一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話   作:しいたvol.3

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我、流浪のものである17

「…ぇ…」

 

消えた。

私の目の前で確かに、自身の剣が刺さった彼の体が、光となって消えた。

 

「あ…ぇ…?」

 

あまりにも理解ができない光景に、暫く私は立ち尽くしていた。

一瞬の出来事すぎて、まるでさっきの出来事なんてなかったように思われる。

 

彼の赤い血塗れの剣だけが、ただその場に残されていた。

 

「う…うそ…嘘ですよね?あなたが、自死を選ぶだなんて…」

 

ありえない。だって一昨日だって、あんなに楽しそうに…

ありえない。ありえないありえないありえないありえない!

 

「ヨロイ…様…なんで…」

 

「そんなッ゛…そんな、ことって…」

 

約束、したじゃないですか。

私と、お人形を作ると。もう死ぬようなことは辞めてください、と。

 

冷たいはずの私の手を暖かいと、そう言ってくれたのに。

奪うだけの冷たい私の手を、唯一恐れずに私に多くを与えてくれたのに。

 

ふと、私の手が彼の剣に触れた。

彼の血がべっとりとついていて、やはり彼は先ほどまでここにいたのだと嫌でも分からされる。

胸のあたりがざわついて、少しだけ熱くなっていた。

 

「っ…痛っ…痛い」

 

良く斬れるように研磨された刃は、私の指先を少しだけ傷つけた。

指先から黄金の血が流れる。彼の血を上塗りするように、剣へとぽたぽたと。

 

なんだかその光景が不思議と目を離すことができずに、暫く血を流したまま部屋に座り込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…さて。

帰ってきたぞ、オンパロスよ。

 

我、流浪の身である。

前回と同じように視界が白に染まり、またはっきりとオンパロスらしい建築が見えてきた。

 

というか、さっきから思っていたが我の剣がない。

いつも腰に佩いているはずなのだが…まさか、オンパロスに置いてきたか?

徒手でも戦えるが…リーチ的に厳しいものがある。

 

そんなことを思いながら周りを見渡すと、我はどこへと飛んだのか理解できた。

我が飛んだのはオクヘイマの一角の様だ。

我があちらから帰ってくるまでに少なくとも3時間以上はかかっている…

 

こちらの年月としては年単位で進んでいるとしても不思議でないのである。

しばらくオクヘイマを歩いていると、だんだんと前回との違いに気づいてきた。

 

なんというか、全体的に活気がない。

より空気がピリピリしているというか、楽観的な住民たちの様子が見られないのだ。

 

…もしや、もう暗黒の潮の進行はそこまで深刻化しているのか?

こうしては居られぬ。少々不敬ではあるがアグライア殿の私室を訪ねてみようか。

 

前回の時間ではすでに返還されている火種は7つ。

残りは確か…天空、死、紛争、理性…そして世を背負うタイタン、ケファレの火種だったはずである。

 

おそらくフレイムスティーラー…もとい永劫回帰中のファイノンが暗躍している。

…急ぎ今の状況を確認せねばな。

 

 

 

アグライア殿の部屋へと向かうと、案の定彼女はデスクで仕事をしていた。

見張りはどうしたって?我、侵入は得意である。

 

__案の定だが、死人を見たような顔をする。まぁ半分事実であるが。

 

「…金糸に偽りはありませんでしたか。最初にあなたが居ると感じた時にはさすがに疑ってしまいました」

 

__一応、我は本物である。脆術でもなんでもなく、な。

 

「その点は心配していません。…それで、あなたはこの数十年どこに行っていたのですか?」

 

__準備をしていた、としか言えない。詳しくは言えないが、あなた達に不利益をもたらすものではない

 

__アグライア殿。今の状況を知りたい、オクヘイマの空気感からして恐らく何か大きな事態が起こったのであろう?

 

「…それはもう、様々なことが起きましたよ。」

 

その後、アグライア殿から我が消えていた間の出来事を聞いた。

少し話が長かったため簡潔にまとめると、

 

1.モーディスとキャストリス、加えてアナイクスは火種を返還し半神と成った。

2.現在フレイムスティーラーと呼ばれる黒衣の剣士が火種を奪おうとしている。

その影響によってトリアンが死亡。一度モーディスが撃退。

3.現在、「天空」の火種を受け取るためにファイノンとヒアンシーが遠征中。

4.2より「脆術」の半神サフェルがケファレの火種を持ち、逃走中。

 

