菓子をかなり食べているようだ。
…多分その高級そうな包み、我が姫子殿に渡そうとしていた菓子折りだったはずなのだが。
その事はさておき、我はあちらで分かったことをヘルタ殿と説明した。
「へ〜。やっぱりあっちでの時間は長いんだね。それにしても、キャストリスのこと誑かしてない?」
__多分ないのである。我が近づこうとすると彼女は離れて行ってしまうからな。
「多分それ、違う理由だと思うんだけどな…」
__して、折り入って星に頼み事がある。少しの間、この本を我に貸してほしいのだ。
「…これを?まぁヨロイさんならいいけど…なんで?」
我は我のやりたいことを説明した。
__我は彼らの物語を最後まで見届けたいのだ。
たとえ因果を変えられなかったとしても、彼らの生き様をこの目に焼き付けたい。
暫くの説明の後、少し悩んだ様子を見せた彼女は我ににっこり笑って言った。
「わかった。無理はしないでね?ファイノンみたいに背負いすぎたら許さないから!」
「ウチも応援してるよ〜。あ、あんまりオンパロスの人たち誑かしちゃ駄目だからね?」
__感謝する。必ずや彼らの旅路を記憶すると約束しよう。これが終わった後、我にできることがあればなんでも言ってくれ。
「あ、今度私とゴミ漁りに付き合ってよ!ヨロイさんセンスあるからさ」
__貸してもらっている身であるし、もちろんである。
…ゴミ漁りのセンスとは何だろうか。
彼女がゴミを漁るとたまに王のゴミ箱が出るため普通に危険なのである。
彼らの強力無比な蹴りはたまに我の鎧でも防ぎきれないのだ。
星の言うセンスが彼らと会う確率が高いと言う意味ならマジで要らないセンスである。
__では、我は一旦宿へと帰る。おそらくこちらの時間で数日はそこに篭っているだろう。
もし何かあればこの宿の主人に我のことを尋ねれば教えてくれる。
一応彼女達に宿泊している宿の住所を書いた紙を渡しておき、星から「紡がれた物語」を受け取った。
我が列車を出ようとすると、ヘルタ殿に話しかけられた。
『何かあったら識刻アンカーで私に呼びかけて。…あと、たまにはルアンに会ってあげなさい。
あの子、また貴方を探して虚ろな目になってるから』
__定期的に手紙は送っているが、そろそろ直接会ったほうが良い様であるな。
…もし彼女の元の行ってしばらく帰っていなかったら、またその時は迷惑をおかけする。
『今更?ルアンの機嫌が直るなら別に安いし構わないよ。私にまで被害が及ぶのはまっぴらだけど』
__そう言って貰えるとこちらも助かるのである。
我は彼女達と別れを告げ、宿へと戻った。
自室に着いた後ベッドの上で意を決して先ほどのページをまた開くのであった。
そういえば、あちらでは急に我がいなくなっている事になっているのでは?
…少々、固めた決意が揺らぎそうである。
おまけ
私の名前はキャストリス。今はヨロイ様のお部屋に向かっています。
昨日は神悟の樹庭に行ってしまわれていたので、珍しく会話ができませんでした。
彼がここへと来てからほとんど毎日の様にお話ししていたので、昨日は少し寂しかったです。
しかし、私は少し前に勇気を出して彼とある約束を交わしました。
『ヨロイ様は手芸にご興味がおありですか?』
『む?手芸であるか?』
『は、はい。ヨロイ様の部屋で見慣れないお人形を見かけましたので』
『ああ、あの人形たちであるか!昔の友人に少し習った故人形は作れるのである』
『そうなのですね。よろしければその…今度一緒に作らせていただいても?」
『喜んで。しかし、そうであるな…明日は神悟の樹庭に行く予定がある故、帰ってきたらというのは?』
そんなわけで、私達は彼が帰ってきた後一緒に人形を作る約束をしていたのです。
つい先ほどヨロイ様がオクヘイマへと着いたという連絡があったので、今頃は部屋にいるはず。
彼と居ると、不思議と幸せになる。体が熱くなる。
彼と会える。
そう考えるだけで足取りが軽くなる。
思いの外すぐに着いた彼の部屋の扉をノックし、私は扉を開けました。
『失礼します。ヨロイ様…』
ドサッ
私の目に映ったのは、胸へと自身の愛剣を突き立て、倒れ伏す彼だった。
伏した彼の身体は粒子となって消えていった。まるで最初からいなかった様に。
『…ぇ』
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