…ということらしい。

随分と進んでいる。黄金裔の仲間たちもかなり少なくなってしまった。

 

__待て、「天空」のタイタン相手に彼ら二人だけで行かせたのであるか?

 

「ええ、ヒアンシーの話によれば英雄セネオスの末裔である彼女がいれば戦いは不要であると聞いていますから」

 

我の記憶には星は「天空」と闘ったと言っていた。

おそらくヒアンシーの言っていることには何か間違いがある。

 

__アグライア殿。ヒアンシーたちが向かった場所を教えてほしい。念のため加勢に入りに行きたいのである。

 

「そうですか…場所は「天穹要塞」ですが、黎明の崖にそこへの道が在る筈です」

 

黎明の崖…少し遠いが急げば間に合う。

もし「天空」と彼らだけが衝突した場合、彼らの命が危険にさらされる可能性がある。

 

__感謝する。我は急ぐ故失礼させていただく。

 

「一つ言い忘れていました。忘れものですよ」

 

そう言って彼女は近くのラフトラに何かを持ってこさせた。

見ると、それは我の愛剣であった。

 

…しかし、少し意匠が変わったように見える。銀色だった刃に紫と金色の模様がついているのだ。

 

「勝手ですが、劣化しそうでしたので鍛冶師に打ち直させました。見た目以外とくには変わっていないはずです」

 

__本当に感謝する。

 

その言葉と共に我は彼女の部屋の窓を飛び降り、黎明の崖へと走りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天穹要塞」へとたどり着けば、何やら空が荒れている。

奥の方へと目を見やると、なにやら大きな化け物とファイノン、ヒアンシーが戦闘していた。

 

いや、落ちている!

彼らが戦っている土台が落ちているのだ。

アレをなんとかするにはさっさと向かって「天空」を殺すしかないのであろう。

 

どんどんと下へと落ちていく彼らの戦場が、わずか30mほど先に見えた。

これ以上は間に合わぬと思った我は、思い切り地を踏み込んで飛ぶ。

 

20…10…5…3…よし!届いた!

 

脚が少しひりつくが誤差である。

それよりも彼らの加勢をしなければ!

 

__ファイノン!ヒアンシー!地獄の底から帰ってきたぞ!

 

「「よ、ヨロイさん(たん)!?」」

 

先のアグライア殿よりももっと驚いたような顔をして、彼らはこちらを見つめる。

 

「ほ、ほんものですか!?ほんとにほんとにヨロイたんなんですね?」

 

「信じられない…あれだけ探しても見つからなかったのに」

 

感動の再会と行きたいところだが今はそれどころではない。

さっきから目の前の化け物が苛烈な攻撃を仕掛けてきている。

 

雷が避けにくい!我の鎧は避雷針ではないのだぞ!

ひとまず彼らにこの化け物を倒していいか聞かなければ!

 

__本物だ!今はいったんこの怪物を倒せばいいのか!?

 

「ああ!それでいい。君となら楽勝だよ!よーし、僕と君で同時にあの怪物を切りつけて…」

 

ファイノンから了承の言葉を聞いた瞬間、我はもう既にホルスターからピストルを抜いていた。

眠っていた間隔を研ぎ澄まし、目の前の怪物へと照準を定める。

 

__文明の力の前に倒れ伏せ!ファイア!

 

引き金を引くと、一発の弾丸が「天空」目がけて突き進み、やがて着弾する。

その衝撃自体にダメージはない。

 

しかし、その玉からあふれ出たのは黒。やがてその黒は無数の手となり、牙となった。

 

 

凄まじい怪物の悲鳴があたりに響き渡る。

 

かの怪物の体は今、黒が「喰らって」いるのだ。

大した抵抗もできないまま、その体は食いつくされ、やがてその場に火種のみが残った。

 

その場には落下する足場と我らだけが残された。

ひゅうひゅうと先程の戦闘の余韻の様な強風だけが吹いている、

 

 

 

 

「「え…。えええええええええええええええ!?」」

 

少しの後、彼らの驚きの悲鳴が上がった。




・ヨロイさん
謎のチート武器を披露した謎鎧。お前は早く約束を守れ。

・キャストリス
ちょっと曇っちゃった人。半神と成った後、冥界でヨロイさんがいないか探している。そこには居ない。

・エーグル
ごめん。

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